美しい山河を守る災害復旧


環境要素の保全

事業に応じて保全すべき環境要素に注目する。

災害復旧事業(単災)で保全すべき環境要素として対象となるのは、河岸・水際部が中心になる。改良復旧事業等においては、河道全体が対象となるため、保全すべき環境要素も河岸・水際部だけでなく、みお筋部(瀬・淵構造)、河畔域(堤内地側)も対象となる。(図参照)
みお筋部、河岸・水際部、河畔域において出現する環境要素の例を表に示す。これらの要素は災害復旧において改変しないことを原則とする。

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河岸・水際部には異なる機能を有した環境要素が見られる。現地調査に当たっては、河畔樹木、湧水・浸透水、淵等重要な環境要素を把握する。

被災箇所に河畔樹木、湧水、淵等の有無を現地でよく確認し、これらの要素が存在する場合には、河岸・水際部の形状や護岸工法を工夫し、保全を図る。 河畔樹林は、生物の生育環境、良好な景観の形成、親水性に多大な影響を及ぼしている。

湧水・浸透水は法面に生息・生育・繁殖する植物・動物に対して重要な環境である。また、河床からの湧水は、一年を通じて安定した水温を保ち、湧水に依存する水生生物群集の貴重な生息場を提供している。

瀬淵は、生物にとって重要な生息・生育・繁殖の場となっており、多様で豊かな河川環境を形成するために欠くことのできない重要な要素である。現地調査では淵の形成プロセスと合わせて、位置・範囲を確認する。

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出典:美しい山河を守る災害復旧基本方針 p.34

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環境要素の保全の工夫の事例

宇多川

事業主体 福島県
事業名 河川災害復旧事業
水系/河川名 宇多川水系 宇多川(うだがわ)
年災 令和1年
河川の流域面積 106.3km²
河道特性 セグメント2-2
主な工事概要 令和元年台風19号による出水で河岸が侵食された。
河道掘削および河床掘削による流下能力の確保・湾曲部の是正。
令和8年1月で約4年を経過(令和4年から)。水際の良好な環境は維持されている。経年変化もあり、護岸を中心とする景観は周囲となじんでいる。

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工夫点

取水堰の設置により魚類等の移動が阻害されるおそれがあることから、多様な魚種に配慮可能なハーフコーン型魚道を整備し、移動・生息環境の改善に努めた。

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環境要素の保全の工夫の事例

新谷川

事業主体 新潟県
事業名 河川災害復旧事業
水系/河川名 一級河川阿賀野川水系 新谷川(あらやがわ)
年災 令和4年
河川の流域面積 99.3km²
河道特性 セグメントM 山間部
主な工事概要 令和4年8月3日~4日豪雨により河岸が侵食された。
復旧延長 L= m コンクリートブロック張  m²
復旧から2年経過しており、良好な環境は維持されている。出水を経験しているが、構造物および巨石に損傷は見られない。

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工夫点

最小限の掘削により、河道に隣接する渓畔林を存置した。河道内においては巨石(自然石)を存置することで魚類の隠れ場や藻場の提供を図った。

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環境要素の保全の工夫の事例

足久保川

事業主体 静岡県
事業名 令和6年度[第36-B3003-01号]一級河川足久保川6年災害復旧工事6年災査定第0005号(河床掘削工)
水系/河川名 一級河川足久保川(あしくぼがわ)
年災 令和6年
河川の流域面積 28.7km²
河道特性 セグメント1(谷底平野)
主な工事概要 令和6年6月28日から6月29日の梅雨前線豪雨に伴う出水により、上流から土砂が供給され本箇所において河道に土砂埋塞が発生。この足久保川は上流が広範囲に砂防指定地となっており、土砂移動、河床変動が著しい河川である。
復旧延長L=400m 河床掘削工V=14,900m3
この場所は、非出水期には通常、水が伏流しているため流れていないことが多いが、みお筋を設けたことで、水の流れが確認された。
また、これにより多くの生物の生息が確認できた。

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工夫点

みお筋を創出したことによって、水の流れが徐々に、自然な感じに変化し、流れの速い所には魚のエサとなる藻類が確認でき、流れの緩やかな所には魚の稚魚が集まるなど、水生生物の生息が確認でき、環境の保全が図られた。

