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樹木データを活用した温熱環境シミュレータの開発

実施事業者東日本電信電話株式会社 / Pacific Spatial Solutions株式会社
実施協力国土交通省都市局都市環境課 / 東京都千代田区/東京都建設局 / 三菱地所株式会社 / 株式会社三菱地所設計 / 一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会 / 株式会社石勝エクステリア / 小岩井農牧株式会社
実施場所千代田区全域 / 港区ポートシティ竹芝周辺
実施期間2025年12月
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3D都市モデルを活用した樹木管理機能及び緑の効果の定量的評価を支援するツールを開発。官民双方に効率的な緑地管理と科学的根拠に基づいた緑化計画を推進し、都市緑地の量的・質的な確保に貢献する。

本プロジェクトの概要

都市緑地は環境保全、防災、地域の魅力向上など多面的な価値を持つ重要な都市基盤であるが、気候変動の影響や都市化の進行により都市緑地は減少傾向にあり、量的・質的な確保および維持が喫緊の課題となっている。地方公共団体では、「緑の基本計画」等の取組が進められているものの、計画策定や緑地管理に必要なデータの収集・分析を自ら行う必要があり、十分な対応が困難な状況である。加えて、2024年に良質な緑地の整備・保全を促進するための「優良緑地認定制度(TSUNAG)」も創設された中、本制度申請に際しては、緑地の整備効果を定量的に示すための、各種データの準備や積算、必要に応じたシミュレーションの実施等、専門性や知見が求められるため、それらを支援・補完する仕組みの整備が、自治体や事業者による制度活用を促進する上で重要となる。

本プロジェクトでは、樹木データを一元管理する樹木管理データベースや、緑化効果の定量的分析を可能とする緑の評価指標算出機能・温熱環境シミュレーション機能を開発する。これらのシステムを活用し、地方公共団体や民間企業の樹木管理の効率化と緑化計画策定業務やTSUNAG申請の支援を行うソリューションとして、社会実装の実現可能性を検証する。

実現したい価値・目指す世界

近年、猛暑や集中豪雨など気候変動の影響が顕在化する中、都市部ではヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素の吸収源としての緑地の重要性が一層高まっている。こうした状況において都市緑化や適切な緑地管理の必要性は増しているが、「効率的な緑地管理」と「緑化効果の測定・分析」には依然として多くの課題が残されている。

「効率的な緑地管理」の観点では、管理を担う多くの地方公共団体や民間事業者において紙の台帳による管理が主流であり、デジタル化は十分に進展していない。街路樹や公園樹木の管理業務では、位置情報、樹種、樹高、樹齢、剪定履歴、病害虫の有無などを紙の台帳に個別に記録・管理する例が一般的である。紙の台帳に手作業で記入すること自体の負荷に加え、データをアナログで管理していることによる情報の更新漏れや重複、検索性の低さなどの非効率性が生じている。

「緑化効果の測定・分析」の観点では、2024年に施行された「都市緑地法等の一部を改正する法律」により創設された「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」の活用が期待されている。同制度は、緑地の整備効果を定量的に示し、それに基づいて評価・認定を行う仕組みであり、良質な緑地の整備・保全を促進することを目的としている。申請にあたっては、データの整備や積算、必要に応じたシミュレーションの実施が求められ、制度を有効に活用するには技術的な支援体制の構築が不可欠である。

これらの背景を踏まえると、緑地管理における課題の解決には、デジタル技術を活用した樹木管理システムの導入と、緑の効果を定量的に可視化する仕組みの整備が不可欠である。こうした基盤の整備により、業務の効率化と精度向上を図るとともに、持続可能な都市緑化の実現に向けた取り組みを着実に推進していくことが重要である。

本プロジェクトでは、これらの課題を解決するために①樹木管理機能、②緑の評価指標算出機能、③温熱環境シミュレーション機能の大きく3つのシステムを開発する。

①樹木管理機能では、地方公共団体や民間企業等がこれまで紙やPDFなどで管理し、形式や所在が統一されていなかった緑地関連データを、一元的にデータベースで管理する機能を整備することで、効率的な樹木管理を実現する。

②緑の評価指標算出機能では、優良緑地確保計画認定制度など国の制度との連携を想定し、緑化の評価指標を算出し、指定したエリア内での緑地面積の自動算出機能や日陰シミュレーションの可視化、登録された緑地データに基づくCO₂吸収量の算出機能、生物多様性ネットワーク解析機能などを提供する。これにより、事業者の申請に係るデータ収集・取りまとめの効率化を図る。

