ひとたび航空の事故/インシデントが発生すると、その発生国、登録国、運航者国、設計・製造国、原因関係者・死傷者の国籍等により、その調査には複数の国が関係します。船舶の事故/インシデントについても同様であり、事故の原因を究明し、同種事故の発生防止につなげていくためには、国内の調査の枠を超えた関係各国との協力が不可欠です。
また、鉄道分野においても類似事故の発生防止のために、事故調査情報を諸外国の事故調査機関と共有する必要があります。
令和4年9月6日、当委員会は、アルゼンチン運輸安全委員会(JST)との間で運輸(航空、船舶及び鉄道)に係る事故及びインシデント調査に関する協力についての意図表明(DOI)に署名しました。 今回の協力意図表明は、2020年5月のアルゼンチン運輸安全委員会(JST)の創設を機会として、当委員会と協力覚書を締結したいとの要望を受けて締結されました。
当委員会は、現在までに7か国との間で事故等調査に係る協力意図表明を締結していますが、今回初めて航空、鉄道、船舶の3モード全てに及ぶ運輸全体の包括的な協力関係を構築する意図表明を締結しました。
内容は、両国の事故調査当局の間でお互いに運輸安全に資するために協力していくことを確認するものであり、事故及びインシデントに係る調査の一般的な手法に関する情報交換及び事故調査官の人材育成及び能力開発に対する協力等実施するもので、これにより両国の運輸安全の向上に大いに貢献するものと期待しています。
インドで鉄道事故が続いたことを受けて、平成29年10月、当委員会の委員及び鉄道事故調査官の2名を含む日本政府の鉄道安全専門家チームがデリーに派遣され、現地で開催されたセミナーにおいて、当委員会から、日本の事故調査の現状を基に体制や手続きを説明しました。
その後、インド政府から要請を受けて、国際協力機構(JICA)の技術協力として「鉄道安全能力強化プロジェクト」が立ち上げられ、そのスタートとなる第1回合同調整委員会が、平成30年12月4日にデリーで開催され、当委員会から委員及び鉄道事故調査官の2名が参加しました。
当委員会は、これまで6回にわたり行われた合同調整委員会に適宜参画し、インド側が作成したアクションプランの進捗状況や成果について報告を受けるとともにに、事故調査手法の課題についてのアドバイスを行う等、インドにおける鉄道の安全性向上に貢献しました。
2019年7月1日(月)から12日(金)の10日間、運輸安全委員会は、国際協力機構(JICA)による「インド鉄道安全能力強化プロジェクト」活動の一環として、インド鉄道省の幹部など鉄道事故調査を担当する関係者10名を受け入れ、鉄道事故調査に関する研修を実施しました。
当委員会が鉄道分野でこうした研修を国内で実施するのは、今回が初めてです。
研修では、事故調査の基本(調査全体の流れ、現場調査の手順、調査報告書の構成等)や、これまで日本で実際に行われた数多くの事故調査実例について講義を行いました。また、鉄道事業者、研究機関において安全に関する取組や最新の技術等を実地で学びました。
研修生は、日本の鉄道事故調査手法や鉄道分野の安全システムを熱心に学び取り、最終日には、帰国後に自国で取り組むべきことを検討して発表しました。
運輸安全委員会は、引き続き帰国後の活動を支援するなど、鉄道事故調査に関する協力を行い、インドの鉄道の安全性向上に貢献して参ります。