地上・地下のモデルを活用した歩行者向けナビゲーションシステム
| 実施事業者 | JR東日本コンサルタンツ株式会社 |
|---|---|
| 実施場所 | JR新宿駅周辺エリア / JR池袋駅周辺エリア |
| 実施期間 | 2025年12月〜2026年2月 |

地上・地下空間を統合した三次元地図基盤および3Dナビゲーションシステムを、新宿駅・池袋駅という地下街構造が複雑なエリアへ拡張する。バリアフリーをはじめとした多様な利用者ニーズに応じたルート表示を可能とし、駅周辺における安全かつ快適な移動を支援する。
本プロジェクトの概要
大規模駅周辺エリアでは、旅客・来街者が多く、利用ニーズが多層化する一方、地下街やペデストリアンデッキ等の立体的な整備により歩行空間が複雑化しており、個々の属性に適合した最適な移動経路を判別しにくい状況にある。加えて、施設管理者ごとに歩行環境や案内情報が断片化しており、一元的な情報提供がなされていないことが、複数の施設を跨ぐ最適ルートの提示を一層困難にしている。
本プロジェクトでは、過年度のProject PLATEAUで実施した取組で得られた知見を基に、新宿駅・池袋駅周辺を対象として、地上・地下および屋内外をシームレスに移動できる3D/ARナビゲーションサービスを開発し、汎用性の検証を通じて社会実装に向けた取組を進める。店舗・施設情報に加え、バリアフリールート、屋内優先ルート、防災・避難情報を提供することで、多様なニーズを持つ大規模駅ユーザーへの支援を、平常時・非常時ともに支援可能な仕組みとする。また、施設管理者が自らの事業の広告等を掲載できる広告媒体としての価値を付加することで、情報発信とエリアマネジメントの高度化を促し、駅とまちの安全・安心・快適な移動の実現に寄与する。