③温熱環境シミュレーション機能では、建築物モデル(LOD1、LOD2)および樹木管理台帳データベースから生成した植生モデル(LOD1、LOD2)を活用し、温熱シミュレーション機能の開発を行う。ウェブ上で植生モデルを含む3D都市モデルに対し、日射や地表熱伝導率などの外力を設定し、対象エリアの温熱環境をシミュレーションできる機能や、その結果を可視化・データ出力する機能を構築する。これにより都市空間における緑地の温熱環境への影響を科学的に把握し、緑化施策の効果を定量的に評価することが可能となる。

さらに、都市開発や再開発における緑地配置の最適化や、ヒートアイランド現象の緩和に向けた戦略的な都市設計の支援にもつながる。加えて、3D都市モデルを活用することで、建築物や樹木などの立体的な空間構成をリアルに再現し、視覚的・定量的に都市環境を分析できる点が大きな利点であり、関係者間での合意形成が円滑になり、都市計画や環境施策の立案・評価・説明において高い説得力と実効性を持たせることができる。

本システムは、地方公共団体の緑地管理業務や緑化計画・施策検討のエビデンスや民間事業者による優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)への申請に活用可能であり、地方公共団体・民間事業者双方の効率的・効果的な緑地管理や科学的根拠に基づいた都市計画や緑化施策の推進に寄与する。本システムの社会実装を進めることで、都市緑地の量的・質的な確保および維持を目指す。

対象エリア(千代田区)の地図(2D)
対象エリア(港区)の地図(2D)
対象エリア(千代田区)の地図(3D)
対象エリア(港区)の地図(3D)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

本プロジェクトでは、3D都市モデル及び樹木管理台帳データを活用し、樹木管理業務の効率化、緑化の定量的評価、ならびに温熱環境シミュレーションをそれぞれ支援する複数のWebアプリケーションを開発した。対象とする業務内容や利用者の役割に応じて、①樹木管理機能、②緑の評価指標算出機能、③温熱環境シミュレーション機能の三つの機能を個別に構築した。これらの各機能は単独でも利用可能な構成としつつ、共通の3D都市モデル及び樹木・緑地データを活用することで、樹木管理、緑化効果の定量評価、温熱環境解析を一貫性のある都市空間データに基づいて実施できることを特徴としている。「緑の基本計画」等の地方公共団体の緑地に関連する計画策定や、令和6年に創設されたTSUNAGなど、緑地を巡る制度や計画の高度化が進む中で、緑地の現状把握や施策効果を定量的に示すためのデータ整備や分析への対応が求められている。本実証では、こうした計画検討や制度活用の場面において、緑地に関する各種データの整理・分析・可視化を通じて、施策検討や説明を支援・補完することを目的とする。

本年度に開発した3つの機能は、それぞれの目的に応じた機能を提供する独立したWebアプリケーションとして構築している。①樹木管理機能では、従来、紙やPDF、Excel等で分散して管理されていた樹木管理台帳をデジタルデータとして一元化し、検索・更新や管理状況の把握を容易にすることを主目的としている。樹木情報はデータベース化され、位置情報と属性情報を紐付けて管理することで、日常的な維持管理業務や将来的な分析・活用に資する基盤を整備した。あわせて、2D地図及び3D都市モデルを用いた表示機能を提供することで、台帳情報を空間的に把握できるようにしている。②緑の評価指標算出機能では、指定したエリアに対して緑地面積や日照面積、CO₂吸収量等の各種評価指標を算出・可視化し、緑地計画検討やTSUNAG申請等に必要な定量情報の作成を支援する。③温熱環境シミュレーション機能では、植生モデルを含む3D都市モデルを用いて温熱環境の解析を行い、その結果を三次元的に可視化・比較できる環境を提供する。各機能は、共通の3D都市モデル及び樹木・緑地データを参照する構成としており、同一の都市空間データに基づいた整合性のある検討・評価が可能となる。算出結果や解析結果は、それぞれの機能内で地図表示やデータ出力として提供され、用途に応じた活用が可能である。

①樹木管理機能では、従来紙等で分散管理されていた樹木管理台帳をデータベース化し、位置情報と属性情報を紐付けて管理する仕組みを構築した。データベースにはPostgreSQLを採用し、位置情報を扱うための拡張機能としてPostGISを導入している。樹種や幹周、診断ランク等の樹木属性情報はPostgreSQLで管理した。樹木診断カルテや写真等の非構造データ(PDF、JPG等)についてはAmazon S3に格納し、データベースから参照可能な構成としている。加えて、樹木データベースの条件検索、集計処理を実装し、検索・フィルタ操作を可能とすることで、緑化計画策定時の現状把握やデータ分析に関わる作業時間の削減を支援する。表示結果は、2D表示はMapLibre GL JS、3D表示はCesiumJSを用いて可視化するUIを実現した。

