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委員長記者会見要旨(平成24年10月24日)

平成24年10月24日(水)14:00~15:02
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、10月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、最初に、事故調査の進捗状況報告として、鉄道、船舶及び航空の案件をそれぞれ1件、勧告に基づき講じられた措置として貨物船SINGAPORE GRACE作業員死亡事故の完了報告についてご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

(1)京浜急行電鉄(株)本線列車脱線事故

 はじめに、先月24日に京浜急行電鉄において発生しました、列車脱線事故について、調査の状況をご報告いたします。資料1をご覧下さい。
 本事故は、9月24日23時58分ごろ、追浜駅~京急田浦駅間において、線路内に崩落していた土砂に特急列車が乗り上げて脱線しました。8両編成の列車のうち、1両目の全4軸、2及び3両目の各前2軸の計8軸が脱線したものです。
 この事故における乗客等の負傷者は、昨日(23日)の時点で53名になっております。負傷されました乗客の皆様にお見舞いを申し上げるとともに、一日でも早くご回復されることをお祈り申し上げます。
 本事故の調査は、事故発生の翌日(25日)未明から、鉄道事故調査官2名を派遣して、事故現場の施設・車両の調査、関係者からの聞き取り調査などを行い、その後も車両の詳細調査や、乗客からの聞き取り調査を行いました。
 これまでの調査では、施設関係として、崩落したのは、トンネルの入口手前の斜面で斜面上部にある落石防護工の一部が破損し、それらの基礎の一部が斜面下部まで落下していました。また、この斜面の下部から線路にかけては水分を多く含む土砂が堆積したことが判明しております。その土砂には、樹木や落石防護工の基礎が混じっていました。
 また、車両関係では、1両目車両の床下の機器は損傷が激しく、落石防護工の基礎を巻き込んだと思われます。また、2両目は、この落石防護工の基礎を前台車付近に巻き込んだ状態で停止していました。
 運輸安全委員会といたしましては、引き続き鉄道施設、車両及び気象状況等について情報収集を行うとともに、入手したこれらの資料の取り纏めを行い、原因究明のための分析を行っているところです。

(2)貨物船NIKKEI TIGER漁船堀栄丸衝突事故

 次に、9月24日(月)未明に発生しました貨物船NIKKEI TIGER漁船堀栄丸衝突事故の調査状況につきまして、進捗状況を報告いたします。その前に、行方不明になっておられる堀栄丸乗組員のご家族の皆様方に心からお見舞い申し上げます。資料2をご覧下さい。
 事故の概要、船舶の主要目、事故発生後の経過等につきましては、資料2ページ、3ページ、4ページをご覧下さい。
 5ページをご覧下さい。現時点における調査の概要についてですが、NIKKEI TIGER側につきましては、船長、当直者2人等に対する口述聴取、船体調査、VDR(航海情報記録装置)データの抽出を行い、堀栄丸側につきましては、乗組員等に対する口述聴取を行いました。
 NIKKEI TIGERのVDRデータについてですが、NIKKEI TIGERが搭載していたVDRは簡易型のVDRであり、記録されていたデータは、船橋での音声、船の位置、針路、速力及び時刻の情報で、レーダー等の情報は含まれておりません。
 VDRに記録されていた位置の情報から、とりあえず、NIKKEI TIGERがバンクーバーに向かう針路から大きくはずれたと思われる部分の航跡を6ページに示しております。なお、時刻は世界時ですので、記載されている時刻に9時間を足すと日本時間になります。
 この航跡から、資料で示した範囲でNIKKEI TIGERにとって何らかの異常事態が生じた可能性があると思われますが、今回の衝突事故との関係については、現在調査中です。
 人間の記憶は時間の経過と共に変質すると言われておりますので、本日までの調査は、関係者からの口述聴取を最優先に行っております。
 今後の調査につきましては、VDRデータの解析を順次進める一方、今までに収集した情報を精査しながら必要な追加調査を行う予定です。