実現したい価値・目指す世界
鉄道ターミナル駅は、単なる交通結節点にとどまらず、周辺市街地と一体化した広域的な都市機能を担うとともに、独自の魅力や活力を創出する拠点として進化を遂げている。このエリアには、来街者、旅客、地域住民など、幅広く利用者が訪れ、それぞれに移動のしやすさ、わかりやすい案内、バリアフリー対応等、多様なニーズが存在する。一方で、駅と周辺ビルが地下街やペデストリアンデッキ等によって複雑に接続し、歩行空間が高度に入り組んでいるため、従来の屋外を対象とした2D地図に基づくナビゲーションサービスでは、これら多様な利用者に安全・安心・快適な経路を提示することが難しい。また、施設ごとに管理者が異なることから、店舗情報や非常時の避難所情報などを来街者に一元的に発信することができず、目的地までの適切なナビゲーションをさらに困難にしている。
過年度に実施した、2023年度「地下街データを活用したナビゲーションシステム」(地下街データを活用したナビゲーションシステム | Use Case | PLATEAU [プラトー])および2024年度「地下街データを活用したナビゲーションシステム v2.0」(地下街データを活用したナビゲーションシステム v2.0 | Use Case | PLATEAU [プラトー])を通じて、開発面および事業化に向けた両面において一定の成果を得ることができた。
開発面においては、3D都市モデルと施設管理者が保有するBIMデータを統合した「三次元地図基盤」の構築手法を確立した。過年度は、地下街モデル(LOD4)、交通(道路)モデル(LOD1)、地形モデル(LOD1)、建築物モデル(LOD2)を活用して本基盤を利用した3Dナビゲーション機能を開発した。今年度は、昨年度活用した3D都市モデルに加えて、都市設備モデル(LOD3)も活用に加えた。これにより、地上から地下までを網羅した、さらに高精度な経路案内を実現し、複雑な都市空間をシームレスかつ立体的に表現できる3D都市モデルの有用性を実証した。実証面においては、一般ユーザーへのアンケート調査により、地上・地下を横断する3Dナビゲーションに対する高い社会的需要を顕在化させた。さらに、複数の施設管理者へのヒアリングを通じ、駅と周辺市街地という異なる主体が共通利用可能な地図基盤の有用性を確認した。こうした基盤の整備とアプリ活用は、一元的な情報発信の促進のみならず、エリアマネジメントの高度化に寄与し得ることが示唆された。
一方で、こうした有用なサービスを継続的に提供し、ユーザー要望を踏まえたUI/UXの改善を継続していくためには、システムの維持・運営に向けたビジネスモデルの確立が不可欠である。具体的には、アプリユーザー数の拡大や認知度向上を通じて、ステーションナビへの参画事業者を増やしていくことが必要であり、本年度は事業化を見据えた取組についても併せて実施した。
本プロジェクトでは、世界有数の乗降客数を誇る新宿駅・池袋駅およびその周辺エリアを対象に、地上・地下のパブリック空間をシームレスに接続する3Dナビゲーションアプリを構築した。今年度は両駅の駅施設および接続地下通路を中心に整備を行い、周辺施設についても関係事業者の協力が得られた範囲で段階的な拡張を図った。
新宿・池袋の両駅は、屋内外の動線が複雑に交錯する大規模ターミナルであり、乗降客数が極めて多く、地上・地下、屋内・屋外の動線が複雑に交錯する大規模ターミナルであり、多様な来街者・旅客・地域住民が集まることから、ナビゲーションの有用性検証や将来の横展開を見据えた実証フィールドとして極めて高い適性を有している。このため、今年度の優先整備エリアとして選定し、構築した地図基盤を歩行者ナビゲーションアプリ「ステーションナビ」として実装・展開した。
さらに、UI/UXの改善や駅施設との連携深化により一般ユーザーの認知向上を図るとともに、持続的な事業モデルの確立に向けた取り組みを推進する。具体的には、アプリへの広告掲載や施設情報のAPI提供等を通じて、参画事業者への価値還元とインセンティブ向上を図り、運営母体の拡大を目指す。
また、来街者、旅客、地域住民等には店舗、施設、観光情報、バリアフリー経路案内、屋内優先快適ルート等による平時の移動支援に加え、防災情報や避難施設情報等も提供し、非常時にも活用可能なアプリとして機能することで、駅周辺における情報発信と利便性向上に寄与する。最終的には、駅とまちの安全・安心・快適な移動支援を継続的に実現することを目指す。
3D都市モデルを活用した都市情報に基づく実用性の高いナビゲーションの普及拡大を通じて、利用者ニーズを反映した経路案内機能の実装によりサービスの認知度・評価を高め、参画事業者の拡大を促進することで、情報発信手段としての価値を高めながら、駅周辺エリアの利便性向上を実現する。





検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材
本プロジェクトでは、令和5年度のまちづくりのDXの推進に向けたユースケース開発実証業務(地下街データを活用したナビゲーションシステム | Use Case | PLATEAU [プラトー] (mlit.go.jp))、令和6年度の建築・都市 DX の推進に向けたユースケース開発業務(地下街データを活用したナビゲーションシステム v2.0 | Use Case | PLATEAU [プラトー])で開発した駅構内や地下街を統合したシームレスな歩行者向け3Dナビゲーションシステムを、世界有数の乗降客数を誇る新宿駅周辺エリア及び池袋駅周辺エリアで実施した。

本システムは、3D都市モデル(CityGML)および施設管理者が保有するBIM、CAD、図面等のデータを活用し、ターミナル駅とその周辺エリアの屋内外・地上地下をシームレスに案内するナビゲーションシステムである。
階層別2D地図(2.5D地図)および3D地図の双方を提供することで、利用者が現在地把握や目的地までのルート案内を直感的に行うことが可能である。

