JSTB 運輸安全委員会

1.踏切事故の現状

(1)踏切事故の発生状況

① 踏切遮断機のない踏切での事故
 運輸安全委員会では、第3種踏切(踏切警報機あり、踏切遮断機なし)・第4種踏切(踏切警報機及び踏切遮断機なし)において発生した死亡事故の調査を行っています。
 調査を開始した平成26年4月より令和2年末までに、52件の事故が発生しており、55名の方が亡くなられています。下記リンクから関係報告書をご覧になれます。

関係報告書
 全ての踏切事故
(第3種・第4種踏切)
事故調査報告書
 死亡者の年代別の報告書  横断者別の報告書
 - 20 歳未満
 - 20~64 歳
 - 65 歳以上
 - 
 - 軽車両
 - 二輪
 - 自動車


  <第1種踏切>
 踏切警報機、踏切遮断機が設置されているか、
 踏切保安係が設置されている。 
 <第3種踏切> 踏切警報機と踏切警標がついている。 <第4種踏切> 踏切警標だけの踏切で、列車の接近を知らせる装置がない。
参考 踏切の種別
第1種、第3種、第4種各踏切について(第2種踏切は現在はない)。
(一般社団法人日本民営鉄道協会「大手民鉄の素顔」(2018年 10月)の資料を加工して作成)

② その他の踏切道での事故
 運輸安全委員会では①の踏切死亡事故のほか、踏切障害に伴う列車事故(※1)についても調査を行っており、関係報告書(運輸安全委員会発足(平成20年10月)以降公表)はこちらからご覧いただけます。
 ( ※1 列車衝突事故、列車脱線事故及び列車火災事故 )

(2)踏切事故の防止に向けて

 鉄道運転事故の全体で見ると、踏切事故は約34.3%(211 件/615 件)と大きな割合を占めています(令和元年度)。なかでも、踏切遮断機のない踏切は、踏切保安設備(踏切遮断機、踏切警報機)が整備されている踏切(第1種踏切)に比べて事故の危険性が高い(※2)ことから、これらの踏切の廃止や踏切保安設備の整備(いわゆる「第1種踏切への格上げ」)の早期実施につなげることが重要です。
 このためには、鉄道事業者、道路管理者(自治体等)、利用者(地域住民)等の関係者間で合意形成が重要となります。
 運輸安全員会では、「運輸安全委員会ダイジェスト第31号(平成31年2月)」において、踏切の廃止や踏切保安設備の整備(第1種踏切への格上げ)の事例を紹介するなど事故防止に向けた取組を行っています。
 ( ※2 事故率は第1種踏切の約1.4倍
     国土交通省発表:「高齢者等の踏切事故防止対策について(平成27年10月)」 )

踏切事故数
踏切道と踏切事故件数の推移
( 出典:国土交通省鉄道局「鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和元年度) )


2.踏切での事故をなくすために

 踏切は、鉄道と道路が平面交差する部分です。
 そのため、安全に踏切を横断するためには、ルールを守ることが必要です。
 下記では、踏切横断時のルール、注意点と、踏切事故の防止対策のポイントについてまとめました。

(1)直前横断で発生する踏切事故

 下表は、踏切遮断機のない踏切での踏切死亡事故発生事例における横断者の発見時から列車停止までの状況を横断者別に例示したものです。

実際の踏切死亡事故の事例
横断者       横断者を発見            
  → 直ちに列車が非常ブレーキ操作
 踏切事故
発生時
    踏切事故発生、列車停車時
 非常ブレーキから
踏切までの距離[m]
 列車が踏切到達
までの時間
 非常ブレーキ
時の列車速度
[km/h]
 列車速度
[km/h]
 踏切到達
後の停止
距離[m]
 踏切到達後に列
車停止までの時間
 人  例1  約  10   m手前  約  0.6  秒前  78  77  約  210   約  8.6  秒後
 例2  約  30   m手前  約  2  秒前  52  43  約  50   約  10  秒後
 原動機付
自転車
 例3  約  32   m手前  約  1  秒前  84  83  約  203   約  18  秒後
 例4  約  24   m手前  約  1  秒前  61  58  約  107   約  13  秒後
 自動車  例5  約  10   m手前  約  1  秒前  44  41  約  60   約  8  秒後
 例6  約  120   m手前  約  5.4  秒前  84  70  約  150   約  16.4  秒後

 これらの踏切事故は、列車が踏切を通過する直前に進入して事故に至っています。列車は、大きな重量でありかつ高速で走行しているため、通常停止するにはある程度の距離が必要です。具体的には、ブレーキ性能など様々な条件で変わるものの、例えば速度60~80km/h で走行している列車では下記のグラフ(速度と停止距離の実測値)から、約200~400m 必要とすることになります。


気動車のブレーキ距離の実測値(※3)

 なお、非常ブレーキによる列車の停止距離は、鉄道関連の解説文書(※4)では「新幹線以外の鉄道における列車の非常制動距離は600m 以下を基本としてきた経緯がある」とされています。
 踏切遮断機のない踏切では、列車が接近していないことを十分確認して横断することが必要です。