(3)航空重大インシデント 異常接近 中日本航空(株)機長報告

 次に、10月10日に異常接近報告がありました重大インシデントであります。資料3をご覧下さい。
 平成24年10月10日に、中日本航空所属のベル206ヘリコプター、JA9745の機長から国土交通大臣に異常接近報告書が提出されました。翌11日に航空局安全・危機管理監察官から当委員会に同報告書の提出について報告があり、当委員会は、同日、航空事故調査官2名を指名して調査を開始しましたので、現在までの調査で判明したことを説明いたします。
 同報告書によりますと、10月10日、日本時間午前11時22分ごろ、JA9745が名古屋VORTACの南西約8.5マイルの地点を南西に向けて約2,000フィートで飛行中、左下方を白色の小型双発ジェット機が追い越したというものです。最接近時の相手機との距離は、水平距離0.1マイル未満、高度差50フィートとありました。しかしながら、相手機の所属等は確認できなかったとのことです。
 調査の状況ですが、JA9745の機長、訓練生及び管制官から事情を聴取し、また、報告のあった時間帯及び発生地点近辺を飛行しており、同機に接近した可能性のある航空機の機長、副操縦士からも事情を聴取いたしました。その結果、相手機は、ダイヤモンドエアサービス所属のMU-300、JA30DAと判明しましたので、先週19日に航空局安全・危機管理監察官に情報提供するとともに、皆様に公表いたしました。
 異常接近を報告したJA9745は、10時13分に名古屋飛行場を離陸し、同飛行場において計器進入の訓練を行った後、中部国際空港北西にある訓練空域に向かうため、高度約2,000ftで飛行しておりました。一方、相手機であるJA30DAは、9時39分に名古屋飛行場を離陸し、太平洋上の訓練空域において訓練を終え、名古屋飛行場へ帰投するため、名古屋港付近から名古屋飛行場の南西7.3マイルの位置にある万場大橋に向かいました。同機は万場大橋上空で左旋回しましたが、その際に南西に向かって飛行していたJA9745の左後方から接近し、その左側方をほぼ同じ高度で追い越したと考えられます。その後JA30DAは、11時33分に名古屋飛行場に着陸しております。
 両機とも、操縦士が目視により他機と間隔を保って飛行する有視界飛行方式により飛行しておりました。なお、両機は、周辺の交通情報を得るために、中部ターミナル管制所と通信設定しておりました。
 両機の搭乗者に負傷者はおりませんでした。なお、両機には、CVR、DFDR及びTCASが装備されてはいませんでした。
 接近時の詳細な状況及び接近に至った原因につきましては、今後の調査において解明して参ります。

(4)その他の調査の進捗状況

 現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させて頂きますが詳細は、資料4をご覧下さい。

2.勧告に基づき講じられた措置

(貨物船SINGAPORE GRACE作業員死亡事故(完了報告))

 最後になりますが、勧告に基づく措置の状況について、報告がありましたので、ご紹介いたします。
 平成21年6月13日に大分県佐賀関港において、荷役作業中に発生した貨物船SINGAPORE GRACEでの作業員死亡事故についてでございます。資料5をご覧下さい。
 本事故は、本船が佐賀関港の岸壁において、硫化銅精鉱の揚荷役を行う際、揚荷役に従事する作業員が貨物倉で倒れ、救助に向かった作業員2人も貨物倉内で倒れ、いずれも酸素欠乏症により、作業員3人が死亡したというものです。
 本調査結果につきましては、平成24年4月27日に調査報告書を公表するとともに、原因関係者である、精錬会社のパンパシフィック・カッパー(株)佐賀関精錬所、荷役会社の日照港運(株)に対して勧告を行いました。これを受けまして、7月の会見でもご紹介しましたとおり、6月末に両社から実施計画について報告を受けたところです。
 今般、実施計画に添った措置の状況として、両社の荷役に携わる従業員に対して、積荷の硫化銅精鉱や浮遊選鉱剤の性状、危険性を教育すること等につき実施した旨の完了報告がありました。詳細につきましては、資料をご覧下さい。
 これについては、勧告の内容を反映したものになっておりますが、今後も引き続き、より一層の安全性向上に努めていただきたいと思います。
 原因関係者への勧告は、事故の再発防止や被害軽減のために講ずべき措置の実施を求めるものであり、それらが確実に実施され、安全性の向上につながっていくことが肝要であると考えております。
 今後とも、当委員会としてはこのような取組みを重ねてまいりたいと思っております。

