3D都市モデル×Fortniteによる次世代シティプロモーション手法確立プロジェクト
| 実施事業者 | 株式会社モンドリアン |
|---|---|
| 実施協力 | さいたま市 / 株式会社さいたまアリーナ |
| 実施場所 | さいたま新都心駅 / さいたまスーパーアリーナ / イオンモール与野 |
| 実施期間 | 2025年12月 |

さいたま新都心エリアの3D都市モデルを「Fortnite」上に再構築し、仮想空間での地域体験を通じて、当該エリアの魅力発信に寄与する。さらに、地域企業と連携したオフラインイベントを展開することで、新たな市民参加型のまちづくり広報の実現を目指す。
本プロジェクトの概要
地方公共団体が地域の魅力発信や来訪促進に向けた施策を検討する際、これまでは紙媒体・対面型イベントを主体とした従来型広報を中心に取り組みが進められてきた。一方、若年層を中心に情報収集手段がデジタルへと移行する中、こうした手法のみでは地域の魅力や回遊動線を十分に伝えきれず、来街者の回遊性向上や施策効果の可視化が進みにくい状況にある。
本プロジェクトでは、さいたま新都心エリアの3D都市モデルを世界で5億人以上のユーザーを持つメタバースプラットフォーム「Fortnite」上に再構築し、高度な空間制作を可能にする専用ツール「UEFN(Unreal Editor for Fortnite)」を活用したバーチャル空間での地域体験を提供することで、従来の観光PRが抱えていた「域外への訴求力不足」や「若年層・親子層へのリーチの難しさ」といった課題解決を図る。さらに、eスポーツ形式のオフラインイベントや地域ポイント「たまポン」と連携することで、デジタル体験を現実の来訪・経済循環につなげる新たな情報発信モデルを構築する。本取り組みを通じて、体験型エリアマネジメントDXの社会実装可能性を検証する。



実現したい価値・目指す世界
近年、若年層を中心に情報収集や意思決定の手段がデジタルデバイスやコンテンツを主軸にした仕様へと移行する中、地域の魅力発信や来訪促進においても、広報・施策手法の見直しが求められている。パンフレット配布やパネル展示、イベント開催といった従来型の広報手法のみでは、地元・近隣の若年層や国内外の観光客に対して地域の魅力や回遊動線を十分に伝えきれず、地域の認知度向上に十分に寄与できていない状況にある。その結果、地域への関心喚起や来訪行動につながりにくく、地域活性化への効果が限定的となっている。こうした背景のもと、国内の各都市では、情報発信手法の不足を起因とした地域認知の低下や来訪促進の停滞といった課題が指摘されつつある。今回の実証地であるさいたま市においても、「さいたま新都心エリアマネジメントガイドライン(2022)」において、「効果的な情報発信の未整備」や「新たな取組への挑戦機会の不足」が明確に示されており、その対応策が求められている。
本プロジェクトでは、地域の魅力発信力の不足を起因とした地域回遊性・来訪促進の停滞といった課題の解決を目的に、同様の課題を抱えるさいたま市を対象として、「実在都市の仮想空間」をデジタル媒体上に構築し、若年層・域外層を新たな接点とした都市プロモーションに取り組んだ。具体的には、バーチャル都市空間を活用し、実在都市を模したゲームマップの構築と、市民参加型のオフラインイベントの実施を二本柱とするアプローチを採用した。
システム開発にあたっては、3D都市モデルを基盤に、建築物にはテクスチャを適用するとともに、植栽や案内掲示板などの都市景観要素を整備することで、現実の都市空間を忠実に反映した「実在都市の仮想空間」を構築した。3D都市モデルの活用により、忠実な空間再現が可能となるだけでなく、建物形状や配置等の基礎情報をあらかじめ備えているため、モデリング工程を効率化し、開発工数の削減に寄与した。これにより、仮想空間上での移動体験や空間認知を現実と高い整合性をもって提供し、来街時の具体的な行動イメージを喚起しやすい都市プロモーションを実現した。
イベントやマップ公開を通じた地域認知の向上に加え、地域企業・団体の参画による「eスポーツを通じた地域連携運用モデル」の持続可能な運営体制を構築。eスポーツ体験イベントにおいては、自治体およびエリアマネジメント団体の全面的な支援のもと、市公式アプリ「さいたま市みんなのアプリ」や地域ポイント「たまポン」と連動。仮想空間での観光名所認知から現実への実来訪、および地域消費を促進し、地域内における経済循環の創出を図った。このように地域主体が一体となった支援体制を基盤とすることで、3D都市モデルを軸とした「体験型エリアマネジメント」の有効性を実証し、社会実装可能性を検証した。
若年層を含む幅広い層の地域関心を喚起し実来訪・回遊行動につなげることを目的に、eスポーツプラットフォーム(Fortnite等)×3D都市モデル×エリアマネジメントを掛け合わせ、実在都市を高精度に再現した仮想空間の構築・提供と運用施策を一体で推進し、デジタル空間を起点とした市民参加と地域経済の循環を創出する都市DXの実現を目指す。



