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景観まちづくりDX v3.0 まちづくり DX の推進に向けた3D 都市モデルの利用環境向上業務~景観まちづくり支援ツールの活用実証~

実施事業者株式会社シナスタジア
実施場所倉敷市 約24.6㎢ / 京都市 約6.5㎢
実施期間2025年8月〜2026年1月

都市の景観や開発計画を3次元で可視化・検証できる景観まちづくり支援ツールを提供。屋外広告物に関する業務を中心にした景観政策業務における効率化・高度化に資する機能の有用性を検証し、景観まちづくりDXを推進する。

本プロジェクトの概要

地方公共団体における景観政策業務には、主に以下の二つの課題が存在している。1点目は、システムの導入と運用に関する課題である。建築物や工作物などを3次元(以下、3D)表示・シミュレーションすることが可能なBIMや3Dレンダリングなどのシステムは、導入・運用に一定以上の専門性を要するため、利活用に対するハードルが高く、地方公共団体職員にとって一般的なツールとしては十分に浸透していない。2点目は、業務プロセスに関する課題である。具体的には、判断基準の属人化と、書面中心のプロセスによる工数増加が挙げられる。屋外広告物の新規(変更)申請業務では、申請書類の記載の曖昧さにより、条例等で定められた面積や高さ、設置位置といった基準への適合判断が難しく、職員の経験や解釈に依存した判断となりやすいことから、業務の属人化が課題となっている。審査は紙やPDF等の2次元(以下、2D)資料を中心としたプロセスで行われているため、屋外広告物の高さや壁面面積、周辺景観との関係性や見え方を把握しにくく、判断や説明、現地調査に時間を要するケースが多い。屋外広告物に関する業務に係る事務全体としては、年間の許可件数が約2万件にのぼる地方公共団体も存在し、限られた職員数で膨大な申請に対応する必要があることから、業務負担の増大が課題となっている。

こうした背景を踏まえ、本プロジェクトでは、2022年度に開発を始めた景観まちづくり支援ツール(以下、本ツール)を基盤として、2024年度に「景観まちづくりDX v2.0」として開発した都市の景観計画及び開発計画を支援する機能を活用しつつ、より実務に即した機能の開発を行い、その有用性及び社会実装の実現可能性を検証する。具体的には、屋外広告物に関する業務を中心に、地方公共団体を実証地として、実際の業務プロセスを詳細に把握する。あわせて、地方公共団体ごとに業務の対象やプロセスが異なる状況を踏まえ、景観政策業務全般に関するニーズ調査も実施し、それらの結果を基に、多くの地方公共団体の業務効率化・高度化につながる機能を開発する。

実現したい価値・目指す世界

地方公共団体が担う景観政策業務の効率化に向けては、大きく分けて「システムの導入に関する課題」と「業務プロセスに関する課題」の二つの課題がある。

まず、景観政策業務の効率化を目的としたシステム導入を進める上での課題として、3D表示やシミュレーションに必要なツールは、専門的な知識・技術を要することが多く、地方公共団体の業務効率化の手段として導入するにはハードルが高い点が挙げられる。また、立体的なイメージを関係者間で共有する方法としては、パースやCGを用いることが一般的だが、外注する場合はコストやリードタイムがかかる上、職員自身で視点を変更したり、リアルタイムに修正を加えたりすることが難しいため、関係者との合意形成の場において十分な効果を発揮しにくい状況にある。

次に、業務プロセスに関する課題として、判断基準の属人化と、書面中心のプロセスによる工数増加が挙げられる。

判断基準の属人化については、屋外広告物の新規(変更)申請業務では、面積・長さ・色彩・設置場所といった各種基準は明確に定められているものの、複雑な形状の壁面における面積計算や基準の適用範囲の細部については明文化が不十分な点が多い。その結果、申請書類の記載に解釈の幅が生じ、審査の際に職員ごとで判断がばらつきやすい状況が生まれている。

また、建築物・工作物の個別案件届出・審査業務においても、高さや色彩といった定量基準に加え、「周囲との調和」といった定性的基準の確認が求められるため、判断の一貫性確保や事業者との合意形成が難しい場面が多い。特に色彩審査では、マンセル値による定量評価に加え、規模が大きい建築物等の場合には周辺環境との調和を確認する必要があるものの、申請者側には周囲景観を含めた高い再現性のシミュレーション資料を作成する手段が乏しい。このため、地方公共団体職員は単一視点パースや更新頻度の制約により最新状況が反映されていない地図等に基づいて判断せざるを得ず、判断のばらつきが生じやすい状況にあると考えられる。

