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委員長記者会見要旨(平成27年10月27日)

平成27年10月27日(火)14:00~14:25
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、10月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故調査の進捗状況報告

(調布小型機墜落事故関連)

 はじめに、先月の会見で御質問のありました調布飛行場での事故機の発動機に関して、分解調査のため今月22日に保管施設から搬出し、発動機メーカーである米国ペンシルバニア州のライカミング社に発送しました。

(鹿児島空港における異常接近関連)

 また、10月10日、鹿児島空港へ最終進入していた日本航空機の機長から、進入経路上に固定翼機を確認したため、着陸をやり直した旨の異常接近報告があり、重大インシデントとして調査を行うこととなりました。
 運輸安全委員会は、12日に3名の事故調査官を現地に派遣し、本重大インシデントの調査を開始しました。

(進捗状況一覧)

 続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況についてですが、説明は省略させて頂きますので、詳細は資料をご覧ください。

 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

2.質疑応答

(鹿児島空港における異常接近関連)

問: 先程、説明がありましたが鹿児島空港でのニアミス事案に関して、どのあたりまで調査が進んでいるか、もう少しお話しいただけますか。例えば小型機に対して着陸許可が出ていたのでしょうか。
答: 鹿児島の異常接近案件ですが、先程、お話ししたとおり12日から現地で調査官が調査を開始しております。大型機に関しましてはフライトレコーダーが付いておりましたので、取り下ろして、データのダウンロードが終わったところです。パイロットへの口述聴取等に関しましては、それぞれの口述の内容や管制交信記録も含めて分析、精査を行っているところです。内容に関しては、ある程度、裏が取れたところでないとお話しできませんので、調査の現状ということで、本日はここまでとさせて頂きたいと思います。

(苫小牧カーフェリー火災事故関連)

問: 今年7月にあった北海道苫小牧沖でのカーフェリーの火災の件ですが、調査の進捗の方はどの様になっているのでしょうか。
答: 7月末に事故が発生し、8月から初動調査として車両関係や船舶状況の調査を行いました。だいせつは、修理のため函館ドックに入っていますが、先日も調査官が函館に行き、船内の焼損状況や消防設備関係を調査し、また、収集した情報の整理を行っているところです。口述や色々な書類関係も入手していますので、これらの情報を整理しながら、さらに必要な追加調査があるのか、そういうところを見極めながら整理・分析を進めているところであります。

(調布小型機墜落事故関連)

問: 発動機を22日に発送されたとのことですが、現時点で向こうに届いているのでしょうか。また、いつから調査を始めるのか、今後の予定を教えて頂きたい。
答: 22日に梱包した上で発送しましたが、空輸便という便の関係もありまして、今週後半には米国のライカミング社に届く予定です。事前に写真とか提供していますが、実際にライカミング社に届いてみて、現物を彼らが見た上で具体的にどのタイミングでどんな分解を行っていくのか、そういった調整も今後、入ってくると思われます。

問: ライカミング社のエンジンの調査はどれくらいかかる見通しなのかということと、調布の生存者の方の口述は、その後、どの様に進んでいるのか教えて頂けますか。
答: エンジンについてはライカミング社とNTSBの調査官と調整しているところですが、概ね1ヶ月くらいの期間は必要だと言われています。従いまして11月当初から始めて最速で11月末ぐらいかと思われます。

問: 何が1ヶ月くらいかかるということですか。
答: まずは分解に係る機器の調整であるとか、普段はエンジンの製造メーカーですから、製造品の検査と焼けた機器の検査は違ってきますので、現物に合わせた測定器具をきちんと整備する必要があるなど、その辺に時間がかかると聞いております。後はNTSBの調査官の立ち会いですとか、場合によっては我が国の調査官を派遣しますので、実際行って開けて何を見てくるのか、具体的な調整等をこれから行います。

