景観まちづくりDX v3.0 まちづくりDXの推進に向けた3D都市モデルの利用環境向上業務~景観まちづくり支援ツールの活用実証~
実施事業者 | 株式会社シナスタジア |
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実施場所 | 倉敷川畔美観地区周辺眺望保全地区 約3.3 ㎢ / 京都市中心部 約11.4 ㎢ |
実施予定 | 2025年8月〜2025年12月 |

都市の景観や開発計画を3次元で可視化・検証できる景観まちづくり支援ツールを提供。地方公共団体の屋外広告物の許可申請をはじめとした景観政策業務の効率化・高度化を実現可能な機能を実装し、景観まちづくりDXを加速する。
本プロジェクトの概要
地方公共団体における景観政策業務には、主に以下の2つの課題が存在している。1点目は、システムの導入と運用に関する課題である。建築物、設置物などを3次元(以下、3D)表示・シミュレーションすることが可能なBIMや3Dレンダリングなどのシステムは、導入・運用には一定以上の専門性を要することで、利活用に対するハードルが高く、地方公共団体職員にとって一般的なツールとして浸透していない。2点目は、業務プロセスに関する課題である。たとえば屋外広告物の許可申請業務においては、申請書類に不備や記載の曖昧さが見られることも多く、地方公共団体職員が複数の審査基準への適合性を判断することが困難となっている。さらに、年間の処理件数が2万件近くにのぼる地方公共団体もあり、限られた職員数で膨大な申請に対応しなければならない。加えて、紙やPDFなどの2次元(以下、2D)資料だけでは設置予定地の状況を正確に把握することが難しく、やむを得ず現地調査が必要となる場合もあり、職員の負担増につながっている。
本プロジェクトでは、2024年度に「景観まちづくりDX v2.0」として開発した景観まちづくり支援ツール(以下、本ツール)を基盤として、より実務に即した機能を開発し、その有効性および社会実装の実現可能性を検証する。
具体的には、景観関連業務の中でも屋外広告物の許可申請業務を中心に、地方公共団体を実証地として、実際の業務プロセスを詳細に把握する。同時に、地方公共団体ごとに景観業務の対象やプロセスが異なる状況を踏まえ、景観政策業務全般に関するニーズ調査も実施し、それらの結果を基に、多くの地方公共団体の業務効率化・高度化につながる機能を開発する。

実現したい価値・目指す世界
地方公共団体が担う景観政策業務の効率化に向けては、大きく分けて「システムの導入に関する課題」と「業務プロセスに関する課題」の2つの課題がある。
景観政策業務の効率化を目的としたシステム化を進める上での課題として、3D表示やシミュレーションに必要なツールは、専門的な知識・技術を要することが多く、地方公共団体の業務効率化の手段として導入するにはハードルが高い点があげられる。また、立体的なイメージを関係者間で共有する方法としては、パースやCGを用いることが一般的だが、外注する場合はコストやリードタイムがかかる上、職員自身で視点を変更したり、リアルタイムに修正を加えたりすることが難しいため、関係者との合意形成の場において十分な効果を発揮できないケースも多い。
次に、景観政策業務においては、2Dの図面などを用いた資料確認が多数発生しており、業務プロセス上の課題となっている。たとえば屋外広告物の許可申請業務では、屋外広告物が各種基準(面積・長さ・設置位置など)を満たしているかどうかを、提出された2Dの資料のみで正確に判断することは難しいケースが見受けられる。記載内容の不備や曖昧さ、図面の精度不足などにより、寸法や設置予定地の状況を正確に把握することが難しい場合があるためである。特に古い建物では、建物の寸法を示す図面が残っていないケースもあり、必要な情報の確認が困難となっている。
その結果、事前相談や提出書類と基準との突合や適否判断に多くの時間を要している。さらに、設置場所の妥当性や実際の寸法を確認するために、現地調査を実施せざるを得ないケースもあり、これが現場対応の工数増大につながっている。
2024年度には、都市の景観計画及び開発計画を3Dで表示・シミュレーション可能な本ツールの開発を行なった。具体的には、建築物の高さ規制や眺望制限の可視化、BIMモデルや道路標識・樹木などのアセット配置、見通し解析など、直感的な操作で高度な検討が可能となる設計を行なっている。これらの機能によって、地方公共団体は景観計画や建設計画の審議時間を短縮し、開発事業者は説明コストを削減することが可能である。
上記の機能開発を踏まえて、地方公共団体職員に向けて、景観再現性や景観政策業務への活用余地の観点から有用性の検証を行う中で、景観再現性に関しては改善されたとの評価が得られた一方で、社会実装に向けては実際の業務効率化に向けては業務に適合する機能や情報を拡張すべきとの声があげられた。景観政策業務の現状を踏まえつつ、あるべき業務フローを構想し、それを実現する機能の拡張・統合を通じて、地方公共団体の業務の効率化と高度化を図ることが求められている。
本プロジェクトでは、2024年度に開発した本ツールを発展させ、社会実装に向けた初期ステップとして、屋外広告物の許可申請業務をはじめとした地方公共団体の景観政策業務の効率化・高度化を実現可能な機能を実装する。
まずは、屋外広告物の許可申請業務に対応した、より実務に即した機能の開発と導入を進める。具体的には、建築物の壁面面積に対する広告面積の割合を算出する機能や、2点間の距離を計測する機能を対象に機能開発を行う。これらの機能は、設置予定の壁面広告物の面積が建築物の壁面面積に対して規定の割合を超えていないか、設置条件を満たしているかを確認するための機能である。3D都市モデルを活用することで、申請情報の妥当性を確認可能とすると共に、平面図では把握しにくい位置・大きさ・高さなどを立体的に表示させ、現地調査をせずともさまざまな視点から、設置条件との適合性を確認することが可能となる。ツール上で統一された手順により確認することで、職員ごとの経験や解釈に依存しない、標準化された判断プロセスのもと、許可判断の迅速化や統一化が期待できる。
あわせて、各地方公共団体における景観政策業務のプロセスを調査・分析し、業務上の課題や潜在的なニーズを明らかにする。その結果を踏まえ、複数団体に共通する業務効率化・高度化に資する汎用的な機能を整理し、開発優先度を検討のうえ、本年度の開発スコープを策定し、機能実装を推進する。
本ツールに対して、景観政策業務に適した新機能の開発・統合を行い、屋外広告物の許可申請業務を中心とした、業務の効率化・高度化を図る。また、業務プロセスにおける課題やニーズを整理・分析することで、景観政策業務で求められる機能や支援に関する方向性を検討し、地方公共団体および開発事業者が抱える業務上の課題解決に貢献する。




