地域社会の再生につながる鉄道の復旧――地域社会の再生と共助の広がり

実際に調査隊が活動した事例から2件を紹介する。いずれも災害直後、現場での調査により、排水対策や斜面対策などを助言した。

いすみ鉄道は、千葉県南部の大原駅~上総中野駅間26.8kmを運行する路線である。令和5年9月の台風第13号に伴う豪雨では、大多喜駅~上総中野駅間が運休。調査隊は、総元駅~上総中野駅間(約4.6km)の被災状況調査等を実施し、被災状況の概況を把握。調査した内容を取りまとめ、復旧対策工等について助言した。

運行不可となった原因は、路盤上部の道路排水が溢れ鉄道用地内に流入した結果、鉄道側での排水が追い付かず路盤が流出したことと推定。

路盤復旧を行うとともに、道路側の排水設備が適切に機能することが前提であるため、道路管理者との排水協議を実施することについて助言した。このアドバイスを基に復旧作業を進めたことにより、被災して約3ヵ月半後の令和5年12月25日、全線運転再開を果たした。

小湊鉄道もまた、千葉県南部を走る路線であり、五井駅~上総中野駅間39.1kmを運行している。令和5年9月の台風第13号に伴う豪雨で、月崎駅~上総中野駅間(約13.4km)が運休。

調査隊は運休区間の被災状況調査等を実施し、調査内容をもとに復旧対策工等を助言している。

ドローン調査
ドローン調査
ドローンで撮影された被災現場
ドローンで撮影された被災現場

更に令和6年台風第10号に伴う大雨による被災の際も、調査隊は7名を派遣。この派遣で初めて導入されたのが、ドローンを用いた調査だ。

のり面が崩壊し線路内に落石を含む土砂が流入している状況を確認したほか、斜面崩壊箇所については、安全を確保した上で近距離からも撮影を行い、被災原因推定の精度向上につなげた。

この点について、鉄道・運輸機構の髙橋氏は、「上空からの調査により、災害発生源を特定するとともに、更なる災害の危険性がないか被害状況を鮮明に把握することができました」と振り返る。

実際に現地調査を行い、迅速な復旧を支えた中には、調査隊の隊長として派遣された鉄道・運輸機構 鉄道企画調査部 鉄道総合支援課 総括課長補佐 石島 修祐氏もいた。
石島氏は、現場で留意した点として、「できる限り早期に運行が再開できるように、効率的な復旧計画となるよう、アドバイスすることを心がけました。そのため、現場での確認や、鉄軌道事業者様との調整に気を配りました。」と、技術や知見のみならず、コミュニケーション力も駆使して支援した当時を振り返った。

「鉄道災害調査隊」が目指す先――知見の継承と未来への展望

最後に、調査隊の派遣実績や、現場から寄せられている反応を踏まえた課題と、今後の展望について、国土交通省 鉄道局 施設課 鉄道防災対策室の鈴木氏に尋ねた。

鈴木氏によると、現在の課題の一つは、鉄軌道事業者や地方運輸局に対して、鉄道災害調査隊が提供できる技術的助言の具体的な内容が十分に周知し切れていないため、派遣要望につながりにくい状況がある点だという。

そのため今後は、鉄軌道事業者に加え、事業者とのパイプ役となる運輸局に対しても、より積極的な情報発信を行っていく考えだ。実際に、一般社団法人 日本民営鉄道協会の地方交通委員会において、調査隊の実績や助言事例を紹介した際には、関心を示す参加者も多かったという。

この点について鈴木氏は、「具体的な技術的助言の内容等に加え、復旧工程や費用面等に対して、鉄道災害調査隊の派遣がもたらすプラス要素を伝え、より身近で活用しやすい制度にしていきたいです」と述べ、より身近で活用しやすい制度としての浸透を目指す考えを示した。

一方、令和6年度に鉄道技術センターを設立し、技術の集約に努めている鉄道・運輸機構。髙橋氏が課題として挙げたのは、地方鉄道が直面する「老朽化」への対応や、災害復旧に関する知見の蓄積だ。

この点について髙橋氏は、次のように語る。
「地域鉄道支援を行うためには、実践的なノウハウの蓄積が大切です。そのためには、ドローンをはじめとしたデジタル技術に追従しながら、継続的に現場から得られる知見・技術を貯えることが重要であると考えています。また、鉄軌道事業者と連携した設備整備や計画策定の支援ニーズも高まっています。」

こうした課題や現場ニーズを踏まえ、令和8年度から5ヵ年にわたり推進される第1次国土強靱化実施中期計画では、鉄道災害調査隊の対応能力向上が位置付けられている。調査隊員のスキルアップを図るため、デジタルツール等に関する訓練や研修、講習も継続的に実施していく方針だ。

いすみ鉄道の復旧と感謝状
いすみ鉄道の復旧と感謝状

災害対応だけが復旧ではない。未然に災害を防ぐ姿勢が、国土強靱化につながる。
鉄道災害調査隊の活動は、鉄道と地域を支えるため、今後も支援体制の充実と知見の蓄積を進めていく考えである。

取材にご協力いただいた方
※取材内容、所属、役職は取材当時(2025年11月)のものです。

  • 国土交通省 鉄道局 施設課 鉄道防災対策室
    専門官 鈴木 丈智氏
  • 独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 鉄道企画調査部
    担当課長 髙橋 直人氏
  • 独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 鉄道企画調査部 鉄道総合支援課
    総括課長補佐 石島 修祐氏