問: 機器の調整を含めて、必要な調査を全部、アメリカで終えるのに1ヶ月程度ということですか。
答: ある程度、結果が出るまでです。ただ、測定したデータをそのまま生データでもらうのか、ある程度、メーカーにも分析をお願いするのか、そこはこれからの調整になります。それと口述の件ですが、飛行機に乗っていた全員の方からの口述は終わっておりますと先月、お話ししたところです。それ以降は、追加で何かお願いするとか、まだ、そういったところは行っておりません。第一弾として同乗者3人からの口述は取れているところは先月と変わっていません。

問: ご容体が厳しい中で、ようやく聞けたということのようですが例えば回復していく中で、より詳しく聞くとかの予定はあるのでしょうか。
答: そこは医療機関とも相談しながら、後は本人とも相談し何か思い出したところがあれば、適宜、お話を伺うという方針ではあります。今のところ2回目だとか3回目だとかという段階ではありません。

問: 3人の方はそれぞれ1回ずつ聞いたのでしょうか。
答: 最初に口述を伺った方からは2回聞いていますが、他の2人については聞いたのは1回です。

問: 発送するまでに日本ではエンジンを開けていないと思いますが、調布飛行場の運用にも関わってくる問題でもありますので、これからどの様な調査を期待し、実施されるのかお聞かせ願いますか。
答: エンジンの方は、先程も申しましたとおり分解調査等を含めて詳しく調べてもらう予定です。当方では、その間に機体のさらなる詳細調査を行います。また、交信記録がありますので詳細分析を実施したいと思います。それから関係者等から得た口述の取りまとめやパイパー社と機体の技術的な調整を行います。それから追加の調査項目があれば、どの様な調査が必要なのか検討を含めて現在、行っているところです。

問: 調布飛行場の運用にも関わり、スピードも求められており、世間の関心も高いと思いますが、どのような調査を期待していますか、あるいは指示されていますか。
答: 先程、述べたように必要な調査をできる限り早く進めたいと思っています。始めたばかりでどれくらい時間がかかるかは申し上げられませんが、調布飛行場の運用の件もありますので、できるだけ調査を早く進めていきたいとは考えております。

問: エンジンの分解調査をされるということで、事故原因はまだ先かと思いますが、エンジンが事故原因の可能性の1つとして期待されているのでしょうか。
答: それはエンジンを開けて調べてみないと分かりません。 エンジンに何か不備な部分があれば、事故原因の1つになったかも知れません。1つだけではないだろうという気がしておりまして、全体的な調査を実施し、全体的な把握をしないとこれが原因だとはなかなか申し上げられません。時間がかかることは理解頂きたい。

問: 原因が1つだけではないとお考えになる理由はなにかあるのでしょうか。
答: 飛行の過程も調べなければなりません。なかなか上昇しなかったということ、それから滑走路の終端近くで飛んでいたスピードがどれくらいあったのか、まだ確認できていませんので、これらも含めて調査していかなければなりません。エンジンだけというわけにはいきません。

問: 交信記録がありますとおっしゃっていましたが、交信記録は実際詳細分析を行うようなものはあったのでしょうか。ほとんど交信はなかったと認識していますが。
答: 当初の発表でもご説明しましたとおり、空港事務所とパイロットとの離陸前の交信があったのですが、その後、雑音に覆われているものの中に何かあるかもしれないということをお話ししましたが、そのあたりは確たるものは出てきていませんので、引き続き進めていきたいということです。

問: エンジンだけとは必ずしも言えないということで、それ以外に関心をもっている要素はありますか。
答: 1つは離陸する際のスピードですね。VR(ローテーション速度)といいますが、機首を上げてあがっていくときの速度をきちんと調べなければならないと思っています。

問: 操縦の面でしょうか。
答: それは記録がないのでなかなかわかりませんが、機首角をどの程度とったか、つまり機首上げをいつどのようにしたか、そのときの速度はどうだったか、そのような観点から調べていかなければならない。映像が少し残っているのでそこからできるか検討中であります。

問: エンジンのトラブルだけでなく操縦面からもあるということですか。
答: 総合的に解析しないとならない。1つだけに固めてやるとなかなか原因に到達しないということです。

