地下埋設物データを活用した都市開発のDX v3.0
実施事業者 | エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社 / 株式会社日建設計 / 株式会社日建設計総合研究所 / 日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社 |
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実施協力 | 実証地協力・実証協力:藤沢市/ 玉名市/ 四日市市 |
実施場所 | 藤沢駅前再整備エリア / 玉名市内 |
実施予定 | 2025年4月〜12月 |

都市の再開発事業における地下埋設物モデルの活用と、地方公共団体における職員主導の地下埋設物モデル整備の支援を実施。地下埋設物モデルの実業務への導入と、持続的なデータ運用体制の実現を目指す。
本プロジェクトの概要
再開発事業における地下埋設物の移転協議では、2D図面を用いて情報を補完しながら協議を行うため、埋設管の位置関係に関する認識の齟齬が生じやすい。このことから合意形成の難易度が高く、多大な労力・時間を要している。これらの課題に有効な対策が3D都市モデル(地下埋設物モデル)(以下単に「地下埋設物モデル」という。)の活用であるが、地下埋設物モデルの整備は専門的な技術を要する上、整備実績が少ないことから広く普及している状況とは言えない。
本プロジェクトでは、地下埋設物モデルの社会実装を推進するため、都市の再開発事業における活用支援と、地方公共団体のインフラ部門(水道・下水道)における職員主導のモデル整備・運用の支援を行う。
再開発事業における地下埋設物モデルの活用支援では、建設設計での地下埋設物の移設検討における合理化・効率化への寄与を検証する。地方公共団体の支援では、職員が自らモデル整備・更新することを目的とした勉強会を実施し、内容をハンドブックにまとめることで自主的かつ広範なモデル整備・活用を促す。

実現したい価値・目指す世界
現在、都市の再開発事業において、支障移転会議等でインフラ事業者各社が地下埋設物の2D図面を用いて協議を行うことが一般的である。支障移転会議とは、都市の再開発事業などにおいて、既存のインフラや施設などが新しい計画と干渉する場合に、その移転や調整方法を検討するために開催される会議である。この際、移転対象やその位置に関する情報を参加者が2D図面から読み取り、各自で補完しながら議論を進めるため、実際の位置関係に関して認識の齟齬が発生しやすく合意形成に時間を要する。これを解消するためには、地下埋設物を3D可視化することが極めて有効であり、共通の形式が存在しない現状においては地下埋設物モデルの活用が最も有力な手段であると言える。
しかし、地下埋設物モデルの整備には高い専門性が求められるため、現状では整備実績が限られており、整備自体の難易度が高いことから専門の事業者でないと整備が困難である。地下埋設物モデルの整備ツール自体はオープンソースソフトウェアとして公開されているものの、地方公共団体職員等を含む幅広いユーザーがシステムを活用できるような具体的な利用手順が公開されていない。
2024年度の「地下埋設物データを活用した都市開発のDX v2.0」では、上下水道、ガス、電力、通信などのインフラ設備の維持管理業務を行う事業者向けに地下埋設物モデル化ツールを開発し、地下埋設物モデルの効率的な整備・更新手法を確立した。一方で、既存のツールだけでは技術的な専門性が高く利用者が限られていることからカバレッジが広がらず、再開発事業において地下埋設物モデルが活用された事例はほとんど見られない。地方公共団体職員が自ら整備・更新を継続できる環境の構築に向けた要望もあり、今後は教育・支援策のさらなる充実が求められている。
本プロジェクトでは、再開発エリアを対象とした①開発事業合理化支援と、地方公共団体の上下水道を対象とした②地下埋設物モデル化支援を行い、地下埋設物モデルの社会実装に向けた実証とスキームの構築を進める。
①開発事業合理化支援では、施工中の再開発事業を対象に、地下埋設物(電気、ガス、通信、水道、下水道等の配管、建築物や橋梁の基礎を含む)を移転する必要性がある区域を選定しモデル整備を実施する。整備した地下埋設物モデルを活用した業務支援を行い、施工計画段階での支障移転の検討などにおける有用性を明らかにすることで関連業務の合理化を図る。
②地下埋設物モデル化支援では、地方公共団体の水道・下水道部門を対象に、職員主導による地下埋設物モデルの整備・更新の支援と、精度向上のための位置補正手法の検証を行う。地方公共団体が保有する台帳や3次元点群データを既存の整備ツール(オープンソースソフトウェア)に取り込み、地下埋設物モデルを整備・活用するまでの工程を、勉強会等を通して支援し、支援内容をまとめたハンドブックを作成・公開する。また、整備対象エリアの試掘を4か所程度行い、地下埋設物モデルの位置正確度を検証する。これにより、専門知識を有さない地方公共団体の職員でも独自に高精度な地下埋設物モデルの整備を実施することが可能となる。
モデル整備のための手順を詳細化したハンドブックを作成・公開することで、幅広いユーザーが地下埋設物モデルを整備・更新できる環境を構築するとともに、再開発事業等の実業務における有用性を明らかにし、地下埋設物モデルの社会実装を加速させる。



