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委員長記者会見要旨(平成26年8月27日)

平成26年8月27日(水)14:00~14:36
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、8月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 
 本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、安全勧告に基づき講じられた措置として1件、また、運輸安全委員会ダイジェスト第15号の発行についてご報告いたします。
 

1.事故調査の進捗状況等報告

 はじめに現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告致します。説明は省略させていただきますので、詳細は、資料1をご覧下さい。

2.安全勧告に基づき講じられた措置

 次に、安全勧告に基づいて講じられた措置について、既に8月1日に公表したものですが、改めてご報告させていただきます。
 平成25年5月16日に北海道稚内港で発生した貨物船TAIGAN火災事故についてでございます。資料2をご覧ください。
 本事故は、岸壁に係留中に船内で火災が発生し、乗組員6人が死亡して3人が負傷し、船橋甲板等に焼損を生じたものです。
 本事故の調査結果につきましては、平成26年6月27日に調査報告書を公表するとともに、原因関係者であるTAIGANの船舶管理会社、船舶所有者、船籍が置かれているカンボジア王国の関係当局の3者に対して安全勧告を行いました。
 今般、このうちカンボジア王国当局から、安全勧告に基づく措置の状況について、通知を受けましたので、その内容についてご説明します。
 カンボジア王国の船舶登録機関であるINTERNATIONAL SHIP REGISTRY OF CAMBODIAは、同国船籍船のうち、本事故の船舶と同様な船舶を運航する船舶管理会社及び船舶所有者に対して
 (1) 船上での喫煙規則を遵守すること。
 (2) 新たに乗船した船員に対して速やかに、火災発生時の脱出経路や消火器の場所を説明し、火災発生時の対応に関する訓練をすること。
 (3) 火災が発生した場所によって、緊急脱出経路がなくなるといった状況を避けるため、少なくとも二つの脱出経路を確保すること。
などの事故防止措置をとるように命じることとしたとの回答がありました。
 今回の同局の措置は、当委員会の指摘を受けとめて、妥当な対応をしていただいたものと考えております。

3.運輸安全委員会ダイジェストの発行について

 当委員会では、同種事故の再発防止を目的として、事故事例、統計に基づく分析などをまとめた「運輸安全委員会ダイジェスト」を作成しており、隔月で発行しております。
 本日、第15号として「航空事故分析集 機体動揺に伴う事故の防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しました。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料3をお配りしております。
 離陸時・着陸時を除く運航中に機体の動揺により乗客や客室乗務員が負傷した事故を抽出し、各種統計資料とともに事故調査事例を4つ紹介しています。
 機体動揺事故は、大型機(最大離陸重量5,700㎏超)による航空事故のほぼ半数を占めており、機体動揺事故における1件あたりの負傷者数をみると、機体動揺事故以外のそれに比べて、約4倍となっています。
 事故調査事例からは、改めて、「揺れが予測される場合の早めのベルト着用サインの点灯」や「シートベルトの着用状態の確認」、「計画的な機内サービスの終了」など多くの教訓が得られました。
 ホームページでの公表のほか、メールマガジンや各種講習会、国際会議の場などを通じて関係者の皆様に周知することにより、同種事故の未然防止に資することを期待しています。
 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

4.質疑応答

(北海道旅客鉄道(株)函館線八雲駅列車脱線事故関連)

問: 先月公表した報告書の中でJR北海道函館線八雲駅の脱線事故で、提出されたJR北海道のデータが改ざんされていたと記載していましたが、データが改ざんされていたことについて運輸安全委員会はどのように受け止めていますか。
答: 当委員会では脱線事故等の原因究明のため調査を実施していますが、この調査の過程でJR北海道から提出があったデータに書き換えがあったことはご指摘のとおりです。たいへん遺憾なことだと考えております。
 当委員会において調査分析に用いる軌道検査データに関しJR北海道による書き換えが行われていたのは2件です。
 1つは平成25年9月にJR函館線大沼駅構内で発生した貨物列車脱線事故で、もう1つは平成24年2月に発生したJR函館線八雲駅列車脱線事故で書き換えがありました。こちらは先月公表しています。ただし、八雲駅における書き換えは脱線事故の発生に影響するものではありませんので、公表にあたっては触れていませんが報告書には明確に書いてあります。
 当委員会としては今後とも引き続き各種データをしっかり確認し、厳正かつ慎重に調査を進めてまいりたいと考えております。