( ※3(一社)日本鉄道運転協会
  「運転理論(再改訂版)―基礎知識と応用実務―」
  ※4(一社)日本鉄道運転協会 国土交通省鉄道局監修:
  「解説 鉄道に関する技術基準(運転編)」(第八版 令和元年 12 月) )

(2)踏切横断時のルール

 実際の踏切事故事例を見ていくと、踏切の直前での一時停止や、周辺の安全確認といったルールを守らなかったと考えられる状況の踏切死亡事故がみられます。
 下記は、踏切の横断者が守る必要のあるルールや注意すべきポイントをまとめたものです。ここに挙げたルールは、踏切遮断機のない踏切(第3種・第4種踏切)だけでなく、全ての踏切に適用されます。

① 踏切の直前で停止
 歩行者も自動車も、踏切の直前で一時停止する必要があります。 

② 自分の目や耳で安全であることを確認してから横断 ~とまれ、みよ、きけの徹底~
 踏切を横断するときには、自分の目や耳で列車が接近していないことを確認する必要があります。
( 〇道路交通法 第33条第1項
  車両等は、踏切を通過しようとするときは、踏切の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。 )で停止し、かつ、安全であることを確認した後でなければ進行してはならない。
  〇交通の方法に関する教則(国家公安委員会告示) 第2章第4節第1 項
  踏切の手前では、必ず立ち止まつて、右左の安全を確かめましょう。一方からの列車が通り過ぎても、すぐ反対方向から別の列車が来ることがありますから注意しましょう。  )
 
③ 踏切警報機や踏切遮断機が作動したら絶対に踏切内に進入しない
 踏切警報機や踏切遮断機は、列車が踏切に到達する数十秒前から作動します。踏切遮断機が降り切ったら列車は直後に到達しますので、 決して踏切内に進入してはいけません。
( 〇道路交通法 第33条第2項
  車両等は、踏切を通過しようとする場合において、踏切の遮断機が閉じようとし、若しくは閉じている間又は踏切の警報機が警報している間は、当該踏切に入つてはならない。 )
 
④ 踏切内でとどまらない ~万が一のときは、速やかに報知~
 踏切の横断中は、踏切内でとどまらずに安全に横断することが必要です。
 踏切内で、万が一、脱輪、エンジン停止等のトラブルが発生した場合は、速やかに踏切の外に出て自身の安全を確保のうえ、一刻も早 く踏切支障報知装置(非常ボタン)を押すなど、列車に危険を知らせる必要があります(また、周辺の方にも、非常ボタンの押下などの 協力が望まれます。)。
 もし、踏切遮断機が降り切って踏切内に閉じ込められたときには、遮断かん(・・)を車で押したら出られます。
( 道路交通法
 〇第33条第3項
 車両等の運転者は、故障その他の理由により踏切において当該車両等を運転することができなくなつたときは、直ちに非常信号を行なう等踏切に故障その他の理由により停止している車両等があることを鉄道若しくは軌道の係員又は警察官に知らせるための措置を講ずるとともに、当該車両等を踏切以外の場所に移動するため必要な措置を講じなければならない。
 〇第50条第2項
 車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、横断歩道、自転車横断帯、踏切又は道路標示によつて区画された部分に入つた場合においてはその部分で停止することとなるおそれがあるときは、これらの部分に入つてはならない。 )

(3)踏切事故防止対策のポイント

 このような事故を起こさないようにするには、踏切事故防止対策として、
① 踏切の廃止
 (近隣踏切との統廃合や、立体交差化又は交通量がなくなったことによる踏切の廃止を含む)
② 踏切保安設備の整備(第1種踏切への格上げ)
が有効です。また、
 - 踏切周辺の除草等、列車の接近に気づきやすくするための措置
 - 注意看板の設置等、踏切の存在をわかりやすくする措置
 - 自動車止めの杭の設置等、踏切通行者を規制する措置やその他の交通規制
も実施されることが望まれます。

 この他、高齢者が列車の接近に気付かないことや、また、子供が踏切の適切な安全確認や安全な横断の仕方を理解していないことによる事故も起こりえますので、踏切遮断機のない踏切の安全な利用について周知、教育を行うことも有効と考えられます。

<参考:報告書における児童向けの教育の記載例(抜粋)>
 3 分析
 (略)児童に対する交通安全教育においても第4種踏切道に関する指導は行われていなかったものと考えられる。このため、本件通行者は、踏切遮断機、踏切警報機がない踏切というものが存在することを知らなかった可能性があると考えられる。
 (略)本件通行者の年齢では、踏切遮断機、踏切警報機のない踏切の危険予測が難しい場合があると考えられることから、本件通行者は、本件踏切において列車の接近に対し注意を向けることができなかった可能性が考えられる。 
 5 再発防止のために望まれる事項
 (略)このような交通安全教育は、関係者が小学校の通学区域内における第4種踏切道の実態を把握すること等により、地域の実情に応じて行うことが重要であり、
 (略)その上で、子供の持つ特性に照らして、可能な限り子供単独では第4種踏切道を通行しないようにし、近隣の第1種踏切道や横断歩道橋等を利用するよう指導することが望ましい。

