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委員長記者会見要旨(平成28年12月13日)

平成28年12月13日(火)14:00~14:12
国土交通省会見室
中橋和博委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、3モードにおける事故調査の進捗状況一覧と、運輸安全委員会ダイジェストの発行についてご報告します。

1.事故調査の進捗状況報告

 はじめに、委員の異動について、ご報告します。
 12月6日に航空関係で、新任の委員に丸井祐一(まるい ゆういち)委員、鉄道関係で、新任の委員に奥村文直(おくむら ふみなお)委員、土井美和子(どい みわこ)委員が任命され、岡村美好(おかむら みよし)委員が再任されました。また、12月26日をもちまして、鉄道関係で、石田弘明(いしだ ひろあき)委員が任命される予定と聞いております。
 続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況についてですが、説明は省略させて頂きますので、詳細は資料1をご覧ください。

2.運輸安全委員会ダイジェストの発行

 本日、「運輸安全委員会ダイジェスト第23号」として「船舶事故分析集 内航貨物船・内航タンカーの衝突事故防止に向けて」を発行し、当委員会のホームページで公表しました。
 ご参考に、本号の掲載ページを印刷した資料2をお配りしております。
 本号では、過去5年間に発生した内航貨物船又は内航タンカーが関連した衝突事故の発生傾向及び調査事例などを掲載しています。
 内航貨物船又は内航タンカー側の衝突事故の要因は、他船に気付きながら、その後の継続した見張りを適切に行っていないことによるもの、他船が避けることを期待していたことによるものなどが多くなっています。
 内航貨物船等と衝突した相手船は、漁船が半数以上を占めており、漁船側の事故要因は、内航貨物船や内航タンカーの存在に気付いていなかったことによるものが多くなっています。
 以上のことから、
 ・他船に気付かなければ、衝突事故は防げないこと
 ・他船に気付いた後は、継続的な見張りを行い、余裕のある時機に回避行動をとること
 ・漁船が自船に気付いていない可能性も想定した対応をとること
 などを、チェックリストとしてまとめています。
 本号はホームページでの公表のほか、メールマガジンや各種講習会などで事業者や乗組員の皆様にお知らせし、内航貨物船等が関連した衝突事故の防止に役立てていただくことを期待しています。

3.一年を振り返って

 さて、今年はこれで最後の会見となりますので、簡単に平成28年を振り返ってみたいと思います。
 本年、公表した報告書は、今月の公表予定がありますので最終的な数字ではありませんが、11月末までに、航空が30件、鉄道が16件、船舶は東京で扱った重大案件が14件の合計60件でした。そのほか、船舶で経過報告を1件公表しております。また、安全勧告4件を発出いたしました。
 これらの中には、社会的に関心が高い事案もございましたので、ご紹介させて頂きます。
 航空では、平成26年4月に発生した、ピーチアビアーションが運航するエアバスA320型機が那覇空港へ進入中、異常降下による緊急操作となる重大インシデントの報告書を7月に公表しました。
 また、平成27年4月に発生した、アシアナ航空が運航するエアバスA320型機が広島空港へ進入中、アンダーシュートによる航空保安無線施設と衝突になった事故の報告書を11月に公表しました。
 鉄道では、平成27年6月に発生した、JR東海の東海道新幹線が放火により列車火災となる事故の報告書を6月に公表しました。
 また、平成27年4月に発生した、JR東日本の山手線で電柱の線路上への転倒となる重大インシデントの報告書を7月に公表しました。
 船舶では、平成26年12月に発生した、漁船第一源福丸が揚網作業中に転覆、沈没し乗組員5名が亡くなられた事故の報告書を7月に公表しました。
 また、平成27年7月に旅客フェリーさんふらわあ だいせつで火災が発生し、乗組員1名が亡くなられた事故の経過報告書を9月に公表しました。
 また、本年に当委員会の事故等調査対象となった件数ですが、現時点でありますが、航空では13件の事故と9件の重大インシデント、鉄道では23件の事故と2件の重大インシデント、船舶では、東京で取り扱う重大な船舶事故は14件発生しております。
 28年に発生しました主な事故等を各モード別に挙げてみますと、航空では、2月に日本航空機が新千歳空港を離陸のための地上走行中、機内に煙が発生したため、誘導路上にて脱出用スライドを使用して搭乗者を脱出させ、乗客1名が重傷を負う事故がありました。
 また、3月に小型機が八尾空港に着陸する際、墜落して搭乗者4名全員が死亡するという事故がありました。
 さらに、5月には大韓航空機が東京国際空港で離陸滑走中、第1エンジンに不具合が発生して出火したため離陸を中止し、滑走路上にて脱出用スライドを使用して搭乗者を脱出させた重大インシデントがありました。
 鉄道では、4月にJR九州新幹線が熊本駅から熊本総合車両所に向けて回送運転中、平成28年熊本地震の発生に伴い、列車が脱線するという事故がありました。
 船舶では、幸いにして大きな被害を伴った事故等の発生はみておりません。
 これら事故等については、報道で大きく取り上げられたものもありますが、現在、鋭意調査が進められているところであります。
 今後も、運輸安全委員会では、適確な事故等調査をはじめとする様々な取組みにより運輸の安全性向上に取り組んでまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

4.質疑応答

(一年を振り返って)

問: 今年あった事故等について、特徴や傾向があれば教えてください。
答: 航空に関しましては、小型機やグライダーに関する事故が昨年に引き続き今年も多かったかと思います。鉄道に関しましては、幸い大きな事故はありませんでしたが、遮断機のない踏切事故の問題はどのようにすればよいのかということが、懸案事項でございます。船舶につきましても、本日発行のダイジェストでまとめてありますが、衝突事故等は過去5年間の傾向をみますと減少していませんので、そのあたりをどうすべきか議論の余地のあるところかと思います。

(運輸安全委員会ダイジェスト第23号関連)

問: ダイジェスト第23号の「衝突事故防止に向けて」について、こういった貨物船やタンカーの衝突についての傾向をまとめるのは初めてですか。
答: 貨物船等の衝突に特化したまとめ方はしておりませんが、過去にはマリンレジャーに関連する船舶事故や、視界制限による衝突事故防止に向けてなどといった形でまとめております。

(広島空港アシアナ機事故報告書関連)

問: 先月まとめられたアシアナ航空の報告書について、韓国当局に勧告という形で出されましたが、改めて委員長の方から勧告の狙いと、アシアナ航空の今後の運航に対して何かご意見や注文がありましたらお聞かせください。
答: アシアナ航空につきましては、まず規定をきちんと守ること、それが一番のポイントかと思っております。今後、より一層安全に向けた環境整備、あるいは意識の徹底をしていただきたいと思っております。

資料

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