問: データの書き換えは2件ということですが、JR北海道で調査中の他の案件に関してはこのようなデータの書き換えはないということですか。
答: 現在JR北海道関係の調査中の案件は5件あります。江差線の脱線事故、函館線の重大インシデント、日本貨物鉄道の函館線の脱線事故、日本貨物鉄道の函館線の脱線事故(書き換えが判明済み)、日本貨物鉄道の江差線の脱線事故ですが、先ほど言いました2件以外に検査データの改ざんがあったという報告を受けていませんし、現在の調査状況に影響を及ぼしていないと考えております。

問: 今までの数か月の会見の中で、このような(データが改ざんされている)案件は他にはないのかと何度も伺ったと思うのですが、その中でそのような話はでてきませんでした。それなのに先月の公表した報告書の中で突如として出てきているので、こちらとしては非常に不可解であり、改ざんされている事実があるなら早めに言っていただければ良かったのではないかと思うのですが、そのあたりは報告書が出るまで改ざんの事実が明らかにならなかったのはどういう判断なのでしょうか。
答: 調査の途中でそのような状況が判明したということで、他のことにも影響があるかもしれないということで調査をしたわけですが、先ほど言いました2件について改ざんがあり、現在調査中の案件の5件では、それ以外のものについては(改ざんが)あったということを把握していません。調査に影響はないと考えています。いろいろな事故が起こっているわけですが、事故に直接影響するような改ざんがあれば触れることもあるかもしれませんが、直接影響がないものをあえて言う必要があるかですが、我々の調査の目的は再発防止策を示すことで類似の事故の再発を防ぐことにあるので、同じような事象、データの書き換えなどが事故やインシデントに直接影響がなければあえて申し上げることはないと考えています。

問: 先月の公表時の説明では改ざんの話は一切触れていませんが、これはなぜでしょうか。
答: 事故及びインシデントには直接影響のあることではなかったのであえて報告することはしなかったということです。

問: 今の調査中の5件は、事故原因には直結するようなものでもないとしても、改ざんされたということはなかったということでよろしいですか。
答: 現在掴んでいる状態ではそのとおりです。(JR函館線大沼駅構内貨物列車脱線事故については、書き換えが判明済み。)

問: 先月の報告書の発表の関係について委員長の見解を伺いたいのですが、函館線八雲駅の脱線事故の関係で報告書には書かれているが、原因には直接関係がないということであえて言わなかったということですが、JR北海道のデータ改ざん問題が発覚した時点で、過去の運輸安全委員会で前例がなく極めて遺憾であると、重要な問題であるととらえていらしたと思われます。実際に取材をさせていただいた結果、大沼駅の時のように事故が起きて調査官が来る前にデータを改ざんしたという調査妨害にあたるような意味合いのものとは八雲駅は異なるということ、事故の原因には直接関係がないことを理解しましたが、報告書の5ページに13行だけ書いていて、誰が計測したのか主語がわからない文書もあり、そういった場合に我々も内容をきちんと正確に理解するために、確かめたいということが起きるのです。運輸安全委員会の事故調査のデータに改ざんされたデータが出されていることは非常に重要な案件で、それが調査結果に影響がなかったと書いてありますが、なんで影響がなかったか、そこのところをきちんと理解したいのです。
答: あの件は列車脱線事故ですが、列車の脱線が始まった地点というのは確認されておりまして、データが改ざんされている地点より手前であり、直接脱線に影響はなかったということであります。事故が起きる前の線路の事情などについて、我々は知りえないのでデータを入手することになるのですが、事故が起きる前のデータを入手した中に改ざんされたデータがあったということが後で判明したのです。実際に事故状況を調べてみると改ざんがあった地点のデータは、脱線に影響はなかったということが判明したということであります。そのようなデータを提供したことに我々も憤りを感じるところではありますが、今後そういうことがないように、関連するデータは詳細に調査しております。

問: そういったことを、今であれば理解できているのですが、公表時の説明のとき聞かせていただけなかった。
答: これは事故ですから、事故がどこで起こって、再発防止のためにどうすればよいか、ということを検討しているわけですから、改ざんが事故の原因ではないわけですから、報告書には、ただ、データのやりとりの中でそういうことがあったということを書いているということです。
 この件については、報告書にも書いています。ただ、あの場で報告書を読んで気がつかないのではないかということですが、報告書には、脱線が起きたところよりも先のところだったので直接脱線には影響がないと書いてあったので、それで十分理解いただけると思い、言わなかったわけです。

問: ただ、あの文章で理解できると思われていたということなのですが、理解できなかったのですね。公表時の説明でも聞くことができなかった。
答: 我々は事故の調査をしているので、事故に関係のない部分のところ、JR北海道の会社の体質だというようなことまで、場合によっては必要になるかもしれませんが、一つの事故に対しては言うべきかどうか、議論はしたところですが、今回は言わなかった、ということもあります。