「樹木管理機能のダッシュボードのUI」

②緑の評価指標算出機能では、TSUNAGの制度活用を想定し、5つの機能開発を行った。(A.指定エリア内の緑地面積の自動算出機能、B.日陰シミュレーション機能、C.CO₂吸収量の算出機能、D.生物多様性の観点からの生態系ネットワーク解析機能、E.避難所からの距離算出機能)これら5つの指標算出で利用する樹木データは、①樹木管理機能で用いるデータベースと共通化しており、同一の樹木情報を参照して各指標の算出を行う。特に、B.日陰シミュレーション機能の日照ポリゴンについては、QGISを用いて3D都市モデルに含まれる建築物モデルを用いた日照分布をGeoTIFF形式で生成し、評価指標算出に利用している。D.生物多様性ネットワーク評価においては、JAXAが公開する高解像度土地利用・土地被覆図を緑地データとして用い、コゲラ等の小型鳥類を指標種として想定し、緑地の連続性を評価するための緑地から125mのバッファを生成している。

これらのデータを活用し、ユーザーがWeb画面上で描画・指定した敷地ポリゴンを保存し、そのポリゴン内に含まれる緑地、樹木、日照ポリゴン、避難所等の各種データを対象として、空間演算により緑地面積、日照面積、CO₂吸収量の指標が自動的に算出され、その結果はExcel形式でエクスポートされる。これにより、TSUNAGの申請資料作成や、他業務での二次利用を容易にすることで、地方公共団体職員の緑地計画の検討や民間事業者の業務効率化を支援する。

「緑の評価指標算出機能のUI」
「生態系ネットワーク解析機能のUI」

③温熱環境シミュレーション機能では、建築物モデル(LOD1/LOD2)及び樹木管理台帳データから生成した植生モデルを含む3D都市モデルを対象に、温熱環境の数値解析を実施した。CityGML形式の3D都市モデルは、FMEを用いてOpenFOAMで利用可能なSTL形式へ変換し、日射条件や地表熱伝導率等の外力条件を設定した上で解析を行っている。OpenFOAMによる解析結果はParaView Glanceを用いた可視化を行えるvtk形式で出力し、glTF形式へ変換することで、CesiumJS上で3D都市モデルと重畳表示できるようにした。これにより、樹木配置や緑化条件の違いによる温熱環境への影響を三次元的に比較・検討できる構成とした。

「温熱環境シミュレーション機能のUI」

本システムの有用性検証として、想定ユーザーである地方公共団体職員及び民間事業者を対象に操作体験及びアンケート調査を実施し、樹木管理業務の効率化、緑化効果の定量的把握、制度申請や緑化計画策定への活用可能性、UIの分かりやすさ等について評価を行った。

検証で得られたデータ・結果・課題

本実証実験では、システムの有用性検証として、大きく3つの被験者群を対象に検証を行った。樹木管理に関わる2つの地方公共団体(千代田区、東京都)の職員と、樹木管理やTSUNAGに関わる民間事業者5社(三菱地所、三菱地所設計、エコッツェリア協会、小岩井農牧、石勝エクステリア)に加え、TSUNAGの認定主管である国土交通省都市局都市環境課の職員、計21名に対して実証実験を実施し、各種機能の操作体験とアンケート調査を実施した。

有用性検証の観点としては、(1)現状把握・計画策定の作業時間削減、(2)効果予測等のエビデンスに基づく計画策定への活用可能性、(3)TSUNAG申請の検討プロセス効率化、(4)ユーザビリティの4つを対象とした。

