ワーケーション&ブレジャーの導入・推進による効果と企業経営

~新しい働き方が導く「新たな旅のスタイル」~

ワーケーション導入のメリット

  •  「新たな旅のスタイル」となるワーケーションやブレジャーといった新しい働き方に取り組むことで、企業、従業員だけでなく、受入側となる地域にもその効果が想定され、まさに「三方良し」の持続可能な取り組みになると考えられています。
     まず送り手となる企業側のメリットとしては、有給休暇の取得促進が挙げられます。また、多様な働き方が認められていることは企業イメージを向上させ、優秀な人材の確保や採用にも結び付く効果も予想されます。これは離職率の低下等にも繋がり、人材の流出を抑止することも期待できます。そのほかCSRやSDGsの取り組みによって企業価値が向上し、従業員エンゲージメントが高まることで新しいアイデアやビジネスといったイノベーション創出の原動力に繋がる効果や、地域との関係性構築によるBCP対策や地方創生の寄与といったメリットもあります。
     次に、利用者である従業員サイドとしてのメリットですが、長期休暇が取得しやすくなる、働き方の選択肢の増加、ストレスの軽減やリフレッシュ効果、モチベーションの向上、業務効率の向上、リモートワークの促進、新たな出会いやアイデアの創出といったことが挙げられます。
     働き方の選択肢が増加すれば、自立的で自由度の高い働き方を選択でき、仕事とプライベートの両立が実現可能となります。また有給休暇を取得しやすくなれば観光のハイシーズンを避けてワーケーションを行うことができ、特定の時期に旅行需要が集中するといった課題も解消し、また旅費や時間の節約にもなるといった利点もあります。何よりも非日常の土地で仕事を行うことで心身がリフレッシュされモチベーションが向上し、充実した余暇を過ごしながら新たなイノベーションを生み出す力が養われることが期待できます。より良いワーク&ライフスタイルを実現することは生産性向上にも繋がる可能性を秘めています。
     さらに、受け手となる地域側にとっても、関係人口の拡大や企業との関係性の構築による地域の課題解決への寄与、遊休施設等の活用などのメリットとして挙げられます。研修等の受入プログラムを継続的に実施するなどして、地域課題の解決や地方創生の要素を取り込み、地域ビジネスや経済を活性化させるといった活動を通じ、新たな関係人口創出を推進することも期待できます。
     観光庁が2020年にモデル事業として企業を対象に実施した、ワーケーションの効果検証(ANAグループ)では、ワーケーションが生産性・心身の健康にポジティブな効果があることが検証結果としてわかりました。滞在日数を重ねるほど集中力が高まる傾向が見られ、またアンケート調査においても集中力やモチベーションの上昇、創造性において実施前と比べて高まる傾向が見られました。
     このように、ワーケーションやブレジャーが普及し定着することは、働き方改革を推進できる企業、柔軟な働き方を求める従業員、地域の活性化や地方創生を目指す地域の三方すべてにメリットをもたらし、持続可能なモデルになると考えられています。さらに、コロナ禍の状況においては分散型・長期滞在型の旅行需要の創出は感染リスク対策にも繋がることから、ワーケーションやブレジャーといった新しい働き方による「新たな旅のスタイル」に更なる期待が寄せられています。

「働く人」と「企業」のワーケーションに対する考えは?

  •  観光庁では、企業と従業員の両者を対象にワーケーションに対する意識調査を行いました。調査では、ワーケーションの認知度が約8割に達していることがわかり、類型別にみると「有給休暇を利用しリゾートや観光地の旅行中に一部の時間を利用してテレワークを行う」という休暇型ワーケーションについての認知度が約50%と高く、また「場所を変え、職場のメンバーと議論を交わす」という合宿型ワーケーションについても35%となるなど、多様なワーケーションの実施形態についての理解が高まっていることがうかがえます。
     今回の調査をもとに、企業と従業員側の双方から見たワーケーションに対する考え方を解説します。