問: 事故に関係ないと言っても、報告書には少なくとも13行は書いてあるわけです。ということは、報告書に書いてある中身について、我々は質問しているのです。報告書で理解できなかったわけです。書いてある内容を正確に理解したいがために、取材しているのです。それに対応していただけないということは、おかしいのではないですか。
答: 特にそういうことはなかったのではないかと思うのですが、報告書に書いてあるとおり、脱線した箇所より前方であったということ、乗り上がり脱線した箇所より先だったので、直接関係しなかったという、報告書に書いてあるとおりで、それ以上はない、ということでそういう判断をしたわけです。

問: 改ざんされたデータがあることがわかったと、でも、事故後にきちんと運輸安全委員会が測っているから、しかも、少しおかしいところは脱線より先だったから影響はないと、それで理解できたのですが、その計測はだれがしたのか。伺ったら、調査官が雪で到着できなかったことからJR北海道に測ってもらって、それを受けたと。それは改ざんされていないのか、という疑問が当然わくのです。ただ、本社の人間も来ていたので大丈夫だと。つまり、そういった詳しい経緯を知ることが、それが取材なのです。
答: 客観的な事実で、支障のないものについては、できる範囲で客観的事実をご説明したわけです。

問: 公表時の説明でそこに触れていれば、おそらく補足で説明いただけた程度の話だと思いますが、公表時の説明で話せるようなことなのに、なぜ話せないのか。きちんと対応して下さいというのが我々記者側の希望ですので、直接関係ないからと一切話せないという対応は改めていただきたいということです。
答: 内容にもよりますが、今後精査して検討したいと思います。

問: 委員長はあえて申し上げることはないと言われていましたが、誤解かもしれませんが、JR北海道の一連の事故について、情報提供というか質疑について、極めて消極的ではないかという印象を受けるのです。特に今回の対応ですが。
答: できることはやっているつもりです。

問: 取材対応ですとか、情報提供ですとか、非常に関心の高い事案ですので、しっかりやっていただきたいと思います。
答: 気をつけます。しかし、事故に関係がない部分について、あえてこちらから言うべきかというと、それが消極的ということになるのですね。

問: あえて言わないとしても、報告書に書いてあって、そこに記者が質問したら、そこは答えていただきたい。少なくとも意味を正確に理解するために説明はしていただきたい。
答: なぜ書いてあるかということは説明するように致しましょう。了解しました。

(日本貨物鉄道(株)江差線列車脱線事故関連)

問: 江差線のJR貨物の脱線事故で、積荷が偏っていたということですが、積んだのは誰なのか、運送業者とか荷主とかが、なぜそういう積み方をしたのか、という部分で、報告書では追究がされていなかったのではないかという印象を受けました。そこを質問したのですが、いわゆる鉄道事業者ではないところだと、かつ、鉄道局の所管するような範疇から離れるという説明も受けたのですが、今回、何故こういうことが起きたのかという原因では、偏って積んだことをそこまで詳しく調べて報告書に盛り込む方が良いのではないでしょうか。
答: それは、一旦積むのは荷主側というか、荷物を持ってきた方の責任なのです。積んでしまわれるとこちらは、当時は信用してあえて突き止めることはしなかった。その後、JR貨物としてもいろいろな対策を検討されていると聞いておりますが、積荷の仕方についてはチェックをするというような体制を作るということを言っておられると聞いています。

問: あのときも脱線のメカニズムを解明するのが運輸安全委員会の仕事だというような主旨だと伺ったのですが、確かに、メカニズムとしては偏っていたから脱線という、複雑な話ではなかったのですが、ただ、なぜ偏って積んでしまったのかというところまでを突き詰めなければ、事故原因の追究にはならないのではないかという印象を受けたのです。
答: だれがやったかではなくて、偏った積み方をすることがあったということをなぜしたのか、ということは、わからなかったのです。当時は積む側がそういう認識がなかったのだと思います。

問: それを確かめられたのでしょうか。
答: 確かめようとしても、それは確かめることができなかったということです。

問: そこまで調べなかったという話ではなかったでしたか。
答: 積荷が偏っていたことに対しては、利用運送事業者に照会したのですが、正確ではないですが、はっきりわからないという答だったと思います。いろいろ考え方はあると思いますが、いろいろな鉄道事業者以外の事業者を調べていって、再発防止策を考える必要があると思いますが、基本的には私どもが直接鉄道を所掌しているからという訳だけでなく、再発防止策を担保するには、やはり鉄道事業者に強く言って、鉄道事業者自身が利用運送事業者ないし荷主を管理するという方が、直接的には効果があると考え、再発防止策を書きました。その先までという考え方もあるとは思いますが、まずは鉄道事業者が再発防止対策を実施することが大切だろうという考え方です。

