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委員長記者会見要旨(平成27年4月21日)

平成27年4月21日(火)14:00~14:35
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、運輸安全委員会ダイジェストの発行についてご報告させていただきます。

1.事故調査の進捗状況等報告

(アシアナ航空機事故)

 はじめに、4月14日(火)20時05分ごろ、広島空港において、アシアナ航空162便が着陸時、滑走路から逸脱する航空事故が発生しました。
 運輸安全委員会としては、15日に5名の事故調査官を現地に派遣し調査を開始しました。
 現地における調査としては、
  ・機体及び着陸誘導用アンテナ等の損傷状況の確認
  ・滑走路等の地上擦過痕及び損傷状況の確認
  ・事故機のフライトレコーダー及びボイスレコーダーの取り下ろし
  ・機長、副操縦士、管制官などからの口述聴取
などを実施いたしました。
 本件に関しては、
  ・アシアナ航空の運航国である韓国から航空・鉄道事故調査委員会の調査官等 11名
  ・エアバス機の設計・製造国であるフランスから航空事故調査局の調査官 6名
が参加し、両調査機関の協力を得て調査を進めております。
 今後、フライトレコーダー及びボイスレコーダーの解析作業等を進め、原因究明を行ってまいります。
 現在、初動における現地調査が終わった段階であり、お話しできる内容が限られますが、現地での調査状況等について、後ほど事務局から説明いたします。

(調査の進捗状況一覧)

 続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況についてですが、説明は省略させて頂きますので、詳細は資料1をご覧ください。

2.運輸安全委員会ダイジェストの発行

 本日、「運輸安全委員会ダイジェスト第17号」として「船舶事故分析集 水上オートバイ事故の防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しました。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料2をお配りしております。
 水上オートバイ事故は、水上オートバイが関与しないその他の船舶事故に比べて死傷者等の発生率は約3.5倍となっています。
 このような死傷者等の発生率の高さは、高出力による急発進・急旋回や遊泳海域における運航、乗艇者やけん引しているバナナボートなどの浮体遊具の搭乗者の落水の容易性など水上オートバイ特有の運航形態によるものです。
 水上オートバイ事故は、海洋レジャーの活発な7月から9月が8割を占めていることから、その前に公表することとしました。
 その概要は、
   ① 事故調査事例、統計に基づく分析に加えて、水上オートバイの安全講習などを実施する団体などに取材を行い、水上オートバイ事故の現状や安全対策などに関し、いただいた情報について盛り込みました。
   ② また、教習指導員の方からコラムの寄稿をいただき、免許取得後にも安全に操縦する技術を学ぶ機会の重要性などの提案をいただきました。
   ③ 事故調査事例、統計に基づく分析から、「操縦者より遊泳者、同乗者、搭乗者の死傷が多いこと」や「急加速、急旋回での落水が事故につながること」といった特徴や、「遊走中は周囲の見張りをしっかり行い、船間距離を十分にとること」、「法令を遵守した安全運航の徹底」など事故防止の教訓が得られました。
 水上オートバイを操縦される皆様は、遊泳者、同乗者、けん引している浮体遊具の搭乗者への安全措置や、同じ水面を利用する業務船や周囲に暮らす方々へ配慮いただき、節度あるスマートな操縦を心がけて楽しんでいただきたいと思います。
 ホームページでの公表のほか、メールマガジンや各種講習会などを通じて関係者の皆様に周知することにより、同種事故の未然防止に資することを期待しています。
 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何かご質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(全般)

問: 最近、運輸安全委員会が出動するような調査対象となった事故が航空分野で、船舶、鉄道の分野でも多発していますが、委員長としてどのようにご覧になっているか、所見をお願いします。
答: 最近、鉄道事故にしましても、航空事故にしましても多発しています。こういうものは一つ一つ丁寧に調査していくとともに、それぞれから教訓を得て再発防止を徹底していきたい。そのための試みをさらに内部で議論しましてどういう方向で、教訓をより広くより長く保つことができるか、あるいは再発防止のために繰り返して発していかなければならないと思っております。

(アシアナ航空機事故関連)

