企業向け

海士町観光業魅力化協議会

海士町観光業魅力化協議会

 

取組テーマ

人材育成

新規事業創出

地域企業が連携し、地域の観光人材を面的に育成するワーケーション

  • 所在地:島根県隠岐郡海士町
  • 概要:観光人材の確保・育成事業、観光を島の基幹産業として定着させる事業など

ワーケーションに取り組んだ背景/現状

今回の実証事業における目的や背景について

  • 海士町は離島という立地柄、限られた事業者、人材、関係性の中で、多様なキャリアを描いたり、広い視野を得ることが難しいという課題があります。観光人材こそ、他地域へ積極的に訪問して消費者体験を積み、様々な課題やその成功・失敗事例を学ぶことで、新たなサービスを生み出していく必要がありますが、各事業者の人材・資金不足により、人材育成に安定的に投資をすることが難しい状況です。人材育成を個々の事業者のみに委ねるのではなく、協議会が他地域や複数組織と連携して面的に取り組むことによって、離職率の低下、優秀な人材の育成・定着と還流の促進に繋げていくことを狙いとし、令和4年度から観光庁の事業に参画し、観光人材の育成に取り組んできました。昨年は島内での研修が中心でしたが、本年度は私たちが外に出て学ばさせていただく取り組みを行っております。

取り組み内容やコンテンツについて

  • 海士町の課題解決や、新事業の検討のために、参考とさせていただきたい7地域を選定し、宿泊・体験・現地の人材との交流をプログラムに含んだ、人材育成型ワーケーションとして実施しました。受入地域の1つである江津市の有福温泉は、普段研修の受け入れはしていない中で海士町側のニーズをご理解いただき、下見や話し合いを重ねながらプログラムを検討しました。
    有福温泉でのプログラムは、海士町の観光人材の横連携やコミュニケーションを高めることを目的とし、参加対象を観光協会やホテル、飲食店、土産店、旅行会社等、様々な組織の観光人材としたため、全体を取り纏め、現地の滞在や交流、対話を深められるよう、海士町側でファシリテーターとコーディネーターを配置しプログラムを進行しました。有福温泉は海士町との共通点が多く、実際に交通機関を使い、泊まり、食事を体験することで、「海士町だったら…」や「自分達だったら…」と客観的に自地域や今の業務を見直すことができました。また、現地人材との交流では、新たな価値観に触れたり、アイディアを形にするエネルギーを得たりと、様々な刺激を得て、自地域や自身の価値を改めて考える機会が生まれました。

取り組みにおける課題や改善点は?

  • 人材育成型ワーケーションにおけるKGIやKPIの設定が難しかったです。モニターツアーの直後であれば、他地域での学びや人材交流による刺激で、ワーケーションの満足度が高まることは当たり前ですが、それらが人材育成に効果があるかを数値で測ることに苦労しました。客観的な効果を提示することが、各事業者において経営層がワーケーションを導入・推進するかの検討材料になると考えていたからです。
    結果として、ワーケーションがエンゲージメントに効果があったと客観的な数値で実証はできませんでしたが、各事業者の経営層にヒアリングを行ったところ、「新規事業提案」「組織間連携の強化」「従業員とのコミュニケーションの質の向上」「従業員のモチベーションアップ」といった事業効果の実感を得ており、一定の満足度があることが分かりました。ただの視察ではなく、体験や、対話の質を重視した人材交流等を通じて、他地域の取り組みの本質的な価値を深く理解し、また同じプログラムを経験をした仲間が周囲にいて理解を得やすいことも、具体的なアクションを起こしやすい理由として挙げられます。
    すでに一部の事業者では、独自予算で追加の島外研修を実施したり、次年度の事業計画に組み込んだりしています。
    今後は、エンゲージメントの定期的なモニタリングを行いつつ、ワーケーションの効果測定として、新規事業提案等の具体的なアウトプットや、コミュニケーションやモチベーションの向上を検証項目とすることを検討していきます。

今回の取り組みで得られた成果と今後について

  • 観光人材が他地域に学びに行く機会を増やし、現地の人材と繋がり交流を行うことで、海士町の観光の新しい価値を共に創り出す仕組みとして、「観光人材育成・交流促進事業補助金(仮)」を創設いたしました。本事業で抽出した、質の高い人材育成型ワーケーションの要素を参考に、新事業創出や課題解決を目的とした島外研修の経費の一部支援を行い、地域間や事業者間での交流を促進しながら人材育成に取り組んで参ります。

    また、今回のワーケーション事業を通じて繋がることのできた7地域の事業者様とは、観光を通じたまちづくりの実践者同士として、今後もそれぞれの経験や悩みを共有し合い、共に助け合いながら、関係性を育んでいければ大変うれしく思います。普段受入側となることの多い観光現場の人材が、今回、ワーケーションをさせていただく側になり、各地の人材と交流を行うことで、観光を通じて地域のために挑戦したいという共通の思いを持った他の地域との繋がりが生まれたことは、本事業の1番の成果だと感じています。
    ワーケーション先での意見交換がきっかけとなり、具体的な島内外でのコラボレーションイベントやプロジェクトも生まれています。今後も地域一体となって、継続的に他地域との交流を通じた人材育成を進めていくことに、注目いただきたいと思います。

インタビューにお答えいただいたのは:事務局 小島 めぐみさん

海士町の観光業を「離島にいながら、他地域や世界と繋がっている」場所にしていく一つの方法として、地域でワーケーションを推進していく予定ですが、1番の課題は、その財源確保。今後企業版ふるさと納税や観光税等を検討し、安定的に人的資本投資が行えるよう、取り組んでまいります。

ワーケーション導入・推進企業インタビュー

「新たな旅のスタイル」
ワーケーション & ブレジャー
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