問: エンジンの分解調査ですが、場合によっては日本の調査官も派遣するとのことですが、必ず行くべきではないのですか。1ヶ月間いるなど決まっていることがあれば教えていただきたい。
答: 場合によってはというのは言葉のあやで、基本的には我が国の調査官を派遣する予定ではいます。とは言っても、現地にエンジンが届いて分解調査に入る前の台の上にのせるようなところから日本の調査官が張り付いているわけではなく、分解に着手するタイミング、分解した物を洗浄したり、拡大する機器を使って調査したりするのですが、そういったタイミングに合わせて調査官を派遣できるように調整していきます。11月の何日から何日間行くということはまだ決まっていませんが、そういうイメージをもっていただければと思います。

問: 行くとしたら調査官は主管1名だけでいくのですか。
答: 内容によって変わりますが、最低でも1名は派遣する予定です。

(航空事故の調査体制について)

問: 調査の進捗について、特に航空を見て件数が多いと思うのですが、個人の滑空機なども多くあり、調査官も1件だけでなく何件も抱えているのではないかと思っています。一方で報告書も1年半くらいで公表しなければならないとスピードも求められるなかで、今の体制で十分なのか、それとも調査体制など見直していくべきなのか、運輸安全委員会内でどんな議論があるのか、教えて頂けますか。
答: そうですね、難しいのはこの年にどれくらい事故が起きるか、予測できないということです。本年は、現在までに事故24件、重大インシデント8件が発生しており、例年よりも件数が多くなっています。去年は事故17件、重大インシデント4件で計21件、平成25年は事故11件、重大インシデント8件で計19件です。それより前をみますと漸減傾向でありましたが、最近はそうでもありません。世界的にみても小型機の航空機事故は必ずしも減っているわけではなく、増えたり減ったりしています。調査体制や訓練体制などの関連があると思いますが、その辺も含めて、今後、統計的な扱い方も見ていかなければならないと考えております。簡易な事案については、簡略化された調査報告書の活用など調査の効率化を図って、調査報告書の早期公表に向けて最大限の努力をしていきたいと思います。ただ統計的な調査をしても、今後の調査に役に立つかというと必ずしもそうではなく、やはり一つ一つ調査をして何らかの提言をしていく、それが現場で生かされることが大事だと思いますので、一つ一つ大事に扱っていきたいと思っています。先ほど公表まで1年半とおっしゃっていましたが、全ての案件をその時期に公表できるわけでもありませんが、できるだけ効率化を図っていきたいと思っています。

問: 現在、航空事故調査官22人中6人が1年目の調査官ということで、2名派遣されるだろうと思って発表を待っていたら3名だったということもあります。たぶん3人目は新しい人なのだろうなと勝手に思っています。おそらく調査官は3、4件抱えており状況は逼迫しているのではないかと思っています。さきほど、簡易報告書の話もありましたが、調査対象はICAOの基準もあり変えられないのかもしれませんが、人命が伴わないような、たとえばプロペラが壊れました程度の事案はもっと簡単に調査できないのですか。あるいは委員長名で増員の提言をまとめるなど、そういう議論はされていませんか。
答: 事故というのは外観上、簡単そうに見えても調べてみるとそうではなかったということもあります。報告を受けて、これは簡単だから簡易報告書で出来るだろうということもありますが、よく調べてみると必ずしもそうではない場合もあります。事故それぞれによるので、これは簡易報告書でいきましょうというのもある程度調べてみないとわからない。調査官が調べた内容について、委員会で議論して、ここを調べてくださいなどの追加調査があることもあります。そういうことを踏まえると簡易方式でいいのかなという結論に達することもあり、全体を見ていかなければいけないので一律に判断することは難しい。

問: 調査の内容を変えられないなら、体制などに関して委員長の提言があれば我々にも応援できることがあると思います。
答: 事実そういうことは過去にありました。787のバッテリー問題のときは本当に人が出払っていて調査官がいなかったのですが、当時の事務局長は大変苦労され、あちこちから調査官であった先輩等を引っ張ってきて他の事故が起きても耐えられるような体制を作りました。ただ、今は対応できていますということはご承知おきください。

問: 787のときより今はそこまで逼迫していないということですか。
答: そうですね。

資料

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