豪雪地帯の建築物における除雪優先度算出システム及び被災現場支援ツールの開発
| 実施事業者 | 株式会社雪研スノーイーターズ |
|---|---|
| 実施協力 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 / 株式会社マイスター |
| 実施場所 | 新潟県長岡市長岡駅周辺 / 北海道札幌市清田区 |
| 実施期間 | 札幌 :2025年8月 / 長岡:2025年12月~2026年1月 |

豪雪地帯向け除雪優先度算出システムの開発及び発災後の初動対応での現況確認に用いる被災現場支援ツールを実証。3D都市モデルを活用し、データに基づく除雪作業の効率化と迅速な災害対応の実現を目指す。
本プロジェクトの概要
豪雪地帯では屋根の雪下ろし作業の削減・効率化が課題となっており、安全で効率的な雪下ろしのニーズが高まっている。そのためには個別建物の除雪優先度の情報提供、効率的な除雪計画の策定が必要だが個々の建物形状や当該地域の建築基準、築年数等を考慮する必要があり、ハードルが高い。また、被災現場では、被災前から状況が大きく変わった現場において迅速な状況把握・情報共有が課題となっており、被災現場のDX化が求められている。そのためには被災前の状況を容易に把握し、速やかに関係機関に共有するツールやシステムが必要であるが、社会実装には至っていない。
本プロジェクトでは、3D都市モデルを活用し個々の建物の積雪荷重や除雪優先度を算出・表示する「除雪優先度算出システム」を開発する。豪雪地帯の地方公共団体等へのヒアリングを通して、システムの有用性やニーズを評価し、3D都市モデルを活用したソリューションとして社会実装可能か検証する。加えて、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で開発された「被災現場支援ツール」※と3D都市モデルを活用して、現地で想定ユーザー(市や実動機関の職員等)へのAR技術による3D都市モデルの重畳を体験・ヒアリングを通じ、社会実装に向けツールの有用性や課題を検証する。
※被災現場支援ツール:内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期、課題「スマート防災ネットワークの構築」、サブ課題C「災害実動機関における組織横断の情報共有・活用」で開発されたリアルタイム重畳ツール。本プロジェクトにおいては、このツール及びPLATEAUの3D都市モデルを用いて、具体的なユースケースを構築した。
内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期、課題「スマート防災ネットワークの構築」、サブ課題C「災害実動機関における組織横断の情報共有・活用」についての紹介:https://www.youtube.com/watch?v=q7hj0EXNfAo&t=137s

実現したい価値・目指す世界
除雪作業による事故や、人手不足によって除雪作業ができない状況が豪雪地帯では多々発生しており、建物ごとの積雪荷重や雪下ろし優先度の情報を住民や地方公共団体、雪下ろしの担い手に提供することは、今後の気候変動や少子高齢化等の社会情勢を見据えた際に急務であるといえる。現在、気象観測データに基づいて広域の積雪荷重を算出し、積雪荷重やそのリスクなどを地図上に面的な情報として提供する雪おろシグナル(防災科学技術研究所開発)があるものの、建物ごとの積雪荷重やリスクを評価・判定するには至っていない。個々の建物の情報(屋根の形状や建築年等)を考慮することが、この課題へのアプローチとなりえる。
また、災害現場では被害状況の把握や共有、救助活動等を行う上で被災前の状況を迅速に把握することが重要であるが、被災前と状況が大きく変わった震災の現場、あるいは積雪により視認が制約される現場で、被災地域外から派遣された作業員が被災前の状況を把握することは極めて難しい。こういった背景から、被災現場では被災前後の状況比較を容易にするツールや情報共有を迅速化するツールが求められている。
