JTSB 運輸安全委員会

運輸安全委員会トップページ > 報道・会見 > 委員長記者会見 > 委員長記者会見要旨(令和3年6月22日)

委員長記者会見要旨(令和3年6月22日

令和3年6月22日(火)14:00~14:12
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、6月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見以降、新たに調査対象になった船舶モードの事故についてご報告します。

 5月27日、愛媛県今治市沖において、日本の貨物船白虎とマーシャル諸島船籍のケミカルタンカーULSAN PIONEERが衝突して白虎が沈没し、乗組員1名が死亡、2名が行方不明となる事故が発生しております。
 この事故について、当委員会は翌5月28日に船舶事故調査官3名を現地に派遣し、これまでに、両船の乗組員からの聞き取りやULSAN PIONEERの損傷状況の確認、同船のVDR(Voyage Data Recorder:航海情報記録装置)データの入手などの調査を行っております。
 今後、収集した情報を精査し、更に所要の調査を行うとともに分析を進め、原因を究明してまいります。

 なお、5月26日に北海道紋別市沖において、ロシア船籍の運搬船AMURと日本の漁船第八北幸丸が衝突して北幸丸が転覆し、乗組員3名が亡くなった事故については、当委員会の函館事務所から地方事故調査官2名を現地に派遣し、これまでに、両船の乗組員からの聞き取りや両船の損傷状況の確認、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)データの入手などの調査を実施しております。
 本事故につきましても、引き続き詳細な調査を行い入手した情報の分析を進め、原因を究明してまいります。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.航空法等の一部改正    

 次に、運輸安全委員会設置法の改正を含む「航空法等の一部を改正する法律」が6月4日に成立し、11日に公布されましたのでご報告します。

 運輸安全委員会設置法の改正につきましては、無人航空機に係る事故等を新たに運輸安全委員会の調査対象とすることなどを内容とするものですが、当委員会といたしましては、施行(公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日)までの間、無人航空機に精通した人材の採用や養成を行うなど、調査のために必要となる体制作りを進めてまいります。

3.台風接近時の事故防止に向けた安全啓発資料の公表    

 最後に、地方事務所における分析の発行についてご報告します。本日、当委員会の那覇事務所が中心となって作成した、台風接近時の船舶事故防止に向けた安全啓発資料をホームページ上に公表しました。お手元の資料2をご覧下さい。

 昨年8月、沖縄県の石垣島沖で、操業を終えて帰港中のまぐろ延縄漁船が横波を受けて転覆し、乗組員4人のうち3人が行方不明となる事故が発生しました。
 この事故については、那覇事務所が調査にあたり、「令和2年の台風8号の接近による荒天下、本船が石垣漁港に向けて航行中、危険半円と呼ばれる台風の右側に入り、左舷方から波高約4mの横波を受けたため転覆した」とする事故調査報告書を先月公表したところです。

 本船の船長は40年以上の経験を有する方で、低気圧の接近を認識し、台風に発達する前に帰港の途についていましたが、残念ながら事故に遭っています。地元では、「最近の台風は、進路や勢力について、それまでの経験則では予測しきれないことがある」との声も聞かれており、台風の接近時には、気象の変化に細心の注意を払い、余裕をもって早めに対策することが重要になることから、本事故を事例として取り上げ安全対策を周知する資料としたものです。

 関係者からは、「同種事故防止のために広く注意喚起してほしい」と言った要望も寄せられており、私としても、今後の台風シーズンに向けて、沖縄のみならず全国の漁業関係者にこの資料をご覧いただき、台風による事故の防止に役立てていただきたいと思う次第です。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(貨物船白虎 ケミカルタンカーULSAN PIONEER衝突事故関係)

問: 幹事社から1問お願いいたします。船舶モードで追加されている先月27日愛媛県沖の来島海峡の事故についてです。複雑な交通ルールの海域で、海上交通センターの管制業務も係わってくると思います。海上保安庁は、適切な情報提供をしていたという認識を示していますけれども、その点も含め運輸安全委員会の事故調査の現状と分かっていることについて、仰っていただけることがあればお願いします。
答: 本事故については、これまでに両船の乗組員からの聞き取りや、ULSAN PIONEERの損傷個所の確認などを行い、同船について船首部の圧壊、バルバスバウ(球状船首)の曲損等を認めています。白虎については沈没していますので、損傷等の詳細は分かっておりません。現在、収集したVDRデータや乗組員の口述などの情報や資料の精査、分析を行っているところですので、今は申し上げることはできませんが、本事故については社会的関心も高いことから、できるだけ早期に報告書を公表できるよう努力してまいりたいと考えております。今般沈没した白虎はRO-RO(Roll-On/Roll-Off)貨物船で、フェリーのように内部に大きな空間を有する構造ですので、そのような特徴も踏まえて分析していく必要があると考えています。

(航空法等の一部改正関係)

問: 先ほど、無人航空機に関して、精通した人材の育成の体制作りというようなお話がありましたが、具体的にどういったふうに人材を育成していくのかということがありましたら教えてください。
答: 今回の法改正により、今後、無人航空機のいわゆるレベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)が可能となり、第三者上空も含め、無人航空機の更なる利用の拡大が見込まれますが、万が一事故等が発生した場合には、社会的な影響が大きい事態も想定されることから、無人航空機に係る事故等についても、当委員会において、調査を行うことができるよう措置したところであります。当委員会といたしましては、今後、施行までの間に、無人航空機に精通した人材の採用や養成を行っていくこととしております。また、無人航空機は、飛行特性、機体の構造、装備品等において、ヘリ等の有人機と類似性があることから、既存の調査官も活用していくこととしております。

資料

このページのトップへ