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委員長記者会見要旨(平成24年9月26日)

平成24年9月26日(水)14:00~14:33
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、9月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、最初に、この10月1日をもって運輸安全委員会が設置されて4周年を迎えますので、私から一言所感を述べさせていただいて、その後、事故調査の進捗状況ということで、最近発生した大きな事故及び鉄道の案件についてご報告いたします。

1.運輸安全委員会設置4周年を迎えるにあたって

 私ども、運輸安全委員会が、「適確な事故調査により事故及びその被害の原因究明を徹底して行い、勧告や意見の発出、事実情報の提供などの情報発信を通じて必要な施策又は措置の実施を求めることにより、運輸の安全に対する社会の認識を深めつつ事故の防止及び被害の軽減に寄与し、運輸の安全性を向上させ、人々の生命と暮らしを守る」ため、平成20年10月1日に発足してから、まもなく4年を迎えます。
 一方、旧航空・鉄道事故調査委員会時代ではありますが、平成17年に発生したJR西日本福知山線列車脱線事故の調査過程において、当時の旧事故調の委員が調査状況の情報漏えいを行っていたことが21年9月に判明し、国民の信頼を大きく損なう事態となりました。
 このため、ご遺族・被害者、有識者等の方々に参加をお願いし、事故調査報告書及び運輸安全委員会が行う事故調査について約1年半にわたる検証作業を行っていただき、23年4月には「JR西日本福知山線事故調査に関わる不祥事問題の検証と事故調査システムの改革に関する提言」が取りまとめられました。
 この中では、最終報告書の内容への影響はなかったことが確認されるとともに、運輸安全委員会の今後のあり方について10項目の提言をいただいたことから、当委員会としては、職員の全員参加により業務改善を進めるとともに、昨年7月、「業務改善有識者会議」を設置し、有識者の皆さまより多くのご意見をいただいてまいりました。
 これらを経て、本年3月、運輸安全委員会のミッション及び「適確な事故調査の実施」、「適時適切な情報発信」、「被害者への配慮」、「組織基盤の充実」という4つの行動指針並びにこれらを具体化した「業務改善アクションプラン」を決定いたしました。
 アクションプランの実施状況につきましては、今まで、私の会見でもご報告させていただいておりますが、改めて主なものをご紹介させていただきます。

 「適確な事故調査の実施」の観点から、報告書要旨の記載、専門用語の注釈、図表・写真等の本文への掲載など、分かりやすい報告書の作成に取り組んでおります。
 「適時適切な情報発信」の観点から、積極的に勧告、意見を発出していくこととしております。また、昨年8月より私の定例記者会見を毎月開催したり、本年4月より「運輸安全委員会メールマガジン」や「運輸安全ダイジェスト」を発行しております。
 さらに、業務の透明性向上に資するよう、勧告、安全勧告、意見に係るフォローアップの状況、並びに委員会が行っている再発防止に資する情報発信に関わる業務サイクルを、6月よりホームページを用いて、「見える化」しております。
 「被害者への配慮」の観点から、本年4月1日付けで、「事故被害者情報連絡室」を設置し、新たに地方事務所にも情報窓口を置き、東京と地方が一体となって対応する体制整備を行うなど、事故調査情報を適時適切に提供するとともに、被害者やご遺族に寄り添い、双方向のコミュニケーションをこれまで以上に推進しております。
 「組織基盤の充実」の観点から、全国8か所の地方事務所が作成している「地方版分析集」の内容を充実するとともに、地方運輸局等や海事関係者などへ積極的に情報提供をしております。
 今後も引き続き、職員が一丸となって業務改善に取り組み、事故再発防止のため、また、運輸の安全の実現のために欠かすことのできない信頼される組織へと発展して参りたいと考えております。引き続き、ご支援を賜りますようお願いいたします。

2.事故調査の進捗状況報告

 今週、大きな事故が2件発生しております。
 まず、24日(月)早朝に宮城県金華山東方沖の公海上で、パナマ船籍の貨物船 NIKKEI TIGER と、かつお一本釣り漁船 堀栄丸が衝突し、漁船の乗組員13名が行方不明となる事故が発生しました。現在、海上保安庁等において捜索が行われており、行方不明となられている漁船の乗組員の方々が、一刻も早く無事救助されることをお祈り申し上げます。
 また、同日深夜には、京浜急行電鉄の追浜~京急田浦駅間で、特急列車が線路内に崩落していた土砂に乗り上げ、3両が脱線し、10名を超える乗客等が負傷する事故が発生しております。昨日の鉄道局安全監理官室の発表によりますと、重傷者7名、軽傷者21名の計28名の方が負傷されました。
 運輸安全委員会としては、これら2件について調査を開始したところです。