それぞれの被験者と対象機能は以下である。

(1)現状把握・計画策定の作業時間削減
被験者:地方公共団体/民間事業者
対象機能:①樹木管理機能

(2)効果予測等のエビデンスに基づく計画策定への活用可能性
被験者:地方公共団体
対象機能:②緑の評価指標算出機能、③温熱環境シミュレーション機能

(3)TSUNAG申請の検討プロセス効率化
被験者:地方公共団体
対象機能:②緑の評価指標算出機能、③温熱環境シミュレーション機能

(4)ユーザビリティ
被験者:地方公共団体/民間事業者
対象機能:①樹木管理機能、②緑の評価指標算出機能、③温熱環境シミュレーション機能

「関係者による体験会で、本システムの説明をする様子①」
「関係者による体験会で、関係者がシステムを操作する様子②」

(1)現状把握・計画策定の作業時間削減については、「①樹木管理機能を導入することで樹木情報の検索・現状把握業務の負荷削減が図られると思うか」という設問に対し、被験者の9割が「そう思う」「ややそう思う」と回答し、被験者が高い効果を体感したといえる。特に、従来「20分以上」要していた樹木の検索や現状把握に関わる業務時間が、本システム活用後には「3分未満」に減少すると回答した実証参加者が約6割を占めており、作業時間の大幅な短縮可能性が確認された。本システムにより樹種や樹高を容易に確認できることや必要な情報をソートして抽出できることにより、計画策定業務の効率化に貢献できる可能性もあるといえる。一方で、データベースで管理する属性情報の拡充や、管理項目の柔軟な追加など、利用者の業務実態に合わせた運用の必要性が認識された。

(2)効果予測等のエビデンスに基づく計画策定への活用可能性については、「本システムを活用することで、緑の基本計画等の各種計画策定業務において、緑地効果を予測した実現性の高い計画策定に役立つと感じたか」という設問に対し、被験者の8割が「そう思う」「ややそう思う」と回答し、有効性を評価した。特に、「維持管理計画フェーズでの有効性」や「現状把握工程の短縮により検討時間を確保できる」といった点で高評価を得た。一方で、経年変化を可視化したいというニーズもあり、計画策定のあらゆる利用シーンや業務フローを踏まえた機能拡充の余地が示唆された。また、温熱環境シミュレーション機能に関して、「本システムを利用することで、職員のみで現状の分析や温熱対策効果の予測が実施できると感じたか」という設問に対して4名中2名の被験者が「そう思う」「ややそう思う」と回答した。「どちらでもない」と回答した被験者は「使う機会が少ない」というコメントをしており、業務における活用シーンの認識や運用方法の周知がまだ十分でないことを示唆している。今後は、樹木管理・計画策定業務において本機能が活用できる具体的な場面を整理し、職員への普及・導入促進を図ることが有効と考えられる。

(3)TSUNAG申請の検討プロセス効率化の有効性については、「緑の評価指標算出機能を活用することでTSUNAGの申請が従来と比較して効率的に準備できるようになると感じたか」という設問に対し、被験者の全員が、「そう思う」「ややそう思う」と回答しており、申請プロセスの効率化において非常に有用なシステムであることが示唆された。一方、温熱環境シミュレーション機能では、同設問に対して被験者の6割程度が「そう思う」「ややそう思う」と回答しており、一定の有効性が確認された。また、「TSUNAG申請において温熱環境シミュレーションを活用する場面で役立つ」といった意見も得られており、TSUNAG申請の検討プロセス効率化における本機能の有効性が示された。

(4)ユーザビリティについては、①樹木管理機能、②緑の評価算出機能、③温熱環境シミュレーション機能それぞれに対して地方公共団体職員、民間事業者からフィードバックを得た。

①樹木管理機能では、地方公共団体職員、民間企業共に9割が肯定的な評価を示し、「シンプルで直感的」「悩まずに必要データへアクセスできた」といった声が多く寄せられた。専門知識を持たない担当者でも、操作マニュアルを参照するだけで自立的に扱える点が評価され、UIの分かりやすさがシステムの利用障壁を大きく下げていると認識した。一方で、「地図表示範囲が狭い」「機能が少なく活用シーンが限定される」といった意見もあり、画面レイアウトや機能拡張の必要性が示された。

②緑の評価指標算出機能では、地方公共団体職員、民間事業者ともに、9割がダッシュボードの見やすさや専門知識が無くても操作できる点を評価しており、「一度説明を受ければ、非専門職員でも分析できる」「わかりやすい」といった声が多く寄せられた。一方で、「どちらでもない」と回答した職員からは、複数名で指標の算出を行う業務シーンを想定し、「分析プロジェクト名の命名規則等のルール付けがないと混乱を招く可能性がある」といった、管理面や運用改善の必要性が示された。

③温熱環境シミュレーション機能では、UI構成自体は分かりやすいという意見が多数であったが、「専門知識がなくてもスムーズに操作できるか」という設問では肯定が約6割にとどまり、他機能と比較してやや低い評価となった。実証時間が限られていたことで操作の理解が十分に得られなかった点や、入力情報の理解が前提となるため、無知識での操作には一定の課題があると認識した。

また、全機能を通して、処理速度・動作安定性については改善の要望が特に多く、分析負荷の最適化や利用環境に応じた動作安定性の確保、処理ステータスの可視化が必要である。