さらに、書面中心のプロセスによる工数増加については、紙やPDFといった2D資料のみでは建築物の形状や屋外広告物の設置位置といった空間的な情報を正確に把握することが難しく、申請内容を理解するまでに一定の確認作業を要する。審査に必要な図面・写真・記載事項が複数種類にわたり、個々の資料を突き合わせながら確認する必要があることから、資料間の照合や読み解きに時間が掛かることも工数増加の一因となっている。特に古い建築物では、建築物の寸法を示す図面が残っていないケースもあり、必要な情報の確認が困難となる場合がある。設置場所の妥当性や実際の寸法を確認するために、現地調査を実施せざるを得ないケースもあり、これが現場対応の工数増大につながっている。

こうした課題を背景として2022年度に開発を始めた本ツールを基に、2024年度には、都市の景観計画及び開発計画を3Dで表示・シミュレーション可能な機能の開発を行なった。具体的には、建築物の高さ規制や眺望制限の可視化、BIMモデルや道路標識・樹木等のアセット配置、見通し解析等、直感的な操作で高度な検討が可能となる設計を行っている。これらの機能によって、地方公共団体は建築物の高さやボリューム、周辺環境との位置関係や見え方を3D空間上で確認しながら、景観計画や建設計画における検討を行うことができ、開発事業者との協議や説明を行いやすくなる。上記の機能開発を踏まえて、地方公共団体職員を対象に、景観の再現性や景観政策業務への活用余地の観点から有用性の検証を行った。景観再現性に関しては改善されたとの評価が得られた一方で、業務効率化を目的とした社会実装に向けては、業務に適合する機能や情報をさらに拡張すべきとの声が挙げられた。景観政策業務の現状を踏まえつつ、あるべき業務フローを構想し、それを実現する機能の拡張・統合を通じて、地方公共団体の業務の効率化と高度化を図ることが求められている。

本プロジェクトでは、2024年度に追加開発した本ツールを発展させ、社会実装に向けた初期ステップとして、屋外広告物に関する業務を中心に、地方公共団体の景観政策業務における効率化・高度化に資する機能の実装を行う。具体的には、屋外広告物に関する業務の実務に即した機能として、建築物の壁面面積に対する広告面積の割合を算出する機能や、2点間の距離を計測する機能の開発を進める。これらの機能により、設置予定の壁面広告物の面積が建築物の壁面面積に対して規定の割合を超えていないか等の各種設置条件を満たしているかを確認できるようにする。3D都市モデルを活用することで、申請情報の妥当性を立体的に把握でき、平面図では把握しにくい位置・大きさ・高さ等についても、現地調査に依ることなく多角的に設置条件との適合性を確認しやすくなる。また、本ツール上で一定の手順に基づいて確認を行うことで、職員ごとの経験や解釈に依存しやすい部分を整理し、判断や説明を行う際の補助的な手段として活用できる。

あわせて、各地方公共団体における景観政策業務のプロセスを調査・分析し、業務上の課題や潜在的なニーズを明らかにする。その結果を踏まえ、複数団体に共通する業務効率化・高度化に資する汎用的な機能を抽出し、開発優先度を検討したうえで、本年度の開発スコープを策定し、機能実装を推進する。

これらの取組を通じて、本ツールに景観政策業務に適した機能拡張を行い、屋外広告物に関する業務をはじめとした業務の効率化・高度化を支援するとともに、地方公共団体及び開発事業者が抱える業務上の課題解決に資することを目指す。

対象エリア(倉敷市・実証1回目)の地図(2D)
対象エリア(倉敷市・実証2回目)の地図(2D)
対象エリア(京都市)の地図(2D)
対象エリア(倉敷市)の地図(3D)
対象エリア(京都市)の地図(3D)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

本プロジェクトでは、地方公共団体の実務における景観政策業務の実態や課題を把握するため、景観政策業務に対する業務プロセスや判断内容に関する調査を実施した。その結果を踏まえ、地方公共団体間で汎用性が高く、かつ3D都市モデルの活用による効果が見込まれる業務領域を中心に、機能開発及び実証を行った。

本年度の開発では、地方公共団体の抱える「システムの導入に関する課題」と「業務プロセスに関する課題」に対応するため、2024年度の振り返り結果と、地方公共団体に対する調査結果を基に課題の解像度を高めた。その上で、業務プロセスの効率化及び高度化に資する機能拡充と、実務で継続的に活用するための基盤整備という観点から整理し、①実業務で活用可能な機能の拡充、②表示・操作環境の整備による共通基盤の強化の2点を主要な開発方針として設定した。