(1)日本貨物鉄道(株)江差線列車脱線事故関係

 続きまして、9月11日(火)に発生しました日本貨物鉄道の北海道江差線での脱線事故について、調査の状況をご報告いたします。資料1をご覧下さい。

 本事故は、19時29分ごろに発生したもので、運転士は列車が泉沢駅構内を走行中非常ブレーキが作動したため、函館輸送指令に報告しました。列車を降りて、車両の点検を行ったところ、8両目の後台車全2軸が脱線したことが判明しました。
 なお、貨物列車の運転士には怪我はありませんでした。
 また、当該列車は、釜谷駅~泉沢駅間の半径300mの曲線内で、進行方向左側に脱線したまま約2kmほど走行した後、泉沢駅構内で停車したものです。
 調査は、事故発生の翌日(12日)から14日に亘り、鉄道事故調査官3名を派遣して、事故現場の調査、車両の調査や関係者からの聞き取り調査などを行いました。
 なお、同線においては、4月26日に近くで脱線事故が発生しておりますが、その概要は資料の別紙のとおりです。
 今後の予定につきましては、事故発生当時の運転状況や車両及び施設調査の深度化を図るとともに、4月に発生した事故との関連も含めて、収集した資料の分析を行うこととしています。

(2) その他の調査の進捗状況

 最後に、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させて頂きますが、詳細は資料2をご覧下さい。
 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(京浜急行電鉄(株)本線列車脱線事故関連)

問: 24日深夜に起きた京急の事故の件ですが、昨日から調査官が現場に入られて調査をしておりますけども、今現在で判明している点があれば教えてください。
答: 現時点では、調査に入ったばかりでありますので、まだ公表できることは少ないですが、本事故は、一昨日23時58分頃発生したもので、追浜駅京急田浦駅間で、線路内に崩落していた土砂に列車が乗り上げて脱線いたしました。8両編成のうち前から3両がトンネル内で脱線しております。脱線の状況ですが、1両目の全4軸、2及び3両目の各前2軸の計8軸が脱線しました。また、トンネルの入り口手前の斜面では、斜面上部にある落石防護工の一部が破損し、それらの基礎の一部が斜面下部まで落下していました。この斜面の下部から線路に掛けては水分を多く含む土砂が堆積していました。事故調査は、事故発生の翌日、25日未明から、鉄道事故調査官2名を派遣しまして、事故現場の調査、車両の調査や関係者からの聞き取り調査などを開始いたしました。今後、引き続き鉄道施設、車両及び気象状況等について情報収集を行い、脱線原因の究明を鋭意行って参りたいと思っております。

問: 先程京急の方が説明をしまして、3両目の車体と客車の部分が離れたとのことなのですが、運輸安全委員会の方ではそのような事実は把握されているのでしょうか。
答: まだ、詳細な点は報告を受けておりません。

問: 今回、土砂崩れに至って、ゲリラ豪雨というか、それ以上の集中的な豪雨があったようだということなのですけれども、ゲリラ豪雨であるとか自然災害が増えているというか激化している中で、鉄道事業者も運行だけじゃなくて土木方面ですとか、多様な対応が必要になってくると思います。これから台風シーズンを迎えるということもあって緊急に執られるべきことはあるのでしょうか。
答: 大変難しいことですが、現在、事故発生時の気象情報、運転状況、運転の規制等を含めて調査中であります。その辺もまとめて報告書にしたいと考えております。過去の例ですが、似たような事故が何件か起きております。平成9年の4月7日に、隣接する京急田浦駅安針塚駅間で発生した列車脱線事故も考慮しつつ、予断を持たずに調査して行くこととしております。

問: 例えばこれまでゲリラ豪雨が増えているとかよく言われていることで、それに対して運輸安全委員会の方で言及するとか、各社に対して何か注意を促したとか勧告を出したとか、そういったことは過去にあるのですか。
答: 局所的な大量の降雨時の事故は今までも何件か起きております。2008年8月に発生した京王電鉄の高尾線の事故では報告書も出しておりますし、また、2009年5月発行のニュースレターの特集号で、気象情報の活用ということで事例の紹介をしております。

(貨物船NIKKEI TIGER漁船堀栄丸衝突事故関連)

問: 堀栄丸の事故の件ですが、初日に調査官を指名したというリリースは頂いていますが、その後はどうなっているのでしょうか。
答: 現在は行方不明になられた方々の捜索中で、船が戻ってきておりませんので、関係者から話が聞けません。ただ、貨物船の航行状態についてですが、NIKKEI TIGERにはVDR(航海情報記録装置)が搭載されておりますので、その情報の入手ができるかどうか検討中であります。それから、今回の事故は陸上局が貨物船のAIS(自動識別装置)信号を残念ながら受信できる範囲外で発生しておりますので、受信が出来なかったと聞いております。

問: それは、何か不手際とかそういうことではなくて性能上仕方ないということでしょうか。
答: やむを得ないことです。外洋で900km離れていますので、無理かなという気はいたします。

