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委員長記者会見要旨(平成25年1月23日)

平成25年1月23日(水)14:00~14:48
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。ただいまより、1月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、事故調査の進捗状況報告として、航空の案件を1件、船舶の案件を2件、勧告に基づき講じられた措置として長崎電気軌道(株)大浦支線における重大インシデントの完了報告についてご報告いたします。

1.事故調査の進捗状況報告

(1)全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連

 はじめに、先週の1月16日に発生しました全日空の高松空港における重大インシデントについて、調査の進捗状況をご報告します。資料1をご覧下さい。
 2ページ目に概要をまとめております。全日本空輸株式会社所属のボーイング787-8型機JA804Aは、平成25年1月16日(水)8時11分、羽田空港に向け山口宇部空港を離陸しました。上昇中、バッテリーに不具合を示す計器表示とともに、操縦室内で異臭がしたため、目的地を高松空港に変更し、8時47分同空港に着陸しました。着陸後、誘導路T4上で非常脱出を行いました。その際に乗客1名が手首の捻挫、他の乗客2名がかすり傷等の軽傷を負いました。「非常脱出スライドを使用して非常脱出を行った事態」であり重大インシデントとして当委員会が調査を行うこととなりました。機体の損傷等については、機体前方下部の電気室に設置されているメインバッテリーが大きく損傷していました。
 3ページ目をご覧下さい。同機の推定飛行経路及び高松空港で非常脱出を行った場所の位置関係を示しております。ちょうど、同空港のT4誘導路で停止し非常脱出を行いました。
 4ページ目をご覧下さい。同機の外観を示しております。赤い丸の部分をご覧いただくと、機体左側前方下部の2カ所のバルブから後ろ側に煙の跡のようなものが機体の表面にこびりついています。
 5ページ、6ページ目に今回損傷したバッテリーの様子を示します。5ページ目では、バッテリーの青い箱の上部がふくらみ、内部から黒い液体状のものが液漏れしていることが分かります。また、6ページ目の写真では、メインバッテリーは、内部が黒く炭化しており大きく損傷しているのが分かります。バッテリーの大きさですが、長さが36cm、幅34cm、高さ21cmであります。
 7ページ目にこれまでの調査状況をまとめてありますのでご覧下さい。
 なお、バッテリーは、昨日の午後からJAXAにおいて、全体のCTスキャンを行い、内部の状況を調べているところです。この作業が終了次第、京都のバッテリーメーカーに輸送し、さらに分解調査を行うことにしております。
 また、飛行記録装置のデータの解析も続けております。それによれば、メインバッテリーの電圧は、特に異常な高い値を示していないことが分かりました。
 米国のNTSBが1月18日に高松空港に到着し、その後も引き続き運輸安全委員会の調査に参加しております。また、フランスの事故調査機関とも連絡を取り合っております。
当委員会としては、米国NTSBなどと協力し、速やかな原因究明に努めて参ります。

(2)競そう用ボート(船名なし)転覆事故

 次に、昨年12月26日(水)10時30分ごろ千葉県東庄町黒部川で発生しました競そう用ボート(船名なし)転覆事故の調査状況につきまして、調査の進捗状況をご報告いたします。資料2をご覧下さい。
 初動調査を終え、関係者から口述聴取を行っているところですが、事故の概要は、千葉県東庄町の黒部川において、3泊4日の予定でボート競技のジュニア選手強化の目的で合宿中、平成24年12月26日10時30分ごろ1人乗り競そう用ボート(シングル・スカル)18艇が転覆し、低体温症の症状が見られた6人が病院に搬送されました。なお、病院に搬送された6人は、その日の内に退院しております。
 事故の発生場所、シングル・スカル及び当時の気象状況につきましては、資料の2ページ~4ページをご覧下さい。
 今後は、練習時における安全管理などについて収集した情報を精査し、必要に応じて追加調査を行う予定です。

(3)砂利運搬船成和丸爆発事故

 次に、昨年12月11日(火)に大阪市北区にある大川の係留施設で発生しました砂利運搬船成和丸爆発事故についてです。資料3をご覧下さい。
 12月13日から15日にかけて現地に船舶事故調査官2人を派遣し、初動調査を行いました。
 初動調査により、前日交換したばかりのプロパンガスボンベの中味が、ほぼ全量放出されていたことが判明しました。このことから、プロパンガスが何らかの理由で漏洩、引火して爆発したものと思われます。
 運輸安全委員会は、詳細な調査を行い、原因を明らかにして再発防止策を検討することにしておりますが、過去にもプロパンガスによる爆発事故が発生しており、その多くがガスボンベやガスコンロ等の不適切な取り扱いによって発生していることから、同種事故の再発防止のために関係行政機関(国土交通省海事局)に対し、本日(1月23日)情報提供を行います。

