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委員長記者会見要旨(令和5年9月26日

令和5年9月26日(火)14:00~14:21
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、9月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故は、航空、鉄道、船舶モード合わせて3件です。

 航空モードは、9月7日に、航空大学校の運航する小型飛行機が、釧路空港において連続離着陸訓練のため進入中、誘導路を横切る形で着陸後、フェンスに当たって停止し、機体を損傷した航空事故の1件です。

 鉄道モードは、9月3日に山口県のJR西日本の岩徳(がんとく)線、周防高森(すおうたかもり)駅~米川(よねかわ)駅間の第3種踏切道において、同踏切道内に進入してきた軽自動車と列車が衝突した踏切障害事故の1件です。

 船舶モードは、9月21日に、山口県下松(くだまつ)市徳山下松港(とくやまくだまつこう)に着岸中の日本の石炭運搬船ENERGIA CENTAURUS(エネルギア ケンタウルス)の船内で、乗組員1名が移動中のクレーンと支柱の間に挟まれ死亡した事故の1件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.安全啓発資料の公表 

 次に、運輸安全委員会ダイジェスト第43号として、「地域鉄道における事故防止対策」を本日公表しましたのでご報告します。お手元の資料2をご覧願います。

 初めに「地域鉄道」とは、一般的に、新幹線や在来幹線、都市鉄道以外の鉄軌道路線のことを言い、JR各社や大手の民営鉄道以外の地方民営鉄道や第三セクター鉄道を指します。

 この地域鉄道について、旧航空・鉄道事故調査委員会及び運輸安全委員会が調査対象とし、事故等調査報告書を令和4年度末までに公表した事故・重大インシデントは、合計99件発生しています。地域鉄道の多くの事業者では、利用者の減少等により経営状況が厳しい状態になっており、このような経営状況が車両や施設の老朽化につながってしまうこともあるため、事故防止のための効率的・効果的な安全対策が必要となっております。

 そこで今回のダイジェストでは、地域鉄道における特徴的な事故として、「軌道等の地上設備の保守状態に関する要因」で発生した列車脱線事故に焦点を当て、その要因の特徴に関する分析を行うとともに、平成30年に当委員会が国土交通大臣に発出しました「軌間拡大による列車脱線事故の防止に係る意見」に基づいた適切な軌道の保守管理の実施など、事故防止に向けたポイントをまとめました。

 また、地域鉄道では、踏切全体の数に対して、遮断機のない第3種・第4種踏切の占める割合が大きく、さらに踏切障害事故後の当該踏切の廃止や遮断機の整備等の措置がなかなか進められていないケースが多いという実態も分析から判明しました。鉄道事業者だけでなく、道路管理者や地域住民等の関係者が協力して、第3種・第4種踏切の廃止や遮断機の整備等に向けた協議を進めるために、実際に踏切の廃止にこぎつけた具体的な事例の紹介なども行っております。

 地域鉄道事業者をはじめ、地域鉄道に関わる多くの関係者の皆様にこの資料を参照していただき、今後の事故防止にご活用をいただくことにより、地域鉄道の安全な運行につながればと考えております。

 皆様ご承知おきのことと思いますが、現在国レベルで、「地域公共交通の活性化と再生」についての検討が進められております。地域交通では安全性の確保が大前提であるとの認識の下で検討が行われていくことを期待しております。

3.委員の異動 

 委員の異動について、ご報告します。

 任期満了に伴い、9月30日をもちまして平成29年10月から6年にわたり海事分野の常勤委員を務めた佐藤雄二委員及び田村兼吉委員が退任されます。

 佐藤委員は、全国の海域・航路の実情、海難救助、更には船舶運航や海上安全施策に関する識見を有する委員として海事部会長を務められ、着実な実績を挙げていただきました。

 田村委員は、様々な海難事故等の原因解析を行ってこられた経験を生かし、船舶工学、造船工学に関する高い識見を有する委員として着実な実績を挙げていただきました。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(知床半島沖旅客船沈没事故関係)

問: 知床で起きた観光船事故について今月最終的な調査報告書が公表されました。重大な事故の調査報告の公表にあたりまして、委員長の所感をあらためてお願いします。
答: 旅客船KAZUⅠの事故につきましては、今月7日に最終報告書を公表したところです。あらためまして、この事故において、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。また、事故に遭遇された方々とそのご家族に心からお見舞い申し上げます。
    本事故については、当初は船体を確認できず、ほとんど正確な情報がない中、本事故当日の本船の位置情報(GPS)や乗船者が撮影したと思われる写真等のデータについて、ご家族の方々からご提供いただくことができました。これにより、本船の航行中の時刻と位置に対応した寒冷前線の動き、風速・風向の変化、波の高さや向き等に関する解析を行うことができました。
    また、本船の外部・内部構造の形状を最近導入した3Dレーザースキャナーにより計測し、定量評価が可能なデジタルモデルが得られました。このデジタルモデルにより、その後のハッチ開閉状況、海水の浸入状況、浸水による本船の傾斜状況のシミュレーション解析が可能となりました。
    これらの事実情報と分析によりハードウェア的な側面が固まったことで、その後のソフトウェア的な側面を検討していく上での基礎となりました。すなわち、定量的、科学的な事実情報と分析をもとに、ヒューマンファクターや組織要因などを綿密に検討することができ、当日や通常時の運航管理体制や安全管理体制の問題点が明らかとなり、最終報告書の公表へとつながりました。
    本事故は、大局的にみると地方の観光を支える交通・運輸手段の安全確保という、現在の日本における一つの大きな課題を提示していると考えています。最終報告書の再発防止策において、早期に実施すべき事項として船体の水密化と通信手段の確保を、また、地域観光での運輸安全確保には個々の事業者のみならず、他の事業者、地域の行政機関、救助機関、漁業者等が協力した、その地域ごとの特徴に合わせた適切な対応や安全文化の醸成が必要である等を挙げております。国レベルでは全体を考えていきますが、地域ごとに違う事情がありますので、地域全体で取り組んでいく仕組みができればと思っております。これらは一つの視点ですが、報道機関の皆様にも、このような事故が二度と起こらないように、どのように地域観光での運輸安全確保に取り組むべきかについて、ご一緒にお考えいただきたくお願いいたします。
問: 調査報告書を公表するにあたって、ご家族の方へもご説明されたと思いますが、その時の印象といいますか反応を教えてください。
答: 9月7日に本事故の最終報告書を公表いたしましたが、報道にもありましたように、その前日の9月6日に、本事故でお亡くなりになられた方々、及びいまだ行方不明となっておられる方々のご家族に対し、報告書の内容についてオンラインで説明を行いました。説明を行った際のご家族の皆様の反応につきましては、私からのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
問: 報告書に関して、ご家族に応えられたのか、再発防止に資するものとなったのか、評価をお願いします。
答: ご家族がどのように受け止められるかだと思います。報告書を公表して、これからもご意見はあるかと思います。ご不明な点があれば引き続き対応させていただきたいと思います。二度と事故を起こさないということが重要であり、ご家族の方々の思いを受けた対策とならなければいけないと思いますので、引き続き対応していきたいと思います。

資料

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