企業向け

労災や税務処理に関するQ&A

労災保険給付の考え方について

Q1 ワーケーションにおいて負傷した場合の労災適用範囲について
A1 ワーケーションには、様々な就業形態が考えられること等から、労災保険給付の対象になるか否かについては、個別案件ごとに判断することとなりますが、このうち出張(注1)と認められる場合については、事業主の管理下を離れているものの労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をするものであり、その過程全般について事業主の支配下にあるものと考えられることから、私的行為を行うなど特段の事情(注2)がない限り、原則、労災保険給付の対象となります。
(注1)出張とは、事業主の命令により、特定の用務を果たすために、通常の勤務地を離れて出張地に赴いてから、用務を果たして戻るまでの一連の過程を含むものです。
(注2)出張に通常伴う付随行為の範囲(食事、喫茶、睡眠等)を逸脱しているといった事情。
Q2 ワーケーションのうち出張と認められる場合(Q1参照)において、以下の状況で負傷した場合、労災保険給付の対象となりますか。
A2

ア 就業先へ移動する機内等で業務を行っている際に負傷した場合

就業先への移動であっても、業務中の負傷は、原則、労災保険給付の対象になります。

イ 自宅から宿泊施設への移動中に負傷した場合

自宅から宿泊施設への移動は、出張に付随する行為であることから、当該移動中の負傷は、原則、労災保険給付の対象になります。

ウ 私的旅行先から宿泊施設への移動中に負傷した場合

私的旅行先から宿泊施設への移動は、当該移動自体が事業主の命令でない限り、私的行為であり出張に付随する行為とは認められないため、当該移動中の負傷は、原則、労災保険給付の対象にはなりません。

エ 業務終了後、就業先から飲食店への移動中に負傷した場合

飲食は、出張に付随する行為であることから、飲食店への移動中の負傷は、原則、労災保険給付の対象になります。

オ 業務終了後、飲食店で食事をした際に相当に飲酒して酩酊してしまい、宿泊施設への移動中に負傷した場合

飲食店で相当に飲酒し酩酊する行為は、私的行為に該当し、出張に付随する行為とは認められないため、酩酊後の宿泊先への移動中の負傷は、原則、労災保険給付の対象にはなりません。

カ 業務の前後や休憩中に負傷した場合

業務の前後や休憩中の負傷は、出張に付随する行為から逸脱した私的行為に該当しない限り、原則、労災保険給付の対象になります。

※ ブレジャーやワーケーションには様々な就業形態が考えられるため、労災保険給付の対象になるか否かについては、個別案件ごとの判断となります。
<参考>労働条件関連
Q1 募集・採用を行う際に、ワーケーションやブレジャーについて、どのように記載すべきですか。
A1 求人や募集要項にワーケーション制度やブレジャー制度があることを記載しましょう。
Q2 雇用通知書や労働条件通知に、ワーケーションやブレジャーについて記載する必要はあるでしょうか。
A2 ワーケーション等が、労働者が実施するかどうかを自由に決められるような場合等であれば、雇用契約書や労働条件通知書に記載しておく必要はありませんが、制度の周知や円滑な実施のためにも、就業規則などを整備し、周知することが望ましいです。
Q3 ワーケーションやブレジャー中の労働時間はどのように決めればよいでしょうか。
A3 ワーケーション等の期間中、始業・終業時刻や所定労働時間が通常の勤務の場合と同じであれば、改めて定める必要はありませんが、始業・終業時刻の変更などをする場合には、あらかじめ就業規則などで明確に定めておくことや、各労働者のワーケーション等の開始前に、実施する業務の内容等を踏まえて、労使で話し合って具体的に定めておくことが必要です。
例えばワーケーション等の開始前に、期間中の行動計画、予定表などを作成し、労働する日や時間を決めておくなどの方法も有効です。
Q4 ワーケーションやブレジャーでの公共交通機関の移動時間は労働時間になりますか。
A4 自宅からワーケーション等を行う施設への移動や、ワーケーション等を行う場での移動などワーケーション等において公共交通機関を利用して移動している時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けていないような場合には、一般的には、労働時間に該当しません。
Q5 ワーケーションやブレジャー中の遅刻・早退・欠勤はどのように取り扱いますか。
A5 あらかじめ、ワーケーション等中の労働日や始業・終業時刻を労使で決めていれば、もし、その労働日の始業と終業時刻の間に遅刻・早退・欠勤があった際には、通常の遅刻・早退・欠勤と同様に取り扱うことができます。
Q6 ワーケーションやブレジャーでも時間外労働や休日労働をさせることはできますか。
A6 ワーケーション等においても、時間外労働や休日労働を行わせることが、法令上直ちに禁止されるものではありませんが、各企業においてワーケーション等を実施する趣旨に鑑み、時間外・休日労働を行うことが望ましいか、行うとしてもどの程度の時間にするか、といったルールを労使で話し合って定めておくことが望ましいです。
なお、時間外労働、休日労働を行わせるためには、36協定の締結や、時間外労働・休日労働の上限の遵守などが必要です。
また、ワーケーション等の実施に当たり、労働者があらかじめ年次有給休暇を取得している日については、業務に従事するよう指示することが、労働基準法違反となる可能性があることにも留意が必要です。