(4)その他の調査の進捗状況

 現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させて頂きますが詳細は、資料4をご覧下さい。

2.勧告に基づき講じられた措置

長崎電気軌道(株)大浦支線における重大インシデント(完了報告)

 続きまして、勧告に基づく措置の状況について、報告がありましたので、ご紹介いたします。
 平成22年10月21日に長崎電気軌道株式会社の大浦支線において発生した鉄道重大インシデントについてです。資料5をご覧下さい。
 本件は、昨年6月の定例記者会見において、完了報告の一部を中間報告として公表したところですが、今般、最終の完了報告がございましたのでご報告いたします。
 まず、本重大インシデントについてですが、単線区間に対向車が存在しているにもかかわらず、運転士が通票を確認しないまま車両を進入させたことにより発生したもので、関係社員に対する教育の内容や方法及び現場での作業実態の把握が十分でなかったことが本事故の発生に関与した可能性があると考えられます。
 本調査結果につきましては、平成23年9月30日に調査報告書を公表するとともに、同社に対して、輸送の安全を確保するために講ずべき措置について勧告し、同年11月30日に同社から実施計画について報告を受けていたところです。
 完了報告の内容については、保安方式に関する教育の実施、研修における理解度の把握、基本運転の実施等の検証のための添乗の実施など実施計画に基づいた対策を実施した旨の報告でございました。これについては、勧告の内容を反映したものとなっておりますが、今後も引き続き、より一層の安全性向上に努めていただきたいと思います。
 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連)

問: 787の件ですが、DFDRを解析した結果、特に異常な高い電圧を示していないことがわかったというご発言がありましたけれど、具体的に、どこのセンサーでどれくらいの電圧が記録されていたのでしょうか。
答: いわゆるメインバッテリーです。記録はまだお見せするわけにはいきませんが、バッテリーの電圧としては31ボルトの電圧が継続的に出ておりました。バッテリーが損傷する頃からガタンと下がって、上下に繰り返しながら下がっていった、そういう記録が得られてはおります。

問: メインバッテリーの電圧というのは、どこのセンサーで取っているのですか。
答: DFDRの一部に記録があります。

問: バッテリーには、8つのセルが入っているじゃないですか。それをまとめたものですか。
答: トータルとしての電圧をまとめたものです。

問: 継続的にというのは、これはどういうことですか。
答: つまり、飛行中は使っていないわけです。その間は一定のレベルを保っていると、そういう意味です。

問: そうすると飛行中はずっと31ボルトだったということですか。
答: はい、そうです。

問: 損傷する頃から下がってというのは、これはどういう意味でしょうか。
答: 時点をまだ明確に言うことは出来ませんけども、あるところからガタンと落ちて、上下を繰り返しながら収斂をしていったということです。

問: これについて、委員会の方ではどういう見方をしているのでしょうか。例えばこのまま見ると、いわゆる過充電はなかったのか。
答: 過充電を示すデータは、直接は見られておりませんが、本当にそうでなかったのかどうなのか結論付けるのはまだ時期尚早だと思います。他のデータや現在行っているバッテリーの調査等を踏まえて原因を明らかにしていきたいと考えております。

問: そういう意味で言うと、電池そのものに何か問題があったんじゃないかという見方もできるのでしょうか。
答: 可能性はあるかもしれません。それを調査中です。

問: あるところからガタンと落ちて上下を繰り返して下がったと。それは何分間くらいのことなんでしょうか。
答: 今、手元にデータがないのではっきりしたことは言えません。

問: NTSBが調査しているボストンでの日航機での出火トラブルでも、数字が32ボルトということなんですが、規格が違うんですか。
答: ちょっと違うんですよね。1個が4ボルトなんです。8個付いておりますので、直列ですから4掛ける8で32、そういう計算です。