問: 今後、どこに行って何をするみたいな見通しは今のところ如何ですか。
答: 捜索が終了して一区切りつかないと調査が難しいということです。

問: いずれにしても調査は寄港後ということですか。どこかの港に来た段階でという感じになるのでしょうか。
答: そうなると思います。

問: たとえば船に乗って現地に行くとか、そういうことは行わないということですか。
答: それは難しいと思います。過去に公海上で外国船と日本漁船が衝突して死亡者が発生した例を、2例挙げますと、平成17年9月28日に北海道納沙布岬沖で、さんま棒受け網漁船とイスラエルのコンテナ船が衝突して漁船の乗組員7名が死亡し、1名が負傷したという事故がありました。それから、最近の事故例としましては、昨年の11月27日、対馬沖で韓国の貨物船と日本の漁船が衝突して漁船の乗組員1名が行方不明となり、1人が負傷したという事故がありました。この事故については、現在、審議中であります。今回のNIKKEI TIGERと堀栄丸のそれぞれの当直者についてでありますが、NIKKEI TIGERは二等航海士と甲板手と聞いておりますが堀栄丸については乗組員からまだお話は聞けておりませんので、分かりません。

問: いずれにしてもまだ双方の乗組員からお話は聞けてないということですね。
答: そういうことです。

(被害者支援関連)

問: 4年間の所感で事故被害者情報連絡室の設置の話があったのですが、その関連で、国土交通省の公共交通事故被害者支援室について、関越でのバス事故の際は、能動的な支援が出来ていなかったという批判があってですね、その後ウェブサイト上に支援室がありますと広報しています。組織は違えど、被害者対応の必要性は共通するものがあると思うのですが、運輸安全委員会としてはどのように考えていらっしゃいますか。
答: 運輸安全委員会としても、航空、鉄道、船舶のモードについて、事故あるいはインシデントに巻き込まれた方、あるいは負傷された方々等に対し連絡をとって、事故等調査の状況を説明するとともに、これらの方々からご意見を伺うなどの双方向の対応をとっているところです。事故によって色々事情が違いますので、どうするかということはなかなか申し上げることは出来ませんが、事故被害者の皆様への対応は重要であると認識しております。例えばどのような対応を期待され、それが果たして今の我々の組織で可能かどうか、それぞれの事故の性質にもよりますけれども、検討して行かなければいけないということは考えております。被害者支援につきましては、国交省の支援室とも連携を強化しつつ、できるところから進めてまいりたいと考えております。

問: 例えば海外では、事故調査委員会と密接した形で、一緒に動く形で支援をしていくというのがあると思いますが。
答: 密接に結びついたということがどういうことかということですね。例えば被害の補償まで一緒に考えるのか。それは行えません。NTSBも行っておりません。あくまでも起こったことに対して再発防止のために色々なご意見を伺うと同時に、今後どの様なことが出来るかということを双方で話し合っていくということが基本であります。

問: それは事故があってからしばらくしてからの話です。ではなくて、調査官の方が事故発生直後に能動的に出動されるのが運輸安全委員会ですよね。
答: 航空、鉄道、船舶の事故が起きた場合には、被害者に寄り添うことを旨としております。最近の小型機の航空事故でも、お亡くなりになられた方については、調査官とは別に我々の職員が遺族の方からよくお話を聞いて、そういうような迅速な対応を行っています。

(日本貨物鉄道(株)江差線列車脱線事故関連)

問: 今回の江差線の脱線事故についてですが、4月に起きた脱線との因果関係や可能性があるということを含めて調べているということですか。
答: レールに乗り上がった箇所を調べたところ、今回は乗り上がり地点が、起点から32k029m、4月の場合は、乗り上がり地点が32k032mで、3メートルしか離れていないわけです。そういうことからも、運転取り扱い、車両、施設を含めて調査を行っているところであります。

問: 4月の脱線事故に関して、現時点で判明していることがあれば教えてください。
答: まだ調査中でありますので、公表できるものは非常に少ないのですが、線路及び車両の破損が著しいために、材料の確保及び機材の調整に時間が掛かり、脱線車両を移動するのに時間が掛かったものということもありますし、また、脱線箇所に脱線防止レールは設置されていませんでした。そのような事実関係は分かっておりますが、分析についてはまだ発表できる段階ではありません。

問: 4月も今回も貨物列車が脱線したということなのですが、ここは普通列車も走っていますが何か関係はあるのでしょうか。
答: 車両の型式等が関係があるのか、その辺も含めて調査していくこととしております。

問: 客観的に、貨物だから脱線したと言えますか。
答: そこまではなかなか言い切れないと思います。

問: 専門家の方は地盤のゆるみなんかも指摘しているのですが。
答: その点も含めて調査中であります。

(カッター(船名なし)転覆事故関連)

問: 浜名湖のカッターボートの関係ですけども、先月海難審判がありまして、事故原因は報告書にあるように左側に傾いたことだけではなくて、その後に曳航されていた船に乗っていた学校の先生が右に舵を切ったことで転覆したということを主張していて、報告書の内容と異なるところがありますが、その点は如何でしょうか。
答: 審判ではそのような場面があったとは聞いておりますが、報告書に書いてあるのは、私どもが調べた中で書いております。

以上

資料

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