海事

運輸安全委員会「船舶事故調査の経過報告について」を受けた取組みについて

令和4年12月16日
 
 運輸安全委員会においては、現在、本年4月23日に発生した旅客船KAZU1の浸水事故の原因について調査中ですが、今般、運輸安全委員会から、現時点において同種小型旅客船事故の発生を防止する観点及び事故による被害の軽減を図る観点から、本事故調査の経過及びこれまでに確認されている事実情報等の報告と併せて、現段階において必要と考えられる再発防止策が公表されましたので下記のとおりお知らせいたします。
 また、本報告書において、小型旅客船の事故防止のため、「船首甲板開口部を確実に閉鎖し、波浪などがたたいた時に容易に開くことがないかを確認するなど、船体に浸水のおそれがないことを緊急に点検すること」等とされております。
 事業者の皆様におかれましては、下記の安全対策を実施し、一層の航行の安全を確保頂くとともに、引き続き、旅客運送事業の更なる安全向上に向けた取組みを積極的に推進して頂きますようお願いいたします。
 
 
 
運輸安全委員会「船舶事故調査の経過報告について」のポイント
 
 ○ 本事故の発生に至る複合的な要因について
  ・本船は、船首甲板部ハッチ蓋が、クリップを回しても確実に固定できなかったか、又はクリップを止められていなかった可能性もあり、確実に閉鎖された状態でなかったため、船体の動揺によって同ハッチ蓋が開き、そこから海水が流入し、船首区画から隔壁の開口部を経て上甲板下の各区画に浸水が拡大したこと等が原因となって、沈没に至ったものと推定される。
  ・本船船長は、本事故当日、気象・海象が運航基準の発航中止条件に達するおそれがあり、複数人からその旨の助言も受けていたが、発航を中止しなかった。
  ・本船は、復路において、運航基準の航行中止、反転、避泊又は臨時寄港の措置をとるべき基準に達する気象・海象に遭遇したが、避難港に避難して救助を待つ等の措置をとらなかった。
  ・本事故及び被害の発生に至る要因としては、上述の他、多くの要因が重なった結果、発生したものと捉えられる。

 ○ 国土交通大臣への意見
  ・国土交通大臣は、以下の事項について、小型旅客船を運航する事業者に周知し、指導を行うこと。
   (1)航行区域を平水区域から限定沿海区域に変更した小型旅客船の船首甲板開口部の点検
     船首甲板開口部を確実に閉鎖し、波浪などがたたいた時に容易に開くことがないかを確認するなど、船体に浸水のおそれがないことを緊急に点検すること。
   (2)避難港の活用等 航行する海域における避難港の存在、活用等について再確認すること。

  ・国土交通大臣は、今後、安全性を更に高める観点から、限定沿海区域を航行区域とする小型旅客船の隔壁の水密化に関し、検討すること。


 
本報告を受けた取組み
 
 以下について、ご対応頂きますようお願いいたします。
 ※ 小型船舶により旅客運送(1人以上の旅客の運送を行うものをいう。)を行う全ての事業者が対象となります。
 1.発航前検査時の船首甲板開口部の検査・記録の徹底
  [1]航行区域にかかわらず人を運送する総トン数20トン未満の船舶の船首甲板開口部(船首から船全体の4分の1までの上甲板におけるハッチ、通風口、出入口等)の各部に損傷がないことを確認してください。
  [2]当該船首甲板開口部の閉鎖装置について、閉鎖時に隙間がなく、波浪などにより容易に開くことがないことを確認してください。
  [3]発航前検査において、当該船首甲板開口部の検査を確実に実施するとともに、検査結果については、発航前検査記録簿(小型船舶用発航前検査記録簿(別添)を参考に、使用船舶の実態に合わせて適宜修正し、ご活用ください)に確実に記録してください。

 2.避難港の再確認、教育・訓練の実施
  [1]自船の航行区域において設定している避難港を再確認してください。
   なお、避難港を再検討する場合には、海上保安庁のサイト「海しる」等をご活用ください。
   また、限定沿海区域を航行区域とする小型船舶(基準経路の最長航行時間が1時間を超える小型船舶など)にあって、当該航行区域を決定した際に起点とした港を再確認する必要がある場合、日本小型船舶検査機構(JCI)本部へお問い合わせください。
  [2]船員等に対し、避難港の場所、港湾管理者等が定める入港・着桟方法や港利用における注意事項等に関する教育、及び入港訓練を実施してください。
 

 
自主点検の実施について
 
 以下について、別添1に基づき点検を実施し、結果を最寄りの各地方運輸局(神戸運輸監理部及び沖縄総合事務局を含む。以下、「地方運輸局等」という。)にご提出ください。
 ※ 航行区域を限定沿海以遠とする小型船舶により旅客運送(1人以上の旅客の運送を行うものをいう。)を行う全ての事業者が対象となります。
 1.船首甲板開口部(ハッチ、通風口、出入口等)の点検
  別添2の自主点検結果回答表に必要事項を記載の上、その裏付けとなる船首甲板開口部等の画像及び直近一週間分の発航前検査記録簿の写し(画像又はPDFファイル)とともに最寄りの地方運輸局等までご提出ください。
 
 2.避難港の再確認、教育・訓練の実施
  ・別添2の自主点検結果回答表に必要事項を記載の上、最寄りの地方運輸局等までご提出ください。
  ・自主点検結果回答表に記載した避難港に関し、船員等に対する避難港の場所、港湾管理者等が定める入港・着桟方法や港利用における注意事項等についての教育・訓練(避難港への入港訓練を含む)をこれまで実施していない場合、令和5年3月15日(季節運航の場合には運航開始前日)までに実施し、最寄りの地方運輸局等までご報告をお願いします。
 

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