AIを活用した環境シミュレーションの高速化技術の開発
| 実施事業者 | 株式会社構造計画研究所 |
|---|---|
| 実施場所 | 兵庫県朝来市 朝来市役所 |
| 実施協力 | 株式会社ウエスコ |
| 実施期間 | 2025年5月〜2026年3月 |

AI技術によって洪水浸水シミュレーションの高速化を行い、3D都市モデルを活用し家屋レベルでの水害リスク評価を可能とする技術を開発。施策/事業企画立案者が、対策シナリオを迅速かつ容易に検討できるシミュレーション環境の構築を目指す。
本プロジェクトの概要
近年、気候変動に起因する集中豪雨の頻発、都市化の進展等を要因として、水害リスクはますます増大している。事前対策や避難計画策定の重要性も多くの人に意識される中で浸水シミュレーションの活用ニーズは高まっている。他方、物理演算を伴う従来の環境シミュレーションは、計算負荷が大きく専門家による運用が求められるため、国や地方公共団体の施策立案者が直接扱うのは困難な状況である。また、コストやインプットデータ等の制約で分析範囲が限定的になるという課題もあった。
本プロジェクトでは、氾濫解析に要する時間を短縮するAIモデルを開発することで、氾濫解析実行に要する時間の大幅な短縮に取り組む。これにより、河川氾濫リスクに係る計画検討の場、及び行政関係者・住民との協議の場において、浸水シミュレーションの活用可能性が高まるかどうかを検証する。また、シミュレーションを高速化するAIモデルの構築にあたっては、物理的妥当性を考慮した形で将来的に幅広い分野の環境シミュレーションへも適用が可能となるよう、汎用性も意識しつつ取り組む。検証を通じて、意思決定者による分析を通じ、気象災害リスクが年々高まる中でより適切な判断が可能な社会、また、計画立案者による多様なシナリオの比較・評価を通じ、効果的な都市計画・防災計画の策定が可能な社会の実現に寄与する。

実現したい価値・目指す世界
物理演算を伴う精度の高い環境シミュレーションは計算時間が長く、多くの演算リソースを必要とするため、専門家による運用が求められ、ノンエンジニア属性の施策立案者(国や地方公共団体)や事業企画立案者(民間事業者等)が直接扱うのは困難である。また、ユーザーが環境シミュレーションを実施するに当たって、広域での分析や複数シナリオの比較が望ましい場合であっても、計算に要する時間や金銭的コスト、更にはインプットデータの制約により、シミュレーションを実施するエリアやシナリオ数が限定的となってしまうケースが見られる。
中でも、近年の気候変動等に伴う水害リスクの増加という背景、あるいはそうした背景を受けた事前対策・避難計画策への意識の高まりを受け、環境シミュレーションの中でも、とりわけ降雨・浸水シミュレーション技術が、事前対策や防災計画策定に活用されるシーンは増加傾向にある。
したがって、ノンエンジニア属性の施策立案者等が手軽かつ高速に洪水浸水シミュレーションを実行できる環境を整備することで、水害リスクに対する事前対策や防災計画の充実への寄与が期待できる。
こうした背景をうけ、本プロジェクトでは、洪水浸水シミュレーションを対象に、AI技術による抜本的な高速化を図り、家屋レベルでの精緻なリスク評価を可能とする技術を開発することで、施策立案者や事業企画立案者が対策シナリオを迅速かつ容易に検討・評価できる環境の構築を目指す。
開発にあたっては、実用性と実現性を両立するため、水理学に基づく条件指定とAIによる浸水計算高速化を組み合わせる方式を採用する。またAIの物理的妥当性を考慮した手法「Scientific Machine Learning」(以下「SciML」と呼ぶ)を、実績あるOSSフレームワーク(NVIDIA社「PhysicsNeMo」)とともに採用する。
また、SciMLを活用したシミュレーション高速化は、他分野の物理シミュレーションにも応用可能な技術である。本業務の開発成果を、洪水浸水シミュレーションと同様に多大な計算リソースを要する他の環境シミュレーションへも適用可能にすることで、都市温熱環境解析等、喫緊の社会課題への対応に資するシミュレーションの行政実務への実装を加速させ、ひいてはPLATEAUエコシステム発展への貢献が期待できる。
