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委員長記者会見要旨(平成26年4月23日)

平成26年4月23日(水)14:00~14:35
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 それでは、本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故等調査の進捗状況一覧と、勧告及び意見に基づき講じられた措置としてそれぞれ1件ずつ、運輸安全委員会ダイジェストの発行、船舶事故ハザードマップのグローバル版の運用開始についてご報告させていただきます。

1.事故調査の進捗状況報告


(沖ノ鳥島港湾工事作業員死傷事故)

 はじめに、3月30日(日)に沖ノ鳥島港湾係留施設築造工事の建設現場において、作業員が死傷する事故が発生いたしました。
 事故の概要ですが、3月30日、07時30分ごろ、沖ノ鳥島において港湾工事の作業中、桟橋が転倒、裏返しとなり、16名の作業員が海中に投げ出され、内7名の方が亡くなられたというものです。
 亡くなられた方のご冥福と負傷された方の一日も早いご快復をお祈り申し上げます。
 調査の状況ですが、本件事故については、船舶の運用に関連した可能性が考えられることから、事故発生後、速やかに調査官を現地に派遣し、初動調査に当たっているところです。
 現在までのところ、現地において、非常に困難な状況の中で、工事関係者や引き船関係者などから口述聴取を行うとともに、台船や桟橋の外形的な状況等についても調査に着手したところです。
 現在、調査官が持ち帰った情報や資料を整理中であり、また、引き続き、関係者からの聞き取り調査や関係資料の収集を行っていく必要があります。そのため、今後の調査に予断を与える恐れがあることから、現時点では、本件事故調査に関する資料をご提示できないことをご理解いただきたいと思います。
 本件についても、鋭意、調査を進めてまいりたいと考えております。

(JR東海飯田線踏切障害事故)

 また、今月12日(土)、JR東海 飯田線で踏切障害事故が発生いたしました。
 事故の概要ですが、資料をご覧ください。4月12日、13時15分ごろ、JR東海 飯田線 伊那上郷(いなかみさと)駅~元善光寺(もとぜんこうじ)駅間の湯沢踏切道(第4種:遮断機、警報機なし)において、列車が走行中に踏切道内を通行していた農耕用トラクタと衝突し、トラクタの運転手が死亡したというものです。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします。
 運輸安全委員会としては、13日に鉄道事故調査官2名を現地に派遣し、運転状況、車両、踏切の状況等を調査するとともに、関係者からの聞き取り調査を実施いたしました。
 現在、収集した各種データを整理中ですが、今後、さらに分析することで原因究明を行ってまいります。
 なお、本年4月1日より、運輸安全委員会は、遮断機の無い踏切道における死亡事故を新たに調査対象に追加したところであり、本件は当該要件に該当する初の事案となります。
 今後、この種の調査事例を積み重ねていくことで事故の再発防止及び被害軽減に寄与してまいりたいと考えています。
   

(その他の調査の進捗状況)

 続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査の進捗状況についてですが、詳細は資料1をご覧ください。

2.勧告に基づき講じられた措置

(ケミカルタンカー第二旭豊丸乗組員死亡事故に係る勧告に基づく通報及び完了報告)

 次に、国土交通大臣から、勧告に基づいて講じた施策についての通報が、また、原因関係者であるアスト株式会社から勧告に基づいて講じた措置についての完了報告を受けましたので、合わせてご紹介します。
 平成24年2月7日に発生したケミカルタンカー第二旭豊丸乗組員死亡事故についてでございます。資料2をご覧ください。
 この事故は、阪神港堺泉北第7区を航行中、タンク内に入った二等航海士が、残留していたクロロホルムガスを吸引して、酸素が欠乏する状態に至って死亡したというものです。
 本調査結果につきましては、平成25年4月26日に調査報告書を公表するとともに、勧告を行いました。
 今般、国土交通大臣から、全国内航タンカー海運組合長あてに通達を発出し、ケミカルタンカーの運航事業者等において、毒性を有する貨物を運送する場合の安全対策の徹底を図るよう指導したこと、これを受けて同海運組合は、平成25年度末までにすべてのケミカルタンカーにおいて、各種の安全対策を講じることとしたこと、さらに、今月から地方運輸局等において、すべてのケミカルタンカーに立ち入って安全対策の実施状況の確認及び説明・指導を行うこととした旨の通報を受けました。
 また、船舶運航者のアスト株式会社から、関係全船舶に対し、適切なガス検知装置を配備し、毒性のある貨物については、同装置又はガス検知管を使用してガス濃度を測定、記録するよう指導するとともに、定期的な訪船時における確認をすることとした旨の報告を受けました。
 これらの通報及び報告につきましては、勧告の内容を反映したものになっております。