本システムの構成要素は、①三次元地図基盤(3D都市モデル、BIM・CAD等の地図、ネットワークデータ、各種POI等を統合した基盤となるデータ群)、②ナビゲーション機能(2.5D/3D地図表示、ルート検索、バリアフリー段差解消ルート、AR/VR機能等)、③屋内測位機能(コアロケーション、Wi-Fi、Beacon等)、④情報配信機能(広告・プッシュ通知等)、⑤外部連携を可能とするAPIである。これにより、利用者向けナビゲーションと事業者向け情報提供・業務連携の双方に対応可能な拡張性の高い地図サービス基盤を実現している。


本システムの検証では、今年度の実証エリアとして追加した新宿・池袋エリアでシステムを稼働させ、一般ユーザーへのアンケート調査および新宿・池袋エリアの事業者(施設管理者)へのアンケート・ヒアリング調査を実施し、ナビゲーションアプリの有用性を評価した。

検証で得られたデータ・結果・課題
3D都市モデルを活用したステーションナビの有用性を評価するため、事業者向けおよび一般ユーザー向けの調査を実施した。事業者に対しては、ヒアリングおよびアンケート調査を通じて、ナビゲーション機能や情報発信機能、事業活用の可能性に関する評価や課題を把握した。また、一般ユーザーに対してはアンケート調査を行い、操作性や分かりやすさ、利用時の満足度等を確認した。
JR新宿駅・池袋駅エリアの導入事業者を対象に、3Dナビゲーションおよびアプリによる情報提供の有用性について、ヒアリングおよびアンケート調査を実施した。なお、今回の検証(JR新宿駅・池袋駅エリア)におけるアンケート・ヒアリング期間は2025年12月8日~2026年2月10日とし、リリース後の利用期間を含む約2ヶ月間を評価対象期間とした。
その結果、回答者の約半数から、3D地図については「地下やホーム等、多層階にわたる複雑な構造を視覚的に把握しやすい」との評価が得られ、階層別2D地図では捉えにくい上下移動や通路接続を立体的に示すことが、利用者の空間理解を支えることを確認した。また「出口番号や目印(ランドマーク)が入っているとわかりやすい」との意見も得られ、立体表現に“目印情報”を適切に重ねることが、現在地や進行方向の理解促進に有効であり、3Dナビゲーションの価値を高める重要な要素であることが示唆された。
一方で、スマートフォン向けのナビゲーションアプリとして表示スピードを確保するため、モデルの軽量化、表示する地物の取捨選択を行った結果、実際の駅の空間との差異が生じた箇所があり、そのような場所では、地図が読みにくくなる可能性について指摘された。ナビゲーション用途では、処理性能とともに「目印・形状が実空間と一致すること」がわかりやすさの要素であるため、差異が生じると理解負荷や不安が高まりやすいことが背景にあると考えられる。このため、モデル軽量化と地物の取捨選択は維持しつつも、分岐点・出入口・乗換動線上の目印など、判断に直結する要素は優先的に保持するなど、アプリの表示スピードと分かりやすい地図を両立させる3D地図の表現改善が必要であるとの示唆が得られた。
UI/UXに関しては、回答者の約半数から、POIの表示過多による視認性低下、ホーム番線表示の分かりにくさなど、情報提示に起因する指摘があった。駅や屋内空間では情報量が増えやすく、必要情報の優先順位付けや表示制御が不十分だと、経路理解の負荷が高まり「分かりにくい」という評価に直結しやすい。このためズームレベルに応じた表示密度の最適化、重要情報の優先表示、利用状況に応じて表示内容を切り替えるコンテキストUIの検討など、表示制御を軸としたUI/UXの改善が経路案内のわかりやすさ向上に直結することが示唆された。
複雑な駅構内や地下空間を含むエリアにおいて、3Dナビゲーションは既存の2D地図サービスにはない付加価値を有し、事業者から一定の評価を得た。一方で、ナビゲーション機能単体や単独店舗・施設での導入では費用対効果の判断が難しく、事業化に向けた課題も確認された。
広告機能については、エリアマネジメント団体や自治体を通じて複数事業者が参画し、回遊性向上など地域全体の便益と組み合わせることで活用の可能性が示唆された。また、API機能については、防災や施設管理、業務支援等の分野での活用ニーズが示されており、今後の具体的な活用方法について検討を進める必要があることが明らかとなった。
本実証により、3Dナビゲーションは多層構造空間における直感的な理解支援において高い潜在価値を有することが確認された。一方で、表現の平易化、データ品質の向上、情報網羅性の確保、UI/UXの最適化、および導入導線の改善を一体的に推進することで、利用者・事業者双方における有効性が最大化されることが示唆された。
一般ユーザー向けアンケート調査では、2.5D地図および3D地図の視認性について、いずれも肯定的な評価が80%以上と高く、2.5D/3D地図の表示切替による使い分けはユーザーに広く受容されていることが確認できた。一方で、3Dナビの画面表示スピードについては「遅い/とても遅い」が29.2%であり、昨年度から軽量化等による表示スピードの改善を進めてきたものの、引き続き改善が必要であることが明らかとなった。
アプリの利用意向については「普段行かない駅・まちでも地図閲覧・経路検索を利用したい」との肯定的な回答が70%以上であり、本サービスに対する需要を確認することができた。ARナビは未利用者が多いため、ユーザーがその機能の存在に気づき、迷わず起動できるようにするためのUIの改善が必要であると事を確認した。一方、VR機能は使いやすさについては肯定的な意見が75%と高評価であり、現地訪問前の確認用途としての有効性が示唆された。避難施設・バリアフリー施設等の検索機能については肯定的な意見が80%以上であり、安全・安心面で高い期待が示された一方、「車椅子使用者単独乗降口」表示については、約半数が「見かけたが利用せず」「気づかなかった」と回答しており、機能認知の向上や利用導線の明確化など、UIの改善が必要であることが確認できた。