成果のOSS公開に際しては、Dockerコンテナの提供等により、再現性が担保された形でのユーザー拡大、ひいてはSaaS展開を目論む。
また、自治体向け技術実証を通じて、自治体との連携を通じ非専門家向けの利用方法を精査する。技術実証に際しては、兵庫県朝来市に協力を依頼する。具体的には、集合形式による解析結果報告会及びシステム操作体験を実施し、実業務への活用可能性及び改善要望を抽出する。
解析結果報告会では、対象河川の氾濫解析を、従来シミュレータ(「iRIC Nays2D Flood」)と本実証で開発したシミュレータ(「AI高速化シミュレータ」)それぞれを用いて、予め事業者にて実行したうえで、それぞれのシミュレータによる解析結果と所要時間の比較結果を報告する。
また、AI高速化シミュレータのシステム操作体験機会もあわせて提供し、計画策定業務等における高速化シミュレーションの活用可能性およびシステムの操作性について意見を抽出する。
上述の取組を通じて、水防分野における事前の避難計画詳細化、及びリアルタイムシミュレーション活用を通じた水害発生時の避難誘導精緻化に貢献する。また、行政担当者が二線堤等の河川構造物の設置を計画する際、ワークショップ等で挙がった住民意見等を取り入れる形で都度都度シミュレーションを実行しつつ、複数のシナリオによる可視化結果を参加者全員で共有することで、流域治水に係る施策が住民の合意に基づく形で推進されることを目指す。それらの価値の実現を通じて、施策/事業企画立案者が対策シナリオを迅速かつ容易に検討・評価できるEBPMの実現、更には解析コスト削減を通じたオープンデータとしてのPLATEAU利活用の価値向上に寄与する。



検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材
3D都市モデルを利用して何を行うシステムなのか
本プロジェクトでは、環境シミュレーションの中でもとりわけニーズの高い洪水浸水シミュレーションを対象として、3D都市モデルを活用したAI高速化シミュレータの構築を行った。洪水浸水シミュレーションをAI技術(SciML)により高速化するとともに、3D都市モデルを活用し家屋ごとの浸水リスク評価(流失・倒壊リスク)を可能とする技術を開発した。また、開発成果を簡易的なユーザーインターフェースを備えたアプリケーションとして実装した。これにより、地方公共団体職員等のノンエンジニアでも、簡易なボタン操作で洪水浸水シミュレーションを高速に実行し、地域の浸水状況を短時間で把握可能な環境を構築した。
システムの全体像と構成要素
AI高速化シミュレータは、クラウド環境上に構築されたアプリケーションである。クライアント端末からアクセスすることで、エンドユーザは、解析対象河川の破堤条件等の設定・浸水シミュレーション計算の実行・浸水状況を可視化できる。
シミュレータの主な機能は「設定」「計算」「可視化」にカテゴライズされ、「設定」機能はアプリケーション上で想定する流量シナリオを設定するインターフェースを、「計算」機能は開発したAIモデルを、「可視化」はビューワとして採用したPLATEAU VIEWをそれぞれ利用することで実現した。
「設定」機能では、解析条件として利用する破堤点、想定する流量シナリオ及び流量倍率等で外力規模を設定できる。なお、解析実行に至るハードルを下げるべく、破堤点や想定する流量シナリオ等の主な解析条件は、対象河川における過去の出水イベントに基づき予め設定された数パターンから、ユーザーが任意に選択する仕様とした。
解析条件の設定後、「計算」機能を実行すると、破堤流量を計算したのち、AIによる浸水シミュレーション実行、建物被害リスク評価、可視化データ変換の順序で処理が行われる。破堤流量計算では、設定した流量シナリオと倍率から破堤流量を計算し、計算完了後に流量グラフを表示する。次に、計算された破堤流量をインプットデータとして用い、AIによる浸水シミュレーションが実行される。更に、浸水シミュレーション結果をPLATEAU建築物データと組み合わせることで、建物被害リスクが評価され、完了後、統計情報がダイアログ表示される。
計算完了後、「可視化」機能を通じて、PLATEAU VIEW上で浸水の時間変化や建物被害リスクを視覚的に確認可能である。
各構成要素について、実装方法の説明
