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委員長記者会見要旨(平成23年12月14日)

平成23年12月14日(水)14:00~14:30
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会の委員長の後藤でございます。ただいまから、12月の月例記者会見を始めさせていただきたいと思います。
 本日は、個別の事故調査の進捗状況についてのご報告する案件はありませんので、最初に、現在の調査の全体の進捗状況をご報告して、その後、配付しました資料にありますとおり、勧告に基づく措置の状況について、原因関係者3社から報告がありましたのでご紹介いたしたいと思います。

1.調査の進捗状況

 まず、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致したいと思います。詳細は、資料の1をご覧下さい。
 航空の方が調査中の案件が36件あります。現在審議中のものが8件であります。そのうち意見照会を行っているもの、つまり、関係国や関係行政機関等に意見照会をしているものが7件あります。鉄道が17件。それから審議中のものが、そのうち4件。船舶の方が調査中の案件が25件。報告書案として審議中のものが11件。意見照会中のものが2件あります。
 今月公表する予定の報告書がありますので、最終的な数字ではありませんが、本年は、11月末までに、航空が19件、ちなみに昨年は25件であります。鉄道が13件、昨年は12件あります。船舶が東京で調査を行った重大案件は41件、昨年は23件であります。全部合わせて合計73件、昨年は60件になりますが、このような調査報告書を大臣に提出・公表しているところであります。今月分は今週の金曜日に公表予定となります。

2.勧告に基づく措置

 次に、今般、長崎電気軌道株式会社ほか2社から、勧告に基づく措置の状況について、それぞれ報告がありましたのでご紹介したいと思います。お手元にお配りしております資料2~4をご覧いただきたいと思います。
 まず、資料2ですが、平成22年10月21日に長崎電気軌道株式会社の大浦支線において発生した鉄道重大インシデントについてであります。
 本件は、単線区間において対向車両が存在しているにもかかわらず、本件車両の運転士が通票を確認しないまま単線区間に進入したことにより発生したもので、発生の背景要因として、関係社員に対する教育の内容や方法及び現場での作業実態の把握が十分でなかった可能性があると考えられました。
 本調査結果につきましては、本年9月30日に調査報告書を公表するとともに、同社に対し、作業基準の教育、安全管理体制の充実などについて勧告しました。
 今般、同社から勧告に基づき「講ずべき措置に関する実施計画」について報告を受けました。その内容は、作業基準を補足するマニュアルの作成や見直し、乗務員自らが考えることに主眼を置いた安全ミーティングの実施など、相互に意見を出し合える職場環境をつくっていこうとするものであります。
 本実施計画による同社の具体的な対応が完了した際には、再度、報告を受けることとしておりますので、その際には、あらためてお知らせしたいと思います。

 次に、資料3をご覧ください。平成21年4月30日に沖縄県の西表島沖で発生した旅客船第98あんえい号の旅客負傷事故についてであります。
 本事故は旅客28人を乗せ航行中、船体が縦に動揺した際に旅客2人が負傷したもので、船長が大波の接近に直前まで気付かずに航行していたことや、同社が、乗組員に対し、同社の運航基準等について、適切な安全教育を行っていなかったことが、本事故の発生に関与した可能性があります。
 本調査結果につきましては、本年3月25日に調査報告書を公表するとともに、船舶所有者の有限会社安栄観光に対し、荒天時の安全運航方策についての安全教育、荒天時安全運航マニュアルの作成と遵守などについて勧告しました。
 今般、同社から勧告に基づき「講ずべき措置に関する実施計画」について報告を受けました。資料の3の2枚目以降に付いているとおりであります。その内容は、安全管理規程等に係る安全教育の実施、同社旅客船の実情に応じた荒天時運航マニュアルの作成と理解度の把握に留意した乗組員の教育、それらの実施などであります。
 本実施計画による同社の具体的な対応が完了した際には、再度、報告を受けることとしておりますので、その際には、あらためてお知らせしたいと思います。

 次に、資料4をご覧ください。平成21年11月28日に長野県の諏訪湖で発生した遊漁船しぶさき10号沈没事故についてでございます。
 本件は、船底外版に釣り穴を設ける改造が行われましたが、その改造に係る臨時検査を受けず、また、釣り穴からの浸水の危険性を認識しながら釣り客を乗せて運航して水没し、釣り客3人が軽度の打撲傷を負った事案で、これらの事態は、同社の安全に対する意識の低さから起こされたものと考えられます。
 本調査結果につきましては、本年9月30日に調査報告書を公表するとともに、船舶所有者の株式会社しぶさきに対し、釣り客の安全を確保するために講ずべき措置について勧告し、10月の会見でもご紹介しましたとおり、10月末に、同社から実施計画について報告を受けていたところであります。
 今般、同社から実施計画書に沿った措置の状況として、安全重点施策に係る取り組み、緊急時訓練、保有船舶の一覧リストの見直し、船舶台帳の作成など釣り客への安全確保の対策を実施した旨の報告がありました。
 これをもちまして、当委員会からの勧告に基づく同社の措置は完了となりますが、措置の状況については、危機管理・運輸安全政策審議官及び海事局に対して情報の提供を行っております。