3.意見に基づき講じられた施策

(遊漁船及び瀬渡船の乗場、防波堤等への衝突事故防止に関する意見への対応)

 続いて、資料3をご覧下さい。先月28日に、遊漁船及び瀬渡船の乗揚、防波堤等への衝突事故防止に関して、水産庁長官に対し、再発防止のため講ずべき施策に係る意見を述べました。
 当委員会の意見を受け、水産庁において、早速、対応を頂いておりますので、ご紹介、ご報告をいたします。
 当方からの意見を踏まえ、水産庁においては、直ちに、
 ・遊漁船業者等が利用者の安全確保のために定める業務規程のひな型を改正するとともに、
 ・都道府県知事あてに、管下の業者に対し速やかに業務規程を改正する指導等を行うよう助言しました。また、
 ・安全講習会の実施者に対し、今回の改正内容を踏まえた事故防止策の指導等を行うよう要請して頂きました。
 関係行政機関において、当委員会の意見を踏まえ、迅速な施策が講じられたことは、再発防止に向けて極めて好ましいことと評価しております。

4.運輸安全委員会ダイジェストの発行

(1)「運輸安全委員会ダイジェスト第13号」の発行について

 当委員会では、同種事故の再発防止を目的として、事故事例、統計に基づく分析などをまとめた「運輸安全委員会ダイジェスト」を作成しており、隔月で発行しております。
 本日、第13号として「船舶事故分析集 船首方の視界制限による衝突事故の防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しました。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料4をお配りしております。
 船舶間の衝突事故では、小型の漁船や遊漁船などの航行中に船首が浮上し、前方に死角が発生して視界が制限され、相手船に気付かないで衝突したケースが散見されます。
 このような船舶間の衝突事故をテーマに、各種統計資料とともに事故調査事例を4つ紹介しています。
 関係者の皆様に周知することにより、同種事故の未然防止に資することを期待しています。

(2)「運輸安全委員会ダイジェスト(英語版)」の発行について

 続いて、本日、「運輸安全委員会ダイジェスト(英語版)航空事故分析集 ヘリコプター事故の防止に向けて」(英語名称:Digest of Aircraft Accident Analyses : For Prevention of “Helicopter Accidents”)を発行し、当委員会の英語版ホームページで公表しました。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料5をお配りしております。
 本号は、昨年12月に発行した日本語版を元に英訳したものです。
 これまで発行した英語版ダイジェストは、国際シンポジウム等の場を通じて随時紹介し、同種事故の再発防止に有用な資料であるとの評価を得ておりますので、引き続き、積極的に発信してまいります。

5.船舶事故ハザードマップ・グローバル版の運用開始

 次に資料6をご覧ください。
 当委員会では、昨年5月からホームページで「船舶事故ハザードマップ」を公開しているところですが、本日から世界の船舶事故を閲覧できる「グローバル版」の運用を開始しましたのでお知らせします。
 これは、ハザードマップの表示海域を海外まで広げ、当委員会が公表した船舶事故調査報告書に加えて、外国の船舶事故調査機関が公表している調査報告書を閲覧できるようにしたものです。
 外国の船舶事故情報につきましては、昨年9月にスイスで、また、10月に韓国で行われた国際会議において、船舶事故ハザードマップを紹介して賛同をいただいたアメリカ、イギリスなど7カ国の協力を得て実現したものです。
 今後とも、外国の船舶事故調査機関とも連携しながら、さらなる内容の充実を図り、世界の海事分野における安全性の向上に努めて参りたいと考えています。

 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

6.質疑応答

(ケミカルタンカー第二旭豊丸乗組員死亡事故に係る勧告に基づく通報及び完了報告関連)

問: ケミカルタンカーの死亡事故ですが、こういう事故は時々発生している気がしますけれど、今回初めてこういう報告がきたということですか。それとも何かほかに理由があるのですか。
答:  いくつかこのような事故が最近起きております。今回この件については死傷者を生じたということと過去にも同一事業者による事案が発生しているということで、改善すべき事項があると考えまして、運輸安全委員会として勧告を出したものです。それを国土交通大臣に受け止めていただき、早速、改善策を講じた旨の通報をしていただきまして、我々、その方策について評価しているところです。今後の同種事故の再発防止に役立っていくことを期待しているところであります。