問: 規格が32で、この全日空機は31ボルトがずっと続いていたと。
答: 基本的には定格出力は28ボルトになっております。ただ少し幅はあります。その幅に対応するように機器が作られている、そういうことです。システムに電源を供給する、母線というんですが、これが28ボルトが公称値ということになっています。このバッテリーはリチウムイオン電池ということで、8つのセルがありまして、それをフルに充電すると公称値では32ボルトぐらいになります。この32ボルトというのは電源を繋いで、電流を流さない状態で、何も繋いでいない状態でフル充電すると32ボルトということになります。今回31ボルトと、流れない状態で31ボルトというのがDFDRのデータでわかっていますが、それは、32じゃないからおかしいとかそういうことではなくて、製品上の誤差の範囲とか、あるいはわずかだけどフルには充電されていなかったとか、特段その1ボルトの差が異常だとか、そういう風には思っておりません。

問: 8つセルがあって、それぞれが電圧にムラがあったかどうかは分かっているのですか。
答: それはまだ確かめられておりません。

問: ひとつひとつのセルの電圧状況を確かめることは可能なんですか。
答: DFDRデータは8つ直列に繋いだものの電圧しかわからない。今後調べられるかどうかはわかりません。ただ、同じような規格のものがAPU、補助動力装置があります。これを動かすための電池がありまして、それは損傷がありませんので、どこがどうなるかというのを調べるのが今後の予定であります。

問: ボストンの事例と比べて、現状はどのように考えていらっしゃいますか。特段の異常がなかったとのことで、何が原因だと考えられていますか。
答: ボストンで発生したのは日航機の事案ですが、現在、米国の国家運輸安全委員会、NTSBが主体となって、煙が発生したAPUバッテリー、補助動力装置ですね、このバッテリーを中心に詳細な調査が行われています。一方、高松で発生しました全日空機の事案については、煙が発生しましたのはメインバッテリー、これは前部にあります。APUバッテリーは後部に付いております。当委員会ではこのバッテリーを中心に現在、詳細な調査を行っているところであります。メインバッテリーとAPUバッテリーは、仕様は同じですが、その運用や装備位置は異なります。このため、当時の状況、バッテリーの損傷状況等を詳細に調査する必要があると考えております。現在、詳細な調査にかかったばかりでありまして、詳しいことを申し上げるわけには参りません。当委員会では引き続きNTSB等と協力して全力で原因究明に取り組んで参りたいと思います。

問: 外部から過剰な電圧がかかった形跡は見られないということですか。
答: それは調べてみないとわかりません。

問: 充電器の電圧というのはどうなんですか。
答: 充電器のデータはありません。

問: そうするとこの電池システムのところでいうと、このバッテリーの8つのセルを合わせた電圧部分しかわからないということですか。
答: 6頁の左側の図を見てください。これが壊れたものです。電源の取り出し口はこの図では見にくいんですが、黒くなっているバッテリーの写真の上部の上下方向に2つ太い棒のようなものが微かに、見えると思います。これがバッテリーの電源の取り出し口です。

問: バッテリーの電圧が異常に高くなっていないということで、外部から過剰な電圧がかかった形跡は無いという風におっしゃったんですが。
答: 記録からはわかりません。

問: バッテリーの電圧が正常だからといって、それだけで外部から過剰な電圧がかかったということにはならないというのはどういうことなのか。具体的にはどうですか。
答: 飛行中は充電しているだけでバッテリーは使っていないんです。外部へバッテリーから出力が出るところはスイッチが切れています。充電しているだけで電圧が一定に保たれています。それが、どこで、あるいはどういう事情で電圧が下がり始めたのか、それが調査の目的です。それを今から調べていきます。おっしゃる意味はわかりますが、それを今から調べるという風に理解して頂きたいと思います。

問: 電圧が下がり始めたのが、大まかであったとしても、発生時刻くらいなのか、もっと前にあったのか、そこら辺だけでも教えてください。
答: それはデータを見ないとわかりません。時間の合わせ込みというのはまだしてないデータですので、図に書いております8時26分、場所は確認できていないんですが、今そういう時刻の合わせ込みという作業を行っているところですので、今のところ何とも言えないということです。

問: 例えば電圧が過剰に上がっているのであればそれで発熱したと因果関係がある意味わかりやすいんだと思うんですが、下がってるということでわからないということですか。
答: ガタンと下がってるんですね。どうしてそうなったのか。つまりバッテリーに損傷が起きたからそうなったのか、あるいは何かの事情があって、下がり始めたのか、その辺の事情がよくわからない、そういうことです。

問: その辺りを究明するのにどれくらい時間がかかるのでしょうか。
答: 何とも申し上げられません。現在、外観を調べていて、正常なものとの比較もありますが、今後、然るべき所に移して内部の観察をする予定です。