システム構成面では、3D都市モデル(CityGML)をUnity環境へ取り込み、必要に応じて自動テクスチャリングや光環境設定を行った上で、ビルドしたWindows向けアプリケーションで、データ読込、視点移動、アセット配置・編集、基準適合確認(面積・距離・色彩等)等の操作を行い、操作結果をプロジェクトとして保存・再呼出し可能とする構成としている。この構成を前提に、①についてはアプリケーション上の機能拡充を中心に、②については3D都市モデルのUnity環境への取り込み及び表示制御機能を中心に機能の追加・改修を行った。

①の詳細検討にあたっては、景観政策業務が多岐にわたることを踏まえ、地方公共団体へのアンケートやヒアリング等を通じた調査により、機能開発の主対象とすべき業務の選定を行った。課題の重要性や業務負荷の大きさに加え、3D都市モデルが有する寸法・形状・位置関係等の空間情報と業務課題の適合度を考慮した結果、屋外広告物に関する業務における「(1) 屋外広告物の新規(変更)申請業務」及び「(2) 違反広告物の是正業務」、景観計画等の策定・運用に関する業務における「(3) 建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務」の三つの業務を、本ツールによる課題解決を図る対象として位置付けた。

これら三つの業務については、業務負荷の高さと3D都市モデルと課題解決との適合性の両面から、業務効率化および業務高度化に資する可能性が高いと判断した。業務負荷の観点では、対象業務は、高さ・面積・距離といった定量的な基準に加え、周囲の空間との調和といった定性的観点を含む複数の基準について確認・判断が必要であり、業務難易度が高い。また、申請書や図面等の2D資料のみでは、必要な数値情報と空間的な関係性を一体的に把握することが難しく、確認や説明に時間を要する傾向がある。一方、3D都市モデルとの適合性の観点では、建築物の高さや形状等の属性情報を活用することで、定量的基準確認と、定性的な周辺環境との関係性や見え方の把握を3D空間上で一体的に行うことができ、判断の属人化や2D資料確認による工数増加の軽減に寄与する可能性があると判断した。

上記の内容を踏まえ、本年度は本ツールを、行政判断を支援するための審査補助ツールとして位置づけ、実務フローを整理した上で、現況再現及び数値算出を行う機能、基準との関係を可視化し判断を支援する機能、並びに、これらを継続的に業務で活用するための周辺機能を中心に機能拡充を行った。

(1)屋外広告物の新規(変更)申請業務
屋外広告物の新規(変更)申請業務においては、面積や設置位置、周辺との離隔距離等、複数の設置基準への適合確認が求められる業務であり、申請書や添付資料に基づく確認作業の負担が大きい。本ツールでは、3D都市モデルの形状情報を活用した壁面面積に対する広告物の割合算出機能や、道路境界及び周辺広告物からの規制範囲を表示する機能等を実装し、各種設置基準との関係を可視化することで、基準適合確認を補助する設計としている。

(2)違反広告物の是正業務
違反広告物の是正業務においては、違反の有無や是正内容が、広告物の設置位置や寸法などの空間的かつ定量的条件に基づいて判断される一方、実務上は現地での目視確認や写真等の2D資料を用いた確認が中心となっている。本ツールでは、現況再現、距離計測、規制範囲表示、画面キャプチャ等の機能を組み合わせて利用することで、違反部分の位置関係や基準との関係を整理するとともに、説明資料作成を補助することを意図している。

(3)建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務
建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務においては、高さや形態といった定量的基準に加え、色彩が周辺景観と調和しているかといった定性的観点の確認が求められるものであり、特に色彩確認に関する作業負担が大きい。本ツールでは、従来紙のマンセル色票を用いて行っていた照合作業に代わり、マンセル値(色相・明度・彩度)を入力することで、指定した色彩を即時に3D空間上へ反映できる仕組みを整備した。これにより、本ツール上で、周辺環境との関係性を複数の視点から比較しながら確認でき、色彩審査における判断や説明の具体化を支援している。