AI高速化シミュレータの構築にあたっては、事前に従来の物理シミュレータを用いて学習データを生成する必要がある。本プロジェクトでは、実証対象河川における破堤点と破堤流量の組み合わせから1000ケースの流量シナリオを選定し、iRIC Nays2DFloodにより、3D都市モデルの地形・建物情報を活用した精緻な浸水計算を実施した。iRIC Nays2DFloodはオープンソースの洪水氾濫解析ソフトウェアであり、高精細な時系列の浸水深・流速データを生成可能である。
その結果生成された大量の時系列データを、SciML手法を活用したAIモデルの学習に利用することで、AIにより浸水シミュレーションの高速化を可能とした。SciMLの手法としては外挿性に優れかつ学習時に物理法則を考慮可能である観点からPINO(Physics-Informed Neural Operator)を採用した。なお、AIモデルの学習環境としてGoogle Colab Pro/Pro+を利用し十分なスペックのGPUを利用したほか、PINOモデルの学習・構築のためのSciML向けAIフレームワークとしてNVIDIA社が公開するPhysicsNeMoを利用した。
上述の事前学習を経たAIモデルは、Amazon WorkSpaces Applicationsを通じクラウド環境上で動作するアプリケーション(AI高速化シミュレータ)として実装し、エンドユーザのPC端末上からアクセス可能な形とした。
AI高速化シミュレータの「設定」機能は、ユーザーがアプリケーションの画面上でボタン選択/数値入力を行うことで実行されるようなGUIとしている。ユーザーが設定した解析条件は、シナリオファイルとして保存され計算実行後も参照が可能である。
「計算」機能における破堤流量計算は、「設定」機能で定義された破堤による氾濫シナリオに基づき、「越流公式」(川の堤防や道路などの境界を、どれくらいの量の水が乗り越えていくかを計算するための数式)により計算される。計算された破堤流量や設定済みの解析条件はAIモデルに提供され、AIによる浸水シミュレーションが実行される。その結果出力される最大浸水深と3D都市モデルの情報(建物の構造種別、建築年、階数の属性情報)をもとに、各建物の浸水ランク、流失・倒壊リスク、水没リスクが総合的に計算・判定される。浸水シミュレーションの結果及び建物リスク計算結果は、浸水時系列アニメーション、建物リスク付き3D都市モデル、最大浸水面データとしてビューワで3D表示可能となるよう、データ変換を通じてGlbおよびCZML形式に変換される。
「可視化」機能は、OSSのPLATEAU Editorをラップし、コンテナ型仮想化プラットフォーム(Docker)上で実行する形で実装した。PLATEAU VIEWで行える基本操作(地図の拡大縮小、移動、視点回転)のほか、浸水深の時系列アニメーション再生、最大浸水深と建物被害リスクの確認、結果を表示するシナリオの切り替えをGUI操作で可能とした。また、被害リスクの高い建物については、クリック操作で詳細な建物情報を確認できる。
検証方法のサマリー
AIによる計算結果の物理的妥当性を担保するため、iRIC Nays2DFloodによる計算結果を正解データとし、開発したAIによる予測結果と比較することで、浸水深計算結果の数値的な誤差及び浸水域の一致率が予め定めた閾値をクリアするかどうかを検証した。妥当性担保のための閾値としては、AIモデルの妥当性を示すために広く採用されている、Jaccard係数及びFNR(False Negative Rate, 偽陰性率)・FPR(False Positive Rate, 偽陽性率)を用いた。
それぞれのシミュレータによる解析結果と所要時間の比較結果については、解析結果報告会として実証自治体への報告を行った。報告会とあわせてシステム操作体験会を設定し、AI高速化シミュレータを行政職員が実際に操作する機会を提供した。報告会及び操作体験会を通じて、システムの操作性や視認性について意見を聴取するとともに、避難計画策定業務等における高速化シミュレーションの活用可能性についてヒアリングを実施した。
検証で得られたデータ・結果・課題
検証方法の全体像