本プロジェクトでは、個々の建物の積雪重量や積雪荷重リスクなどの情報を提供するため、防災科学技術研究所と連携し、雪おろシグナルと3D都市モデルを組み合わせた「除雪優先度算出システム」の開発を行う。3D都市モデルの屋根勾配や建築年等の属性情報と雪おろシグナルの広域の積雪荷重情報を組み合わせることで、個々の建物の積雪荷重やそのリスクが予測可能となり、除雪作業を行う住民や除雪の担い手(共助団体など)の方々にその情報を活用いただくことで、除雪作業や計画の支援が可能となる。また、「被災現場支援ツール」を活用し、リアルタイムで被災前の状況や建物危険度をAR上で重畳するツールについてデータの整備及び実証を行う。実証では、被災現場で活動を行う消防隊等に有用性や実装可能性などについてヒアリングを行い、社会実装に向けた課題を調査する。
除雪優先度算出システムにおいては、科学的な情報に基づき算出した個々の建物の積雪重量や除雪優先度を可視化することで、除雪作業の優先順位付けによる効率化を支援し、除雪時の適切な人員配置による負担軽減や不要な雪下ろし作業の削減による事故リスクを低減する。被災現場支援ツールにおいては、被害状況や周辺の支障物などに関する情報を連携させることで、災害対応や除雪活動での迅速かつ効率的な活動を実現する。加えて、他の都市サービス(観光・防災・まちづくり等)におけるデジタルツイン基盤と現実世界の情報の往来を実現することで、災害時のみならず、平時での活動(消防における火災予防、消火活動等)の支援も実現可能となる。





検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材
本プロジェクトでは「除雪優先度算出システム」、「被災現場支援ツール」の改修を行った。
「除雪優先度算出システム」は、3D都市モデルと気象データ、積雪変質モデル(SNOWPACK)から個々の建物の積雪重量や除雪優先度を計算し、2次元の地図上に表示するシステムで、除雪計画の策定や除雪作業の補助等で雪国の住民や除雪の担い手の支援を行うものである。

「被災現場支援ツール」は、AR技術により被災前の建物形状や「除雪優先度算出システム」で算出した積雪重量等を現実世界に重畳し、被災現場での状況把握を支援するものである。災害時の状況把握に危険が伴う地下空間における状況把握の場面での活用も期待できる。

除雪優先度算出システムは、2次元の地図上で積雪深や積雪重量、除雪優先度等を閲覧可能なシステムで、「①地上の積雪深と積雪重量の算出・表示」、「②個々の建物の積雪重量と除雪優先度の算出・表示」、「③アラート通知」、「④現地報告情報の表示」の4機能で構成される。①は気象庁の気象データ(アメダス、解析雨量)を入力データとして積雪変質モデル(SNOWPACK)により1時間おきに地上の積雪深や積雪重量を計算し、その結果を250m格子のグリッドデータで表示する機能である。②は①で計算された地上の積雪重量と3D都市モデルから取得した建物形状や建築年に基づき、個々の建物の積雪重量と除雪優先度を計算し、建物毎に色分けで表示する機能である。③は事前登録した建物の除雪優先度が閾値を超えた場合に、最新の積雪重量や除雪優先度などの情報をメールでユーザーに通知する機能である。④は被災現場支援ツールの「⑥被災状況の現地報告、表示」機能(後述)で投稿された現地報告を地図上に表示する機能である。
被災現場支援ツールは、3D都市モデルを用いて、除雪優先度や積雪深ならびに被害状況や対応状況をARにより現実世界に重畳するツールである。本ツールは、「⑤3D都市モデルとマーカーの重畳」、「⑥被災状況の現地報告・表示」、「⑦除雪優先度と積雪深の表示」の3機能で構成される。⑤は準天頂衛星システム(QZSS)の測位情報を利用可能なマルチGNSS受信機を用いて、3D都市モデルを高精度に重畳表示する機能である。
⑥は音声入力によって被災状況の現地報告を記録し、表示する機能である。⑦は測位情報を基に、現在地の積雪深や建物ごとの除雪優先度をテキストや色分けされたワイヤーフレームで表示する機能である。なお、本プロジェクトでは除雪優先度算出システムで計算した除雪優先度と積雪深を、WebAPIを通じて取得し、ツール上に表示できるようにカスタマイズを行った。除雪優先度は、3D都市モデルで定義された建物ごとに優先度に応じて色分けされたワイヤーフレームで表示することにより、現地において各建物の優先度を直感的に判別できるようにした。積雪深は、除雪作業時の現地状況の把握を支援するためにツール上に表示できるようにした。

