防災まちづくりの専門機関によるバックアップ――連携で、きめ細かな取り組みが実現

「防災街区整備事業」の施行により防災性が向上することで、住民が安心して暮らし続けられる環境が整えられる。事業の実施にあたっては、住民や行政だけでなく、ノウハウのある専門機関が一体となることで一層の推進が図られる。

旗台小学校前地区の取り組みも、事業の主体は地権者で組織する組合だが、品川区をはじめとして、防災街区整備推進機構に指定された首都圏不燃建築公社などが連携して事業を進めてきた。

一般財団法人 首都圏不燃建築公社は、令和5年8月、品川区より「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」による「防災街区整備推進機構」の指定を受け、「旗台小学校前地区防災街区整備事業」に取り組んでいる。

防災街区整備事業の基本的な仕組み(例)
防災街区整備事業の基本的な仕組み(例)

旗台小学校前地区をはじめとした品川区内や、他区で多くの防災街区整備事業にコーディネーターの立場で携わっている一般財団法人 首都圏不燃建築公社 事業開発部 越渡 英雄氏は、「『防災街区整備事業』の良いところは、短期間で事業が進められること。準備組合の設立から、おおむね5~6年で形になっているケースが多いのではと思っています」と評する。

そのうえで自らの役割として、「事業の将来像を示すことが大事です。事業のスケジュールや完成した街の姿、経済条件などを具体的に示せるかが、行政との連携、住民の合意形成においては、非常に大切だと思っています」と述べている。

事業に取り組んでいく上で欠かすことができない官民連携。行政の発意・方針と制度の整備、専門機関(民間)のノウハウと実際に事業を推進する人と力によって、事業は着実に進められている。

防災性と暮らしやすさを両立するまちづくりを目指して――国土強靱化に向けた都市防災の未来

品川区では、旗台小学校前地区の防災街区整備事業に加えて、戸越・大井・中延地区など、区内の密集市街地の施策も進められている。

品川区役所 都市環境部 木密整備推進課 小川氏は、区の姿勢を次のように語る。

「計画づくりの段階で、どの課題もすべて重要と捉えていました。これらを一つひとつ解消していくために、重層的かつ集中的な取り組みを行っています」

具体的な対策として、道路の拡幅整備や防災広場の整備、避難路・救援救護路の確保、空地の創出などを通じた市街地の基盤整備に加え、東京都と連携した不燃化特区支援制度による木造住宅密集地域の建て替え支援を進めているという。

これらの取り組みにより、災害時の延焼拡大の抑制や避難・救援活動の円滑化につなげ、市街地全体の防災性向上を図っている。小川氏は、「これらの対策をつみ重ねることで、不燃化のまちづくりを実現していきたいと考えています」と語った。

一方、一般財団法人 首都圏不燃建築公社 越渡氏が今後の課題として挙げるのが「支援策の継続性」である。

「東京都では不燃領域率の目標値を70%と掲げていますが、一部では改善に向けた合意形成に時間を要する地域もあります。区域全体で不燃化が進む一方で、共同化でしか改善が図れないような接道条件が厳しい宅地などが残る可能性があり、目標達成に伴い支援策が終了してしまう懸念もあります」

そのうえで、越渡氏は、「合意形成に時間を要する共同化事業や法定事業などについては、支援の継続性を行政と共有しながら進めていくことが重要だと考えています」と語った。

事業実施箇所図(画像提供:品川区)
事業実施箇所図(画像提供:品川区)

密集市街地の防災対策は、都市計画にとどまらず、国土強靱化の実現に向けた重要な取り組みである。「災害に強いまち」を形成することは、住民の安全を守るだけでなく、経済活動の安定や地域コミュニティの維持にもつながる。

今後も、国と行政、専門家、住民が協力しながら、防災への意識を共有し、災害に強いまちづくりを進めることが求められる。

取材にご協力いただいた方
※取材内容、所属、役職は取材当時(2025年11月)のものです。

  • 国土交通省 関東地方整備局 建政部住宅整備課
    課長補佐 小池 要氏
    係長 坪田 寿夫氏
  • 品川区役所 都市環境部 木密整備推進課
    課長 小川 晋氏
    係長 鈴木 俊行氏
    主事 宇都 葵氏
  • 一般財団法人 首都圏不燃建築公社 事業開発部
    次長 越渡 英雄氏