美しい山河を守る災害復旧


片岸拡幅

拡幅する場合には片岸拡幅を基本とする。

現況の流路を尊重した法線形であっても、大幅な拡幅をともなう場合で両側に拡幅しようとすると、環境に与えるダメージが大きい。これに対して片側だけに拡幅する計画にすると、片側の河岸やみお筋を保全することが可能になるうえ、護岸整備も最小限ですむと考えられる。このため、河川環境が良好な場所では、片側拡幅を原則とする。

片岸に拡幅する場合、左右岸のどちら側を拡幅するかは、様々な要素を検討する必要があるが、以下に示すポイントが考えられる。

①蛇行部の内岸側を拡幅する

蛇行部では一般的に外岸側に淵ができやすいことから。淵を保全するためにも内岸側を拡幅することを基本とする。ただし、内岸側は土砂の堆積により砂州が形成されやすいことから、河積の維持に留意する必要がある。

②背後の地盤高の低い方を拡幅する

起伏のある地形では、背後の地盤高の低い方を掘削すると掘削量は少なくなる。背後の地盤高の高い方を拡幅すると掘削量や土留め擁壁等コストが増えることに留意する必要がある。

③定規断面にしない

現況流路を尊重した平面形とした上で、保全対象とした淵を埋めるような、逆台形の定規断面とはしないように留意する必要がある。

出典:美しい山河を守る災害復旧基本方針 p.195

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片岸拡幅の事例-1

思川

事業主体 栃木県
事業名 災害復旧助成事業
水系/河川名 一級河川 利根川水系 思川(おもいがわ)
年災 令和元年災
河川の流域面積 883km²
河道特性 セグメント1
主な工事概要 河道掘削、引堤、護岸等

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工夫点

流下能力向上のために、河道を拡幅する必要があったが、左岸の河畔林、みお筋を保全するために、蛇行部の内岸側にあたる右岸側に拡幅した。

その他の配慮事項

彎曲部の外岸側に淵があり、河畔林が生育している環境であったため、これを保全するように法線を設定し、右岸側に拡幅している。

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片岸拡幅の工夫の事例-2

田万川

事業主体 山口県
事業名 災害復旧助成事業
水系/河川名 二級河川 田万水系 田万川(たまがわ)
年災 平成25年度
河川の流域面積 122.5km²
河道特性 セグメント2-1
主な工事概要 洪水による被害を防止するため河床掘削、引堤、築堤により流下能力向上を図る

工夫点

谷底平野を流れる河川で、山付き部には緑陰と淵がみられ、動植物の重要な生息空間となっている。
片岸拡幅で水裏部を拡幅し、水衝部となる山側の河岸や河畔林を保全することで、淵も維持され元の河道形状が維持された。そのため、水裏部に寄州が付き、より自然な河道が確保されてる。

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片岸拡幅の工夫の事例-3

平田川

事業主体 宮崎県
事業名 河川等災害関連事業
水系/河川名 二級河川 平田川水系 平田川(へいだがわ)
年災 平成26年度
河川の流域面積 38.65km²
河道特性 セグメント1(扇状地)
主な工事概要 掘削工V=11,792m3 護岸工A=5,262m2 根固工N=639個

工夫点

越流被害を防止するため、大幅な流下能力を拡大する必要があった。被災を受けていない護岸を活かしつつ、片岸拡幅によって河積を確保した。澪筋幅を従来通りにしたことで、澪筋の水面幅ならびに河床の状況が維持され、さらに、拡幅部の水際には寄土や寄石を実施することで、寄州に植生が早期に形成され、より自然な河道が創出されている。

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