今後の展望
本実証を通じて、ターミナル駅およびその周辺エリアにおける3Dナビゲーションに対する社会的需要の高さを、実際の利用者評価および事業者ヒアリングを通じて確認した。特に、駅とまちを横断した屋内外・地上地下の移動を三次元的に把握できる点や、階層別2D地図と3D地図を使い分けられる構成は、一般ユーザー・事業者双方から一定の評価を得た。また事業者との意見交換を通じ、個別施設単位ではなく、エリア全体で共通利用できる三次元地図基盤の有効性や、情報連携基盤としての可能性が認識された点も、本実証を通じて得られた重要な成果である。
一方で、本実証により具体的な課題も明確となった。ナビゲーション機能においては、3Dの表現と動作のバランス、POI表示過多による視認性などUI/UX上の課題が挙げられた。情報提供面では、店舗情報の網羅性や現在地表示精度、地図の整備範囲など、エリア全体でのデータ品質・整合性が課題として挙げられた。
これらの課題は過年度から解消に向けて取り組みを進めてきたが、今後はユーザーの声に基づくUI/UX改善に加え、アルゴリズム・データ運用を含む体系的な改善を同時に進めさらなる利便性の向上を実現させる。具体的には3D表現と動作性能のバランス最適化(描画負荷の抑制、表示制御の高度化)や、ユーザーの利用状況に応じたPOI表示の最適化(表示密度の調整、POIカテゴリに応じた表示の優先順位付け)である。これにより、「迷わない」「使い続けられる」ナビゲーション体験を実現させる。また、ルート案内の実用性をより高めるため、ネットワークデータの属性を活用した経路探索の高度化(通行方向、通行可の時間を踏まえたルート案内)を実現させる。
事業者向けには、エリアマネジメント団体を軸に複数事業者が連携して参画できる協調型の情報発信モデルを検討・構築するとともに、地域全体のメリットを創出する仕組みづくりを進める。加えて、ステーションナビのAPI活用については、施設管理・防災、運用等業務を担当する部署への提案を拡大し、階層別2D地図配信や業務用途(防災、施設管理等)への横展開を進めることで、三次元地図基盤の活用領域を拡張していく。
以上を踏まえ、移動支援に加え、情報発信や業務利用の分野においても三次元地図基盤を活用していただきながら、持続可能なサービスへと成長させることを目指す。