除雪優先度算出システムの「①地上の積雪深と積雪重量の算出・表示」機能では、以下のアルゴリズムで1時間毎の地上の積雪深と積雪重量を計算する。処理の流れとしては、気象庁から配信される最新のアメダス観測データと解析雨量を取得後、必要な入力形式、要素(気温、降水量、風速、日照時間)に変換されたデータを用いて、SNOWPACKにより積雪深、積雪重量を計算する。SNOWPACKは積雪深が入力要素として存在しない場合でも、質量やエネルギーの収支を元に積雪深の演算することが可能であるが、計算結果と実際の積雪深にずれ(誤差)が生じる場合がある。この誤差を補正し、精度を向上させるため、積雪深の観測値が存在する地点で積雪深を入力要素に加えた場合と加えない場合で計算を行い、両者の差をもとに積雪深が観測されていない地点の計算結果を補正する工夫を加えた。上記方法で各地点において計算された積雪深と積雪重量などの結果は、空間内挿により250mグリッドのデータとその分布を示すPNG形式の画像として生成され、地図上に表示される。
「②個々の建物の積雪重量と除雪優先度の算出・表示」機能は、以下のアルゴリズムで1時間毎の各建物の積雪重量と除雪優先度を算出する。まず、あらかじめ3D都市モデル(LOD2)から屋根形状データ(bldg:RoofSurface)を取得し、個々の建物の屋根勾配を設定する。屋根勾配が異なる複数の屋根を持つ建物では、屋根面積の加重平均で求めた屋根勾配を設定する。次に、建築基準法で定められた屋根勾配と積雪荷重の関係(屋根形状係数)に基づき、屋根勾配と地上の積雪重量から個々の建物の積雪重量、及び個々の建物の積雪重量と建築当時の設計荷重(設計積雪深)の割合で定義される除雪優先度を算定する。除雪優先度の算定には建物の建築年と建築当時の設計荷重が必要であるが、地域・年代ごとの設計荷重(設計積雪深)をリスト化し、3D都市モデルから取得される建築年と照合することで設計荷重(設計積雪深)を設定した。なお、屋根形状データが無いLOD1では、屋根勾配を算定することができないため、地上の積雪重量をそのまま建物の積雪重量とした。上記方法で算定された積雪重量と除雪優先度をGeoJSON形式で保存し、地図上に表示する。
「③アラート通知」機能は、予め登録された建物について、最新の除雪優先度が閾値を超えた場合に、ユーザーにアラートメールが送信される機能として実装した。アラートメールには②で生成されたGeoJSONファイルから取得した積雪重量と除雪優先度、建物周辺の地上積雪深が記載される。
「④現地報告情報の表示」機能は、被災現場支援ツールからWebAPIを通じて投稿されたGeoJSON形式の現地報告情報データをデータベースとして蓄積し、地図上での現地報告された位置に記録内容を表示する機能として実装した。なお、現地報告情報は報告から一定期間経過すると除雪優先度算出システム上から表示されない仕様とした。

被災現場支援ツールの「⑤3D都市モデルとマーカーの重畳」機能は、Project PLATEAUにより整備・公開されているCityGML形式の3D都市モデルを予めGLB形式に変換してアプリケーション内に組み込み、現実空間(端末上のカメラ画像)に重畳するものである。3D都市モデルと現実空間の位置合わせには、マルチGNSS受信機により準天頂衛星システム(QZSS)から取得された測位情報を3D都市モデルの座標系との対応付けすることで、現実空間上への高精度な重畳表示を可能とした。マーカーの重畳は、予め消火栓の緯度経度情報を作成してアプリケーション内に組込むことで実現した。
「⑥被災状況の現地報告・表示」機能は、スマートフォンの音声認識を用いて現地の状況を投稿できる機能として実装した。音声認識された内容はWebAPIを通じて除雪優先度算出システムにGeoJSON形式で投稿され、除雪優先度算出システムの地図上に表示される(機能④)。また、投稿された現地報告は除雪優先度算出システムからWebAPIを通じて他の被災現場支援ツールの端末とも共有され、ツール上にピンとして表示されるため、利用者間で現地の状況をリアルタイムに把握することが可能である。