企業からの視点での調査
企業のワーケーション導入の目的・期待と受入地域、施設への要望

  •  企業にとってワーケーション導入理由は、「従業員の心身のリフレッシュによる仕事の品質と効率の向上」「多様な働く環境の提供」の2つが最も大きいことがわかりました。さらに「優秀な人材の雇用確保」「優秀な新卒社員や若手社員の採用および定着率の向上」や「自己成長および会社への貢献」を目的や期待に挙げる企業が多数みられます。福利厚生の観点から従業員のリフレッシュ効果に期待する声が多い一方、さらに一歩進んだ戦略的な人材マネジメントや新規ビジネス開発、地域課題解決などといった、自社のビジネスに活かす取り組みに発展させ、ワーケーションを経営戦略の一部とする考えを持っている企業が少なくないことがこの結果を通してうかがえます。

従業員の視点での調査
高まるワーケーションへの関心と利用したい理由

  •  ワーケーションに対する認知や実施意向が着実に高まりつつある中で、特に20歳代のいわゆるデジタルネイティブ世代においてワーケーションへの関心が高いことがわかりました。最も興味関心が高い類型では「休暇型」が73.4%、次いで「地域課題解決型」が64.9%という結果になりました。

  •  ワーケーションへの期待をさらに各類型別(図1『ワーケーション、ブレジャーを利用したい理由』参照)に見てみると、休暇型、業務型のどちらにおいても「リラックスできる環境」に対する期待が大きくなっていることがわかります。また業務型であっても、日常と異なる環境でリラックス、リフレッシュを求める割合が高く、地域関係者やコワーキングスペースなどその場で出会った人達との情報交換や交流に対する期待もそれぞれ10%以上あることがわかりました。地域のコミュニティーとの接点づくりや偶発的な出会いなど、計画的な偶発性を求めるニーズも一定数みられ、こうした仕掛けづくりもワーケーションを推進していくうえで重要な要素になるものと考えられます。ブレジャー型では費用面のメリット、混雑時期の回避、休暇の取得がしやすいといった回答が多いことが特徴的にみられます。

企業や従業員の地域や受入施設への期待と要望 〜「三方良し」の実現に向けて〜

  •  今回の調査で、受入側となる地域への要望や懸念に対する質問をしたところ、企業が地域に整備してほしい点として、「セキュリティやスピード面が確保されたWi-Fi等の通信環境」が53.4%で最も高く、次いでハード面の整備に対するニーズが高いことがわかりました。また、子育て支援に関する要望も多く、家族同伴でワーケーションを行いたいといった需要がうかがえます。なお観光関連に関する需要は合計で30.8%になりました。
     従業員側のワーケーション実施時の受入側への懸念点については、「Wi-Fiなどのネットワーク環境が整い安全なセキュリティ環境下で快適なワークができるのか」が最も多く、これについては企業が地域に望んでいる結果と同様の声が従業員側からも寄せられていることがわかりました。
     また、今回の調査で、地域課題解決型ワーケーションに若手を中心とした従業員が強い関心を持っていることがわかりました。こうした結果から、受入側の地域は企業および従業員側のニーズや懸念事項に耳を傾け、送る側となる企業や利用者の従業員側も、地域の課題やニーズを共有することで、関係人口の拡大や地域活性化への貢献、地域での副業やボランティアへの積極的な関わりなどといった、ワーケーションの役割ともいえるプラス面を拡大していくことが期待され、これが「三方良し」の実現に繋がると考えられます。

調査概要

「新たな旅のスタイル」に関する従業員向けアンケート調査
・ 調査時期:2020年12月25日~2021年1月5日
・ 調査対象:20-59歳の会社員
・ スクリーニング調査:17,426サンプル
・ サンプル本調査:2,000サンプル
・ 調査方法:インターネット調査
「新たな旅のスタイル」に関する企業向けアンケート調査
・ 調査時期:2020年12月22日~2021年1月21日
・ 調査対象:従業員数10名以上企業
・ 調査方法:調査票発送によるアンケート調査 無作為抽出
3,500社(回収サンプル268/有効サンプル266)

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