JTSB 運輸安全委員会

運輸安全委員会トップページ > 報道・会見 > 委員長記者会見 > 委員長記者会見要旨(令和5年1月17日)

委員長記者会見要旨(令和5年1月17日

令和5年1月17日(火)14:00~14:31
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、1月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、鉄道モード合わせて3件ありました。

 航空モードは、12月26日に熊本県天草(あまくさ)飛行場で、ジャパン・ジェネラル・アビエーション・サービスの小型飛行機が訓練中に、プロペラと前脚を損傷し滑走路上に停止した重大インシデント、1月11日に那覇空港で、岡山航空の小型飛行機が到着後の点検において、プロペラの損傷が確認された重大インシデントの2件です。

 鉄道モードは、12月21日に岐阜県内の長良川鉄道 越美南線(えつみなんせん)の第3種踏切道で発生した踏切障害事故の1件です。

 当委員会は、いずれの事案につきましても事故調査官を現地に派遣し、機体や滑走路の状況の確認、或いは車両及び施設の損傷状況の確認、関係者からの聴き取りなどの調査を行っております。

 なお、1月10日に山口県 周防大島(すおうおおしま)の沖で海上自衛隊の護衛艦いなづまが推進器等を損傷し、航行不能となった事故については、当委員会の広島事務所から事故調査官3名を派遣して調査を実施しております。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.年頭所感

 本日は令和5年最初の記者会見ですので、年頭の所感を述べさせていただきます。

 昨年、当委員会の調査対象となった事故等の件数は、航空モードが36件、鉄道モードが16件、船舶モードの重大案件が3件で、各モードを合わせて55件でした。
 また、8箇所の地方事務所が取り扱った船舶事故等は899件でした。

 航空モードでは3月に伊江島空港で発生した小型機の墜落事故、10月に岐阜県高山市の山中に動力滑空機が墜落した事故、11月に茨城県坂東市で超軽量動力機が墜落した事故など、搭乗者の死亡を伴う事故が5件発生し、9人の方が亡くなられています。

 鉄道モードでは3月に発生した東北新幹線の列車脱線事故のほか、先ほどご報告した長良川鉄道の事故を含め、第3種、第4種踏切道の踏切障害事故が8件発生し、8人の方が亡くなられています。

 船舶モードでは、4月23日に北海道知床半島のカシュニの滝の沖で旅客船KAZUⅠが浸水、沈没する事故が発生し、これまでに20名の方が亡くなられ、今も6名の方の行方が分かっておりません。

 改めて、事故でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、ご家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。また、事故に遭われた皆様とご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 当委員会では、いずれの事故等につきましても調査・分析等を鋭意進めており、できるだけ早期に報告書を公表し、事故等の防止措置につなげてゆく所存です。

 本年は、調査報告書の早期公表のほか、調査技術の向上を図るため、「3次元形状デジタル測定装置」や「精密走査型電子顕微鏡」などを活用して客観的データの取得を促進するとともに、デジタル解析技術の充実を図ります。
 このような取組は、モード横断的に従事する「事故調査解析室」が中心となって進めてまいります。

 また、「事故の被害に遭われた方々への適時適切な情報提供」や、「HPや委員長会見を通じた情報の発信による再発防止策等の浸透」などを一層適確に行うため、職員を積極的かつ継続的に採用し育成するなど、引き続き体制の強化にも努めてまいります。

 さらに、昨年12月から無人航空機の事故等についても当委員会の調査の対象としたことから、無人航空機に精通した事故調査官の人材の確保・育成に努めるとともに、無人航空機の特性を踏まえた適確な調査を実施し、この新たな調査対象についても科学的かつ客観的な原因究明に努めてまいります。

 運輸安全委員会は、平成20(2008)年10月に発足し、今年15年目を迎えます。発足からこれまでの間、事故調査の結果等に基づき発出された勧告・意見・安全勧告は121件に上り、これらの提言に基づき関係者や関係機関等において事故防止の努力や取組が行われてきたものと考えています。令和5年におきましても、運輸の安全・安心に寄与できるよう、委員と事務局職員が一体となり、全力で取り組んでまいります。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

3.質疑応答

(年頭所感関係)

問: 委員長に一つだけ質問させていただきます。昨年55件の事故ということで説明されましたけども、やっぱり改めてですけども新幹線の脱線事故だとか知床のKAZUⅠとか社会的な影響のある事故等は我々も大きく取り扱ってるのは実際ですけど、それ以外にも本当に3種4種踏切事故とか事故は本当に改めて多いなと、今、伺いながら思ったのですが、長年による事故調査をされてきた中でですね、昨年の事故を、全体的にみてどういった特徴とか、最近の事故の特性とか、なかなかモードによっては言えないと思うのですが、どのようなことをお感じになっているのでしょうか。
答: 一概には難しいお話ですが、今仰られた大きな案件に関しましては集中的に調査を行う事、特に初動の調査が重要でありまして、KAZUⅠで船舶モードの調査官を集中的に派遣したように、事実情報を迅速に集め、それをどのように解析するのかなど、大きな事故があったときの体制というのをしっかりとやらないといけないと、改めて感じました。東北新幹線もそうですし、そういう体制は重要であると。ただし、航空モードの小型機や動力滑空機の事故も起きておりますので、そういう事故も並行してやる必要があります。その辺のバランスが重要であると思っている次第です。いずれの場合も初動調査のときの口述が重要で、それをどう判断していくかが重要だと思っています。