 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(貨物船NIKKEI TIGER漁船堀栄丸衝突事故関連)

問: 資料の6ページにある解析されたVDRデータから、現在で考えられている衝突した地点はどこなのかということと、堀栄丸の航路はこれに照らし合わせるとどのあたりになるかということについて教えて頂けますか。
答: 現在調査中でありまして、申し上げにくいことでありますが、VDRデータを見て頂きますと左に湾曲した線がありまして、これはNIKKEI TIGERの航跡ですが、本来の行くべき航路から少し左の方へ湾曲して回っているのがわかります。この辺のどこかで何かがたぶん起きたのだろうということが想像されるわけですが、現在解析中で詳しく申し上げることは出来ません。

問: NIKKEI TIGERの航跡が示されていますが、堀栄丸の航跡もわかるのでしょうか。
答: 堀栄丸にはVDRがありませんので、この図に一緒に航跡を書き込むことは出来ません。

問: データを解析していくと、衝突がどの時間で起こっているか特定できる情報というのは残っているのでしょうか。
答: ありませんが、ただ、VDRデータで音声の記録がいくらか残っております。現在それを解析中であります。

問: それは操舵室内の音声ということでしょうか。
答: そうです。ブリッジの数カ所にVDR用のマイクがありますので、色々な音が入っております。これらの音の中からブリッジ当直者等の音声部分を抜き出し、場合によっては、当直者が日本人ではないので翻訳作業が必要かもしれません。それには、だいぶ時間がかかるということをご了承頂きたいと思います。

問: このデータを見ると大きく左の方に曲がっていますよね。NIKKEI TIGERの認識としては、自分たちが直進する船ではない、保持船ではないという認識に基づいて左に舵を切っているんじゃないかと思いますけども、通常避けるときは右に舵を切るのが一般的だという話もあるようですが、左側に曲がっている理由はなんだと現時点で考えられているのでしょうか。
答: それは今解析中であります。なぜ左に曲がったのかわかりません。まず衝突した時点と相手の航跡も確認しなければなりません。それが果たして左に曲がることが適当であったのかどうか、それも含めて相手の航跡を解析することになりますので、現在の時点ではっきり申し上げることは出来ないということでご了承頂ければと思います。

問: VDRのデータから左に誰かが曲げたという認識でよろしいですか。
答: それは、操舵データが入っていればいいんですけど、NIKKEI TIGERに搭載されていたVDRは簡易型でありまして、レーダー映像等や操舵の記録がありませんので、意識的に切ったのかは記録の上ではわかりません。

問: VDRのデータに関して、今の段階で乗組員の聴取と何か矛盾するような点とかでてるんでしょうか。左に舵を切ったといっている人がいらっしゃるんでしょうか。
答: 現在それを調査中であります。

問: 今回、口述聴取を最優先に実施されたということで、NIKKEI TIGERの船長や当直者2名、乗組員に口述聴取をしたということなんですが、どの様に言っているか説明頂ければと思います。
答: まだそれは公表するわけには参りません。不確定な情報を結論を出す前に公表しますと色々な憶測を呼ぶことになります。

問: 航跡、VDRのデータから言えることとして、バンクーバーに向かって大きく左に曲がる前までは東北東に航行していたところ、午前2時前に急激に左に曲がり始めた。だから、基本的にはこの時間帯に衝突事故があった可能性がある。かつ、避けるという意味では漁船を認めて左側に避けたけども、結局、間に合わずぶつかって事故が起きてしまった。そういう可能性がある、それがどこの時点かはわかりませんが、そういうことが言えるのではなかろうかということでよろしいでしょうか。
答: そういうシナリオは考えられます。それが正しいかどうかは、今後の結果待ちです。

