uc20-011

災害リスク情報の3D可視化

実施事業者アジア航測株式会社 / 株式会社建設技術研究所 / 日本工営株式会社
実施場所全国48都市
実施期間-
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3D都市モデルを活用することで、災害リスクを直感的にわかりやすく可視化。住民や企業等の防災意識を高め、社会全体で災害に備える安全・安⼼な社会の実現を目指す。

実証実験の概要

3D都市モデルを防災政策に活用するため、全国各都市で洪水や津波の浸水想定区域図を3D化し、3D都市モデルに重ね合わせるリーディング・プロジェクトを実施する。

実現したい価値・目指す世界

近年ますます激甚化・頻発化する自然災害に対し、その危険性を地図上で表し、避難計画等の立案に役立つ「ハザードマップ」は非常に有効な手段といえる。しかし、これまでのところ「ハザードマップ」の認知度は必ずしも高いとはいえない。

立体的な都市構造の把握を可能とする3D都市モデルを活用すれば、直感的に理解可能な形で災害リスクを視覚化することが可能となり、防災意識の向上に役立つのではないか。この仮説のもと、今回のプロジェクトでは、東京23区をはじめとした全国各都市の洪水浸水想定区域図等に高さを与え、3D都市モデルとの重畳を試みることとした。

東京都港区三田近辺の浸水状況3D化
岐阜駅近辺の浸水状況3D化

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

洪水や津波の浸水想定区域図を3D化し、3D都市モデルに重ね合わせることで、水害等による災害リスクをわかりやすく可視化することに取り組んだ。

浸水エリアについては、水面のみを着色し表示することに加え、浸水ランクに応じた色で浸水部分を着色し3D都市モデルと合わせて表示することで、より直感的にわかりやすく災害リスクを把握することを可能とした。さらに、3D都市モデルがCityGML形式のセマンティクスモデルであることを活かし、建物自体の属性情報として浸水ランクや浸水深、浸水継続時間等のリスク情報を付与することで、当該建物自体がどの程度浸水する恐れがあるのか等を把握できるようにした。

これらにより、既存の2Dのハザードマップが、浸水等の状況がイメージしづらく、いざという時の住民や企業の具体的な行動に繋がりづらいといった課題への対応を目指した。

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験により、水害による災害リスクの視覚性が向上し、建物の高さや浸水位面の把握が容易となることで、浸水がどの程度の高さまで迫るのか、浸水しない建物がどこにあるのか、最適な避難ルートはどこか等を事前に把握することが可能となった。さらに、各建物モデルの属性情報としてリスク情報を付与することで、都市全体で災害リスクがどのように分布しているのか等の都市スケールのリスク分析が可能となった。

3D都市モデルを活用した災害リスクの可視化を通じて、住民や行政等の災害リスクの理解がより深まり、災害時の垂直避難の判断や避難場所の選定、企業による事業所立地リスク回避等に寄与すると考えられる。住民、地方公共団体、企業等様々な関係者が主体的に防災意識の向上や防災計画の高度化に取組むきっかけとなることが期待される。

一方、今回のプロジェクトにおける3D都市モデルの地盤高は実際の地盤高とは異なるため、建築物等の高さと3D化された浸水位との見た目上の関係は目安であることに注意が必要である。また、災害リスク情報を3Dポリゴンとして構築するに当たっては、基となる浸水想定区域図等の既存データの規格の不統一や欠落等が作業上の課題となった。

PLATEAU VIEWでの浸水可視化状況
PLATEAU VIEWでの浸水可視化状況
PLATEAU VIEWでの浸水可視化状況
東京都中央区近辺の浸水状況3D化

今後の展望

今回の実証実験をはじめ、国内外において災害リスクの3D化の取組みが進められているところであり、令和2年度に国土交通省が発表した「総力戦で挑む防災減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~」においても「わかりやすい情報発信の推進」として災害ハザード情報の3D化が掲げられるなど、その重要性は今後益々高まっていくことが想定される。

今回の取組を契機として全国において3D都市モデルの構築と災害リスクの3D化の取組みが広がることが期待される。また、その発展として、災害発生時における人流や河川水位等のリアルタイムデータとの連携、AR/VRによる浸水シミュレーション、地域住民への防災教育の充実等による更なる防災意識の啓発や防災計画の高度化等に繋げていくことが期待される。