問: アシアナ航空機事故の件で、広島県警から鑑定嘱託を受けたのでしょうか。
答: 鑑定嘱託は来ていないと思います。

問: アシアナ航空の事故に関して、後ほど調査官から説明があるとのことですが、フライトレコーダー、ボイスレコーダーの解析作業を進めると言うお話でしたが、現時点で事故直前の機内の状況が、何処からも明らかになっていないのですけれど、話せる限りでどの程度までお話いただけるのか。
答: 情報を集め解析中でありますので、今は申し上げる段階ではないと言うことをご理解いただきたい。

問: それでは、フライトレコーダー、ボイスレコーダーの中身に関しては、今日の段階では一切言及しないと言うことですか。
答: 中身については今のところ出来ません。現在、解析中です。

問: その理由として、情報を解析中だと言うことは分かりますが、詳細な内容までは難しいとしても、ゴーアラウンドはあったのかなかったのかなど外形的な事実はある程度、明らかに出来るのではないか。
答: 事実に関して公表できるものが出てくれば、経過報告として出すことも考えられると思います。まだ、そこまで我々として突き詰めておりません。今からの解析作業の結果によります。

問: 時期的な目途としてはどれ位で公表をお考えでしょうか。
答: 解析がいつ終わるかですね。フライトレコーダーにしても、コックピットボイスレコーダーにしても、どの程度の内容のものが含まれているのか、どのようなことが公表できるかはっきりしないと分かりませんので、今申し上げることは出来ません。

問: ICAO加盟国、諸外国ではかなり早い段階で出すことがあるが、それに対して日本の調査は遅いのではないか。
答: 競争している訳ではありませんので、出来るだけはっきりしたことが分かり次第、公表できるものは公表していきたいと思っています。

問: それは、報告書の完成まで出ないと言うこともあるのでしょうか。
答: こういう重大事故でありますから、それはないように経過報告は出来るだけ、つまり報告できるものは出来るだけ出していきたいと考えています、出来るだけ早く。具体的な時期については申し上げることは出来ません。

問: フライトレコーダーのデータなど何か開示されるのではと期待していたが、ジャーマンウィングスとは公表するスピードがだいぶ違うという印象があるのですが、そのあたりは調査官の人数とか規模の問題と考えますか。
答: それは違います。解析の精度の問題です。我々はきちんと解析し、正確な数字をだしたい。フライトレコーダーから正しく記録を読み取ることはおっしゃるほど簡単なことではありません。時間も正しく合わせなければならない、いろんなデータが何十項目もあります。時間を合わせてきちんとしたデータを出す、これが信頼たりうる認識を得るまでに時間がかかるのです。

問: アシアナ航空は事故以降も他の空港に日々運航しているわけです。利用者の感覚ではできるだけ速やかに情報を開示してほしく、精度も必要だと思いますが、わかった情報だけでも随時開示していく考えにはならないのですか。
答: できることはやっていきます。

問: 情報の開示について、これまでもお願いしているのですけれどなかなか実現にいたっていません。今日、各社は何らかの情報が出ると思ってカメラを用意しているわけですが、現状ですと一切新しい情報は開示されていません。これについてどうお考えですか。
答: 事実情報をまとめている段階です。その事実情報の認識の上にたって、なぜこれが起こって、どうなったかという分析を行わなければならない。整合性のある分析ができない限り分析の結果を発表するわけにはいかない。だから、先ほど申しましたように事実認識について、たとえばフライトレコ-ダーデータがはっきりすれば一部開示できるかもしれません。しかし分析の結果は時間がかかります。

問: 将来的に多数の死傷者が出る大きな事故が起きたとしたら、このような情報の開示の仕方ではもたないです。
答: JAL123便の事故のときから言われていることであります。できるだけ早くしたいが、分析には時間がかかります。間違った分析をして間違った再発防止策を出すわけにはいかないのです。

問: 分析ではなく事実関係の情報について、開示してほしいと言っているのです。
答: 事実関係の情報はできるだけ早くするよう努力はしています。その点はご理解いただきたい。

