港湾整備がつなぐ地域と未来――学びとふれあいの場として貢献
最新技術を導入して整備を進める大分港。港の整備は船舶関係者が恩恵を受けるだけでなく、地元にとっても重要な物流拠点としての役割を果たしている。
その象徴的な取り組みが、令和5年1月に実施された、地元高校生向けの現場見学会である。大分県立大分工業高校の生徒約40名が、大分港RORO船ターミナルの工事現場を訪問。生徒たちは、港湾整備のスケールや技術の高度さを目の当たりにし、施工の仕組みやICT技術を学んだ。
一方、若築建設株式会社 九州支店 松本氏も、会社のインターンシップの大学生と接し、「大きな作業船や機械を見て感動した表情を浮かべたり、技術に関しての面白い質問をしてきたり、ものづくりの楽しさ、すごさ、スケールの大きさを感じてもらえたのではないでしょうか」と振り返る。
さらに、国土交通省 九州地方整備局 港湾空港部 井上氏も、地元住民とのふれあいに意義を感じている。
「令和7年6月の供用式典は、工事関係者や子どもたちも含めた地元の皆さんとお祝いをしました。『子どもたちに貴重な機会を与えてくれてありがとう!』というお言葉も頂き、将来を担う子どもたちがインフラ整備の重要性に触れる機会にもなってよかったと思いました」
建設業界の担い手不足が課題である現代において、大分港の試みは、多くの人々に港湾整備を身近に感じてもらうきっかけとなることが期待されている。
いのちとくらしを守る、未来の港湾モデルへ――目指すは、さらに利用しやすい港
新しい大分港を利用する港湾関係者は、この整備をどのように評価しているのか。船舶会社や荷役業者による「使い心地」の感想を紹介する。
「喫水制限が解消され、大型船舶の寄港が可能となったことで、将来的な船舶大型化による大分発着の貨物量増加が見込めるようになりました。東九州自動車道の4車線化や中九州横断道路の整備も進んでいることから、相乗効果による商圏の拡大を期待しています」
「岸壁背後にシャーシ置き場が集約されたため、横持ち作業の時間が短縮し、荷役作業の効率化を実感しています。また、シャーシ置き場が広くなったことで、乗下船シャーシの動線が輻輳することもなくなり、作業環境が大きく向上したと感じています」
「シャーシ管理システムの導入により、受付業務や駐車場所管理業務等での省人化が図られ、コスト縮減につながりました」
こうした現場からの評価を踏まえ、整備を進めてきた行政側は、今回の事業の成果をどのように捉えているのか。
国土交通省 九州地方整備局 別府港湾・空港整備事務所 平野氏は、今までの整備で改善された点として「今まで混在利用されてきた貨物が、埠頭を再編したことで埠頭ごとに仕分けができ荷役作業の効率化が図られました。これは、県内外の荷主の方々へアピールできる点です。今後、大分県と共にポートセールスを行い貨物の取扱量も増加させて行き、2バース目の整備につなげていきたいです」と語る。
また、国土交通省 九州地方整備局 港湾空港部 井上氏は「各港の置かれた状況はさまざまですが、利用者にとって使いやすいターミナルができているという事例が広く世に伝わっていくことが大切だと思っています。大分県が進められている先進的な取り組みも含めしっかりと伝えていきたいです」と述べた。
令和12年度まで継続する大分港の整備事業。今後も、新技術活用と関係者の強い絆により、物流にも防災にも強い港づくりの完遂を目指す。
取材にご協力いただいた方
※取材内容、所属、役職は取材当時(2025年11月)のものです。
- 国土交通省 九州地方整備局 港湾空港部
計画企画官 井上 翔太氏 - 国土交通省 九州地方整備局 別府港湾・空港整備事務所
副所長 平野 隆幸氏 - 大分県 土木建築部 港湾課
課長 山口 甲一郎氏 - 若築建設株式会社 九州支店
現場代理人 松本 康希氏