検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材
本プロジェクトでは、さいたま市が整備した3D都市モデルのジオメトリ(建築物LOD2、道路LOD2、広場LOD3、橋梁モデル LOD2、都市設備モデル LOD3)を基盤とし、さいたまスーパーアリーナ周辺の実在する街並みを舞台としたeスポーツコンテンツ「City SPEED TRIAL: SAITAMA SUPER ARENA」を開発した。
開発したコンテンツのロビーエリアにおいては、3D都市モデルのジオメトリに高精細テクスチャを重畳し、実証地である「さいたま新都心エリア」を仮想空間上に高精度に再現した。これにより、利用者が自由な回遊・探索を行える、実地に近い都市環境を具現化している。また、タイムトライアルの6ステージにおいては、さいたま市の名所や文化をモチーフとした走行コースを構築した。各コース内には、実在する建造物や名産品等を精緻に配置・再現し、本市の魅力を効果的に発信する構成とした。
実在する地域資源を反映したレース体験を通じ、参加者における本市への理解深化および再訪・来訪意欲の醸成を図る。本施策は、従来の広報手法では接点確保が困難であった若年層や域外層に対し、エンターテインメント性を備えたゲーム体験を端緒とする新機軸の都市プロモーションを展開し、その有効性および波及効果を検証することを目的とする。

本コンテンツは、3D都市モデルのジオメトリを基盤とし、汎用性の高いゲームプラットフォームを介した社会実装を実現するものであり、以下の3つの主要要素で構成される。
① 基盤データ:3D都市モデル
本プロジェクトでは、3D都市モデル(建築物LOD2、道路LOD2、広場LOD3、橋梁モデル LOD2、都市設備モデル LOD3)を基幹データとして活用した。さいたま新都心エリアの建築物の形状や高さのみならず、道路の微細な形状や地形を含む詳細な地理空間情報を統合。これにより、ロビーエリア内において、プレイヤーが実在の都市空間を自在に探索できる、極めて高度な再現性を具現化した。
② 開発環境:UEFN(Unreal Editor for Fortnite)
本プロジェクトでは、Epic Games社が提供する高度なリアルタイム3D制作ツール「UEFN(Unreal Editor for Fortnite)」を開発プラットフォームとして採用した。ロビーエリアの構築においては、3D都市モデルを基盤に、独自ワークフローによるメッシュ最適化を施すことで、リアルタイム描画における高いパフォーマンスと、実地を忠実に再現する高精細テクスチャの重畳を両立させた。これにより、圧倒的な没入感を備えた仮想空間を具現化している。また、タイムトライアルが展開される6つのステージ空間には、チェックポイント判定等のゲームロジックを独自に組み込み、レース体験を通じた能動的な都市探索を促進。ターゲットとする若年層や域外層の関心を喚起する、UIデザインとエンターテインメント性に優れた体験型コンテンツを構築した。
③ 配信・実行環境:Fortniteプラットフォーム
開発したコンテンツは、Fortnite内の「島コード」を通じてグローバルに公開した。これにより、主要ターゲットである若年層や域外層への集中的なアプローチを可能にするとともに、属性や居住地を問わず世界中のプレイヤーが常時アクセス可能なオンライン環境を整備した。



本プロジェクトでは、3D都市モデルを活用したeスポーツコンテンツという新たな情報発信手法を創出。若年層および域外層における本市の認知度向上、ならびに実社会への来訪促進・地域経済活性化への寄与度を、独自構築したコンテンツを体験できるオフラインイベントの開催を通じて検証した。
2025年12月14日、イオンモール与野(さいたま市)にて実証イベントを実施した。イベントの魅力を最大化し、情報の広域拡散を図るため、人気プロゲーマーやインフルエンサーをゲストとして招聘。会場内では、来場者が自由にゲームを体験できる試遊エリアのほか、ゲストと参加者が交流するステージプログラム、および上位入賞者を決定するミニ大会を企画・運営した。
本イベントには、実証地の地元企業が協賛として参画。さいたま市公式「みんなのアプリ」へのユーザー登録を参加条件に設定した上で、ステージプログラムの入賞賞品として地域ポイント「たまポン」を付与した。 実証地域内でのみ利用可能なポイントを付与することで、ターゲット層の一過性の来場に留まらない継続的な来訪を促す行動変容を設計。これにより、デジタル空間での体験を地域経済の活性化や市のデジタル施策推進へ直接的に繋げる、実効性の高い循環モデルを構築した。

