御室版両部曼荼羅
これは300枚でひと組となるもののうちの1枚で、すべてを組み合わせると、「曼荼羅」と呼ばれる仏教の宇宙を視覚的に表現した地図ができあがる。これらの地図は文字どおりの地図ではなく、仏教的な世界の理解において中心的な意味を持つ神々がそれぞれ互いにどのような関係にあり、また周囲の現象とどのような関係にあるのかを示した、概念的なガイドである。この版は1869年につくられたものだが、図柄自体はそれよりもはるかに古いもので、僧の空海(774~835年)が806年に中国から日本に持ち帰った2つの曼荼羅をもとにしている。これらの2つの曼荼羅には、それぞれ異なる、しかし互いに関連し合った、仏教的宇宙観が描き出されている。すなわち、金剛界曼荼羅と胎蔵(界)曼荼羅である。これを合わせて両界曼荼羅(両部曼荼羅)と呼んでいる。金剛界曼荼羅が仏教のより抽象的な側面の地図として機能しているのに対し、胎蔵曼荼羅は神々が地上界においてどのような姿で現れ、どのように活動するのかを示している。空海が持ち帰ったオリジナルは絹に描かれていたが、この版は木版でその図像を複製したものである。その版木は1869年に彫られ、2つの曼荼羅のすべてを写し取った刷りが存在しているが、それは公開されていない。