湖沼における水理・水質管理の技術
湖沼の水質に関してはアオコの発生や赤潮、青潮の発生等様々な問題が発生していますが、その解決にあたり、湖沼の流動と水質の関係を十分に把握しないまま議論がなされてきました。湖水の入れ替わり、密度層の形成や変化等の湖沼の流動現象を十分に把握した上で水質の問題を議論する必要があるとの考えに基づき、平成11年度に官学共同の「湖沼技術研究会」(座長:福岡捷二 当時広島大学大学院教授)を発足させました。
今般、「湖沼技術研究会」における検討を踏まえて、これまで実施してきた我が国の代表的な湖沼における水理・水質現象に関する調査研究成果をとりまとめ、湖沼の管理のために、実例を交えて、水理・水質現象とその影響及び調査・解析技術等の紹介を行う「湖沼における水理・水質管理の技術」をとりまとめました。
<湖沼技術研究会委員名簿>
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座長 |
福岡捷二 |
中央大学研究開発機構 教授 |
委員 |
井上和也 |
前京都大学防災研究所 所長 |
委員 |
石川忠晴 |
東京工業大学大学院 総合理工学研究科環境理工学創造専攻 教授 |
委員 |
山田正 |
中央大学理工学部 水理研究室 教授 |
委員 |
田中宏明 |
京都大学大学院 工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター 教授 |
委員 |
福島武彦 |
筑波大学大学院 生命環境科学研究科生命共存科学専攻 教授 |
委員 |
藤田光一 |
国土交通省国土技術政策総合研究所 河川環境研究室長 |
委員 |
鈴木穣 |
独立行政法人土木研究所 水環境研究グループ水質チーム 上席研究員 |
委員 |
天野邦彦 |
独立行政法人土木研究所 水環境研究グループ河川生態チーム 上席研究員 |
その他 |
行政委員(国土交通省) |
1. 湖沼における水理・水質管理の技術の目的
本書は、「湖沼技術研究会」のメンバーにより、これまで実施してきた我が国の代表的な湖沼における水理・水質現象に関する調査研究成果をとりまとめるとともに、湖沼の水理・水質現象とその影響及び湖沼の水理・水質調査・解析技術の紹介を行い、今後の調査・研究と総合的な湖沼管理のあり方について提言したものです。
なお、湖沼技術研究会では、湖沼管理にあたっては湖沼の流動機構を的確に把握することが重要という考えのもと、平成15年3月に「湖沼管理のための流動機構調査 −より高度な湖沼管理に資するための調査にむけて−」をとりまとめました。同書の研究成果を該当する各章に活用しながら、本書は構成されています。
2. 湖沼技術資料集の構成
表紙・目次(PDF:65.8KB)
序章 湖沼の水理・水質管理と調査解析技術(PDF:361KB)
第1章 湖沼の水理・水質現象(PDF:1.95MB)
湖沼管理に現場で携わる人にも興味と関心を持っていただくため、湖沼の流動現象と水質等への影響について概説した。
第2章 湖沼の調査技術(PDF:2.35MB)
これまでに湖沼の水理・水質機構の調査方法を一括してとりまとめた書籍がなかったため、湖沼水理・水質機構の調査研究における計測方法の概要を示し、現象を捉える方法を例示するとともに、最新の技術についても整理した。
第3章 湖沼水質に影響を及ぼす負荷の把握(PDF:5.16MB)
湖沼の水質管理において、流入負荷量の的確な把握と底質の影響把握が重要課題と捉え、それぞれ「流入負荷量ワーキング」、「底質ワーキング」を設立し、詳細な検討を行った結果、流入負荷量及び底質の把握手法について述べた。
なお、「底質ワーキング」における検討の結果については、「底質に関わる技術資料」(PDF:11MB)としてとりまとめている。
第4章 湖沼の水理・水質解析技術(PDF:201KB)
湖沼の水理・水質解析に数値シミュレーションを活用する際の留意点や数値シミュレーション選定の考え方を、代表的な湖沼の事例を紹介しながら整理した。
事例を紹介した主な湖沼:網走湖、小川原湖、霞ヶ浦、琵琶湖、中海・宍道湖
第5章 湖沼水質の保全・改善対策(PDF:1.08MB)
湖沼水質の保全・改善対策の計画手法について記載し、あわせて、代表的な湖沼でとられている湖内水質の保全対策事例を紹介した。
第6章 代表的な湖沼の水理・水質特性の実態 水理・水質特性に関するこれまでの調査研究成果の主なものを、網走湖、小川原湖、霞ヶ浦、琵琶湖及び中海・宍道湖について、湖沼別にとりまとめて整理した。水理・水質調査の組み立て方、計測技術やシミュレーションモデルの適用方法などについて理解を深め、今後の水理・水質機構に関する調査研究に応用することができる。
6.1 各湖沼における調査・解析技術の概要(PDF:157KB)
6.2網走湖の水理・水質特性(PDF:7.85MB)
6.3小川原湖の水理・水質特性(PDF:11.3MB)
6.4霞ヶ浦の水理・水質特性(PDF:10.0MB)
6.5琵琶湖の水理・水質特性(PDF:2.37MB)
6.6中海・宍道湖の水理・水質特性(PDF:4.42MB)
第7章 今後の課題(PDF:178KB)
今後は生態系を含めた更なる調査・研究を進め、多様な主体との連携や情報の共有等も継続して進めなければならないとして、湖沼の水理・水質管理における課題を整理した。
3. 今後の予定 本書は、わが国の代表的な湖沼の水理・水質特性の実態について理解を深めるためだけでなく、今後の流動機構の調査研究に携わる研究者、技術者の調査研究目的の起案、水理・水質調査技術の選定などにおいて役立つと考えています。今後、湖沼管理に携わる実務担当者、コンサルタント及び湖沼を調査研究フィールドとする研究者等が湖沼の水理・水質管理されるにあたって有効に活用されることを期待します。
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