問: これ以前も以後もデータは存在しているわけでよろしいですか。そのうち、この部分を今日は抜き出して公表して頂いたということでしょうか。
答: そうです、データはあります。

問: この時点から左に曲がり始めているという起点がここだということでよろしいですか。
答: 何の起点かわかりませんが、この辺から何かが起こったのだろうということは想像できます。付け加えさせていただきますと、バンクーバーに向かっているスタートの方、これはバンクーバーに向かっている針路でございます。そこからぐっと曲がったところを今回お示ししたのですけれど、もうひとつ、4ページに遭難信号の受信時刻これが2時31分という記載になっています。そうすると、どちらかが何かあったんだろうと思うのですけど、それが今回示したところで事故があったのか、それとも2時31分少し前頃にあったのか、それはこれからの調査でございますので、今回示したところで起きているというのは、まだ確定しておりません。ただし、何かの異常事態が生じなければ、こういうコースにはならないでしょうということで、お示ししております。そこをご理解頂ければと思います。

問: 2時31分のところの航跡は残っているのですか。
答: はい、あります。

問: そこはどういう航跡になっているのですか。
答: そこまで解析しておりませんので、今回出しておりません。今回は最初に何か異常事態が起きたと思われるところをお出ししました。そういうご理解でお願いします。

問: 一番最後だと何分まであるのですか。
答: 1時58分13秒が資料で示している図の最後になります。遭難信号を受信した時刻が2時31分ですから、これと合わないのです。

問: 一般的に遭難信号というのは、事故が起きたときにタイムラグが無く発せられるものなのですか。
答: 船には、イパーブという非常用位置指示無線標識装置がありまして、これが沈んだ船から浮いたはずなんですけれど、そのスイッチがたぶん人為的には入れられてなかったのではないかと。水圧で本船から自動離脱して浮上し発信した場合、何らかの理由により、自動離脱までに、又は、浮上した時間がかかったということで、つまり衝突した時刻ではない場合があります。ずいぶん時間がたってから発信した可能性もあります。
補足ですが、何かあったときにすぐにスイッチを押せば、おそらくすぐに届く可能性が高いのですけれど、過去の事例でもありますけれど、イパーブを積んでいる船が沈んでも全く発信されなかったこともあります。おそらく船と一緒に沈んでしまった場合、これは発信されません。それと、イパーブというのは人工衛星を使ってキャッチしておりますので、キャッチする人工衛星が飛んでくるまでの時間差というのもあります。どうして今回異常事態が起きたと思われるところと受信時刻の差ができたというところもこれからの調査対象になりますので、最終報告書ではそのあたりも書くようになるかもしれません。

問: 自動で発信するものではなくて、押すとかしないとダメというものですか。
答: 押してもできますし、誰も操作しなくとも、船が沈んで水圧がかかると自動的に浮くようにもできています。ただ、浮くときに船のどこかにひっかかってしまうということもありますので、その辺は船体そのものも沈んでしまっていますので、わかりません。

問: そうすると、今回、こういう航跡を出されたのは、おそらくこのうちのどこかに何かがあったのだろうと思うから出されているのではないのですか。
答: 最初の異常事態が生じたのはこの辺で、一つの要件としては、衝突かもしれません。また、違うかもしれないので、それはこれからの調査ということになります。

問: お尻をここで切っているのは、これは何のためですか。
答: ここまでデータを解析したということです。

問: ここから先はまだないということですか。
答: これから解析します。

問: この航跡のうち、もともとバンクーバーへ進んでいたと思われるのはどの部分になりますか。
答: 直線の部分です。

問: 時間でいうと、16時54分42秒、それぐらいまでは、もともとのバンクーバー方面へ進んでいた航路と理解してよろしいですか。
答: そうです。北東の方向に進んでいるのがバンクーバーへ向かっている方向です。