「⑦除雪優先度と積雪深の表示」機能は、除雪優先度算出システムで算出された除雪優先度と積雪深を、システムからWebAPIを通じてGeoJSON形式で取得し、表示する機能として実装した。除雪優先度は個々の建物に対し色分けされたワイヤーフレーム、積雪深は現在地の積雪深を除雪優先度算出システムから取得し、ツール上にテキストで表示されるよう実装した。
本実証では、豪雪地帯に指定されている長岡市を対象に除雪優先度算出システムと被災現場支援ツールの有用性や課題等の評価を行った。除雪優先度算出システムは長岡市の職員及び地域の除雪の担い手の方々(消防職員や企業等)に、被災現場支援ツールは長岡市の消防署に試用を依頼し、アンケートやヒアリングを通して評価を行った。また、被災現場支援ツールでは地下街でのニーズや課題について聴取するため、広大な地下空間をもつ札幌市の職員や消防職員、自衛隊を対象に被災現場支援ツールのデモを行い、アンケート・ヒアリングによって有用性や課題等の評価を行った。




検証で得られたデータ・結果・課題
除雪優先度算出システムでは有用性の検証として、長岡市の地方公共団体職員等を対象に冬季期間中(12月~1月)にシステムを試用し、システムが提供する情報(積雪重量、除雪優先度)の精度や使用感等について検証・アンケート調査を実施した。被災現場支援ツールでは有用性検証として、2地方公共団体(札幌市、長岡市)の職員及び消防・自衛隊職員者を対象に、被災現場支援ツールの操作体験とアンケート及びヒアリング調査を実施した。なお、札幌市の実証は災害現場一般での利用を想定して実施したため、機能⑦以外の機能について検証を行った。有用性検証の観点としては、雪害を含む被災現場での有用性・可用性と、その他の地域やユースケースへの展開可能性を対象とした。アンケートは札幌市:6名(札幌市職員:6名)、長岡市:6名(長岡市職員:3名、消防職員:2名、地域住民:1名)の実証実験参加者に対して行った。
積雪重量の精度検証では、長岡市内の2つの建物で屋根雪の積雪重量を観測し、その観測値をシステムの予測値と比較することで精度を検証した。検証の結果、実証期間で積雪が最も大きかった1月末では、観測した屋根上の積雪重量に比べシステムで推定した積雪重量が30~40%程度過大に推定される結果となった。これは、積雪変質モデル(SNOWPACK)の計算で、建物からの熱によって融雪し流れ出る分の質量の考慮が不足していたことや、建物の形状による吹き溜まり、吹き払いの影響を考慮していないことが原因と考えられる。精度向上に当たっては、屋根上の積雪に適した積雪変質モデルのパラメータや計算上の設定の検討が必要となる。

除雪優先度の精度検証では、被験者に対して、「除雪優先度算出システムが予測した除雪優先度」が「実際に屋根雪の状況を目視した時の被験者自身の感覚」とマッチしているかについてヒアリングやアンケートで確認を行った。アンケートの結果、システムが算出した除雪優先度が実際の状況とマッチしていると評価した回答者が50%、どちらともいえないと評価した回答者が50%となった。この要因として、本システムが地域の積雪荷重という統一的な基準に基づいて優先度を算出しているのに対し、被験者は目の前の建物の構造的な特性や建築条件を踏まえたうえで感覚的に判断しているため、両者の評価基準が一致しない場合があることが考えられる。本システムの将来的な地方公共団体への導入・活用促進という観点では、感覚値に合わせてシステムを調整するのではなく、建物ごとの構造特性をより適切に反映した除雪優先度の算出方法を検討・実装することが重要であると想定する。また、近年の気候変動により、見た目以上に重い雪が降る頻度が高まっており、住民の感覚よりも建物が危険な状態に陥っている可能性がある。除雪優先度算出システムの精度向上と並行して、住民への危険性の周知・啓発をいかに効果的に行うかについても、重要な課題として取り組む必要があると考えられる。
