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事業に応じて保全すべき環境要素に注目する。災害復旧事業(単災)で保全すべき環境要素として対象となるのは、河岸・水際部が中心になる。改良復旧事業等においては、河道全体が対象となるため、保全すべき環境要素も河岸・水際部だけでなく、みお筋部(瀬・淵構造)、河畔域(堤内地側)も対象となる。(図参照) 河岸・水際部には異なる機能を有した環境要素が見られる。現地調査に当たっては、河畔樹木、湧水・浸透水、淵等重要な環境要素を把握する。 被災箇所に河畔樹木、湧水、淵等の有無を現地でよく確認し、これらの要素が存在する場合には、河岸・水際部の形状や護岸工法を工夫し、保全を図る。 河畔樹林は、生物の生育環境、良好な景観の形成、親水性に多大な影響を及ぼしている。 湧水・浸透水は法面に生息・生育・繁殖する植物・動物に対して重要な環境である。また、河床からの湧水は、一年を通じて安定した水温を保ち、湧水に依存する水生生物群集の貴重な生息場を提供している。 瀬淵は、生物にとって重要な生息・生育・繁殖の場となっており、多様で豊かな河川環境を形成するために欠くことのできない重要な要素である。現地調査では淵の形成プロセスと合わせて、位置・範囲を確認する。 出典:美しい山河を守る災害復旧基本方針 p.34 |
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環境要素の保全の工夫の事例-1
新荘川
事業主体 | 高知県 |
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事業名 | 河川災害復旧事業 |
水系/河川名 | 二級河川 新荘川水系 新荘川(しんじょうがわ) |
年災 | 平成26年度 |
河川の流域面積 | 104.25km² |
河道特性 | セグメント1(谷底平野) |
主な工事概要 | 復旧延長L=30.3m 大型ブロック(擬石)A=179m2 巨石根固工(2t)A=234m2 |
工夫点
この復旧事例では河岸に残る樹木や淵を良く捉え、可能な範囲で現地に環境要素を残す工夫を行った。 護岸の基礎には自然石を用いた根固めを行い、魚類の生息場としての機能が良く守られている。
環境要素の保全の工夫の事例-2
氏の宮川
事業主体 | 香川県 |
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事業名 | 災害復旧事業 |
水系/河川名 | 二級河川 新川水系 氏の宮川(うじのみやがわ) |
年災 | 平成26年度 |
河川の流域面積 | 1.5km² |
河道特性 | セグメントM |
主な工事概要 | 根固工(植石工) |
工夫点
河床低下が著しく、川幅が狭く根継工でも底張りとなるため、三面張でやむを得ず復旧した。
現況地盤に合わせたみお筋、底張りに密に大石を配置することで、被災前の瀬淵を確保するとともに、粗度を大きくして出水時の流速を小さくした。
その結果、植生や多様な流れが回復し、生き物に優しい河床と景観が形成出来ている。