企業向け
監修:山梨大学大学院教授 田中 敦 / 特定社会保険労務士 片岡正美
ワーケーションは新しい働き方・休み方です。このたび、令和3年3月に厚生労働省から「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(以下「テレワークガイドライン」という。)が発出され(※)、ワーケーションもテレワークの一形態として位置付けられました。テレワークガイドラインの内容と、実際に企業でワーケーション制度を導入する場合のポイントをご紹介します。
※「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を改定したもの
【2 テレワークの形態】
「テレワーク等を活用し、普段のオフィスとは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行う、いわゆる『ワーケーション』についても、情報通信技術を利用して仕事を行う場合には、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務の一形態として分類することができる」(テレワークガイドラインP2)
と明示されました。これにより、ワーケーションについても、情報通信技術を利用して仕事を行う場合にはテレワークガイドラインに則って行われることが望ましいことが明らかになりました。
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まず、最初に情報収集を行います。そして、自社のテレワークの現状の確認を行うとともに、ワーケーション導入に向けた推進体制を構築することも重要です。
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テレワーク全般に該当しますが、自社においてワーケーションを導入する目的を明確化することは極めて重要です。この目的に沿って、基本方針を策定し、社内での合意形成を行います。
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前述の目的・方針に沿って、ワーケーションの実施範囲の検討を行い、労務管理のルールを確認し、必要な場合は見直しを行います。「就業場所」に関する許可基準の明示、就業規則(テレワーク規程等)の整備(作成・変更)を行います(労働基準法第89条、労働契約法参照)。また、申請・承認ルールの作成や、勤怠管理システムの導入や改修を適宜行います。
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自社のセキュリティガイドライン等に沿って、どのようなシステム方式でワーケーションを行うのか、ツールの検討、技術的/物理的なセキュリティ対策の実施、労働者に対する研修・通知・説明を行います。
※典型的なサテライトオフィス勤務・モバイル勤務実施時のルールに準じて検討することとなるでしょう。
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特にワーケーション制度を利用しやすい職場風土の形成のための管理者の理解促進は重要です。
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まず、期間や部署を限定したトライアル実施も有効です。一度に全社に導入するのではなく、実施しやすい部門や職種からスタートさせることも検討してみてください。
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効果測定・検証を行い、そこから課題を把握し、利用推進のため見直しを行います。社内でのアンケートの活用も有効でしょう。
ここでは既にワーケーションを実際に導入、運用している3つの企業(株式会社JTB(以下「JTB」)、日本航空株式会社(以下「JAL」)、ユニリーバ・ジャパン(以下「ユニリーバ」))の規程やルールにおいて、参考になるポイントをご紹介します。一般的なテレワーク規程作成に関する留意点などは、厚生労働省「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」をご参照ください。
既存のテレワーク規程を活用している事例があります。
今回ご紹介する3社では、冒頭に制度導入に対する経営としての意思、期待をしっかりと伝え、制度の趣旨、目的を明らかにすることが、社員のテレワーク導入・定着において極めて重要であるとの観点から、規程またはガイドライン等で目的を明示しています。
自社の実態・規程類の整備状況・導入したいワーケーションの目的・内容に応じて「ワーケーション勤務」という類型を明確に定めるケースと、既存のテレワーク勤務(サテライトオフィス勤務・モバイル勤務)やオフィス外勤務の規程・ガイドライン等でテレワークの一類型として整理するケースがみられます。
自由度・柔軟性の高さは、自社の実情に応じて決定します。最初は、限定しておき、徐々に柔軟性を高くする方法がスムーズです。定め方としては、具体的には以下のような方法をとっている事例があります。
(例)
a. 会社が所有または契約するサテライトオフィスなど、「特定の場所を明記」する方法
b. ワーケーション勤務者が選定するコワーキングスペースなど、テレワーク環境が整った場所を条件にする方法
c. 宿泊先、図書館、カフェ、新幹線車内なども許可することとし、包括的な表現の定めをおく方法
※bとcの2つは、規程上は、「会社が許可する場所」といった記載にしておき、具体的に許可基準を社内ガイドラインや説明資料として記載したり、服務に関する定めやセキュリティについての定めの中で、必要な条件として定めたりするという方法もあります。
先行企業の事例では、希望者のうち要件を満たす者に対し制度適用を承認する、といった規程例がみられます。
具体的な対象者の要件としては、「通常の勤務場所とは離れた場所での円滑な業務遂行が可能と上長が認めた者」「テレワークに適した業務内容を有し、オフィス以外での就業場所での業務遂行により業務効率や生産性の向上が見込まれるとして、会社が認めた者」といった規程例があります。
導入当初は、自社の実態にあった無理のない日数・頻度・手続きからスタートして、制度利用者やマネジメント層が慣れてきたら、段階的により柔軟な制度にしていくとスムーズです。
■通常の労働時間制度の場合は、9つの始業開始時刻、終業時刻のパターンを用意し始業・終業時刻の繰上げ・繰下げに関する定めを設ける事例や、就業時間の分割の規程を設けて、実質的な中抜けのルールを定めておくことで柔軟性が確保する事例がみられます。
■フレックスタイム制は、始業・終業時刻を労働者が自主的に決定できる制度で、ワーケーションを含めテレワークになじみやすい制度です。テレワークの先進取組事例では、コアタイム無しのフレックスタイム制度を導入しているケースが多く報告されています。
※詳細は下部にある【「新たな旅のスタイル」ワーケーション & ブレジャー企業向けパンフレット(PDF)】
P16~20も御覧ください。
「新たな旅のスタイル」
ワーケーション & ブレジャー
企業向けパンフレット