審議会等の情報
|
河川審議会について
|
|
3.21世紀の社会と河川
3.1 21世紀の社会展望 −質の高い生活社会− 21世紀の我が国及び我が国を取り巻く状況としては、少子化の進展による人口の減 少、高齢化の進行による本格的な高齢社会の到来と元気な高齢者の増加、成熟化した経 済社会への移行、地球規模で双方向のコミュニケーションを可能にする高度情報化の進 展、人・物・情報等の移動が容易になり地球が一つの圏域となるグローバリゼーション の進展、アジアとの交流の飛躍的な増加、経済社会のボーダレス化による大競争時代の 到来、世界のエネルギー需要の増大と地球環境問題の深刻化等が想定される。 現在、戦後50年の経済発展の成果として、我が国の国民所得は世界最高水準となった。 一方、欧米諸国と比較して労働時間、物価水準、居住環境等国民生活の面において経済 力との乖離を生じている。また、環境に対する意識の高まり、量から質、物から心、画 一性から個性の重視といった人々の価値観の変化に見られるように、これからの我が国 においては、経済力にふさわしいと人々が実感できる生活社会が望まれている。21世 紀に向けて、我が国及び我が国を取り巻く状況の変化に対応しつつ、社会、生活、国土 等様々な側面において質の向上を目指すべきである。 21世紀の社会は、社会・経済活動が、量的拡大及び画一的発展から質的向上及び個 性的展開へと変化し、産業・経済重視の社会から、自然・文化と産業・経済との調和が とれた社会へと変化することが期待される。このため、より高度な安全と安心の確保、 良好な自然・環境の保全と創出、地球環境への負荷の低減、良質な社会・生活空間の確 保、自由で密度の高い人・物・情報等の交流と地球規模での地域間の多様な結びつきの 実現等が、社会および生活の基盤整備を行う上での目標となる。それとともに、健康・ 心の豊かさを尊重し、公平で自由な参加と多様な選択が可能となり、人々が心の豊かさ を享受できる質の高い生活社会の構築を目指すべきである。
−流域の視点に立った人と水との関わりの再構築− 21世紀に目指すべき質の高い社会の実現に向け、また、その社会にふさわしい河川 のあり方を考えるにあたって、まず、希薄となった人と水との関わりを流域の視点に立 って再認識する必要がある。そして、災害、水資源、自然環境、地域の個性という4つ の視点のもとに求められる社会像を明確にし、その実現を図ることが重要である。 (1)災害の視点 自然現象は際限がないことから、治水施設のみの対応による限界を認識して、大洪水
や異常渇水等が生じたときでも被害を最小限にくい止めるとともに、激甚化する土砂災
害についても最低限人命の損失をなくすよう努めることが重要である。
(2)水資源の視点
河川水や地下水など流域における水資源賦存量そのものに限界があり、水資源の開発
のみならず節水及び水の有効利用を図ることが重要である。
(3)自然環境の視点 生物の多様性の確保は、人間の生存の基盤となっている生態系の長期的安定性などの
観点から、また、質・量ともに健全な水循環系の確保は、人間の諸活動を持続可能とす
る観点から重要である。一方で、人間の諸活動がこれらに何らかの影響を与えることを
人間が自ら認識し、自然環境との調和を図りつつ、持続可能な発展を遂げることが重要
である。
(4)地域の個性の視点 河川整備において、河川管理者と地方公共団体及び住民等との役割分担を明確にしつ
つ、地域における利害等の様々な調整を図り、地方公共団体及び地域住民等の意向を反
映し、地域の個性を十分に発揮できる仕組みの構築が望まれている。
災害、水資源、自然環境、地域の個性という4つの視点を総合した、目指すべき21
世紀の社会を「健康で豊かな生活環境と美しい自然環境の調和した安全で個性を育む活
力ある社会」と位置づける。このような社会の実現に向けて、自然と人間の諸活動との
バランスを地域の特性を活かしつつ持続的に維持していくための基本単位として流域を
位置付け、そのもとで4つの視点に立った新たな認識を持って人と水との関わりを再構
築していくことが必要である。そして、これをもとに、関係機関等との連携のもと、広
域的かつ総合的な施策の展開を図ることが重要である。
|