多様な主体との協働による防災――丁寧な対話で、三位一体の連携をより強固に
計画策定にあたり、市は学識経験者、関係機関、地域住民代表等を含む検討会を設置。学識経験者や地域住民代表等からの指摘や助言等を踏まえ、方針を固めるとともに、国や県等との関係機関とも連携し、あらゆる関係者が協働して取り組む対策を検討していく場を設けた。
富山市 建設部 飯島氏は、事務局側の一員として検討会を主催。新計画の策定と関係者との連携を深めるべく、説明を重ねた。
飯島氏は「あらゆる関係者が協働して取り組める計画となるよう、委員の皆さまにできるだけ分かりやすく説明し、納得いただけるよう心掛けました」と話す。
留意したのは、A地区以外の地区への対応方針の説明だ。「A地区以外の約290排水区については、今回の見直しでは下水道事業による施設整備の対象とはなりません。そのうえで、計画の定期的なフォローアップ等に加えて、今後の浸水被害状況等を踏まえ対策の必要性が高い場合は、道路側溝といった枝線整備等、下水道事業以外の対策も検討してまいりますと説明し、ご理解いただきました」
また、防災や都市整備の専門家ではない住民にとって、浸水対策の計画は初見の情報が多く、簡単には理解しづらい。
委員からは、「今回の計画見直しでは難しい内容が多い。今後、住民に説明して協力を得る際には、分かりやすく丁寧な説明を心がけるべき」「対策による効果をしっかりと記録し、発信し、実感してもらうことで、事業への理解が進み、進捗が図れることもある」との意見があり、飯島氏は今後の事業の進め方や、情報提供の仕方のヒントをいただけたと述べている。
国土交通省 上下水道審議官グループ 長谷川氏も、「効率的な雨水整備のためには、必要により下水道以外の排水施設、河川、まちづくりとの連携や、他部局、さらには民間企業などの積極的な参画が必要となると考えられます。富山市においては、流域治水に取り組むための関係者との協議・調整にも非常に尽力されたのかと思います」と語った。
この協働体制は、単なる計画策定に留まらず、実施段階においても重要な役割を果たす。行政主導にとどまらず、地域住民を含む多様な主体との連携を重視する姿勢は、地域全体の防災力向上に直結する試みである。
浸水対策でまちづくりと「備えの文化」を育む――20年の計画で、未来へ安全・安心な都市をつなぐ
今後、同計画におけるハード・ソフト対策の進捗状況は、それぞれのKPI(Key Performance Indicator/進捗管理指標)に基づき確認する。
ハード対策は、A地区のうち床上浸水が見込まれる7排水区の対策実施割合をKPIと設定。ソフト対策は、新規13施策の運用割合をKPIとする。
また、基本として5年に1回のペースで、ハード・ソフト対策の進捗確認とフォローアップを行い、着実な対策の実現を図っていく。
上位・関連計画の大幅な見直しや、大規模な浸水被害の発生など、計画と実状に大きな乖離が生じた際は、5年に1回のサイクルにかかわらず、計画見直しを検討する予定だ。
今後に関して、富山市建設部 飯島氏は「さまざまな施策がうまく機能していることを実感してもらうということが、計画の遂行や、さらなる連携につながると思っています。そのためにも、事業の効果をしっかりと記録し、計画の進行具合などと合わせて、市民の皆さまに定期的に情報を提供していきたいです」と述べている。
また、全国の水害対策に携わる国土交通省 上下水道審議官グループの長谷川氏は、富山市の新計画について、国のガイドラインに沿ってシミュレーションを行い、対策の優先順位を整理した上で策定された計画であるとした。
長谷川氏はさらに、雨水管理総合計画のガイドラインや、富山市のような先行事例を広く周知し、気候変動を踏まえた対策や計画に取り組む自治体を増やしていきたい考えを示している。
あわせて、こうした取り組みに対しては、財政面および技術面からの支援を展開していくとした。
水災害に強い安全・安心なまちづくりは、富山市が目指しているコンパクトシティの形成にも寄与する。
多様な主体が連携し、日常から防災を共有する文化を育てることで、地域の災害対応力を強化する。これにより、持続可能な国土強靱化の実現につなげていく。
富山市の挑戦は、単なるインフラ整備にとどまらず、地域全体で「備えの文化」を築くことを目指している。
これから始まる20年で、未来に安全な都市を引き継ぐための計画を進めていく。
取材にご協力いただいた方
※取材内容、所属、役職は取材当時(2025年11月)のものです。
- 国土交通省 上下水道審議官グループ
大臣官房参事官(上下水道技術)付 水害対策係長 長谷川 智明氏 - 富山市 上下水道局 下水道課
課長代理 前川 幸大氏 - 富山市 建設部 河川整備課
課長代理 飯島 直人氏 - 富山市 建設部 河川整備課 計画係
計画係長 二俣 智志氏 - 富山市 建設部 河川整備課 計画係
井川 友裕氏