問: 過去の事案の統計を、運輸安全委員会はまとめているのでしょうか。
答: ご承知のように船舶部門の事故調査を始めて6年目に入ったところであります。従来の海難審判庁との報告書と併せて考えなければいけないので、その辺の合成作業というのは、時間がかかるもので、そこまで手が回らなかったのでありますけれども、我々の船舶事故の調査部門が出来上がったということで、将来はおっしゃるようなこともできるように考えていきます。
 勧告や意見につきましてはホームページで掲載させていただいていまして、その中でご対応いただいたものにつきましては、ホームページでまとめて公表させていただいています。

(韓国フェリー事故関連)

問: 韓国で先週、旅客船の転覆事故がありました。行方不明者がまだ多数いまして、事故原因も判然としないところもありますが、日本も海に囲まれている国で、危険な海域もありますし、過去には2009年に「ありあけ」の似たような事故がありました。そういう観点からも今回の事故について、委員長としてどのように受け止めておられるかという点と、これは外国の話ではありますが、原因等について何か所感があればお願いします。
答:今回の事故については、我々も報道で承知しているだけでありますが、修学旅行中の高校生のほか大変多くの旅客の方が死亡あるいは行方不明になっているという大惨事であります。亡くなられた方のご冥福と行方不明になっておられる方の一刻も早い発見を祈念しているところであります。今回の事案は、韓国の領海内で発生した韓国国籍の船舶による事故であり、国際条約に基づき、韓国の船舶事故調査当局、これは韓国海洋安全審判院の一部でありますが、事故の原因究明に当たることになるものと承知しております。このため、現段階で運輸安全委員会としてコメントする立場にはありません。ご了解いただきたいと思います。

問: とはいえ、あれだけの大惨事がおきまして、国内の海運事業者に対する影響といいますか、各社、安全徹底をもう一度と国交大臣も言われていますけれど、そういう観点からも、委員長、この事故をどういうふうに見ておられますか。
答: 今後、事故調査が進められていろいろな勧告、あるいは改善策が出されると思いますが、それと我々が持っている先ほどの「ありあけ」の事故を含めまして、我々に何ができるかは今後の検討課題として、注目してまいりたいと思っております。

問: 完全に韓国マターではあるものの、船が元々日本で運用されていたということもありまして、JTSBから調査官を派遣するとか、要請があるとか、そういう話になっているとか、可能性というのはいかがでしょうか。
答:  韓国の方から、日本の我々調査当局に対して要請があれば、協力することもあり得ると思いますが、今のところ、それはありません。もしも、韓国から協力依頼があったとしたら、何ができるのかについて、いろいろと検討することになると思いますが、今の段階で要請はきておりません。「ありあけ」と作ったところは同じですので、それがどのように改造されて、どうして事故を起こしたのか、我々も関心をもって注目していきたいと思っています。

問: 「ありあけ」の事故調査報告書は世界中に公表しているのでしょうか。
答: 「ありあけ」の報告書は日本語版のみで、英語版では公表していないと思います。

問: 日本語版のみですか。事故調査報告書は世界中に公表しているのではなかったですか。
答: 国際航海に従事する一定の船舶に係る事故等については、英語版を作成してIMOに提供しています。

問: 航空はどうでしたでしょうか。
答: 航空の場合は、条約に従って、小型の航空機に係る場合を除き、英語版を作ってしかるべきところに提供して、見ることができるようにしています。実態としてはほとんど英訳されています。

問: 航空の場合では、メーカーとか運航管理者とか関係者に全部いきますよね。
答: そうですね。

問: 船の場合、「ありあけ」の時に英語版が公表されていれば、韓国の海運会社・運航会社の管理者が知っている可能性があることになりますね。
答: 情報としては、その可能性はありますね。

問: 英語版を作ることは、人員というか体制的に難しいという感じですか。
答: 外国船籍の船が関与する時は英語版を作っております。船の場合につきましては、一定のトン数以上の大きさとか、国際航海に従事する船である場合には、IMOに報告するという形をとっているのですが、「ありあけ」の場合はそれに該当しないということで、国際機関に報告していないということです。
 航空につきましても、国際条約上決められているから英訳を出している訳で、海は海のルールに従って出しているということだと思います。
 鉄道では報告書自体は英訳していませんが、今の年報は全部英訳して出しています。このように、どういう事故があって、どういう調査をしたかという概要は、公表してきているところです。