従来手法による物理シミュレータ(iRIC Nays2DFlood)の計算結果を正解とし、本実証で開発したAI高速化シミュレータによる解析結果と比較することにより、(1)シミュレーション精度及び性能の妥当性を検証した。
また、活用可能性の検証として、兵庫県朝来市の職員を対象にシステム操作体験会を設定し、実務での活用可能性についてアンケート調査及びヒアリングを実施した。アンケート調査及びヒアリングでは、(2)システムの操作性に関する評価、(3)本システムの活用可能性を感じる業務分野についての2つの観点を中心に意見を収集した。アンケートは合計6名の実証実験参加者から回答を得た。





検証(1)の方法と結果/検証(1)で得られた示唆
今年度の実証対象エリアである兵庫県朝来市和田山駅周辺(約2㎢)を対象に、AI高速化シミュレータが、従来の物理シミュレータ(iRIC Nays2DFlood)の計算結果をどの程度の精度で再現できるか、また計算時間をどれだけ短縮できるかを定量的に評価した。具体的には、「a. 浸水深・浸水域の再現度」「b. 計算時間」の2つの評価指標に対して、事前に設定した目標値をクリアできたかどうかを検証した。
「a. 浸水深・浸水域の再現度」については、100ケースを対象に、物理シミュレータとAI高速化シミュレータそれぞれで解析を実行し、浸水深はRMSE(Root Mean Square Error)0.5m以下、浸水域はJaccard係数(Iou:Intersection of Union)0.7以上を目標値として、両シミュレータの解析結果をグリッド単位で比較した。RMSEは、床上浸水等の主要なリスク判断の閾値を誤らないよう、実用的な精度目標(0.5m以下)を設定した。Jaccard係数0.7は、浸水範囲の7割が両シミュレータで一致することを示す数値であり、ハザードマップ作成の基礎情報として十分な重複度との判断から目標値として採用した。結果、RMSEは、シミュレーション開始(破堤)から約90分後まで0.5m以下を達成し、Jaccard係数は、シミュレーション開始から終了まで0.8程度の値となった。以上の検証結果から、AI高速化シミュレータは、従来の物理シミュレータと比べて遜色のない浸水深・浸水域を再現できたといえる。
「b. 計算時間」の目標値としては、物理シミュレータ比で10倍以上の高速化を目指した。数時間かかる計算が数分~十数分程度で完了すれば、計画策定の協議の場で即時的なシナリオ検討が可能となり、業務プロセスが質的に変容すると見込んだ。検証に際して、同一の計算機仕様のもと、100ケースの計算に要する時間を両シミュレータで計測したところ、物理シミュレーションと比較して実行時間を約158倍高速化できた。よって、AIによる計算時間の高速化という本プロジェクトの目標は、十分達成できたといえる。


検証(2)の方法と結果/検証(2)で得られた示唆
システム操作性の評価のため、システム操作体験会において、事業者から具体的な操作タスクを参加者に7つ提示し、ユーザーが独力で達成できたかどうかを「タスク達成率」として計測した。結果、計6名の参加者のうち5名が7つのタスク全てを独力で実行できており、残る1名もタスク6つまで実行完了した。
また、体験会後のアンケートにおいて、設定機能、可視化機能それぞれについて、操作性の満足度に係る質問項目を設けた。設定機能については、4段階評価で「3」以上の評価が5名、「2」が1名であった。可視化機能は、「3」以上の評価が4名、「2」が1名、「1」が1名であった。
なお、計算速度に対する満足度は、6名全員が「3」以上の評価を与えており、行政担当者より、業務活用上十分に高速と評価されたといえる。
実証の結果として、計算速度とシンプルな操作性はユーザーから一定の評価を得たものの、ビューワを中心に更なる改善の余地が示唆された。

検証(3)の方法と結果/検証(3)で得られた示唆
実証参加者のアンケート回答とヒアリングの結果、本システムの活用可能性を感じる業務分野として、「住民向けの防災教育・ワークショップ」、「発災直後の被害予測・避難指示」、「防災計画・避難計画の策定」等が挙げられた。より具体的な意見として、「特定都市河川の氾濫対策や雨水貯留施設の検討」、「詳細な避難経路の検討への活用」にも期待が寄せられた。また、「破堤した場合に特に危険な箇所の特定」や「河川監視カメラの設置場所検討」、「流域治水にまつわる議論の合意形成」への活用アイデアも挙がった。「アンダーパスの危険性評価」への活用という意見も挙がったものの、同時に内水氾濫を考慮する必要性についても指摘された。
