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委員長記者会見要旨(令和5年3月28日

令和5年3月28日(火)14:00~14:16
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、3月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、鉄道、船舶モード合わせて5件です。

 航空モードは、3月2日にオールニッポンヘリコプター所属のヘリコプターが、岡山空港に着陸後、スポットに移動し接地する際に機体を損傷させた航空事故、及び3月12日に、群馬県伊勢崎市内の場外離着陸場を離陸した超軽量動力機が、飛行中にエンジン不調となり、近くの河川敷に不時着した航空重大インシデントの2件です。

 鉄道モードは、3月2日に香川県の高松琴平電気鉄道の第4種踏切道で発生した踏切障害事故、及び3月23日に西日本旅客鉄道 芸備(げいび)線 備後八幡(びんごやわた)駅~内名(うちな)駅間において、落石に列車が衝突して、列車が脱線した事故の2件です。

 船舶モードでは、3月15日に福井県 三方郡美浜町(みかたぐん みはまちょう)の早瀬漁港沖で遊漁船同士が衝突し、釣り客1名が死亡し、1名が負傷した事故の1件です。

 運輸安全委員会は、いずれの事案についても事故調査官を派遣し、調査を開始しています。今後、必要な調査を行い、収集した情報や資料の精査、分析を進め、原因を究明してまいります。

 なお、本日午前中に京都府保津川で発生した川下り船の事故につきましては、現在、情報収集、確認しているところです。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.意見に基づき講じられた措置について 

 次に、意見に基づき講じられた措置についてご報告します。お手元の資料2をご覧願います。

 当委員会は、先月16日、横浜事務所が調査を担当した遊漁船第十五須原丸(すはらまる)の釣り客負傷事故の調査結果等を踏まえ、水産庁長官に意見を述べました。

 当該事故は、遊漁船の船首部が上下動したことにより釣り客が脊椎骨折等を負ったものですが、こうした事故は、各地で毎年のように発生していることから、水産庁長官が都道府県知事に対し、釣り客の安全確保に必要な事項の実施を遊漁船業者等に指導するよう助言すべき、との意見を述べたものです。

 今般、水産庁より、当委員会の意見に基づき、関係都道府県に対し、管下の遊漁船業者等へ意見の内容を指導するよう通知したとの報告を受けております。また、当委員会では、先月16日に遊漁船の釣り客の脊椎骨折等事故防止をテーマとした運輸安全委員会ダイジェスト第41号を公表したところですが、水産庁が都道府県宛てに発出した通知の中で、この運輸安全委員会ダイジェストについても周知したとのことです。

 今回の水産庁の対応は、当委員会の意見に沿ったものと考えており、水産庁において迅速かつ適切な対応が行われたことは、今後の遊漁船の事故防止と安全性向上に繋がるものと期待しています。

3.シンガポール運輸安全調査局(TSIB)との協力意図表明の署名   

 3つめに、シンガポール運輸安全調査局(TSIB)との協力関係の構築についてご報告します。
 令和5年3月16日、当委員会は、シンガポール運輸安全調査局との間で、航空、船舶、鉄道の3モード全てを対象とした事故・インシデント調査に関する協力意図表明(SOI)を締結しました。
 今回の協力意図表明は、TSIBにおいて新たに鉄道の事故を調査対象に追加したことから、その要請に基づき、協力範囲を鉄道分野にまで拡大する改正を行ったものです。
 当委員会は、現在まで8か国と協力意図表明を締結しており、3モード全てを対象とした協力意図表明は、アルゼンチンに次いで2か国目ですが、シンガポールとは、来年度早速、TSIBの鉄道事故調査官を対象にした研修を現地で実施する予定です。こうした活動により、両国の運輸安全の向上に大いに貢献していけるものと期待しています。