除雪優先度算出システムの有用性検証では、システムを試用頂いた実証の参加者の方々を対象に、システムの使いやすさ、除雪作業の計画や負担軽減に対しての有用性などについてヒアリングとアンケートで確認を行った。アンケートの結果、80%の参加者が除雪優先度算出システムの操作が分かりやすいと評価した。また、67%の参加者が、システムが除雪計画の策定に有用だと評価した。これは、建物毎に積雪重量や除雪優先度を色分けしたことによって、直感的に除雪の優先度が判断できるようになったためだと考えられる。一方で、除雪優先度の表現(建物倒壊積雪重量OO%)が分かりにくいとの意見もあり、「除雪が必要」、「除雪は不要」等のように利用者が直感的にわかりやすい表現で情報提供することが必要だと考えられる。
被災現場支援ツールの検証では、札幌市清田区・長岡市から実証エリアを選定し、被災現場支援ツールの3D都市モデル重畳機能、音声による被災状況の入力と共有機能、消火栓のモデルの表示機能を実証の参加者に体験してもらい、ツールの各機能の有用性や可用性、他の用途への拡張性等についてヒアリング・アンケートを行った。加えて札幌市の実証実験では、被災現場での状況把握や情報共有に要する時間が削減されるかについて検証するため、本ツールを用いた場合と用いない場合(従来型の紙様式の状況記録・共有)の作業時間を比較検証した。作業時間の比較検証の結果、本ツールを用いることで状況把握に要する時間や情報共有に要する時間が大幅に減少することが確認された。札幌市と長岡市でのヒアリング・アンケートの結果からも、直感的な操作と音声入力による状況報告、3D都市モデルの視認性に高い評価が得られ、被災現場でのツールの有用性が確認された。またツールの可用性については、「道路沿いの構造物等の詳細が把握できれば、除雪車の運用に活用できる」、「消火活動時に建物ダクト位置や消火栓の位置が把握できれば、安全性や迅速な対応に有効」など、他地域や他のユースケースへの拡張性について期待する意見もあった。特に、消防職員の方々からは災害時以外の利用方法として「消火栓の位置が精度よく重畳されれば、日常の水利除雪でも活用できる」という意見も得られた。


一方で、札幌市清田区の実証エリアは低層家屋が多く問題は生じなかったが、札幌市中心部のような高層建築が多い箇所で、高さ方向のずれが生じないのか懸念が示された。地盤標高との関係による重畳精度については今後も検証、改善が必要である。また、長岡市ではアーケードによってGNSS電波が受信できず重畳の精度が低下する事象も見られ、GNSSの電波を受信しにくい場所での重畳精度を向上させる方法について今後検討が必要である。その他に、音声入力の変換精度や重畳表示の視認性、現場で利用する際の堅牢性については課題が残る結果となった。
参加ユーザーからのコメント
除雪優先度算出システムの有用性、課題についてのコメント
・除雪の判断は経験と感覚に基づいているため、データの可視化によって客観的な判断が可能である(長岡市職員)
・空き家が増えているが、居住者がいる建物では住民自身が雪下ろしを行うのに対し、空き家では管理者が不在であるため雪下ろしが実施されず、積雪が放置されやすい。そのため、早めの行政の介入が必要になる場合があり、建物の利用状況が含まれていると有用である(長岡市職員)
・新しい建物などではシステムの除雪優先度と除雪の感覚は合っていたが、古い木造の建物などでは除雪の感覚と異なっている(地域住民、長岡市職員)
・個人の責任による除雪が基本であるため、行政から直接的に除雪の指示をだすことは難しい(長岡市職員)
・市町村単独での導入は予算面での制約があり難しい(長岡市職員)
被災現場支援ツールの有用性、その他用途への拡張性、課題についてのコメント
・札幌市を含め北海道は積雪があるため、冬季に災害が発生すると建物被害や道路状況の状況を視覚的に把握することが難しい。その際に、ある程度、ここに家があったなどの空間的状況がわかることはよい(札幌市職員)
・音声入力は1分程度で実施できたため、手書き+システム入力でかかる3~4分の時間と比較すれば軽減される(札幌市職員)