検証で得られたデータ・結果・課題
本検証では、オフラインイベントの一般来場者694名(うちアンケート回答者57名)を対象に、コンテンツ体験後の意識調査を実施した。評価にあたっては、3D都市モデルのジオメトリを活用し、高精度に該当エリアを投影した本コンテンツを、「都市情報の発信媒体としての有効性」および「一般利用者向けサービスとしての品質・没入感」の2軸で定義。定量的な統計データと定性的な意見集約の両面から、本施策の有効性を多角的に分析・評価した。

オフラインイベントの協賛参画事業者および実証地自治体の職員計8名を対象に、意識調査を実施した。本調査では、事業者視点における「プロモーション効果や経済的波及性」、および自治体視点における「行政施策との親和性や社会実装に向けた課題」を多角的に抽出。各ステークホルダーの立場から見た本施策の有用性を検証するとともに、持続可能な事業モデルの構築に向けた示唆を得ることを目的とした。
一般参加者を対象とした「情報発信手段としての機能検証」は、居住地および年齢属性に基づく集客範囲の分析を通じて実施した。
本実証では、SNSやインターネット広告等のデジタルプラットフォームを起点とした来場者が多く、東京都や神奈川県を含む市外からの参加者が58%と過半数を占めた。これにより、首都圏全域を対象とした広域集客が達成された。また、年齢層分布は10代・20代が全体の68%を占め、当該層の満足度は92%と極めて高い評価を得た。この結果は、従来の行政施策では接点確保が困難であった層に対し、eスポーツという共通言語を用いることで、極めて高いエンゲージメントを獲得できることが立証された。
また、3D都市モデルのジオメトリを基盤とした街並みの再現性については、85%が「リアルである」と回答した。この高精度な可視化は、参加者の78%において「地域への関心・親近感」を醸成させる要因となった。実地を忠実に再現した仮想空間内での走行体験が、単なる視覚的な情報提示に留まらず、将来的な実社会への再来訪を促す動機付けとなりうることが実証された。
本実証においてコンテンツが高く評価された一方で、来場動機の回答は「招聘したインフルエンサーや著名人との接触」が63%と最多を占め、次いで「Fortniteのプレイ体験」が57%となった。 この結果は、著名人の起用が集客の強力な誘引となった事実に加え、Fortniteを通じたゲーム体験そのものが、ターゲット層を惹きつける情報発信の有効な訴求力として機能したことを示唆している。
本施策の持続可能性を確保するためには、体験の陳腐化を防止し、継続的に新鮮な訴求要素を提示し続ける仕組みづくりが不可欠である。今後は、特定の著名人への依存度を低減させつつ、構築コンテンツおよびオフラインイベントの双方において以下の具体施策を投じることで、新たな情報発信手法としてのユーザーの期待値を維持・向上させる。
構築コンテンツ側では、実証イベントで高い評価を得たご当地キャラクターの役割をさらに拡張し、従来の視覚的な演出に留まらず、スコア加算要素への関与やユーザーの嗜好を反映したギミックの実装など、ゲーム性を深化させることで継続的なログイン動機の創出に繋げることが有効だと考えられる。また、3D都市モデル内の景観を季節や現実のイベント(桜まつり、イルミネーション等)と連動して自動更新する仕様を検討する。これにより、開発コストを抑制しながらも、常に「今の街」を体験できる鮮度を維持する。
オフラインイベントの運用面においても、地域ポイント「たまポン」の仕組みを活用し、連携可能店舗をイベント会場で案内することで参加者が都市そのものの巡回を促進するほか、店舗側への積極的な働きかけを通じて地域全体で実施するイベントへ昇華していくことが重要である。これにより、インフルエンサーを機軸としたターゲット層のみならず、その親世代や地域住民に対してもイベント自体の有益性を提示し、都市そのものの魅力に訴求することで持続的な経済循環モデルの確立を目指す。
さらに、ゲーム内の6つのステージ空間に登場するエリアの担当者と緊密に連携し、デジタル空間に投影されていた名所や文化的なアイテムを実際の会場へ展示・配置する。こうした「デジタルとリアルの融合」による演出により、実社会への来訪意欲を強力に喚起する仕組みを構築する。
参画事業者および自治体職員を対象とした検証では、ビジネスモデルの持続可能性を測る指標として、システム導入意欲と継続・拡大への期待を評価した。
システム導入意欲については、57%が「ぜひ導入したい」と回答。3D都市モデルとゲーミフィケーションを掛け合わせた先進性や、教育・地域活性化への転用可能性が官民双方から高く評価された。一方で、43%が慎重な姿勢を示しており、その要因として、ハイスペックな機材・通信環境の整備コストや専門スタッフの配置といった物理的・経済的障壁が明らかになった。今後の社会実装に向けては、自社による一元的なサービス提供体制を構築し、外部委託や連携先を集約する。これにより、運営の確実性を担保して事業継続への不安を払拭するとともに、中間コストの削減を通じて構造を最適化し、導入障壁の根本的な解消を図る。
継続・拡大への期待については、86%が「印象が良い方向に変わった」と回答。若年層の情報収集がデジタルへ完全移行する中、従来型のアナログ手法(パンフレット配布、物産展、パネル展示等)のみでは、デジタルネイティブ世代に対する地域の魅力発信に限界があるとの認識が広がっていた。こうした中、今回の実証を通じて、想定以上のターゲット層における集客力を直接的に実感できたことが、ステークホルダーにおけるポジティブな意見変容の主因であると考えられる。今後は、一過性のイベントに留まらない持続的な効果を創出するため、観光や教育等の他分野コンテンツとの複合的な展開、および導入コストを抑制する仕組みの構築が不可欠である。