(護衛艦いなづま 乗揚事故関係)

問: 冒頭ですね、自衛隊のいなづまの件で事故調査官を派遣されていると仰ってましたが、これまでの調査の進捗状況とこれからどういうことをされるか伺ってよろしいでしょうか。
答: 事故が10日にあったわけですが、当委員会では14日に広島事務所の事故調査官3名を同艦に派遣し、これまでに関係者からの聴き取り、関係資料の入手などの調査を行いました。自衛隊と海上保安庁も調査を行っておりますけれども、我々は独自に調査をしております。今後も引き続き所要の調査を行い、分析を進めて原因を解明していくということでございます。
問: 今回、こういう事故が領海内で発生したということで、何でかなというところはあるのですが、委員長として今回の事故をどのように受け止められているか伺っていいでしょうか。
答: 本件は重大な船舶事故には該当しておりませんので、広島事務所の調査官3名派遣しています。その調査状況を見守っていくということだと思います。

(ジェットスタージャパン 緊急着陸関係)

問: 航空モードなんですけどもジェットスタージャパンの旅客機が爆破予告の連絡があって緊急着陸した後に脱出で怪我人が発生したという事案がありました。今のところ、事故とかインシデントと判断されたとは聞いてないのですが、これについて状況等わかれば教えていただけないでしょうか。
答: それについては、事故、重大インシデントにはなっていません。事故、重大インシデントになりました時は調査を行いますが、事故、重大インシデントに該当するかどうかにつきましては監督官庁である航空局の判断になります。

(東北新幹線 列車脱線事故関係)