4.運輸安全委員会年報2023の発行   

 4つめとして、本日、お手元に配布をしております「運輸安全委員会年報2023」を公表しましたので、概要をご報告します。
 今回の年報では、冒頭「この一年の主な活動」として、昨年12月から当委員会の調査対象となった無人航空機について、事故や重大インシデントとして扱われる具体的な事象等を紹介しています。
 また、社会的関心の高い事故等に関して、令和4年に公表した調査報告書等の概要や、現在取り組んでいる調査の概要等の紹介、アルゼンチン運輸安全委員会との協力意図表明の締結やホームページの機能向上などについて紹介をしています。
 このほか、年報では、それぞれのモードの調査活動や、事故防止に向けた情報発信や国際的な取組を紹介しております。また、巻末の資料編には事故等調査件数などの統計も掲載しております。

 本年報は、当委員会のホームページから全文をダウンロードができますので、是非ご活用いただきたいと思います。

5.安全啓発資料等の公表   

 最後に安全啓発資料等の公表について2つご報告します。一つ目は、Webコンテンツです。3月10日、当委員会ホームページに「超軽量動力機等の安全な飛行のために」を公開しました。お手元の資料4をご覧ください。
 当委員会は、昨年3月に運輸安全委員会ダイジェスト第39号を公表し、超軽量動力機等の事故防止についての啓発を行ったところですが、その後の令和4年6月から11月にかけて5件の事故、重大インシデントが発生し、5名の方が死傷しています。
 こうした状況を踏まえ、超軽量動力機等の愛好者に向けた更なる情報の発信、啓発のため、新しく特集ページを作成し、公開したものです。
 主な内容は、ダイジェスト第39号に加えて、超軽量動力機の最新の調査報告書を引用し、マニュアルに従った点検・整備作業や定時点検項目の重要性と、これらの適切な実施を呼びかけるなどしています。
 超軽量動力機等については、例年、特に5月から8月にかけて事故が多くなる傾向があることから、愛好者の皆様には、本特集ページを事故防止への一助となるよう役立てていただき、空を安全に楽しまれることを期待しております。

 二つ目は、広島事務所における分析「瀬戸内海の漁業を知って、安全な航海を!」です。お手元の資料5をご覧願います。
 当委員会の広島事務所が主に管轄する瀬戸内海は、漁業資源の豊かな好漁場である一方、大型船舶の通航も多く、大型船と漁船の衝突や、大型船による養殖施設等の損傷事故が絶えません。そこで、広島事務所では、そうした事故の調査結果を精査・分析し、瀬戸内海を通航する大型船に向けた安全啓発資料作成し、本日公表しました。
 分析の結果、大型船と漁船の衝突では、事故に遭った漁船の多くが相手船に気づいていないことから、大型船側に対し、漁船側が大型船に気づいていない可能性を念頭に、早めに避航動作をとるなどのポイントを紹介しています。また、養殖施設等を損傷した大型船の4割以上が、出発前に漁業の情報を確認していなかったことから、航行予定海域の養殖施設や漁法を事前に確認するよう促しています。
 瀬戸内海を通航する大型船の運航に関わる全国の皆様方に、この資料をご覧いただき、事故防止に役立てていただきたいと思っております。
 また、これらの資料は、今後出前講座等でも活用していきたいと思っております。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

6.質疑応答

(知床半島沖旅客船浸水事故関係)

問: 知床の遊覧船事故から間もなく1年が経過しようとしておりますけども、最終報告書に向けた進捗具合などについて教えていただければと思います。
答: 令和4年4月23日に発生した旅客船KAZUⅠ(カズワン)の事故について、当委員会は昨年12月15日に経過報告を公表したところですが、本事故については、現在も調査を続けている段階です。
 本事故については、経過報告でもお示しした事故の発生に関与した要因等について更に詳細な調査・分析を進める必要があります。また、所要の手続きを経て、事故調査報告書としてまとめることとなるため、公表までには一定の期間を要するものと見込んでおります。
 調査報告書の公表時期をあらかじめ申し上げることはできませんが、引き続き早期の公表に向けて調査を進めてまいります。

資料

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