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委員長記者会見要旨(令和2年2月25日

令和2年2月25日(火)14:00~14:24
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、2月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、各モード合わせて6件ありました。

 航空モードは、2月1日に福島県郡山市で福島県警察航空隊所属のヘリコプターが不時着し、機体を損傷した事故、2月16日に北海道石狩市で札幌市消防航空隊所属のヘリコプターからホイスト装置に装着していたおもりが落下した重大インシデント、2月20日に東京国際空港からベトナムに向けて飛行中のビジネスジェット機で機内の気圧が異常に低下した重大インシデントの3件です。
 鉄道モードは、1月29日に京都府のWILLER TRAINS宮津線の第3種踏切道で発生した踏切障害事故、1月31日に鳥取県のJR西日本境線の第4種踏切道で発生した踏切障害事故の2件です。
 船舶モードは、2月16日に茨城県の鹿島港で発生した遊漁船の衝突事故の1件です。  

 この内、福島県警察航空隊所属ヘリコプターの航空事故について、調査の進捗状況をご報告します。

 同機は、臓器輸送のために、福島県会津若松市内の場外離着陸場を離陸し、福島空港に向けて飛行中、郡山市三穂田町の田んぼに不時着した際に機体を損傷しました。

 お配りした資料1の写真1をご覧願います。
 この写真は、不時着時に横転した機体の状況です。また、写真2は同機を吊り上げた際に撮影した機体側面の写真です。
 写真1をご覧いただきますと、テールローター・ドライブシャフトが、尾翼の前方部分で破断した状態であり、そのドライブシャフトを覆うカウリングの上面に穴が空いた状態になっていました。

 次に図1をご覧願います。
 図1はテールローター・ドライブシャフトを側面から見た図です。
 同機のテールローター・ドライブシャフトは前後3分割の構成ですが、このうち真ん中部分のシャフトが破断していました。テールローター・ドライブシャフトの図のオレンジ色で示した部分は機体に残っていましたが、赤色部分の3つは、不時着場所から北側に約1.5km離れた山中で見つかりました。

 次に写真4をご覧願います。
 写真4は、メインローター・ブレード5枚の残骸を並べたものです。これらは、機体が横転した際に、取付部の根元から破断したものと思われます。
 写真5のように、メインローター・ブレードの先端部に凹み(打痕)が確認されています。
 写真6はテールローター・ドライブシャフトの破片です。破片の凹みは、メインローター・ブレードの先端部の形状に合うような形でした。
 先程の写真1でご覧頂いた、テールローター・ドライブシャフトの破断部を覆うカウリングに穴が空いた位置は、回転中のメインローター・ブレードが下方に大きくたわんだ場合にその先端部が通過する位置と概ね一致していました。

 メインローター・ブレードがテールローター・ドライブシャフトに当たるケースは過去にも他のヘリコプターで事例があり、機体姿勢やメインローター・ブレードの回転面の角度が大きく変化したことにより、メインローター・ブレードがテールローター・ドライブシャフトに当たって事故となっております。

 当委員会と致しましては、このような過去の事例も踏まえ、今後、メインローター・ブレードがテールローター・ドライブシャフトに当たった可能性を始め、あらゆる角度から、原因究明に向けて詳細な調査を進めることにしております。
  なお、これまでのところ、それ以外に機体の不具合などは見つかっておりません。
 本日の段階でご報告できることは以上です。

 事故等調査の進捗状況については、資料2をご覧下さい。

 本日、私からは、以上です。
 何か質問があればお受けします。

2.質疑応答

(福島県警察航空隊ヘリ事故関係)

問: 福島県警察航空隊ヘリの不時着事故について、メインローター・ブレードがテールローター・ドライブシャフトに接触した結果、ドライブシャフトが脱落して、その後、不時着したという流れでしょうか。
答: そのとおりです。

問: 通常、メインローター・ブレードがテールローター・ドライブシャフトに接触するということは、あり得ないことでしょうか。
答: 通常であれば接触しませんが、接触した要因について、今後、調査を進めて参ります。今の段階で申し上げられることはありません。

問: メインローター・ブレードとテールローター・ドライブシャフトが接触したような事例が過去にあったのでしょうか。
答: 本件と直接関係はありませんが、平成19年に小型のヘリコプターが墜落した事故がありました。突風を受けて、操縦士が急激な操作をした結果、メインローター・ブレードがテールローター・ドライブシャフトに接触したという事故です。

問: 本件について、風が強かったという状況はありますか。また、過去、現場付近でヘリが突風を受けたという事案はありますか。
答: 気象の状況については、現在、調査を進めております。また、ご質問のような過去の事案については、今のところ把握しておりません。なお、気象状況の話が出ておりますが、現時点で特定したということではありません。むしろ、なぜそのような飛行状態になったかということについて、他の要因も含めて調査を行って参ります。

問: 他の要因というのは、どのようなものが考えられるのでしょうか。
答: まさにこれから調査をしていくということですので、現時点で特定して、お答えすることは控えさせていただきたいと思います。

問: メインローター・ブレードとテールローター・ドライブシャフトが接触したのは、不時着時の横転による衝撃ではなく、飛行中に接触したという理解でよいか。
答: そのとおりです。

問: テールローター・ドライブシャフトが脱落したことでバランスを崩し、最終的にヘリが不時着したと考えられるということでしょうか。
答: はい。一般的にテールローター・ドライブシャフトが折損すると、テールローターが回らなくなりますので、機体のコントロールが難しくなります。本日、お話しできるのは、資料に示しているとおりであり、今後、調査を更に進め、事故原因を究明していきたいと考えております。

問: 不時着場所から北側に約1.5キロ離れた山中で部品が見つかったということですが、このあたりで部品の脱落があったと考えられるということでしょうか。
答: そのように考えております。

問: テールローター自体は、不時着の現場にあったということでよいですか。
答: そのとおりです。

資料

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