問: 広島空港の件で内容は言えないのはわかるが、ぶつかる直前に何があったのかが調査のポイントだと思うのですが、あらためて調査のポイントをどう考えているか。
答: 機長など関係者から口述聴取の内容と、フライトレコーダー、ボイスレコーダーの記録とをつきあわせて何が起きたのか判断することをやり始めているので結論はお待ちください。

(山手線重大インシデント関連)

問: JR東日本の電柱が倒れた事案ですが、発生から数日、経って鉄道局からインシデントの報告があり委員会として重大インシデントと認定したわけですが、重大インシデントと認定した理由、背景についてお伺いしたいのと、時間が経ってからの認定となり調査に支障がないのか、委員長としての見解を伺いたい。
答: 本件は、平成27年4月12日の日曜日、午前6時10分ごろですが、JR東日本山手線・京浜東北線神田駅、秋葉原駅間において、架線設備の改良工事により撤去が予定されていた電化柱が倒れて線路を支障し、列車の運転の安全に支障を及ぼす事案が発生しました。
 我々が調査するようになった経緯ですが、12日の発生当初は輸送障害とされていましたが、13日夜に鉄道事業者より国土交通省に対しインシデントであるとの報告がなされ、それを受けて、国土交通省より本委員会に通報がありました。通報を受け、運輸安全委員会において検討を行った結果、本事案については、JR東日本が線路に隣接する電化柱の異常を認知しながら、必要な措置が講じられる前に安全運行に支障をきたす結果となった特殊性に鑑み、重大インシデントとして14日から調査を行うこととしたものであります。
 14日に鉄道事故調査官を関係部署に派遣し、架線設備の改良工事の計画、列車の運行状況、異常を認知したときの措置等について、関係者からの聞き取り調査を実施しております。現在、調査中であり、詳細につきましてはお話できる段階ではありませんが、引き続き、必要な調査を実施し、原因究明を行ってまいりたいと考えております。

問: 発生から通報まで時間がたったが、これにより調査に支障は出ていないのか。
答: 今のところ、調査に支障は出ておりません。最初、輸送障害とされており、これが重大インシデントとなるまで、多少、時間がかかった、そういうことでございます。

問: もっと早い段階でインシデントの通報があれば、現地で9時間ほど止まっている間に調査官が臨場して、調査することが出来たのではないかと思うのですが、それでも調査に支障がないといえるのは、何故でしょうか。
答: 先ほど申しましたように、列車の運転士が電柱の倒れていることを確認して、直ちに列車の運行を停止していたことや、負傷者が発生しなかったことから、列車の運転の安全に支障を及ぼす状況になく、運輸安全委員会が調査を行う対象とされていなかった。そう言う措置がなされており、幸い事故が起きなくて済んだ。

問: 調査官が調べに入る前に現場がすべて片づけられてしまったと言うことについて、それでも調査に支障がなかったのかと言うことなのですが。
答: この事象は運輸局の方で注視していて、鉄道事業者でも客観的な支柱の倒れた写真や撤去の状況は記録している。特に私どもの調査は支柱の変形を発見してから倒れるまで手続きがとられなかった仕組みの問題が中心であるので、その辺のヒアリングは行っています。

(調査の在り方)

問: そもそも国交省からの通報で航空であれば認定を、鉄道についてもインシデントの通報があり調査の対象かどうか検討ということだと思うが、より主体的に運輸安全委員会で独自に調査が必要であると判断してもいいのではと専門家からも声が上がっているが。
答: インシデントが発生し、それが重大かどうかは我々が判断して調査を実施しているところであるので我々の意思がかかっている。

問: 山手線の場合も、鉄道局の通報を受けてからですが、より早く独自に主体的に検討してもいいのではないか。
答: 事故の情報やインシデントの情報がどのようにとらえられるか体制によるわけです。すべての路線に人員を配置しているわけではないので、どこで事故などが起きているかわかりません。報告を受けないといけない。

問: 報告を受けなくともテレビ報道でばんばん流れているわけです。輸送障害なのか重大インシデントなのか判断すべく人を出して主体的にやってもいいのではないか。
答: そのやり方については今のやり方を維持することになるのではないか。もっと人を増やして情報を得てすぐに派遣するという体制にはなかなかすぐには変えられない。