 以上、3件についてご紹介いたしましたが、原因関係者への勧告は、事故の再発防止や被害軽減のために講ずべき措置の実施を求めるものであり、それらが確実に実施され、安全性の向上につながっていくことが肝要であります。
 今般、実施計画が提出された長崎電気軌道株式会社及び有限会社安栄観光については、勧告で求めた措置への対応が開始され、安全面に向けた取り組みが一歩前進したということであります。
 また、株式会社しぶさきにつきましては、今後も引き続き、より一層の安全向上に努めていただきたいと思っております。
 今後とも当委員会としてはこのような取り組みを重ねていきたいと思います。

 この1年を振り返って、少しまとめてみたいと思います。
 まず、3月11日に発生した東日本大震災で被災された皆様に改めて心よりお見舞いを申し上げますとともに、速やかな復旧・復興を祈念しております。
 さて、委員会の関係では、あと半月の期間が残っておりますが、本日までに航空では14件の事故と6件の重大インシデント、鉄道では12件の事故と2件の重大インシデント、船舶は、東京で取り扱う重大な船舶事故は12件発生しております。全モードとも昨年と比べて減少しておりますが、この傾向は近年続いているような印象を受けております。
 しかしながら、5月のJR北海道石勝線列車脱線火災事故や8月の天竜川船下りの事故など、大きく報道された事故も発生しております。そうした事故やインシデントの発生の防止や被害の軽減に寄与できるよう今後とも努力を傾注してまいりたいと考えております。
 次に、一昨年明らかになりました、福知山線列車脱線事故調査に係る元委員の情報漏えい等についてであります。1年4ヶ月にわたり検証作業をお願いしておりましたが、本年4月に、検証の結果をいただきました。元委員の情報漏えい等による事故調査報告書への影響は無かったことが確認されるとともに、検証の際に明らかになった論点を踏まえ、運輸安全委員会の今後のあり方についての提言がなされたところであります。
 この提言は、事故調査の透明性の確保、被害者への情報提供の充実など、11項目にわたるご意見をいただきましたが、外部の有識者を入れた会合を設けて運輸安全委員会の業務改善に取り組むべきであるということもご提言いただきました。これを受けまして、7月に運輸安全委員会業務改善有識者会議を立ち上げ、外部の有識者のご意見をいただきながら、業務改善の検討を進めております。来年3月を目途に業務改善の内容をアクションプランとしてとりまとめ、着実にその実施に努めて参りたいと考えております。当然ながら、すぐにでも実行に移せる改善点については、来春まで待たず、既に実施しております。この定例記者会見の実施もその一例と考えていただければ幸いであります。
 8月24日の第1回目の会見は、その1週間前に天竜川で発生しました第十一天竜丸転覆事故をはじめ、JR北海道石勝線の列車脱線事故や航空大学校帯広分校の訓練機墜落事故の調査進捗状況などについてお知らせしました。今後も、こうした定例会見の場などを通じて、タイムリーで積極的な情報発信に努めてまいりたいと思います。
 また、今年は、検証メンバーからの提言にもありましたが、被害者の皆さまに対する対応の取組を強化してまいりました。本年4月からは、事務局の事故調査調整官を被害者等への事故調査情報提供窓口とすることを決定し、その旨公表いたしました。
 さらに、日本航空123便の墜落事故に関する航空事故調査報告書について、ご遺族の皆さまの疑問点にできるだけ分かりやすくお答えするため、「8・12連絡会」にご協力をいただき、共同で作業を行って解説書を作成いたしました。それはホームページに公開しておりますので、ご覧いただければ幸いであります。
 来年は、何よりも事故のない平穏な年となることを願いますが、運輸安全委員会としましては、来春に作成いたします業務改善アクションプランを踏まえ、さらに業務の改善を進め、事故の再発防止及び運輸の安全の実現のために重要な役割を担う真に信頼される組織として自らを確立できるよう努力してまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 私からご報告するものは、以上であります。何かご質問等があればお受けしたいと思います。