問: 31ボルトというのは電池内の電圧という理解でよろしいですか。
答: 直流になっていますから、全体での出力の電圧が31ボルトということです。

問: 充電するときは、出力じゃなくてこっちに入ってくるものではないんですか。電池内電圧と、電池に電流を送ろうとする電圧との関係がちょっとわからないのですけど、バッテリーで31というのは、メインバッテリー全体の電圧が31っていう意味ですよね。
答: そういうことです。

問: 先程のスイッチが切れているということは。
答: 外部へ出ていくところのスイッチは切れておりましたと、そういうことです。

問: それと電圧を計測するセンサーの位置関係はどういう関係なんでしょうか。
答: 電圧を計測するセンサーは別のところにあると思います。

問: スイッチが切れているか切れていなかったかというのはどういう意味合いでしょうか。
答: 外部の機器に電力を供給していないということです。飛行中はエンジンで発電機を動かして、その電力で賄っているわけです。その間はバッテリーは切れてます。離陸する前に、エンジンが動いてないときに動いて、バッテリーが消耗した分を充電している、そういうことです。

問: その間31ボルトをずっと保っていたということですか。
答: 保っていたということです。

問: 外部の機器に電力を供給すればバッテリーの残量が減っていきますよね。そうすると電圧が31ボルトから下がっていくということですか。
答: 下がっていきます。

問: 急激に下がってきたときに、もうスイッチは入っていないんですか。外部の機器には電力を供給していたわけではないと。急激に下がったときにスイッチは入っていたのか入っていないのかを確認できたのでしょうか。
答: スイッチについては今確認中です。外に使っていたのかについては、基本的には使っていないと思います。飛行中は、右と左のエンジンのそれぞれ2つの交流発電機で供給します。バッテリーは、飛行中は非常用電源ですので、両方のエンジンが止まらない限りメインバッテリーから電源が供給されることはありません。メインバッテリーのスイッチが切れていたと言ったのは供給していなかったという意味です。メインバッテリーに対する充電は、バッテリーチャージャーからの最大32ボルトの供給なのですけれどもそれについてはDFDRに記録されていないのです。今回記録されているのは、バッテリーの外側にあるセンサーで、8つ電池が繋がっている、直列の供給可能な電圧を示しています。

問: つまり、バッテリーの残量がほぼフルに近かったということですか。
答: 要は、大体フル充電の状態を保っていたということです。

問: 外部の機器に、スイッチが入っていなかったことは確かなんですよね。誤って入っていたとかはないですよね。
答: 飛行中は基本的にバッテリーは外部の機器とは繋がっていないんです。煙を感じたのは飛行中なんです。それで緊急着陸を敢行したと。実際の状況は、そのときにはバッテリーの電源は使われていなかったはずなんです。にも関わらずそういうことが起こったと、そういうことです。

問: バッテリーが外部機器に電気を供給していないのに、電圧が下がるというのは、どういう時に考えられるんですか。
答: それはわかりません。あるいはバッテリーそのものが損傷したからそうなったのか。ですからそこを現在調査中だということです。

問: 先程のセンサー、DFDRのデータを取っているというのは、バッテリーから電源を送る先の間のところでセンサーがあるということですよね。バッテリーから何かあったときに。
答: 機器に起こるバスの途中じゃなくて、別系統で電圧を測っている、そうとった方がよろしいかと思います。

問: 電圧が下がったとき、過放電といった感じになるんですか。全く電圧が一気に下がるというのは。リチウムイオン電池は過充電、過放電というのをよく聞くんですけども。過充電とういうことではなく、過放電、放電をバッと一気にしてしまうということなんでしょうか。
答: それを知りたいわけです。

問: 電流のデータというのはあるんですか。
答: それはありません。

問: 電池でいうと調べられるのは8つの電圧だけということですか。
答: 外部に電気が流れていれば電圧と電流の関係はわかりますけど、流れていないわけですから。

問: 過放電の可能性もないということですか。
答: それも何とも言えません。電流の値があるかどうかということについては、これはDFDRの中にはありません。なので、電圧は測られていますけど、その中でどれだけ電流が出てきたかという記録はDFDRのデータの中にはありません。

問: DFDRのデータで、電圧のデータ以外にこれからバッテリーに関係しそうなデータというのは何かあるのでしょうか。
答: バッテリーから電気が供給された機器があれば、あるいはわかるかもしれませんが、先程申しましたように飛行中ですから、バッテリーは基本的に機器の運用には使われていなかったと思います。