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環境要素の保全の工夫の事例

氏の宮川

事業主体 香川県
事業名 災害復旧事業
水系/河川名 二級河川 新川水系 氏の宮川(うじのみやがわ)
年災 平成26年度
河川の流域面積 1.5km²
河道特性 セグメントM
主な工事概要 根固工(植石工)

工夫点

河床低下が著しく、川幅が狭く根継工でも底張りとなるため、三面張でやむを得ず復旧した。
現況地盤に合わせたみお筋、底張りに密に大石を配置することで、被災前の瀬淵を確保するとともに、粗度を大きくして出水時の流速を小さくした。
その結果、植生や多様な流れが回復し、生き物に優しい河床と景観が形成出来ている。

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環境要素の保全の工夫の事例

新荘川

事業主体 高知県
事業名 河川災害復旧事業
水系/河川名 二級河川 新荘川水系 新荘川(しんじょうがわ)
年災 平成26年度
河川の流域面積 104.25km²
河道特性 セグメント1(谷底平野)
主な工事概要 復旧延長L=30.3m 大型ブロック(擬石)A=179m2 巨石根固工(2t)A=234m2

工夫点

この復旧事例では河岸に残る樹木や淵を良く捉え、可能な範囲で現地に環境要素を残す工夫を行った。  護岸の基礎には自然石を用いた根固めを行い、魚類の生息場としての機能が良く守られている。

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環境要素の保全の工夫の事例

桂川

事業主体 福岡県
事業名 桂川河川災害復旧等関連緊急事業
水系/河川名 筑後川水系一級河川桂川(かつらがわ)
年災 平成29年
河川の流域面積 38km²
河道特性 セグメント2-1(自然堤防帯)
主な工事概要 平成29年7月九州北部豪雨により、桂川流域において広範囲で床上浸水、床下浸水が発生し、甚大な浸水被害が発生した。
復旧延長 8.00km、護岸工 約170,000m2、橋梁架替 10橋、堰改築 1基、遊水地 1式
令和7年5月で2年を経過。災害復旧時に施工したみお筋等の水際の環境は維持されている。
復旧後の観測で重要種の生息を確認している。

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工夫点

河床材料の粒径について、地質情報や現地確認を行い粒径を大きく変化させることなく工事を実施。その効果により工事後の河床において新たな瀬の形成が確認された。
工事前の河川に形成されていた澪筋を手本とし、現地の状況に応じてたまりやワンドの造成、水制工やバーブ工といった補助工法を設置した。
護岸構造の選定では、地下水の湧水が豊富な箇所には透水性の高い工法や製品を採用し、水際に変化が生じやすいよう護岸前面に覆土を行う隠し護岸なども行った。

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環境要素の保全の工夫の事例

山附川

事業主体 高千穂町
事業名 災害関連事業
水系/河川名 一級河川 五ヶ瀬川水系 山附川(やまつきがわ)
年災 平成17年度
河川の流域面積 8.2km²
河道特性 セグメントM
主な工事概要 巨石積石、巨石張工、寄石工等

工夫点

急流で河道に変化があり、河床に巨石が点在する河川です。
復旧は、河床の巨石位置を変えずに活用した帯工的礫列で淵を確保し、深目地の石積み工法で緑の回復を行っている。
10年経過して、自然河川と見まがう状況となっている。

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環境要素の保全の工夫の事例

後川

事業主体 宮崎県
事業名 河川災害復旧事業
水系/河川名 一級河川 大淀川水系 後川(うしろがわ)
年災 令和5年
河川の流域面積 14.8km²
河道特性 セグメント2-1
主な工事概要 令和5年の台風第6号による出水でブロック張が被災した。
復旧延長L=35.5m ブロック張A=233m2
令和8年1月で9ヶ月経過。植生が回復し、水際の良好な環境は維持されている。

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工夫点

・瀬・淵の連続性が図られているため、現河川の流れを無理に変化させないようにした。
・瀬は必要以上の範囲を掘削しないよう注意した。
・瀬替部を元に戻す際、施工箇所下流部(L=30m)の水深を浅くすることにより、上流域→施工箇所→下流域で瀬と淵の連続性をつくった。
・瀬替部は、再度、河道内にあった土砂を戻し、植生の早期回復を図った。
・工事用道路設置時に一時的に封鎖されたが、元通りに復元した。

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