・配線や配線と機器との接続部分などで破損が懸念されるため、ツール(ハードウェア)の堅牢性の向上が必要(自衛隊員、消防職員)
・水害時の罹災証明における建物被害判定として利用できるかもしれない。ただし、水害の場合は浸水深も重要になるので、建物の高さを正確に把握する必要がある(札幌市職員)
・地下街での消火活動における地下街内部構造の把握に使える(消防職員)
・地下埋設物の埋設深度の把握などに使える(札幌市職員)
・消火栓の水利除雪では、位置が1m違うだけで除雪にかかる工数がかなり増えるため、消火栓位置の高精度な位置情報が必要である(消防職員)
今後の展望
除雪優先度算出システムは、実証実験の参加者から、除雪計画の策定や除雪作業のコスト削減に有効であると評価を得られ、豪雪地帯の除雪作業を支援する目的に対して有用なシステムであることを示すことができた。3D都市モデルを用いて、個々の建物の積雪重量や除雪優先度を見える化したことが、上記の評価を得られた要因だと考えられる。
一方、豪雪地帯の除雪作業を支援するためには、屋根上の積雪重量と除雪優先度の精度向上の2つの課題が残されている。屋根上の積雪重量の精度が低くなった要因として、建物からの熱による屋根雪の融雪や建物上の吹きだまり、吹き払いなど、推定が難しい要素を考慮しなかったことが挙げられる。今後、地上の積雪重量と屋根上の積雪重量の関係を整理し、推定に組み込むべき要素の選定や地上の積雪重量から屋根上の積雪重量を推定する方法などについて検討する必要がある。積雪重量の予測精度を向上させることができれば、除雪優先度の算出精度の向上も期待できる。また、除雪優先度の精度向上に向けては、建物ごとの積雪重量の許容値や居住状況を把握し、建物毎に適切な除雪優先度を求めることも必要である。それを実現するためには、建物の構造特性や建築年代が異なる複数のパターン(地域の垂直積雪量、除雪を前提とした場合の垂直積雪量など)で除雪優先度を算出することや、除雪優先度の表現を変えることなどで、精度の限界を補うことができると考えられる。
将来的には、除雪優先度算出システムが地方公共団体、豪雪地帯における雪下ろしの担い手及び住民に利用されることにより、適時適切な除雪の必要性の判断を可能とし、効率的な屋根雪の除雪を行うことで、屋根の雪下ろしに係る負担及び雪下ろしによる事故の軽減を目指す。
被災現場支援ツールでは、実証実験の参加者から災害現場での有効性、直感的な操作と音声入力による状況報告、3D都市モデルの視認性に高い評価を得られた。特に、被災状況の記録や情報共有に要する時間については、本ツールを用いることで従来の手法(紙様式)よりも大幅に時間が削減できることが確認できた。
一方で、多様な使用環境に耐え得る重畳精度の確保が課題として挙げられた。札幌市清田区の実証エリアは低層家屋が多く問題は生じなかったが、札幌市中心部のような高層建築が多い箇所で、高さ方向のずれが生じる可能性が課題として挙げられ、今後、地盤標高と重畳精度の関係について検証、改善が必要だと考えられる。また、長岡市ではアーケードによってGNSS電波の受信が阻害されたことで重畳の位置精度が低下した。電波障害によって位置情報の精度が低下することは被災地での救助活動にとって致命的な問題となりえる。アーケードや地下空間等のGNSSの電波を受信しにくい場所で正確な位置情報を取得する手法の開発が必要である。
今回被災現場支援ツールを検証した札幌市では市の管理する大規模な地下空間があり、冬季の災害における避難空間としての活用など、地下空間の積極的な防災利用を検討している。また、長岡市での課題で挙げられたGNSS電波の障害による対応は、他都市でも同様に課題となるものであり、今後の実装に向けて対策が求められる。
今後は、除雪優先度算出システムが活用される地方公共団体を増やし、豪雪地域における気候変動による局地的な集中豪雪や湿雪による被害発生等の雪氷災害対応の効率化を図ることで、高齢化による除雪担い手不足の解消と雪下ろし事故の削減に貢献する。また、被災現場支援ツールについては、位置情報の取得が難しい山中や高層建築の多い都市部等、様々な場所での災害現場への応用を強化することで、効率的かつ安全な災害支援を実現する。