問: 参考になるのはこの電圧のデータくらいだということでしょうか。
答: 今のところ分かるのはそういうことです。

問: 充電器に入り込む部分にはないんですか。充電器より上部のほうにもデータはないのですか。
答: 充電器の方ですね。データはありません。

問: バッテリーの出力電圧というのは、バッテリーの充電状況を示す数値ということですか。
答: そういうことです。

問: 31ボルトで一定だったというのは、フル充電の状態で飛んでいたということですか。
答: おっしゃるとおりです。

問: 31ボルトを超えていないということは、これは充電状態として正常な範囲内だったということでしょうか。
答: そういう意味からいうと。表面上はいわゆる過充電はなかったということです。

問: それは使っていけば段々31ボルトから減っていくと。
答: 段々減っていくわけですね。それはいわゆる規格容量といいますか、このバッテリーに関しては65アンペアアワーという規格容量になっています。ですから、例えば1アンペアずつ流していれば、65時間持ちますよということです。

問: 確認ですけど、センサーはバッテリーの外にあって供給電圧を測る。ということは外から過剰な電圧がかかったり、大きな電流が流れても、そのセンサーは反応はしないと。センサーでそれを捉えることは無いという理解でよろしいでしょうか。
答: たぶん無いと思いますが、時々、飛び上がっているところもあったりしますので、そこのところが分かっていません。

問: そのセンサーが31ボルトという通常の電圧を記録していたことによって、外から過剰な電圧あるいは電流が加わったことはないということは決して言えないということでしょうか。
答: 結論的には言い難いところもあるかもしれません。つまり、31ボルトを記録していたものが、どういう電圧を測っていたか、きちんと確かめないといけません。外からの電圧がかかった状態というのもあるいはその中に影響が入ってくるかどうか、確かめなければいけないと思っております。

問: 今、飛び上がっていたとおっしゃいましたけども、瞬間的にでも31を超えていた地点はどの辺でしょうか。
答: 瞬間的には無かったです。地点はわかりません。

問: 委員長がおっしゃったガクンと下がっていたというのは31からどれくらいまで一気に落ちているということなのでしょうか。
答: 言葉では中々言いにくいです。

問: ゼロになってしまうんですか。例えば4ボルトの一部とかでも3.2とか2.なんぼとかになると電池がきれるとか。
答: その辺の絶対的な値はまだ現在読み取り中です。はっきりしたことは言えません。非常に小さくなっていることは確かです。

問: ガクンと下がってですね、ほぼゼロに近くなるような電圧の動きとですね、バッテリー内部が炭化したということは、どういう関連が考えられるのでしょうか。
答: それがまさしく調査対象なのです。そこで壊れてこうなったのか、何か他の現象で電力が全て使われてこうなってしまったのか、そのときに外電流が流れて発熱する可能性もありますので、それで発熱したのか、その辺はわかりません。

問: 電圧の低下に伴ってそれが熱エネルギーに変換されて、発熱するということも考えられるのでしょうか。
答: それはもちろん、そういうことはあり得るかと思います。

問: それは一般的に過放電といわれる現象と違うのでしょうか。
答: そうかもしれませんが何とも言えないです。

問: リチウムバッテリーだと、内部に不純物があると内部でショートしたりしますけど、ショートするとこれは電圧が消えると思うんですが、そういう状態もあり得るんですか。
答: 内部ショート、そこが調べられるかどうかですね。焼けておりますのでよくわからないかもしれません。

問: 内部ショートしてもやはり同じような数値を示すのですか。
答: それは今後の実験次第ですが、そういうことが起きるとそういう風になるかどうか。いくつか可能性を考えておいて、その可能性を実験してみるしかないですね。我々が製造メーカーのところにバッテリーを持ち込んだのは実はそういう実験がしやすいこともあります。もちろん立ち会いの下ですが、色々な仮説が考えられます。

問: 今回、最新鋭の787でこういうトラブルが起きたということからして、所見を交えてどんな印象をお持ちですか。
答: ご承知のように、787機は軽量化するために複合材で主翼等を含めて多量の複合材を使っているわけですね。そして、日本企業もたくさん絡まっている。何か齟齬が起きるとすると、そういう新しい材料を多量に使ったところはね、何か起きるかなと。まさか電気系統から起きるとは夢にも思っていませんでした。不意打ちを食らった感じであります。いわゆる従来の油圧等を使った色んな作業をするという事が消えて、いわば電気自動車というか電気飛行機になっているわけですけど、そこまではちょっと考えなかったですね。今後、新しい飛行機が、別の複合材を使った軽量化された飛行機、効率的な飛行機が出てくるかもしれませんが、電気の観点からいうと色んな教訓を与えることではないかなという感じは致しております。ただ、どんな教訓になるか、これは今から調べていって、我々がどこまでくみ取ることが出来るかということです。

