XR技術を活用した市民参加型まちづくり v3.0
実施事業者 | 株式会社ホロラボ / 株式会社日建設計 / 株式会社日建設計総合研究所 |
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実施協力 | 東京都立大学饗庭伸研究室 |
実施場所 | 兵庫県加古川市 JR加古川駅周辺 |
実施予定 | 2024年8月〜2024年10月 |
3D都市モデルとXR技術を組み合わせた、まちづくりワークショップを実現するシステムを開発し、展開を目指した汎用化を実現。スマートシティデータ基盤・SNSと接続し、より継続的なまちづくりへの市民参加を促進する。
本プロジェクトの概要
地方公共団体におけるまちづくりにおいては、開発構想や計画を地方公共団体や事業者のみならず地域住民を交えて議論し、関係者間で理解を深める説明会やワークショップが行われることが通例である。しかし、開発計画は複雑になりがちであり、専門知識を持たない地域住民がその内容を深く理解し、地方公共団体等とまちの将来像について活発な議論を行うことは困難な場合が多い。
本プロジェクトでは、2023年度「XR技術を活用した市民参加型まちづくり v2.0」までの2年間で実証した新しいワークショップの価値と全国対応を目指した汎用性をベースに、ワークショップ開催前の企画や開催後のステークホルダー間におけるコミュニケーションとデータ活用に着目し、地方公共団体が運営するSNSやスマートシティデータ基盤との接続実証を実施する。SNSにはワークショップの成果を掲載し、市民からの意見を募ることで、まちづくりの議論への市民参加が促進されたかを検証する。これらにより、まちづくりへの積極的かつ実効性の見える市民参加の実現や、開かれたコミュニケーションを踏まえた地方公共団体の意思決定支援を目指す。
実現したい価値・目指す世界
人口減少時代におけるまちづくりにおいて、地方公共団体や開発事業者、地域住民等、様々なステークホルダーが相互に理解を深め、まちの将来像について討議を重ね、合意形成していくことが一層重要になってきている。合意形成の手段として市民参加型のワークショップが開催されることがあるが、専門性を持つ主催側と一般市民との情報の非対称性や、参加者が高齢者に偏るなどの課題も多い。
2022年度は3D都市モデルにXR技術を掛け合わせた市民参加型ワークショップの支援システムの実証開発を行い、誰もが直感的な操作を楽しみながらまちづくりについて議論できる新しい市民参加型ワークショップを開催し、ユースケースとしての有用性を明らかにした。翌2023年度はシステムの汎用性を高め、任意エリアでの開催やさまざまなテーマのまちづくりワークショップにも対応可能とした。一方で、通信や機材などの利用環境、ワークショップ運営側の事前準備や当日オペレーションへの負荷や、全般的なユーザビリティ等に課題が残った。
本プロジェクトでは、昨年度までの実証で明らかになった価値の社会実装のために、ワークショップ開催前後の業務フローとコミュニケーションに着目し、市民を中心とした参加者の意見がより広く公開されるようなシステムの構築に取り組む。従来型ワークショップにおいて、地方公共団体と参加者とのコミュニケーションはチラシ掲示や回覧板による紙媒体での告知にはじまり、申込や事前の連絡はメールや電話等の従来型のコミュニケーション方法が利用されていることが多い。また、ワークショップ開催後の参加者の意見はレポートにまとめられて公開されることが多いが、意見の反映方法はレポート編集者に委ねられる部分が大きい。本プロジェクトでは、このフローを改善する。
「Decidim」はこういった行政と市民とのコミュニケーションをサポートする市民参加型デジタルプラットフォームで、発祥の地スペイン・バルセロナでは約4万人が参加し、また、フィンランドのヘルシンキ市など世界400以上の団体、250の行政機関が採用している。実証場所である兵庫県加古川市は、このDecicimを日本で初めて導入し、まちづくりプロジェクトにおいて、市民への行政企画への投票や広く課題や意見の公募に活用している。本プロジェクトでは、構築したシステムを「Decidim」と接続し、ワークショップ事前事後の継続的なコミュニケーションの場とし活用することで、地方公共団体の意思決定プロセスへの活用を目指す。加えて、システムにおけるユーザビリティ改善、ワークショップ結果を広報に利用できる公開機能や、最新版のヘッドマウントディスプレイを活用したより直感的な操作が可能なVR版アプリケーションを開発する。
これまでの実証で3D都市モデルを使った様々なワークショップを実施してきたが、参加者と運営が共にデータや技術を活用し、将来のまちについて議論する場が生まれた。今年度の取り組みによりその価値を一層高めつつ、ワークショップの成果物を対外公開して意見募集をすることで、市民を主体としたまちづくりの推進を更に加速させる。