羽田の空の安全を守る「舞台裏」

パイロットの取組み

パイロットの資格管理

パイロットになるには「事業用操縦士」や「航空無線通信士」などの国家資格を取得するだけでなく、数多くの地上訓練や飛行訓練が必要です。特に機長になることは“狭き門”となっています。
エアラインパイロットの資格管理の一例をご紹介すると、まずは副操縦士になるための訓練が2〜4年。副操縦士への昇格審査に合格後、副操縦士として7〜10年程度の乗務経験を積みます。その間、多くの乗務経験を積み、さらに機長昇格訓練などで知識や技量を磨き、ようやく機長昇格審査を受けることができるのです。機長になるためには多くの経験を積み、厳しい訓練を経て数々の審査に合格しなければなりません。また、国際線に乗務する場合には、英語でのコミュニケーション能力や機長としての適性テストなども行われます。もちろん健康面、精神面のチェックも実施され、1つでも不適合があれば審査に通りません。
機長になってからも、技量や英語力、健康のチェックが定期的に繰り返され、もし基準をクリア出来ない場合には、経験豊富な機長でも乗務する事は許されません。
多くの乗客の命を預かって飛ぶパイロットの技量や能力を維持するため、万全のチェック体制が整えられているのです。

フライトシミュレーターを用いた訓練

飛行訓練の手段の1つとして、航空会社ではフライトシミュレーターを用いた訓練を実施しています。一般的にフライトシミュレーターは、特定の型式の航空機のコックピットを完全に再現するため、計器や操縦桿が実機と同一の配置・材質で構成されています。さらに、パイロットの操作に合わせて、コックピットの窓を通して見える外界の光景が変化するのはもちろん、シミュレーター自体が傾斜・振動することで、パイロットは実際の運航に近い環境下で、訓練することが可能となっています。

■フライトシミュレーターで再現されたコックピット。

フライトシミュレーターで訓練を行うことの利点は、まれにしか起こらない機体のトラブルや悪天候など特殊な条件を簡単に再現できる点にあります。
パイロットは、様々な非常事態・緊急事態を想定した訓練を行っています。航空機は、離着陸途中にエンジンの1つが故障しても、飛行を継続できるように設計されていますが、フライトシミュレーターでの訓練では、例えば「離陸滑走の途中で、片方のエンジンが火災により停止する」というシナリオに基づき、機器から発せられる警報の把握とそれに基づく操作、管制への通報、パイロット同士の連携といった一連の手順を何度も訓練します。もちろん、非常事態・緊急事態を想定したシナリオ訓練を行う際、訓練を行うパイロットは、「どのタイミングで、どの機器が故障するのか」等のシナリオは事前に知らされず、訓練は常に緊張感の漂う中で進行していきます。

■窓は液晶モニターになっていて、実際の風景と同じ状態が再現されます。

また、計器着陸装置(ILS)と呼ばれる空港の設備を活用することにより、天候が悪くパイロットが滑走路を目で確認できない場合でも、ILSからの電波を利用して、最適なコース(位置・高度)を飛行しているかどうかを確認しながら着陸することができます。フライトシミュレーターでの訓練では、コックピット内の計器のみを頼りに操縦する手順を確認することはもちろん、自動操縦から手動操縦に切り替える瞬間など、機長と副操縦士の間で円滑な連携が必要とされる場面の訓練も入念に行われています。なお、滑走路ごとに定められている安全な着陸のための最低の気象条件を下回る場合など、パイロットが安全に着陸できないと判断した場合は、安全を最優先して着陸を中止します。
このように、フライトシミュレーターでの訓練を通じて、パイロットは日常の運航はもちろん、非常事態・緊急事態に遭遇した際、いかに素早く正確に状況を把握し、航空機を安全な状態に保ち、乗客の命を守るか、という重要な技能の確保・維持に努めています。

■計器類は実機と同じ。表示される情報も実際の操縦時と全く同じです。
ページトップ