問: 去年の12月に、去年3月にあった福島県沖の地震での東北新幹線の脱線について国土交通省の検証委員会が高架橋とか電化柱も含めてですが、中間とりまとめを発表したのですが、これについての委員長の受け止めをお願いします。
答: 去年12月に、国土交通省が設置した検証委員会が事業者に対し、新幹線の高架橋の柱や上にのっている電化柱の耐震補強について、前倒しで実施等を求める中間とりまとめを行ったことは承知しております。運輸安全委員会としても新幹線の耐震化が前倒しで実施されることは、地震に対する新幹線の安全性の向上の観点から非常に望ましいことであると思っております。以前にも申し上げたと思いますが、施設の損傷が今回の新幹線の脱線事故に直接影響したかどうかはまだ調査中でございますが、そういう要因が関係するのであれば、当然ながら我々のところも検討の中に入ってくるということになると思います。新幹線に関する列車脱線事故に関しましては現在調査中でございますので、内容を申し上げる段階ではございませんが、そのように考えております。
問: 高架橋が崩れてレールが歪んだ地点の被害についてですけども、事故があった直後の会見で、「それについては脱線現場との関連があるかどうかということで調査するかどうかを考えたい」というお話だったのですが、これは調査することになったのかならないのかどちらでしょうか。
答: 今言えることは、脱線の原因にレールの歪みが関係するということになれば調査するということでございます。その要因は当然考えないといけないと思っています。
問: 当該地点は、列車が通過した後に地震が起こっているので、直接的な脱線との関係といったものはないような気がするのですが、そうすると調査をしないという理解でよろしいか。
答: 崩れているところと脱線した場所は少し離れているわけですけども、それが直接関係するかどうかは、まだ判断できません。それがあった場合にはどうなるかは考えておかなければならないと思っています。
問: 運輸安全委員会として、レールが歪んだ部分の事象について調査の対象にするかしないか、どちらなのかをまだ検討中なのか。
答: 関係があると判断したら調査するということになります。
問: 地震が起きてから9ヶ月経って判断していないというのは、私の感覚では遅い気がするのですが、何がネックなのでしょうか。
答: これまでに、脱線に関する事実情報を集めて再現できるかのシミュレーションを行っています。それがしっかりと説明ができるかということを判断したい。その時に当然のことながら、レールの歪みがあった場合が考慮されるべきかどうかだと考えております。まずは歪みがない場合をシミュレーションするわけですけども、それで説明しうるかということだと思います。
問: 現場と離れているので関係があるかもしれないということで検討中、ということですか。
答: 基本的には、歪みは関係ないとしたシミュレーションをして説明できるか、ということを判断するのが最初だと思います。地震があって橋脚が揺れて脱線するシミュレーションで説明できるかということです。
問: 高架橋の下が損傷してレールが30センチ近く下がった部分の話をしているのですが、そこは当該列車は地震の時には通過していた可能性があって、それが脱線と関係があるかということをやっているということでしょうか。
答: 歪みの部分は考慮せずにシミュレーションでできるかどうかです。それで説明できなければ、そこの歪みを考慮する必要があるかを検討しなければいけないという意味です。
問: 質問の趣旨を変えますが、仮に関係なかったとした場合なんですけども、そうであっても通っていれば重大な事故の起きたおそれのある事象だと思うのです。これが関係あるかにかかわらず運輸安全委員会として調査した方がいいと私は思っているのですが、それが関係ないとすれば調査しないということになるのだと思うのですが。今の解釈の流れからすると。関係の有無にかかわらず調査するということにならないのはどうしてでしょうか。
答: それは視点には入っております。それをどの程度調査をするかということであります。問われているものに関しては重大であるとは判断しております。構造物自体が壊れていることに関しては注視しておりますけれど、それをどこまで報告書の中で書くのか。関与要因、または直接関与はしていなくても、「こういうことがありました」と書いて改善をお願いする、ということを書くかもしれません。それはわかりませんが、まだその段階に達していないということでございます。
問: 関係なかったとしても報告書の中に盛り込む可能性はあるという回答でしょうか。
答: 私はそう思います。少なくとも構造物が壊れているわけですから。その事実は書き込まれるのだと思います。
問: 事実を書き込むのはそうだと思いますが、それの再発防止というか、そういうところまで調査をするかというところを伺っているのですが。
答: 我々が担当するのは、法令上、脱線事故について、それがどういう原因で、どのような再発防止策が必要かということです。構造物自体が壊れていないことを普通は考えてやっているわけですが、今回の場合は構造物自体が壊れているので、壊れないようにしていただくのが、検証委員会の求めもそうですけども、それが第一に大切であると思っています。構造物が壊れた時に、壊れたことを前提に原因調査、シミュレーションその他、再発防止策を考えるというのはその後の段階なのですが、そこまで我々ができるかという問題もあります。ただし、述べないといけない場合は当然のことながら述べさせていただくということになり、それに対する分析もすることになると私は思っております。事故が起きなくても施設が崩壊したのだから調査すべきではないかというご指摘だと思うのですが、そうなると事故ではなくてインシデントという形になると思います。基本的な考え方としては構造物なりが損傷してかつ、例えば、地震であれば通常は列車を抑止したり緊急に停めたりしますが、そういったことが何も行われていないとか、例えば大雨が降って橋梁が流された時も、流されたから調査ではなくて、流されたのに列車を停めずに落ちそうになった、そういったことがあればインシデントだと思われますので、その中で調査するかしないかを考えることになると思いますが、壊れたイコール直ちに調査ということはない。基本的な考え方としてはそうではないかと考えます。
問: 28年前の今日、阪神・淡路大震災がありましたけども、あの時に山陽新幹線がご存じのようなことになりましたけども、あれも列車を通ってないので、そういう意味では川に流されたと同じ解釈でしょうか。
答: 仮定の話になってしまうので、実際にあれがまさに今日起こって、どうするかというのは、今即答は難しいと思います。
問: 一番伺いたいのは、先ほど年頭の所感で委員長が運輸の安全・安心に寄与するというのが運輸安全委員会の役割だという趣旨の発言をされましたけども、そういうことからすると、たまたま新幹線が30センチ沈下してるところを通っていなかっただけで、起きれば何らかの重大なことが起きていたと容易に想像されることを今もって調査の対象にしますとならないのが何故なのか、制度的にそれができないのであれば、その制度を変えるように何らかのことをすればいいわけでその辺をどう認識されているのか、それでいいとお考えなのかどうかというとこを伺いたい。
答: 私の理解では、まずは壊れないように、検討委員会が高架橋、電化柱に関して早急に耐震化をすることを仰ってるので、我々としても後押しする形でサポートできればと思っていますが、調査対象として扱うことを最優先することにはなっておりません。少なくとも脱線の原因について、まずはやるということです。
問: それを委員会として、いいと思ってらっしゃるのでしょうか。先ほど言われたように運輸の安全・安心に寄与するという委員会として、あの事象を調査の対象に、後押しすると言いながら、結局、国交省とかいろんなところがやっていますが、それとは別に運輸安全委員会として、第三者として本当にそれでいいのかを検証することをしなくてもいいとお考えなのか。
答: いいとかではなく、今の体制ではやれないのではないかと思います。少なくとも詳細にここのところをこうしてくださいとまで言えるかどうか。そういう体力が今はないのではないでしょうか。やはり国土交通省の対策を注視して、そのうえで今後脱線しないようにする対策を考える立場ではないかと思っております。

資料

このページのトップへ