問: 今の段階で難しいからこうゆう現状になっているのだと思うが、国や鉄道事業者は大事にしたくないという思いがあるかもしれない、そういったときに運輸安全委員会は国の法令や取り組みが正しいのか調査しなければならない局面もあるわけで、そこは主体的にやればいいのではないか、今後今の仕組みを変えるつもりはないか。
答: おっしゃることは分かるが、運輸安全委員会設置法施行規則、鉄道事故等の報告規則などにより実施しているところです。そういった体制ができるかどうかを含めどう変えていくか検討課題であるが、法令を改正しなければならないので公の意見などいろいろ聴取していかなければならなく大変難しい問題である。

問: 鑑定嘱託の話でも先月同じような議論があったが、法令で決まっているから変えられない、難しいと言っているが、法令に不備があるのならば改正するべきだと声を上げるのは運輸安全委員会自身でなければ誰が上げるのか。
答: 今のご質問は運輸安全委員会設置法の20条と21条に規定されていて、私どもが航空事故、鉄道事故、船舶事故というものの端緒をどういうふうに得るかということについて、航空事故、鉄道事故については国土交通大臣から、すなわち航空局、鉄道局から、船舶事故については海事局と海上保安庁から通報を得てと法律で決まっていて実務的にはいろんな運用を省令レベルでやっています。常に、私どもの業務が国民の期待に答えられるよう、どういう風にあるべきかと考えなければいけないとは思いますけれど、大枠は今申し上げたように法律レベルでそういうことをやることが一番的確な端緒のつかみ方ですので、それを踏まえて我々が判断し派遣体制をどうするかとか、どういう陣容で臨むかとか、長年そういうことでやってきていると理解しています。
 インシデントであるか判断される前に我々が現場にいって判断することは人と場所の問題があるので簡単にはできません。

問: 人や金や物がないから行けないのではなく、行くべきだから人を増やしてくれと要求することもありえるのではないか。条件が整わないから行けませんでは何にもならないと思います。
答: やることはやっていると思っています。

問: 現在の状況はわかっています。そのうえで聞いているのですけれども、国民から遅いのではないかいう声が上がっていることをどう思われますか、今後どう対応されますか。
答: 常に大事故が起きているわけではありませんので、必要があれば人員を増強し、予算をまわしてもらう努力はしています。例えばB787のバッテリーの件では航空調査官はほとんど出払ってしまい、それでも足らないという事態に、他の事故が起きたらどうするのかということに苦労しました。いざとなればできるように努力していることはわかっていただきたい。

問: 努力しているのはわかるが、アシアナの件でも調査官を派遣したのが翌日の朝、役所に寄ってからで、現地についたのが昼過ぎでした。
答: 広島空港が閉鎖されていたため新幹線で向かったのでその時間となりました。韓国の調査官は九州で降りて列車で向かったようです。

問: 韓国の調査官の方が先に着いていたようだが、前日の夜にタクシーで行っていれば早く到着できたわけですし、そういう必要はなかったのか。
答: 空港は閉鎖されていました。ものは保存されており、また亡くなられた方はいなく負傷者も無事に搬送されていることを確認していましたので、多少到着が遅くなりましたが調査には支障はなかったと思っています。

問: 山手線も広島も結果的に調査に支障がなかったとすれば、それはよかったのですが、より素早い対応が必要ではないでしょうか。
答: 今の体制でできることはやりますが、これ以上に何かできることがあるか検討が必要だと思います。

問: 夜の8時に発生し、9時、10時にはばんばん報道されていて、その日の夜に出発するかどうかの判断は難しかったのですか。
答: 事故調査官を派遣するときにどういうことを考えるかというと、まずどういう事故であるか、何が必要であるか、それをできる人は誰かなど、いろんな判断をしなければならないので簡単にはできないのです。その辺を含めて、たくさん人がいればできるじゃないかと言われるかもしれないが、そういうものではない。人を教育しなければならないし、経験も必要であるので明日からできるわけではない。今後検討するとしても、どのように改善できるか、すぐにはいえません。ただ現在、できることはやっているということはご理解願いたい。

資料

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