問: ただ、あの後国交省鉄道局は、運輸事業者も呼んで、再発防止のための会議を開きましたよね。ですから、鉄道部会だから鉄道のことだけ調べるというのではなくて、運送業者であれ、そういったところまで調べてこそ、今回のような案件は、事故原因が追究できるのではないかと思うのですが。委員長いかがですか。
答: そのとおりです。我々はなぜそういった積み方をしたかと調べました。しかし、荷を積んだところにそういう認識がなかった。今後はそういうことを認識しなければいけないということで、国交省も重視して、言われたような対応をされた。もちろん我々も報告書にきちんと書いたということです。
 再発防止対策自身は、鉄道事業者、運送事業者そして荷主全部必要だと思います。国交省でそのように対応していただいていますので、再発防止ということでは進んでいると思います。私どもの報告書としてどこまで書くかということがあると思いますが、まず重点的に鉄道事業者に再発防止をしていただきたいというのが思いです。さらに書いた方が良い場合には書くことを否定するわけではありませんが、今回はそういうことで書かなかったということです。

問: 質疑から離れてしまいましたが、発表する側と取材する側で立場が違いますので、意見交換する場をもたせていただければと思います。
答: 基本的に報告書を書く時に、書くべきか書かないべきかということは、仰られるようにあるのです。しかし、直接原因に書くべき大事なところ以外のところで、いろいろな細かいことを書いていって、果たして事故の原因をすっと受け止めてもらえるだろうか、ということがあるのです。福知山線の報告書では、原因のところが13行しか書いていないのです。いろいろ批判を受けました。なぜこんなに短いのかと。しかし、後で理解をしていただきました。3章にはきちんといろいろなことが解析して書いてあって、結局直接事故に関わったのはその13行で書かざるを得ないということを、最終的に理解していただいたと思っています。そういう書き方でしょうね。
 書いていないから重要視していないということではありません。原因に直接関係あるかどうかをきちんと原因に書くと、そういうことです。原因にどの部分が書いてあるかということを重視していただきたいということです。書く方も気をつけますが、読む方もそういうにして読んでいただければ、報告書も理解が行き届くのではないかと思います。どうぞよろしく。

問: 我々も正確に書きたいという思いがベースですので、部会で決まったこと以外はしゃべれないとか、報告書に書いたこと以外は一切言えないとか、そういうことではなくて、担当の記者ともコミュニケーションをとって、これはこういうことなんだというふうに、理解をさせていただきたいと思います。
答: そういう説明をするように心がけます。ご指摘ありがとうございます。

(全日本空輸(株)所属ボーイング式787型重大インシデント関連)

問: ボーイング787型機のバッテリートラブルについてですが、今月に入ってからバッテリーが低温で電解液が劣化してトラブルに至ったという報告書を委員会がまとめているとの報道がありましたが、事実関係と、現在意見照会中だと思いますが、今後の見通し、スケジュールがわかれば教えて下さい。
答: そのような報道があったことは承知していますが、本件は現在審議中ですので、調査報告書の内容に関することはお答えできません。理由はご承知のとおり調査報告書が確定する前にいろいろなことを我々が申し上げますと関係のないところに影響が出てくる可能性がありますので、そのことを避けるために、調査報告書が確定して出るまで審議中の案件については申し上げることはできません。ご了承いただきたいと思います。

問: スケジュール感は如何ですか。
答: 現在意見聴取、意見照会をしていますので、回答が得られた時点でどのような返事というか対応をするのか審議しなければなりませんので、もうしばらく時間がかかると思っていただきたいと思います。

問: 前回の会見ではアメリカとフランスに意見照会の作業中であるとのことでしたが、システム上60日以内に返事をしなければならないということですが、そのスケジュール感では回答はあったのではないのですか。
答: あったというか進行中と申し上げたほうがいいと思います。

問: 進行中とは回答があったのですか。
答: つまり対話があり、相手からの質問やこちらからの問い合わせになどについて、向こうの意図を正しく把握しなければならないので、そのようなことを重ねつつ現在審議を進めておりますので時間がかかるということです。

問: 60日とは原則60日という理解でいいですか。またNTSBから明確に意見はもらっていますか。
答: 意見をもらっていると申し上げたほうがいいかもしれませんが、もらったものに対して本意を確かめる点もあるためにいろいろやり取りをしているところです。その点を含めると60日とは定義しにくいところではありますが、最初にもらうまでが60日と考えるのが良いと思いますが、そういうやり取りを含めると遅れることもあります。

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