(船舶ハザードマップ・グローバル版関連)

問: 資料6の船舶事故ハザードマップ・グローバル版の件ですが、韓国の事故と絡むのですけれど、去年の10月に韓国で調査官会議が開かれて、そこで賛同を得られた国から協力を得て、世界の事故が一覧できるということですが、韓国で開かれたのですが、韓国の協力は得られなかったということなんですか。
答: 韓国については、独自にこういった事故情報のデータベースを別途検討されているということもあって、今回の私どもの提案にはご参加いただいておりません。今後とも、いろんな機会を通じて調査機関の新たな参加を募ってまいりたいと思っています。

問:今後も韓国は、ここに入ってくる可能性もあるということですか。
答:引き続き参加を募ってまいりたいと思っています。今月、オランダのロッテルダムで行われた第10回欧州船舶事故調査官会議(EMAIIF10)においても、このグローバル版の紹介を行うとともに、広く参加国を募ってきたところです。今後とも、あらゆる機会を通じて参加国の拡大、調査報告書データの追加を行いつつ、情報の充実に努めてまいりたいと思います。
 なお、どういう使い方ができるかというと、発生海域、発生年月、発生時間帯、事故種類、船舶の種類などの条件を絞って検索できますので、利用者の用途に応じた情報を入手することが可能となっております。例えば、運航管理者や外国船の代理店などでも、航行予定海域において、どこでどのような事故が発生しているか、事故が多い場所ではどのようなことに気を付ければいいのか、などの情報を事前に入手することにより、実際の航海における安全運航や船員に対する安全教育としても活用いただけるものと期待しております。
 実際に発表された方から外国からの反応を聞きますと、大変好評であったと聞いています。

(沖ノ鳥島港湾工事作業員死傷事故関連)

問: 沖ノ鳥島の港湾施設の事故で、今後の調査の関係もあるので資料は出せないということだったと思いますが、事実について、できる範囲で開示できるものはないでしょうか。
答: 4月1日調査官2名を沖の鳥島に派遣しまして初動調査を行いました。作業員から話を伺い、資料の収集、桟橋及び台船の状況の確認などの調査を行いました。当時は人命救助が第一優先であり、なかなか作業員から詳しい状況を聞けるような状態でありませんでしたので、今後は内地に戻った作業員から、より詳しく事故当時の作業の状況、操船の状況、気象海象などを予断なく情報を入手していく予定です。現段階で詳しい状況をお話しすることは差し控えさせていただきます。

問: 今回調査官が調査しているのは、船舶の運用に関係している可能性があるからという設置法の趣旨からだと思いますが、桟橋の構造上の問題であった場合、運輸安全委員会は調査対象外となるのでしょうか。あくまで、台船や引船が関わるなら調査を行うということでしょうか。
答: 現在、詳しい状況を十分には掴めていないので、調査を継続しているところですが、様々な観点からいろいろな情報を入手したのちに、船舶の運用や桟橋そのものなどに関して検討していきたいと思いますので、現段階で運用に関わるものかどうかについてはお答えできません。

問: 運用上の問題でなくなった場合はどうなるのですか。
答: 設置法上、船舶の運用に関わる事故について我々は最後まで調査しますが、その範囲については調査の段階で申し上げられません。現在、様々な情報を集めている段階です。

(JR北海道内JR貨物事故関連)

問: 北海道内のJR貨物の2012年脱線事故2件でJR貨物の社内調査で積荷の偏りがあったとしていますが、運輸安全委員会ではどのように把握していますか。
答: その件については調査中なので内容を申し上げることはできないことをご理解いただきたいと思います。北海道内の何件かの事故については平行して調査・審議を行っているところでして、JR貨物についても問題点のまとめということも可能だと思いますが、調査・審議が進むのを待っていただければと思います。

問: JR貨物から社内調査の報告は上がってきていますか。
答: それも含めて調査中なのでお答えできないことをご理解下さい。

問: 荷物が偏っていたという件についてもですか。
答: 調査内容についてはコメントを差し控えさせていただきます。調査中のものは途中で情報が出ると、結論の見通しを出してしまい、調査中のものと結論で発表したものが違った場合は悪影響を与えてしまうので、調査中の内容に関してはお答えできないことをご理解いただければと思います。

資料

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