1.背 景
平成11年9月に来襲した台風第18号は、熊本県八代海や瀬戸内海西部を中心に顕著な高潮災害を引き起こした。特に不知火町松合地区では12名の死者を出すなど甚大な被害をもたらし、あらためて高潮の恐ろしさを教えた。
気象庁では、この教訓を活かして、今年の台風シーズンに向けて重点的に高潮災害についての知識の普及・啓発に努めたいと考えている。なお、今年秋頃を目途として、昨年の高潮災害について、その実態を科学的に明らかにするとともに、気象庁から発表した情報等について総合的に検討し、気象庁技術報告として取りまとめることとしている。
2.高潮災害について
我が国の高潮災害については、港湾施設等の整備が進んだこともあり、1959年の伊勢湾台風による被害をピークとして、その被害も減少の傾向がある。また、大雨等に比べ高潮そのものの出現頻度も少なく、住民の方々における高潮災害についての知識も薄れ、警戒心も緩んでいるのではないかと思われる。このため、今年の夏までに、地方気象台等において高潮災害についての説明会等の開催を防災機関及び報道機関に対し積極的に行い、警戒を呼びかけたい。
3.高潮災害に関する予報業務の改善について
気象庁は、今年の秋頃を目途に以下のとおり高潮に関する情報の改善に取り組むと共に、今後の高潮予測の精度向上に向けて新たな開発に着手することにしている。
○ 注意報・警報等の発表にあたっては、より詳細な高潮モデルの予測結果を活用し、高潮に警戒を要する時間帯を明記するなどの改善を行う。また、高潮に関する情報には、代表的な港湾における高潮発現予想時間帯や高潮の程度などを具体的に示すよう努める。
○ 現在、気象庁から発表する高潮の量的表現の基準として、東京湾平均海面(TP)を用いているが、港湾施設を管理する防災機関に分かりやすい潮位表現を検討し改善を図る。
○ 他省庁と連携して、高潮に関する観測データの連携活用及び高潮予測情報の改善等、高潮災害対策の強化を図る。
なお、島嶼部の高潮予測の精度向上には波浪の効果等を考慮することが不可欠であり、気象研究所において、関連する技術改良のための開発に平成12年度より着手する。この成果を踏まえ、高潮モデルの改善を図りたいと考えている。
|