参加ユーザーからのコメント

①樹木管理機能
・データベース化して検索できるようになるだけでかなりの負荷が減ると思う(民間事業者)
・公園樹林地においては、樹木番号がない場合は図面の位置をプロットし発注している。受注者への設計内容指示を行うのに効果が高いと思われる(地方公共団体)
・紙資料(図面・台帳)の保管も不要になり、紛失等の心配もなくなる(地方公共団体)
・設計業務で資料として樹木調査結果(樹種、位置、規格)を確認することがあるが、見たい樹種のみをすぐに検索できるのが非常に便利(民間事業者)
・樹木の枯れや不具合により撤去が必要な場合に、植替可否や周囲とのバランスなどを事前に確認できるため、対応方針を策定しやすくなる(民間事業者)
・似た座標でも建物の階層が異なる別樹木といった場合もあると思うので、そのあたりもフォローできる機能があればより良いと思う(民間事業者)

②緑の評価指標算出機能
・今までは建設会社にて算出していたものが、緑地担当者でも容易に算出できる(民間事業者)
・ポリゴンで囲うだけでCO2吸収量算出されるのは労力が減るので助かる(民間事業者)
・多少の修正ポイントはありながらも、いずれも各評価指標の計算が簡易にできるため、大変便利だと思った(民間事業者)
・図面としてエクスポートができるので、対外的な発信の場で活用可能(地方公共団体)
・ベースデータの更新性に関して、民間事業者独自のカスタマイズが可能であると、さらに作業が効率化されると感じる(民間事業者)

③温熱環境シミュレーション機能
・今まで緑地による温熱環境シミュレーションアプリがなかったため有効(民間事業者)
・暑熱対策の検討及び効果測定に活用したい(地方公共団体)
・視認性が高まる可能性は感じる一方、それをどう解釈してよいかが難しい(民間事業者)

今後の展望

本プロジェクトを通じて、①樹木管理機能、②緑の評価指標算出機能に関しては、現状把握・計画策定の作業時間削減や効果予測等のエビデンスに基づく計画策定への活用、TSUNAG申請の検討プロセスの効率化に寄与することが分かった。特に、①樹木管理機能を用いることで、従来は紙台帳や複数ファイルに分散していた情報を扱うために時間を要していた現状把握・データ収集工程において、検索時間や更新作業の短縮といった明確な効率化が示された点は大きな成果である。また、各機能において「専門知識がなくても作業が進めやすい」という評価が多く寄せられ、地方公共団体職員が自立的に分析や計画作成を進められる可能性が示された点も、実証を通じて得られた重要な知見である。さらに、②緑の評価指標算出機能と③温熱環境シミュレーション機能を活用することで、TSUNAG申請の指標算出が容易に可能となったことはTSUNAGの普及促進にも大きく影響するものといえる。

一方で、実運用を見据えるといくつかの課題も明らかになった。まず、樹木の位置情報や属性情報の精度・粒度、あるいは地方公共団体特有の管理項目に対する柔軟な追加など、業務実態を踏まえたダッシュボード構造の拡張性が求められる点である。これは、属性情報の拡充や管理項目の柔軟な追加など、実務に合わせた管理項目の拡充により対応可能である。また、3D表示を中心に処理速度に関する改善要望が上がっており、通信環境や端末性能を考慮したパフォーマンス改善が必要となる。③温熱環境シミュレーション機能では、樹木管理・計画策定業務において本機能が活用できる具体的な場面を整理し、職員への普及・導入促進を図ることと精度向上、利用者のシステム処理時間に対する理解醸成とあわせて、進行状況の可視化やユーザーガイダンスなどUI/UXの強化も課題として浮かび上がった。処理速度は端末性能や通信環境に左右されやすいことから、利用環境の整備に加え、読み込み状況を示すプログレスバーや、残り処理時間の表示など、利用者の安心感を高めるUIの導入も有効である。また、地方公共団体固有の計画フローや根拠データとの整合を図るため、計画策定業務フローの棚卸や機能追加について、検討の余地が残る。

これらを踏まえ、今後は1.管理主体の実業務に合わせた管理項目の拡充や計画策定業務への更なる適用を目指した機能拡充の検討、2.処理性能の強化、3.ユーザビリティとユーザーガイダンスの拡充を軸に機能を強化させていくことが重要であると認識した。

本システムを通じて地方公共団体・民間事業者双方が自律的にデータを活用することで、緑地の高度化やEBPMサイクルの定着が実現する未来を目指す。さらに、樹木管理業務を通じて蓄積されたデータが、防災、環境、健康、まちづくり等の分野とも連携し、緑地が持つ多面的な価値を最大化するための意思決定を支える基盤へと発展させる。その結果、樹木管理が維持管理業務だけでなく、都市緑化といったまちづくりの推進を支援していくことが期待される。