問: 54分57秒から55分13秒にかけて、だんだん角度が大きくなっていますが。
答: 船は舵を切ってもすぐに回りませんので、この船の場合ですと、大体の計算ですけれど、ぐるっと回るまでに600mぐらいの直径を要しますので、舵を切ってかなり時間がたってから回り始めるということですので、必ずしもぐるっと回ったところが舵を切ったところではないということが船のほうの常識です。

問: 基本的にはこういう風に進んでいる船なんですけれども、実際に回り始めたのがこの辺からということですか。
答: こういう大きな回りというのは、普通ではでてこないと思われますので、そういう意味で今回、示させていただきました。

問: そういう意味でいうと、遭難信号を受信したのは30分後ではありますが、これよりはたぶん30分ぐらい前ということですか。
答: それはあるかもしれません。ただ、異常事態が生じたのは、この付近から始まっていて、遭難信号を受信したのが2時31分ごろ、その間で何かあったというのは言えるかと思います。

問: これだけ回避するような航跡をたどっていることを考えると、少なくともこの前後で何かがあったと推察されると。遭難信号を受信したのは約30分後くらいありますが、これは沈んだものが浮いてきたときに発信することは、ままあるので、そう考えると30分前に実はあったのではないかということは可能性としては考えられますね、そういうことですか。
答: 可能性としてはありますけれど、もしかしたらすぐ浮いたかもしれない、その30分間のどこかはわからないので、それはこれからの調査で明らかにしていくつもりです。

問: 確認ですが、先ほど舵を切り始めてどの位かかるとおっしゃられましたか。
答: この船は全長が約200m弱です。1回転するときの直径を統計的に見ると、船の長さの3倍から4倍と言われています。200mですので、600mから800mの直径が舵を一杯に切ったときの船の重心の軌跡と言われています。

問: 時間的には何分くらいかかるのですか。
答: 時間的もありますけれど、スピードも関係ありますので、今3倍から4倍といったのは一般的な傾向です。この船の場合ではありません。

問: この場合でしたら、大体世界時間で16時53分過ぎとか、そこまでは言えないということでしょうか。
答: はい、計算しないとわかりません。

問: NIKKEI TIGER のスピードはわかっているのですか。
答: はい、スピードはわかっています。

問: スピードは教えていただけますか。
答: 北東の方向に航行しているときには約12~3ノットくらいです。曲がり始めますと船体抵抗が増大しますので、速力は約半分くらいまで落ちていたと記憶しています。

問: VDRのデータというのは、例えば何かに接触したという場合、そういったものを記録する機能は備えているのですか。つまり、衝突すると、当然、針路と速力に変更がでると思うのですけれど、そういうことを記憶しうるものですか。
答: そこまでは記録されておりません。

問: つまり、ぶつかっても針路に変更とか、著しい動きの変化がなければわからない、ということですね。
答: 仮に針路の変化があっても、それがぶつかって生じたのか、波とか風の外力で動いたのか、わかりません。

問: 動きが出れば、動きだけはわかるのですか。
答: 動きだけは記録されます。

問: 変化が出るでしょうから、そこをそうだったのかどうかは調査によるところであるということですか。
答: おそらく、それから推測するのは難しいかもしれません。これだけの時間間隔で記録していますので。

問: ぶつかったときの衝撃音というのは記録されるものではないのですか。
答: マイクに入っていれば記録されます。

問: それはこれから解析して、いろんな音を排除していくということですか。
答: 排除して、通常は聞こえない音が入っていれば、もしかしたらそうかもしれませんが、通常聞こえない音というのは、どういう音なのか、非常に難しい。物を落とした音でも全部拾ってしまいますから。

問: 今のところは、その衝撃音が特定されているところまで解析はされていないということですか。
答: 解析は進んでいません。

(京浜急行電鉄(株) 本線 列車脱線事故)

