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記者発表


6−3魚類調査

  6−3−1調査内容

 河川等に生息する生物に対する外因性の内分泌撹乱化学物質の影響として、女性ホルモン様作用による雄の雌性化が指摘されていることから、今回の調査では、雌性化の状況の目安になると言われている血液中のビテロゲニンに着目した調査を実施した。

 ビテロゲニンとは、卵黄タンパクの前駆物質(魚の卵に栄養源として貯えられる卵黄の基となる物質)と呼ばれるタンパク質であり、産卵に備えて体内に卵を持っている雌の血液中にはごく普通に存在する物質であるが、通常、雄の魚の血液中にはほとんど存在しないと考えられている。一方、実験的に女性ホルモンを投与すると雄でも血液中にビテロゲニンが誘導されることが知られており、外因性の女性ホルモン様物質による影響を受けているかどうかの目安となる物質である。

(1)調査対象魚

 調査は、広く河川に生息する魚種であるコイを対象とした。これは、内分泌攪乱作用に関する研究報告のある魚種(コイ、ニジマス等)、全国に生息する魚種、成長の段階で雌雄の転換が起こりにくい魚種、ビテロゲニンの測定キットが利用できる魚種であることを考慮し、選定したものである。  なお、他のコイ科魚類(ウグイ、フナ類、ニゴイ)についても、コイの測定キットを用いた調査が可能であるため、試行的に調査対象とした。 対象魚の大きさは、コイについては全長30p以上、コイ以外の魚種については生殖腺の肉眼観察により雌雄判別が可能なサイズであることを原則とした。

(2)調査方法

 調査は、11月から12月にかけて、各調査地点で1回行った。

 調査対象魚は、原則として調査日の3日前から当日までに採捕し、いけすや活魚タンクなどを利用して、血液採取まで調査地点の河川中または近傍で蓄養しておいた。調査では、生きた状態にある調査対象魚から血液を採取し、血液中のビテロゲニンの測定等を行った。

  6−3−2調査結果

(1)採捕状況

 採補した調査対象魚の尾数を表6−12に示す。

 全国8水系25調査地点で、コイ248尾と他のコイ科魚種277尾の合計525尾を調査対象魚として採捕した。

 採捕したコイ248尾のうち、235尾が全長30p以上であった。この235尾のうち、234尾で雌雄の判別が可能であった。

 調査にあたり、コイ15尾、他のコイ科魚類5尾の採捕を原則としたが、調査時期が河川水温の低下期と重なり、採捕できた尾数が、非常に少ない調査地点もあったため、各地点ごとの実態の把握に十分な個体数は確保できなかった。

表6-12 調査対象魚の採捕尾数(単位:尾)

  性別不明 
コ イ 111 133 4 248
ウグイ 9 24 6 39
フナ類 40 109 4 153
ニゴイ 12 32 41 85
172 289 65 525

(2)ビテロゲニンの測定

 本調査で採捕した525尾のうちコイの雄を中心に376尾(コイの雄111尾、メス103尾、性別不明4尾、その他の対象魚の雄60尾、雌61尾、性別不明37尾)について、血清中のビテロゲニン濃度を測定した。

 コイの雄に関する血清中のビテロゲニン濃度の測定結果は、表6−13に示すとおりである。

表6-13 雄コイの血清中のビテロゲニン測定結果(単位:尾)

ビテロゲニン濃度範囲(血清1mLあたり)
0.1μg未満 0.1μg以上 1μg以上 10μg以上
83(74.8%) 21(18.9%) 2(1.8%) 5(4.5%) 111

 なお、同時に測定を行ったコイの雌103尾のうち卵巣が卵黄形成期にある雌(産卵に向けて卵に卵黄を貯えている状態の雌)のコイ55尾の血清中のビテロゲニン濃度は、940〜72,000μg/mLであり、平均で8,100μg/mLであった。

 各調査地点における個別の魚体に関する測定結果については、別添の参考資料に示す。今回の調査で、コイ以外の魚種についても、一部の魚を対象に試行的にビテロゲニン濃度を測定したが、コイのビテロゲニンに対する抗体を用いた測定であるため、現段階で得られた値は参考値であり、魚種間の比較はできない点に留意する必要がある。

 今回の調査結果から、コイのビテロゲニン濃度について貴重な全国的なデータが得られたが、一般に日本のように明確な季節がある地域に生息する魚では、生殖などに関連する生理的活性に、季節的な変動や年間を通じた周期性があり、また、河川など自然環境下に生息している魚では、成長や成熟状況に魚毎の個体差があるため、ビテロゲニンの濃度についても年間を通じた変化や個体差があるものと考えられ、1回の調査による1個体のデータがその河川の平均的な状況を示しているわけではない点に留意する必要がある。

 また、調査した雄のコイの一部(約1/4)は体内でビテロゲニンを生成していることが確認されたが、雄のコイが体内でビテロゲニンを生成する要因としては、同じ場所に生息する雌のコイが排出する女性ホルモン、餌等により摂取する植物性のホルモン様物質、河川水中の人畜由来の女性ホルモンや内分泌攪乱化学物質など様々な要因が考えられ、今回の結果がどのような要因によりもたらされたものかは判断できない。


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