また、②の表示・操作環境の整備による共通基盤の強化については、本ツールを地方公共団体職員等のノンエンジニアが実務で利用することを前提に、専門的な操作を必要としない構成とすることを基本方針としている。2024年度の実証では、3D空間の操作における負荷の高さや、建築物やアセットを確認する際に対象地点周辺のみを表示した状態での操作が中心となり、周辺環境全体の中での位置関係や見え方を把握しづらいという課題が指摘されていた。このため、本年度は、広域的な表示と個別の広告物・建築物の相互確認を円滑化するための表示切替機能の改修と、広域表示に伴う処理負荷を抑制するための改修を行った。具体的には、PLATEAU SDK for Unity及びPLATEAU SDK Toolkits for Unityを活用し、視点位置やカメラ距離に応じて表示対象となる3D都市モデルのタイルを動的に切り替える構成とした。これにより、広域表示時には必要な範囲のデータのみを読み込みつつ、対象物の詳細確認時には該当エリアのモデルを優先的に表示することが可能となり、広域表示と詳細表示を行き来しやすい操作環境を、実務上支障のない形で実現している。

本ツールの有用性については、地方公共団体職員が、実務の中で約2週間にわたり本ツールを利用する操作体験を行った後、アンケート及びヒアリングを通じて検証を行った。

開発機能の画像①:広告物周囲の設置規制範囲表示機能(高さ方向を含む円柱状の規制範囲を可視化)
開発機能の画像②:総壁面の広告割合算出機能
開発機能の画像③:2点間距離計測機能
開発機能の画像④:アセット編集機能(マンセル値反映)

検証で得られたデータ・結果・課題

本実証では、地方公共団体職員が実務の中で本ツールを一定期間利用する操作体験を通じて、景観政策業務における有用性を検証した。検証にあたっては、倉敷市及び京都市の協力を得て、同一の申請案件等について、従来手段による確認工程と本ツールを活用した確認工程とを比較しながら、確認や説明のしやすさ、進め方の違いを整理した。あわせて、アンケート及びヒアリングを実施し、業務効率化、業務高度化、現況再現性、操作性・ユーザビリティの観点から評価を行った。なお、本ページにおいて「業務効率化」とは、確認や説明に要する時間の短縮や、事業者への追加確認・照会の削減といった業務負担の軽減を指す。また、「業務高度化」とは、3D都市モデル等を活用することで、設置位置や寸法、周辺環境との関係性をより正確かつ具体的に把握・共有できるようになり、判断や説明の精度が向上することを指す。

以下では、(1) 屋外広告物の新規(変更)申請業務、(2) 違反広告物の是正業務、(3) 建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務の三つの業務について、業務ごとの検証結果とそこから得られた示唆を整理する。なお、実証地における業務内容や実証協力を得た部署の違いから、三つの業務すべてについて必ずしも各地方公共団体で検証を行っているわけではなく、特定の業務については実証対象外としている場合がある。

(1)屋外広告物の新規(変更)申請業務では、事前相談から判断までに要する時間や、事業者への追加照会の削減見込み、設置基準確認の精度向上等を中心に評価した。実証では、壁面面積に対する広告物の割合算出や、道路境界及び広告物間の設置距離の可視化等の機能を用いて、設置基準を3D空間上で確認する操作を行った。その結果、2D資料のみでは把握しづらかった位置関係や距離感を直感的に確認でき、基準確認を補助する手段として一定の有用性が確認された。一方で、3D都市モデルが低いLODで整備されている場合や壁面面積算出ロジックにより、申請書に記載された数値や実測値と差異が生じる場合があることから、本ツール上の算出値のみで判断を完結させることは難しく、従来資料との併用が前提となる場面も見られた。

(2) 違反広告物の是正業務では、現地調査や写真による確認が中心となる業務特性を踏まえ、本ツールを用いた現況再現や距離計測、規制範囲表示等を、違反状況や基準との関係を整理するための補助的な手段として活用した。実証では、違反ラインや基準との関係を3D空間上で可視化する操作を行った。その結果、違反箇所の位置関係や基準超過の状況を整理し、説明資料として用いることで、指導内容の説明を補助できる可能性が示された。一方で、現地調査や写真により違反状況を十分に把握できる案件では、本ツール上での再現や数値入力が追加作業となるケースもあり、業務効率化の観点では効果が限定的であることが確認された。

(3)建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務では、マンセル値を入力して色彩を3D空間上の建築物に反映させ、周辺環境との関係を確認する操作を行った。その結果、従来の紙の色見本照合と比べ、色の再現結果を画面上で共有しながら確認できる点が、判断内容の具体化や説明のしやすさにつながる可能性が確認された。一方で、周辺建築物の外壁テクスチャ等の視覚情報が十分に整備されていない区域では、周囲との調和判断が難しい場面も見られた。

これら三つの業務に共通して、本ツールは判断に至る前提条件を整理し、関係者間で共通認識を形成するための補助的な手段として有効であることが示唆された。また、活用効果は3D都市モデルのデータ整備状況や業務段階によって左右されるため、用途に応じたデータ精度を前提とした段階的な活用が重要であると考えられる。