今後の展望
本プロジェクトを通じて、3D都市モデルを活用したeスポーツコンテンツは、各ステークホルダーから極めて高い支持を獲得し、次世代型の都市プロモーションとしての有効性が裏付けられた。
3D都市モデルのジオメトリを基盤とした精緻な街並みの再現は、単なる情報の可視化を超え、参加者に深い没入感を提供した。仮想空間での走行体験が、実都市の景観に対する「既視感」や「親近感」へと転換されたことで、地域認知度の向上のみならず、具体的な来訪意欲を喚起する結果となった。これは、バーチャル空間を起点とした持続的な来訪促進および地域経済活性化への寄与を十分に予見させるものである。
本施策は、従来の行政広報では接触が極めて困難であったターゲット層に対し、圧倒的な訴求力を発揮した。デジタルプラットフォームを基軸とした情報発信により、首都圏全域からの広域集客を達成。地理的制約に縛られない、広域での都市プロモーションの有効性を証明した。また、10代・20代を始めとする若年層から極めて高い満足度を得たことは、eスポーツという共通言語が、プロモーション手法として機能することを実証している。
参画事業者および自治体職員においても、実証運営を通じて本プロジェクトの社会的・経済的価値を再認識するに至った。市長をはじめとする自治体関係者からの高い評価は、本施策が単なるエンターテインメントの枠を超え、新たな都市プロモーション手法としての価値を有していると認められたことを意味する。実証現場で得られた熱量と成功体験を共有したことで、今後の本格的な社会実装に向けた強固な官民連携の基盤が構築された。
本実証を通じて極めて高い成果が得られた一方で、本格的な社会実装および持続可能な運用に向けた実装上の障壁と、今後の展開方針が明確になった。
イベントの実施において、専用スペースの確保や高速通信環境の整備、ハイスペック機材の調達、さらには専門スタッフの配置といった多大なリソースが必要となることが浮き彫りとなった。この課題に対しては、既存の商業施設や公共施設との連携により設備共有を図るとともに、機材のレンタルスキームや運営ノウハウのパッケージ化を進めることで、導入コストの軽減策を検討する。
また、「現場での実体験」がステークホルダーの価値理解に直結した事実は、裏を返せば、実施前段階での効果予測が困難であり、投資や協力の意思決定を妨げる要因となっていることを意味する。この課題に対しては、実証イベントの様子やゲームプレイを収録した紹介動画、参加者の声や定量的な成果をまとめた事例資料を作成・公開することで、ステークホルダーが実施前段階でも具体的な効果をイメージしやすくし、理解と参画のギャップを縮める方針とする。
その他、単発イベントとしての実施は、話題性が一過性に留まりやすく、地域経済への持続的な波及効果を生み出しにくいという課題が指摘された。この課題に対しては、現在さいたま市と協議を進めており、定期開催や他の地域イベントとの組み合わせによる活用方法の多様化を推進し、持続的なイベント運営により地域経済活性化効果の促進を図る。
エリアマネジメント団体や地域自治体、地元産業を巻き込んだ持続的な運営を支えるビジネスモデルの構築により、地域経済の活性化を加速させるとともに、3D都市モデルを利活用した先駆的な都市プロモーション手法として、他自治体への全国展開と持続可能な社会実装を目指す。