問: 今回お話を伺っていると、原因調査というのがなかなか難しいというか、難航されているのかなという印象があるんですけど、それがどうして今回調査というのが難航している、難しさが、どこに理由があるとお考えですか。
答: 大変難しいですね。まず調査の難しさとしては、例えば燃料が漏れていたということですかね。ボストンでは同じような、日航機のインシデントがあったわけですから。そのようなことが果たして電気系統で全て起こるということが、ちょっとこれは私個人の感想ですが、それが読み取れなかった。予想が出来なかったということですね。ですから、そういうことが起こってみるとどういう調査体制を執ればいいのか、まずそれが苦労しました。そして、JAXAと相談の上、JAXAにはボストンで起こったことに対する同じような調査装置があるということで、つまりCTスキャンですけれども、それがわかりまして、少し展望が開けたかなと、そういうことです。

問: やはり今回ボーイング社で初めて導入されたリチウムイオン電池という新しい技術だというところも調査の難しさというところではあるのでしょうか。
答: そうです。前はバッテリーも色々使っていました。ニッケルカドミウム式の電池を使っていた。リチウムイオン電池を使ったのはたぶん初めてだと思います。それに関わる諸問題も合わせて考えると、我々の調査体制にも限度がありますので。その辺、苦労しているところであります。ただ、NTSBがボストンで起こったことに対して、初期の調査を行ってくれましたので、協力して一緒にやっていくことで色々な教訓を得ることは出来ると思います。そういう期待はしています。

問: 苦労しているというのは、これまで、電気飛行機といわれていますけど、電気系統が通常よりも遙かに、5倍以上あるとか、そういう調査するにあたってなかなかということでしょうか。
答: これほど電気を多用することは今まで無かったことです。

問: 電源周り、電気系統を調べる調査官の技術というので、最新技術であるから難しいと。
答: 難しいというより、慣れていないということです。つまり新しい飛行機が出てくると、皆さんご存じのとおりイニシャル・トラブルが起きるんじゃないかと、そのイニシャル・トラブルが個人的には予期しないところから起こってきたと、そういう話です。

問: 時間的な見通しとしては委員長としてどの様にお考えでしょうか。
答: なんとも申し上げることは出来ません。

問: 調査の進捗状況については見通しは立たないということですか。
答: まずなぜ起こったのかということがわからないので、対処のしようがないということです。それが第一点だと思います。それがわかればある程度見通しが立つと思います。それがいつになるかというのは今申し上げることは出来ません。

(JR北海道根室線重大インシデント関連)

問: 今日の発表内容とは違うのですが、今月7日に北海道のJR根室線で、特急列車が走行中にドアが開いたという重大インシデントについてですね、現地に入られた調査官の方は、圧縮空気の関連装置の部分に異常が見られたとか、配管に水があったとか話をされていますけど、現状の調査の進捗だけ教えて頂けますか。
答: 現在、その走行中にドアが開いた原因は調査中で、予断を持たずに調査を行っていきたいと思っています。必要に応じて、似たような事故が起こったという報道もありますので、それとの関連も合わせて状況を把握していきたいと思っています。

問: 圧縮空気の関連装置の原因については。
答: 原因については今申し上げるのは無理かなと思います。

問: 別の特急列車でもですね、同様に走行中にドアが開いたっていう案件が7回連続して起きたりしておりまして、再発防止について対応の甘さなんかがいわれたりしているんですけど、その辺について一言お願いします。
答: そういうことは報道で承知はしておりますけども、今まで関連性については調べておりません。今後、1月7日の件で調べていく中で、ここも調べた方がいい、ここも調べた方がいいという関連性を示唆するものが出てくれば、合わせて調べるということも考えられます。そういうことがあって、JR北海道でどういう措置が執られているか、それも含めてですね、今後調査の対象にしていきたいと考えております。

問: 今回含め連続して7件あったという部分で、安全管理の面といった部分も調査の対象になり得るのでしょうか。
答: 検討になり得るかもしれません。今後調査の中で検討していきたいと思っております。

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