また、操作性・ユーザビリティに関しては、地方公共団体職員が、Unity Editor 等の専門的なツールを用いることなく、ビルドされたアプリケーション上で本ツールを操作した。実証では、視点移動や表示切替、必要な情報の確認といった操作を行った。アンケート及びヒアリングでは、視点移動や表示切替に関する操作について一定の評価が得られた一方で、3D操作に不慣れな利用者にとっては、操作に慣れるまで一定の時間を要する場合があるとの意見もあった。

実証中の画像①:分割壁面の広告割合算出機能を用いて、選択した壁面を高さ別に分割し、各壁面の面積を確認している様子
実証中の画像②:アセット編集機能を用いて、屋外広告物アセットを配置し、広告物の位置や外観を確認しながら検証を行っている様子
実証中の画像③:景観計画編集機能を用いて、設定した高さ制限を3D空間上で確認している様子
実証中の画像④:倉敷市における実証実験の様子
実証中の画像⑤:京都市における実証実験の様子

参加ユーザーからのコメント

【倉敷市】

屋外広告物の新規(変更)申請業務
・申請書の記載内容の真偽を判断するにあたり、事業者へ問い合わせする頻度が減ると感じる。
・壁面面積の図面がない場合、申請者の記載した数値を信用するしかないが、ツールで壁面面積を確認することで信憑性が増すと思われる。
違反広告物の是正業務
・スクリーンショットの活用等により資料作成が手軽に行えると感じた。
建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務
・色見本の使い方が分からない・慣れていない作業者の場合、ツール上で値を入力する方が、作業時間が短縮すると思われる。
・画面のスクリーンショットを相手に共有すれば、どのような色か簡単に相手に伝えることができるようになると思う。

【京都市】

屋外広告物の新規(変更)申請業務
・可変表示式広告物の位置及びその離隔距離が可視化されるので、審査しやすくなる。
・高さや分割ラインが可視化されることで、事前相談時の説明時間が短縮されそう。
違反広告物の是正業務
・採寸が困難な建築物の高さや壁面の面積などを求める際に本ツールは活用できそう。是正判断や指導の精度の向上も見込める。

今後の展望

本実証を通して、本ツールが地方公共団体の景観政策業務において、どの業務でどのように活用できそうかという点について、実務に即した具体的な示唆が得られた。特に、従来の2D資料では把握が難しかった設置位置や寸法、周辺環境との関係性を3D空間上で可視化することで、判断や説明を補助し、関係者間での認識共有を行いやすくなる点については、複数の業務に共通して、判断の整理や説明を支援するツールとして一定の有用性が確認された。

一方で、実務への本格導入に向けては、業務区分ごとに整理すべき課題も明らかとなった。屋外広告物の新規(変更)申請業務においては、3D都市モデルが低いLODで整備されている場合や、現行の壁面面積算出ロジックの特性により、申請書に記載された数値や実測値と、本ツール上で算出される数値との間に差異が生じる場合がある。このため、本ツール上の算出結果のみで判断を完結させることは難しい。違反広告物の是正業務においては、現地調査や写真確認で十分に状況把握が可能な案件においては、本ツールの活用が追加作業となる場面も見られた。建築物・工作物の個別案件の届出・審査業務においては、外壁テクスチャ等の視覚情報が十分に整備されていない区域では、近接視点での色彩や周辺環境との関係把握に限界があることが示唆された。今後は、用途に応じたデータ精度を前提とした段階的なデータ整備を進めるとともに、必要な範囲に限定して高精度なテクスチャを補完する仕組み等を通じて、現況再現性及び操作性・ユーザビリティの向上を図っていくことが重要である。

さらに、社会実装を見据えると、本ツールの役割は段階的に整理することが重要である。短期的には、地方公共団体における業務運用との役割分担を明確にしたうえで、判断に至る前提条件を整理し、関係者間で共通認識を形成するための補助ツールとして活用することで、事業者との事前協議や説明、審査プロセスの円滑化に寄与することが期待される。今後は、業務マニュアルや研修等と組み合わせた導入支援の在り方についても検討を進めていく必要がある。

将来的には、本ツールを屋外広告物に関する業務及び景観計画等の策定・運用に関する業務を含む景観政策業務全体を横断して支える基盤へと発展させ、一貫した判断を支援する仕組みの構築を目指す。これにより、事前相談から審査・協議に至る業務フロー全体の効率化・高度化に寄与することを目指す。