また、AI推論の信ぴょう性を高めるための案として、国や県の上位計画でのAIシミュレータの利用や、過去災害の被害実績との整合性が重要との言及があった。
参加ユーザーからのコメント
・AI活用への期待はある。
・特定都市河川の氾濫対策や雨水貯留に係る施策検討にも適用できれば良い。
・短時間でシミュレーション実行が可能であるため、防災ワークショップに適している。
・ハザードマップだけではわからない情報として、破堤すると特に危険な箇所がわかるとよい。
・河川カメラを設置すべき場所、すなわち破堤すると特に危険な箇所の当たりがつけられるとよい。
・社会インフラの在り方について地元住民と議論する際、浸水リスクの説明材料としてこういったツールが活用できるかと思う。
・個別避難計画策定への活用をという観点では、地域のケアマネージャーや民生委員等、行政職員以外の方々も利用する可能性を考慮すべき。
・直感的でわかりやすい。
・計算時間は速く、ストレスを感じない。
・動作速度は問題ないレベルである。
・ビューワ閲覧時、描画にタイムラグがあるものの、概ね見やすい。
・ビューワ閲覧時、タブレットでの操作性に改善の余地がある。
・より直感的に描画操作ができれば良い。
今後の展望
実証実験で得られた成果
本プロジェクトで開発したAI高速化シミュレータは、従来の物理シミュレータとの解析結果の比較を通じた、シミュレーション精度及び性能の妥当性検証の結果、iRIC Nays2DH Floodと比べても遜色のない浸水深・浸水域を再現できた。また、解析実行時間の観点では、物理シミュレーションと比較して約158倍の高速化を実現できた。
また、システムの操作性に関しても、システム実証における操作タスクの高い達成率(6名中5名が全てのタスクを達成)が示す通り、ユーザーに対してシンプルで直感的な操作を提供できたと言える。
更に、危険な破堤箇所の推測や、防災ワークショップにおけるステークホルダーとの合意形成等、発災前の各種計画検討フェーズにおいて、システム活用可能性に期待が寄せられた。システム実証を通じて、危機管理や河川行政の分野における、AIならびに高速化シミュレーション技術の活用ニーズを確認できたといえる。
この実証実験を通して得られた課題/課題を踏まえた今後の進化の方向性・方針
一方で、避難計画の精緻化における活用には、内水氾濫をはじめとした解析可能な災害の種類の拡大や、上位計画への採用実績等を通じた解析手法/結果の信ぴょう性向上が肝要であることが明らかとなった。また、地域住民も含めた合意形成に本ツールが活用されるためには、ITリテラシーが必ずしも高くないステークホルダーへの配慮も必要であることが確認できた。
操作性の面での課題としては、実務の現場におけるタブレット端末の利用可能性を考慮したUI改善や、発災後のリアルタイムユースを視野に入れた描画速度向上の工夫が必要と考えられる。
今後、AI高速化シミュレータが国や都道府県の上位計画策定時に活用されることを目指し、担当部局への働きかけや建設コンサルタント等民間事業者との連携を進める。また、過去災害の再現解析等を通じた、AI高速化シミュレータの納得性向上にもあわせて取り組む。発災前/発災後の全ての関連行政実務フェーズに対して、本システムの活用可能性を高めていくのは現実的ではないと思われるため、次なる進化の方向性を計画策定フェーズに特化させる等、ある程度的を絞った機能向上を検討していきたい。
上記を踏まえ、今後何を目指すのか
防災分野でのAI高速化シミュレータの社会実装に向けた機能改修を進めつつ、解析対象を河川氾濫以外へも拡大し、河川・危機管理をはじめとした複数の行政分野で、環境シミュレーションが手軽な検討手段として活発に用いられる環境の整備を目指す。将来的には、本システムの普及拡大を通じて、多くの都市で物理的妥当性を担保した事前シミュレーション結果に基づく政策決定が行われるとともに、シミュレータを用いた地域住民等ステークホルダーとの合意形成の実践・定着を目指す。





