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IV.河川伝統技術の特徴と評価


 1.河川伝統技術の特徴

     河川伝統技術を現代に活用するという観点から特徴を整理すると、次の点が挙げられる。

    (1) 川の自然の力を利用した技術

     いわゆる「減勢治水」といわれるように、力づくで押さえつけることにより川を治めるというよりも、川の持つ自然の力をうまく利用しながら川を治める技術という特徴が見られる。
      (例:水制工、霞堤5、河畔林(水害防備林)6等やそれらの組み合わせ)

    (2) 流域を含めて被害を抑える技術

     河川伝統技術では、洪水に対して河川の施設で全面的に対応するのではなく、流域での対応を含めて被害を抑える技術という特徴がある。
      (例:二線堤7、輪中堤、水屋等やそれらの組み合わせ)

    (3) 地域の特性、川の性格に応じた技術

     長年に渡る試行錯誤を経て、経験を積み重ねることにより、確立されてきた技術である(いわゆる「みためし(見試し)」の技術)。従って、全国画一的なものではないことは言うまでもなく、各地域の特性、個々の川の性格を巧みに生かした技術という特徴を有する。
      (例:地域、河川によって異なる水制工の種類の多さ、祭り等の文化等)

    (4) 生活の中に維持管理を組み込んだ技術

     河川伝統技術では、地域における継続的な維持管理が可能となるよう、生活の中に自然な形で維持・管理を組み込んだ技術という特徴がある。
    (例:竹林等河畔林(水害防備林)の商品化による管理費用の捻出、堤防上での祭り等を利用した締固め等)

 2.今日の河川行政からみた河川伝統技術の評価

     河川伝統技術の有するこれらの特徴を、今日の河川行政に照らしてどのように生かせるかという面で、次のように評価することができる。

    (1) 河川計画、工法面からの評価

     現代技術はどちらかというと、強固な堤防や護岸等を作ることにより川の自然エネルギーに力で対抗するような工法が中心となっている。この場合、例えば洗掘の進行に対して根固めを追加する等、維持管理にかなりの人的、経済的コストが必要となる。

     河川伝統技術の特徴である「川の自然の力を利用した技術」によれば、例えば水制工の設置により、河岸に洲がつく等、自然の力と調和のとれたものとなり、維持管理にかかるコストも軽減されると考えられる。近代河川技術の課題を克服し、今後の治水計画の考え方、採用する工法、安全性の評価の仕方等について重要なヒントを与えてくれるものと考えられる。

    (2) 環境面からの評価

     河川伝統技術は、一般的にいって「地域の特性、川の性格に応じた技術」であり、使用する材料も木や石といった流域にある天然素材が主体である。このことから、河川伝統技術によって作られた施設が生態系に大きく影響を与えることもなく、環境的にも景観的にも周囲と調和したものとなっている。河川事業による環境への影響が懸念されている今日、環境との調和を図るヒントを与えてくれるものと考えられる。

    (3) 氾濫原管理、危機管理面からの評価

     河川伝統技術は、災害を河川施設だけで防御するというより、「流域を含めて被害を抑える技術」である。例えば、洪水で氾濫した場合に、その被害をできるだけ少なくするため二線堤で守る、家屋浸水だけは避けるため輪中堤を設置する等の工夫を行っている。また、氾濫原にはできるだけ住まないようにしたり、比高地に住んだり、水屋形式の住宅を採用する等、土地利用や住まい方にも工夫を凝らしている。この考え方は、現代にも通じるものがあり、いざというときの危機管理体制、また、氾濫原の土地利用のあり方等について重要なヒントを与えてくれるものと考えられる。

    (4) 河川の維持管理面からの評価

     河川伝統技術では、河川の維持管理が自然な形で地域の生活の中に組み込まれるような仕組みを持っていた。戦後、川と地域の関係が疎遠になってきたところもあるが、近年、河川愛護や自然環境の保全等に関する地域の関心も高まってきつつあり、今後の地域とのパートナーシップによる河川管理の持続的運用について重要なヒントを与えてくれるものと考えられる。

    (5) 個性ある地域づくりからの評価

     今日、全国の各都市の表情が画一化しているという声が聞かれ、地域の活力、能力を引き出すためには個性ある地域づくりが必要であるといわれている。例えば桜堤、友禅流し、流しびな、灯ろう流し等の河川伝統技術とその文化は、「地域の特性、川の性格に応じ」て生まれてきたものであり、その地域のシンボルとなり、他の地域との差異化、その地域の魅力を引き立てる要素になるものと考えられる。また、それらが一つの生活様式、風景となり、地域の文化ともなっていくものと考えられる。そうした点で、個性ある地域づくり、地域の活性化等の観点から、重要なヒントを与えてくれるものと考えられる。





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