問: 当時怪我をした運転手さんから聴取をしているということなんですが、例えば、土砂に気づいていたかいなかったかとか、ブレーキをかけたとかかけなかったとか、そういう口述は取れているのかどうかについてお願いします。
答: 口述はありますが、内容についてはお答えできません。

問: 今後の調査をしていく上でのポイントというか、明らかにしていきたい点というのを改めてお聞かせください。
答: いくつかありますが、土砂崩れがどういう状況で起きたのか、同じような斜面管理の状況、つまり、線路の横の斜面の固め方をしているわけですから、そういうのが十分であったかどうか、そういうことも含めて、落石防護工というのが作ってあるわけですけど、そういうのが十分な対策が出来ていたのか、その辺のことを調べなければいけないと思っています。引き続き、入手した資料の取りまとめを行って、落石防護工を含め、原因究明のための分析を行って参ります。

問: 防護工のところですけど、防護工の基礎が完全に崩壊してしまっているということなんでしょうか。
答: 落石防護工は斜面の上にあり、上から落石があった場合に防護工で遮ります。1m1m1mくらいの基礎が植えてあって、そこに柵を立ててあるものです。それが基礎ごと落ちたということです。

問: 鉄製柵があるとありますけど、それとは違うんですか。
答: 柵を支えるための基礎が植えてあり、それが落ちたということです。

問: 京急のあの日の発表であれば、台車が車体から外れてしまったとか、そういうことを言っていたと思うんですが。
答: 運輸安全委員会で調べたところ、台車が外れたものはありませんでした。

問: 激しい損傷とはどういう状況をいうのでしょうか。
答: 5ページの写真で1及び2両目の車両等の状況のことを言っています。

問: 防護工の基礎のコンクリート部分が落ちたことによって被害が大きくなったというような理解でもよろしいんでしょうか。
答: それは分析してみないことにはわかりません。土砂が落ちてきて、それが線路に積み上がり、それに乗り上げました。ただ、どういうところが一番車両の破損に寄与したかについても解析が必要です。

問: 単なる土砂崩れじゃなく基礎まで壊れてコンクリートの大きな固まりが線路上に落ちたことによって車両の損傷が激しくなって、さらには負傷者の数も多くなったという可能性もあるわけですか。
答: 車両が土砂に乗り上げたこともあるが、それは原因の一つだとは思います。

問: かつての京王電鉄でも同様のことがあったかと思うんですが、あのときは基礎が落ちてしまうというケースでは無かったと思うんですが。
答: 京王線は違います、落ちておりません。

問: 基礎まで落ちてしまうというのは防災対策として問題ではないのですか。
答: 資料に、アメダスの情報や事業者の雨量計等の記録が載せてありますが、この程度の雨量を果たして予測していたのかどうか、また、設置時期、防護工が作られた条件等を調べていかなければならないと思います。

問: 1両目にぶつかったコンクリートの、この時点での大きさはわかりますか。
答: 約1m角のサイコロ状のものでした。

問: 見つかったのは1個ですか。
答: 複数見つかりましたが、列車に衝突したのは1個です。

問: 元々何個あったんですか。
答: 7個あったと聞いておりますが、調査中です。

問: 現時点までに判明した事実のところで、土砂が堆積箇所から80m進んで止まっていたということなんですが、現場の状況から分かったのでしょうか。線路の枕木に下に巻き込んだものがひっかかって止まったのか、それとも後ろは線路にのっているわけで、ここで急ブレーキが効いて止まったとか、1両目が脱線しているので、なぜ、ここで止まれたのでしょうか。
答: 前のほうが脱線していますし、抵抗もありますし、下に土砂も含まれていますので、その関係だろうとは思いますけれど、何メートルで止まったかまでの解析はまだ、終わっていません。