税務処理の考え方について

■ワーケーション
Q1 当社はテレワークを導入しており、従業員が自宅で業務をすることを認めています。 この度、従業員より、休暇を取得して自身が観光目的に選んだ場所に2日間の私的旅行をする際、その空き時間において、宿泊する旅館の部屋でテレワークにより業務を行いたい(その業務に係る時間は休暇扱いとはしない)旨の申立てがありました。当社としても、ワーケーションの一環として、そのようなテレワークを認めることを予定しています。 当社が、その旅行に係る往復の交通費を負担した場合、その従業員に対する給与として課税する必要はありますか。
A1 通常、私的旅行は法人の業務を遂行するために行う旅行とは認められませんので、私的旅行の合間の時間に一部業務を行ったとしても、その私的旅行に係る往復の交通費は、法人の業務の遂行上直接必要なものとは考えられず、その従業員が負担すべき費用と認められるため、その往復の交通費を法人が負担した場合には、原則として、その従業員に対する給与として課税する必要があります。
Q2 当社では、例年、国内の観光地に所有する研修施設において、管理職向けの合宿型研修を2日間実施しています。この研修は、管理職のマネジメント能力を短期間で習得させることにより当社の生産性を向上させるために実施しているものであり、当社の業務の遂行上必要なものとして、毎年実施しているものです。
本年については、ワーケーションの一環として、この研修が終了した翌日は休暇を取得し、その宿泊地等の近辺において従業員各人が自由に観光することを推奨することを予定しています。
当社が、その研修に係る往復の交通費を負担した場合、その従業員に対する給与として課税する必要はありますか。
A2 研修終了後、休暇を取得して観光をする場合であっても、その研修に係る旅行が業務の遂行上直接必要なものと認められる場合には、一般的に、その研修に係る往復の交通費については、その従業員に対する給与として課税する必要はありません。 管理職にマネジメント能力を短期間で習得させることにより、法人の生産性を向上させることを目的として実施されるとのことですので、その研修は法人の業務の遂行上直接必要なものと考えられることから、その研修施設への往復の旅行に係る交通費を法人が負担することには合理性が認められますので、その交通費については、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
■ブレジャー
Q3 出張中に私的旅行を組んだ場合の往復旅費はどのように経費処理すべきでしょうか。
A3 業務の遂行上、直接必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行った場合の旅費については、原則、法人の業務の遂行上直接必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等により按分し、前者に対応する部分に係る金額は旅費、後者に対応する部分に係る金額は給与となります。
但し、その旅行の直接の動機が業務の遂行のためであり、その旅行を機会に観光を併せて行うものである場合は(注2)、その往復の旅費(取引先の所在地等その業務を遂行する場所までのものに限ります。)は、法人の業務の遂行上直接必要と認められるもの、つまり旅費として取り扱うこととなります。
(注2)「その旅行の直接の動機が業務の遂行のためであり、その旅行を機会に観光を併せて行うものである場合」に該当するかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等、個々の事実関係に基づき総合的に判断します。
Q4 当社では、従業員に対して国内の取引先等への出張を命じた場合、旅費規程に基づきその出張に係る往復の交通費を支給することとしています。
この度、従業員に対して2日間の出張を命じた際、その従業員より、その出張の翌日に休暇を取得し、その出張先の付近において観光をしたい旨の申立てがありました。当社としても、ブレジャーの一環として、そのような休暇取得・観光を推奨したいと考えています。
当社が、その出張に係る往復の交通費を負担した場合、その従業員に対する給与として課税する必要はありますか。
A4 出張後、休暇を取得して観光をする場合であっても、その出張に係る旅行が業務の遂行上直接必要なものと認められる場合には、一般的に、その出張に係る往復の交通費については、その従業員に対する給与として課税する必要はありません。
なお、その出張に係る旅行が業務の遂行上直接必要なものであるか否かは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定することになります。
<宿泊費用・ワーキングスペースの使用料等について>
Q5 上記のQ4において、業務に係る1日目の宿泊費用及び業務終了後の2日目の宿泊費用を会社が負担した場合、その従業員に対する給与として課税する必要はありますか。
A5 会社が負担する宿泊費用については、その宿泊が業務の遂行上必要と認められるもので、通常必要と認められる金額のものであれば、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
したがって、1日目の宿泊費用については、その宿泊が2日目の業務遂行上必要と認められると考えられるため、その金額が通常必要と認められるものであれば、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
また、2日目の宿泊費用については、その宿泊が、業務終了時間から判断して当日に帰宅することが困難であるなどの事情によるものではなく、3日目に観光をするための宿泊と認められる場合には、その従業員に対する給与として課税する必要があります。
Q6 宿泊先旅館等から、業務をするためのワーキングスペース及びパソコンを借り受けた際の料金を会社が負担した場合、その従業員に対する給与として課税する必要はありますか。
A6 ワーキングスペースやパソコン等を宿泊先旅館等から借り受けた際の料金については、それが業務を行うために必要なものであるのであれば、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
※ブレジャーやワーケーションには様々な就業形態が考えられるため、所得税の課税対象になるか否かについては、個別案件ごとの判断となります。

「新たな旅のスタイル」
ワーケーション & ブレジャー
企業向けパンフレット