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委員長記者会見要旨(令和元年12月17日

令和元年12月17日(火)14:00~14:14
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。

 はじめに、委員の異動について、ご報告します。
 鉄道分野の非常勤委員を担当していただきました岡村美好氏及び土井美和子氏が12月5日をもって退任されました。新任の方は、鈴木美緒委員及び新妻実保子委員について国会の同意を得られ、12月6日に任命されました。

 鈴木美緒氏は、交通工学、ヒューマンファクターを専門として、東海大学工学部土木工学科の特任准教授をされています。新妻実保子氏は、電気工学を専門として、中央大学理工学部精密機械工学科の准教授をされています。
 鈴木委員については、交通工学、ヒューマンファクターの専門ですので、特に踏切事故等の分析などにおいて貢献いただけると期待しています。新妻委員については、センサやロボットシステムの研究をされていますので、自動運転等の鉄道事故解析などに貢献いただけると期待しています。

 また、航空分野担当の丸井祐一委員、鉄道分野担当の奥村文直委員と石田弘明委員の再任について国会の同意が得られています。

1.事故等調査の進捗状況  

 続きまして、事故等調査の進捗状況について、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、各モード合わせて5件ありました。

 航空モードは、8月22日にイースター航空機が、茨城県の百里飛行場において管制官の指示とは別の滑走路に誤って着陸を試み、同滑走路に車両が存在していたことから、着陸復行した重大インシデント、及び11月30日にピーチ・アビエーション機が東京国際空港に着陸する際、横断許可を受けていない作業車両が同滑走路に進入した重大インシデントの2件です。
 鉄道モードは、11月27日に福島県の会津鉄道で線路内に流入した土砂に列車が乗り上げた列車脱線事故、12月2日に静岡県の天竜浜名湖鉄道の第3種踏切道で発生した踏切障害事故の2件です。
 船舶モードは、12月2日に鹿児島県根占港付近で船体の動揺により旅客船内の乗客9名が負傷した事故の1件です。

 事故等調査の進捗状況については、お手元の資料をご覧下さい。

2.令和元年を振り返って    

 さて、本日は、本年最後の定例記者会見となりますので、4月に委員長に就任して9ヶ月ですけれども、この1年を振り返ってみたいと思います。

 初めに、事故等調査報告書の公表について、11月までの件数になりますが、本年は、航空が26件、鉄道が14件、船舶の重大案件が23件の計63件の事故等調査報告書を公表しました。

 主な報告書を紹介させていただきますと、航空では、10月に、平成29年8月に発生した奈良県における個人所属の小型飛行機墜落事故調査報告書を公表し、併せて、国土交通大臣に対し、操縦士の安全性向上策に関する勧告を行いました。
  鉄道では、1月に、平成29年10月に南海電鉄で発生した橋脚の沈下による列車脱線事故の報告書を公表し、橋りょうの確実な検査について国土交通大臣に意見を述べました。また、3月には、平成29年12月にJR西日本で発生した新幹線の台車亀裂による重大インシデントについて、「正常性バイアス」を始めとするヒューマンファクター分析を含む調査報告書を公表しました。
  船舶では、4月に、平成30年9月に発生した油タンカー宝運丸の関西国際空港連絡橋への衝突事故調査報告書を公表し、併せて原因関係者に対して、船舶の安全及び施設の安全を安定的に確保するために必要な事項を勧告しました。
  さらに、当委員会の8つの地方事務所が、公表した報告書の件数は893件になっており、昨年1年間の公表件数874件を11月の段階で上回っております。
  いずれの事案におきましても、報告書としてまとめた調査結果に基づき、関係の方々が必要な安全措置を講じて、同種の再発を防止していただきたいと考えております。

 次に、今年発生した事故等についてです。

 昨日までの件数になりますが、航空は事故が10件、重大インシデントが14件の計24件、鉄道は事故が16件、重大インシデントが2件の計18件、船舶は重大案件としての事故が22件、インシデントが1件の計23件、全モード合わせて65件発生いたしました。
  航空では、調査対象になったのは24件で、昨年より2件少ない件数ですが、事故による死亡者は1名となっています。これは平成24年以来の低い人数です。
  鉄道では、6月1日に横浜シーサイドライン新杉田駅において、無人の自動運転列車が逆走する人身障害事故が発生しました。当委員会では、事故発生から2週間後の6月14日に、進行方向の指令を伝える線の断線など、初動調査で得られた事実情報を取りまとめて鉄道局へ提供いたしました。また、9月5日には、社会的に大きな影響を与えた、京浜急行の踏切障害に伴う列車脱線事故が発生しました。当委員会としましては、当該列車の運転士が、発光信号機をどのように視認してブレーキ操作を行ったか等について調査・分析を進めているところです。
  船舶では、3月9日に新潟県佐渡に向かっていた旅客船ぎんがが何かにぶつかる事故がありました。幸いにも死亡者は出ませんでしたが、多くの方が重傷を負われました。現在、運輸安全委員会運営規則の規定により、特に重大な事故として、総合部会を開催し、海事部会の委員のみならず、航空、鉄道部会の委員も加わって原因などの審議を行っています。総合部会の対象となる事故は、平成20年10月に運輸安全委員会が設置されてから初めてのことです。

 運輸安全委員会といたしましては、いずれの事案も早期に報告書を取りまとめるほか、安全上必要な情報は随時提供するなどして再発防止に寄与して参りたいと考えております。
  また、報告書の公表件数のところでも触れましたが、地方事務所では、多くの船舶事故等調査を行っています。こうした地道な積み重ねが日本の交通安全に寄与していくという信念のもと、これからも調査を進めて参りたいと思います。

 本日、私からは、以上です。
 何か質問があればお願いします。

3.質疑応答

(運輸安全委員会設置法改正関係)

問: 運輸安全委員会設置法の改正で、航空事故等の調査対象が広がりますが、対応状況を教えて下さい。
答: 国際ジェット旅客機の開発に伴い、我が国も航空機設計国となることから、既に設計国である米国、カナダの事故調査機関に職員を派遣して、情報共有や連携を強化するなど、調査対象の拡大に対応できるよう体制整備を進めているところです。

資料

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