問: 1両目は土砂にぶつかった瞬間から、線路とは接触しない状態で80m進んでいたということですか。
答: 脱線箇所等については解析中で、まだお答えできません。

問: コンクリート塊ですが、京急さんは何かモルタルを吹き付けてその上に防護工を設置したと当時の会見で言われていたのですが、いわゆるモルタルというのはこのコンクリート塊と一緒なのでしょうか。
答: 京急さんのご説明が分からないのですが、おそらく京急さんのモルタルの吹き付けというのは、斜面に吹き付けているものをご説明されているのではないでしょうか。それとは別に上から落石を防ぐために止めている基礎です。

問: モルタルの吹き付けというのは、写真を見る限り、どこに吹きつけているのかわからなかったのでうかがったわけですけれど、あったわけですか。
答: 京急さんのご説明が分からないので、一般論ということでお聞き願いたいのですが、斜面の安定化のために斜面に対してモルタルといいますか、コンクリートを張り付けている箇所もありまして、そのことをおっしゃっているのではないかと思います。そこは、京急さんの説明を聞いていないので、わかりません。ただ、今回の基礎については、一般的にはモルタルという表現はされないものですので、違う部分ではないかと。

問: そうすると土砂の中にモルタルとか、モルタルと一緒に土砂がはがれてとか、そういったものはあったのですか。
答: 土砂の堆積しているものが多いものですから、そこまでは申し上げられません。モルタルは下のほうにあり、その上を滑り落ちたという感じです。防止柵はその上にあります。資料の4ページ、そこの下の図を枠で囲んだところですが、「モルタル吹付+落石防止網」と書いてありますね。

問: 先ほどの落石防護工の基礎、コンクリートの、これは落石防止網のことですか。
答: 鉄製柵の基礎のことです。

問: この鉄製柵のサイコロが7個あって、そのうち1個が落ちてきた。防護工の基礎ではないのか。
答: はい。この鉄製柵という言葉がちょっと、鉄製柵というのは、防護工の基礎です。

問: 鉄製柵自体はどこにいったのですか、落ちているのか。
答: そのあたりに落ちていると思います。それ自体よりも大きな基礎のほうを意識して記載しています。

問: 基礎というのは、1両目に一つ巻き込まれていて、2両目の台車のところにも一つ巻き込まれていて、計二つ車両の下にあったということですか。
答: 1個が1両目にぶつかり、それが後ろのほうに行って2両目の前台車のところで引っかかってということで、同じものが1両目にも2両目にも引っかかったということです。

問: 残り6個はどこにあるのですか。
答: そこは確認中で、まだわかっていません。

問: 線路の下部までは落ちてはいないのですか。
答: 下まで落ちているものもありますし、上に残っているものもあります。

問: 怪我人が53名おられますけれど、1両目2両目に集中しているとか、そういうデータがあるのですか。
答: それはまとめてあります。1両目に重傷者が7名、3又は4両目に1名、それからどこにいるかわからないですけれど、重傷者が1名となっており、全員で9名です。それから重傷者9名を含む怪我人ですが、1両目が20名、2両目が5名、3両目が2名、4両目が2名、3又は4両目に1名、不明が23名です。

問: やはり1両目にかなり多いということですか。
答: はい、そうです。20名です。

問: コンクリートに乗り上げて、車両が傷ついたことが原因かもしれないと、そういう風に見ているのですか。
答: 傷ついたというより車両が大きく運動した。

問: 怪我人で不明というのは、ご本人が覚えていらっしゃらないということですか、意識していなくてわからないということですか。
答: 調査中でまだ確認できない方と、正確に場所を覚えていない方の両方の方がいらっしゃいます。

問: 少なくとも前方車両には乗っていたとか、そういうことは言えないですか。
答: 今聞いている範囲では、お答えしたことが正確にわかっている範囲のものです。

問: 1両目に20人というのは、わかっている範囲で20人ということであって、さらに不明の23人のうちに1両目にいる方もいるかもしれない、1両目に少なくとも20人はいたということですよね。
答: はい。

問: 1m四方のコンクリートに1両目は乗り上げたということですか。
答: ぶつかってはいると思いますが、乗り上げたとまでは確認できておりません。
くわしい状況を再現するのはちょっと難しいかもしれません。ある程度まで再現するのにちょっと時間がかかるかもしれません。