質疑応答

問: 今年最後の会見ということで、1年を振り返ってみて、特にこの1年で組織が変わったというわけではありませんが、事故調から運輸安全委員会に変わって、この辺が大きく変わったとか感想があればお聞かせください。
答: まず何と言っても船舶が調査対象になったことが一番の違いだと思います。航空や鉄道の調査の範囲と違って、ほとんど全件を調査しております。全国に8カ所ある地方組織を含めて年間約1,500件の調査をしております。件数が多いので大変ではありますが、海に囲まれた日本の状況を考えるとその必要性・重要性を感じているところです。
 それからもう一つは、原因関係者に対して勧告ができるようになりました。安全上重要な事項や安全対策が十分でないと考えられる原因関係者に対しては積極的に勧告を出しているところです。我々が勧告で求めた措置が確実に実施されることが重要です。それとともに対応する行政機関にも勧告の趣旨を伝えておりますので、適切な指導があるものと期待しております。

問: 記者会見を始められて、こういう所がいいなとかこの辺が大変だなとかいうところがあればお聞かせ下さい。
答: 事故の再発防止や被害の軽減のために非常に重要だと判断される事実情報については、関係行政機関等に情報提供をするとともに、このような場で公表してきたところです。記者会見を通じて、どのような情報を公表するのかというような、情報の選択、時期、内容について、それぞれのケースにおいて考える必要があります。この辺が大変なところかと思います。

問: 被害者等への事故調査情報提供窓口を設置したというお話しがあったのですが、被害者支援の状況について教えて下さい。
答: 被害者支援については、被害者に対して事故調査の進捗状況をお知らせするとともに今後の調査の予定などを適宜発信していくこととしております。いくつかの件については、当委員会から連絡をしてご遺族の方や被害者の方にこのような内容のご説明をしておりまして、求めに応じて窓口担当官が調査官とともに出向いてご説明したというケースもあります。今後は、来年度総合政策局に設置が計画されている公共交通事故被害者等支援室とも相互に連絡を取りながら進めていきたいと考えております。

問: 業務改善有識者会議の次回の開催予定はいつごろでしょうか。
答: 今月9日に、有識者の皆様と運輸安全委員会の委員及び調査官等との懇談の場を設けさせて頂き、業務改善の内容について様々なご意見を頂いたところであります。このご意見を踏まえ、更に業務改善の検討を進めて参りたいと思います。なお、この懇談は、非公式の形で行ったものですので、その内容については、差し控えさせて頂きます。来年3月を目途にアクションプランを策定するよう現在検討を進めておりまして、来年3月に開催する予定の有識者会議で議論していただきたいと考えております。皆さんも何かお気づきの点等を記者会見の場やその他の所でも結構ですので我々にお伝えいただければ、大変参考になると思いますのでよろしくお願いします。

問: 静岡県の天竜川での転覆事故の件ですが、先月現地調査をされたと思いますが、そのシミュレーションの中で、船内に乗客が座っていたバランスとの影響がどの程度関係しているかということと、どういう操船方法で事故に繋がったかということについて、現段階ではどのように考えておられるのでしょうか。
答: 具体的に申し上げることはできませんが、現地で川の流れの状況を測定しまして、その流れを復元しながら、当時の船の中の重量配分等や各種の操船方法を考慮して、当時の状況がコンピュータ上で再現できるかどうかを現在行っているところです。結果について、現時点で公表できるようなことはありません。現在解析に努力しているところですので、今後新たに判明した情報で公表できるようなものがあればお知らせしたいと思います。

問: 業務改善の提言の中にある調査と捜査の関係について、警察当局との調整の進捗状況はどうなっているのでしょうか。あまり進んでいないように思うのですが、昨年前原元大臣が公の場で、被害者支援の窓口の設置と、事故調査と刑事捜査のあり方について検討する旨の発言があったのですが、被害者支援室の方は来年から設置することで計画されているのですが、一方で調査と捜査の関係については進んでいないということについてどのようにお考えでしょうか。
答: 警察との話し合いの中で決めていかなければならないことですので、我々だけでこうしたいと思ってもなかなかそうはいかない。難しいところは何かと言いますと、現在我々の報告書が鑑定書として刑事裁判で使われるということがあり得るわけですが、その辺を少し改善していきたいというのが我々の望みです。鑑定を別にするとなると警察の方でも我々の分析とは別に鑑定しなければならない。その辺が難しいところであります。しかしながら、鉄道事故や船舶事故では我々の報告書を見なくても既に警察自身で、或いは海上保安庁自身で鑑定をやっているというところもありますので、その辺の実情も踏まえながら、特に航空事故の面で実態をどのように改善していったらいいのかということを主体に話し合っているところです。まだもう少し時間がかかると思います。

問: 焦点は航空ということでしょうか。
答: そうですね。そういうふうに理解しております。

以 上

資料

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