 

防草シート

 防草シートによる横断者からの見通しを確保  

止まれ

進入禁止標識、ストップサイン
(一時停止を促す)

柵

 交通規制(自転車から降りないと通れない柵、注意喚起看板設置、踏切入口付近の路面に注意喚起の標示)

交通安全教室

 児童向け啓発活動の様子(資料写真) 



3.取組事例

 踏切の廃止や踏切保安設備の整備(第1種踏切への格上げ)等を行うためには、鉄道事業者、道路管理者(自治体等)だけでなく、利用者(地域住民)の状況を確認しながら地域の実情に見合った対策の検討と、その合意形成が重要です。
 下記の取組例をご紹介します。

(1)軽自動車の横断による事故後、段階的に関係者間で廃止の合意に至った例

-事故後の取組-
①事故発生後
・鉄道事業者等が、踏切通行者から列車の見通しを良くするために除草
②2者間協議(自治体と鉄道事業者)により、自治体が下記を検討のうえ合意
・地元住民の踏切廃止への同意
・自治体による左側の隣接踏切に迂回するための側道整備、右側の隣接踏切の道路改良を実施
③2者間協議を受けた3者間協議(鉄道事業者、自治体及び地元住民)により、踏切の廃止に合意
(踏切の廃止は、事故発生から約2年7か月後)
取組事例1
[イメージ図]
 <類似する事故調査報告書>
  九州旅客鉄道株式会社 指宿枕崎線 第2本屋敷踏切道 

(2)自転車の横断による事故後、関係者間で廃止の合意に至った例

-事故後の取組-
事故発生後
 5者協議(道路管理者、警察、教育関係者、地域住民及び鉄道事業者)により以下を合意
・隣接する第1種踏切の道路のカラー舗装
(車道と歩道を区別するため塗分けることによる歩車分離)
・カラー舗装後、踏切の廃止
(踏切の廃止は、事故発生から約半年後)
【踏切廃止まで、以下を実施】
・見通し向上のため、雑木伐採(鉄道事業者が所有者に依頼)
・踏切進入防止のための車止めを設置(自治体より設置に時間を要するとの話を受け、鉄道事業者が設置)
・踏切注意喚起看板を設置(自治体より設置に時間を要するとの話を受け、鉄道事業者が設置)
取組事例2
[イメージ図]
 
 <類似する事故調査報告書>
  関東鉄道株式会社 常総線 井ノ上1踏切道

(3)自転車の横断による事故後、踏切保安設備が設置され第1種踏切に改良した例

-事故後の取組-
事故発生後
 地元警察署が開催した再発防止の現地検討会により下記に合意
・踏切保安設備の整備
・踏切保安設備の整備までの間
 横断注意等の道路標示による安全性向上の対策を実施

検討会で合意された踏切保安設備(※)の整備
 ※踏切遮断機、踏切警報機
 (設置は、事故発生から約1年5か月後)
取組事例3
[イメージ図]

 <類似する事故調査報告書>
  西日本旅客鉄道株式会社 福塩線 岩崎の一踏切道


 一方、生活に必要な経路としてそのまま存続したうえで、安全性を向上させる対策をしている踏切もあります。

(4)生活に必要な道路として存続している第3種・第4種踏切道

-事故後の取組-
現状では踏切存続のうえ下記の安全性向上に取り組んでいる。
・道路側から列車の踏切接近を見えやすくするため反射鏡の大型化
・踏切路面を目立たせるため黄色に塗装
・踏切停止線の再舗装
・進入禁止標識の設置

取組事例4
[イメージ図]

 <類似する事故調査報告書>
  - 富山地方鉄道株式会社 立山線 北浦踏切道
  - 流鉄株式会社 流山線 第10号踏切道
  - 熊本電気鉄道株式会社 菊池線 堀川間8号踏切道


 現在までに運輸安全委員会が公表した踏切関係の 事故調査報告書はこちら からご覧になれます。


4.おわりに

 踏切の廃止や踏切保安設備の整備(第1種への格上げ)等の踏切事故防止対策を行うためには、鉄道事業者、道路管理者(自治体等)、利用者(地域住民)等の関係者間の合意形成が重要となります。
 その合意形成にあたっては、踏切事故の防止に向けて様々な関係者が理解を深め議論を行い、地域の実情に応じた踏切事故防止対策をできる限り速やかに実施することが望まれます。
 ご紹介した内容が、踏切事故を減らすための関係者間の取組にご活用いただければ幸いです。

<参考資料 >
・運輸安全委員会ダイジェスト第31号(平成31年2月)
 鉄道事故分析集 遮断機のない踏切は危険 廃止や遮断機・警報機の整備など、早急な対策が必要
・運輸安全委員会ダイジェスト第10号(平成25年10月)20号(平成28年4月)
・参考スライド
 安全工学シンポジウム(令和2年7月) 発表資料(抜粋)
鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和元年度) 出典:国土交通省鉄道局
高齢者等の踏切事故防止対策について(平成27年10月) 出典:国土交通省鉄道局




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