(航空重大インシデント(異常接近 中日本航空(株)機長報告)関連)

問: 名古屋のヘリのニアミスの件ですが、推定発生場所で、ダイヤモンドエアサービスのMU-300が太平洋上で訓練をしたあと、県営名古屋飛行場に戻ろうとしていたと。目視通報点である万場大橋へ向かって左旋回して接近したと。もう少し前後を、どういうルートを通って名古屋飛行場へ戻ったのか教えて頂けませんか。
答: その辺は今解析中です。詳しくはわかりません。

問: 高度を下げるために旋回したんですか。
答: 今日お渡しした航跡図も、まだ想像図でありまして確定的な詳しいことが入っているわけではありません。それと、接近したとありますけど、このところで一番近くなったともいえなくて、本来は、高度差もあります。図は平面ですから。ヘリコプターの方が最初に先に出てて、最後に曲がったときに黄色い線に沿ってMU-300が追い越していったんですよね。そんな風な状況になってると思いますけど、その辺、レーダー記録等があればいいんですけど、それの存在も含めて現在、どういう記録があるかを確認中であります。

問: MU-300の機長からは、ヘリが見えたとか見えなかったとか、そういう口述はとれているんですか。
答: 機長の口述は得ておりますが、内容は調査中につき申し上げられません。

問: 時間帯からしても特にMU-300が逆光の方向にヘリがいたわけでもなさそうなんですけど、気づかなかったとか、気づいていたけど大丈夫だと思っていたのかとか、その辺りはどうですか。
答: まだその辺も含めて調査段階です。

問: 速度の差はそれぞれどのくらいだったかということはわかるんですか。
答: その辺も今のところはわからないですね。ただ、ヘリコプターと普通のジェット機ですから、相当の速度差があることは想像が付くと思います。

問: 目視通報点というのはどういうものなのでしょうか。
答: VFRの飛行機が、自分がどこを通過しているかということを最寄りの管制機関へ連絡するわけなんですけれど、その通過点のことです。ここに限らず全国のいろいろなところにあります。

問: 自分は万場大橋からどっちの方向に、どこにいるかという基準点ということですか。
答: 上空通過のときに、今ここにいますということを最寄りの管制機関なりフライトサービスなりに通報する目印になります。

問: 目印であって、必ずしもその上を通らなければならないということではないということですか。
答: はい、そういう義務はありません。

問: 場所が万場大橋上空付近だったであろうということで、ニアミスがあった場所が名古屋の市街地の上空だったということで、市民からすれば結構驚くような状況だったと思うんですけど、その辺り、運用上の改善すべき点はあるのでしょうか。
答: その辺はまず管制交信記録がほしいと思っております。それと両機に積んである装備ですが、CVR、DFDR及びTCASもありません。それら記録がないところでどうやって二つの飛行機の航跡を割り出していくか、管制交信記録とレーダー記録があれば、その辺の記録を総合して推測していくしかないというところです。

問: 記録はあるんですか。
答: レーダー航跡記録等、中部ターミナル管制所のデータについては航空局にその提出を依頼しているところです。

問: 本来はあるはずのものなのでしょうか。無いこともあり得るのですか。
答: VFRですから、無いこともあり得ます。時間がそんなに経っていませんから、録っていれば記録されているはずです。ただ、両機には記録装置はありません。VFRなので装置についても法令によって装備を義務づけられておりません。ですから他の管制交信記録等から我々が推定しなければいけないわけです。

問: 両機との交信がないということの意味は、県営名古屋飛行場の管制官と両機との交信がないということですか。
答: この両機については、周辺の管制機関との交信を行っていました。一般的にVFRの飛行機でも管制機関などと必要に応じて交信します。

問: ニアミス前後に交信していたかがまだわからないということですか。
答: そのあたりの通信の状況については、込み入っておりまして、レーダーデータ、口述、交信記録を入手して、これらを精査して明らかにする予定です。

以上

資料

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