「三方よし」近江商人のマインドを体感し実践に繋げる
ワーケーション
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- 設立:2022年1月
- 本社所在地:滋賀県東近江市
- 事業内容:宿泊型研修施設「NIPPONIA 五個荘 近江商人の町」の運営を始めとした、東近江地域の
交流人口拡大、持続可能な開発事業

ワーケーションに取り組んだ背景/現状
ワーケーションに取り組んだ目的や方針について

- 株式会社いろは、NIPPONIA事業を運営している株式会社NOTEと滋賀県東近江市が出資母体となり設立されました。株式会社いろはが運営している「NIPPONIA 五個荘 近江商人の町」は滋賀県東近江市の五個荘エリアにあり、ここは伝統的建造物群保存地区に指定されており、元近江商人屋敷3棟を市が管理運営していた中の1棟だったのですが、2021年にワーケーション主体の宿泊施設として開業しました。
この地区で開業したのは、当エリアが“近江商人発祥の地”として知られ、近江商人が商売を築く中で、丁稚などの人材育成をしてきた歴史・文化があったからです。地域資源も豊富で、ここでのワーケーションは企業の研修や人材育成に有意義なのではないか、ワーケーションの参加企業が継続して利用することで地域の人材育成、持続可能な観光まちづくりの推進も図れるのではないかと考え、取り組みを進めました。
取り組み内容やコンテンツについて

- これまでもワーケーションに限らず、企業様の利用は受け入れてきましたが、
ワーケーション参加企業の滞在目的は、人材育成や商品開発、新規事業の創出など多種多様です。それらのニーズに応えるべく、事前にしっかりとヒアリングを実施し、私どもの持っている人的ネットワークを駆使して地域交流や各種プログラムを造成することを心がけました。また、ご利用いただくにあたって、必ず近江商人発祥の地であることをしっかりとガイドしています。当時、近江商人たちがどのように考え、近江商人屋敷がどのように使われていたのかを説明することで、いつもの会社とは違う空間をより深く体感してもらえるように工夫しています。
例えば、以前お越しいただいた企業に、若手の人材育成と新規事業の創出をワーケーションの目的とした服飾メーカーがありました。事前ヒアリングの際、工場で廃棄されるウール端材を堆肥化する新規事業を進められていることを伺いましたので、当施設のある東近江市は農業が盛んなことから、地域プレーヤーとしてブドウ農家との交流機会を図るガイドツアーをプログラムとして提案をさせていただきました。その後、農家との交渉が進み、堆肥化したウールを来春から農地に使用するという話が進んでいます。
た人材育成はワーケーションを受入れる地域も課題としており、企業訪問を受入れた工場では、悩みや情報の共有、異業種の同世代との交流を通じて、仕事への向き合い方を見つめ直すいい刺激になったとの評価もいただいております。こうした売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」の近江商人の精神に基づいたワーケーションが展開できるのが、他の地域にない最大の特徴となっています。
取り組みにおける課題や改善点は?

- 当施設は一棟貸しの古民家であるため、各部屋の間仕切りの壁が少なく、プライバシーの確保が難しい間取りという課題があります。その点については、メインとなる「外村宇兵衛邸」の他に「離れ」や「蔵」も有効に利用していただくことで、企業のニーズとゲストのモチベーション向上につながるよう努めています。
施設の外に目を向けると、伝統的建造物群保存地区であるため、道幅が狭く水路もすぐそばを流れているので、「自動車の運転が怖い」という意見がありました。そこで自転車を積んで電車に乗る「サイクルトレイン」のガイドツアーを企画したところ、体験したことがない新鮮さや、新たな交流が生まれるなど好評なため、滞在を有意義にするための二次交通の代替えになり得るのでないかと、可能性を探っているところです。
また、五個荘にはまちの景観維持という課題があります。来ていただいた企業と連携してできることを模索していけたらと思いますが、地域課題は短期のボランティアレベルで解決できるものでは決してありません。解決できるまでやり続ける覚悟が地域にも関係企業側にもあることが問われます。どうコミットしていくのか工夫が必要ですし、プロジェクトの継続、地域経済の循環、参加企業の収益など、多角的かつ慎重に検討していきたいと思います。
今回の取り組みで得られた成果と今後について

- 参加いただいた企業からは「合宿型の宿泊施設として最適」「いいアイデアが出やすい」「仕事とプライベートのオン・オフの切り替えがしやすい」「リフレッシュできる」という嬉しい声をいただいております。また、サイクルトレインを活用したガイドツアーや、参加企業が開発したアプリを活用した地域イベントの開催など、地域住民との交流も盛り上がりをみせています。
目指しているのは、「三方よし」の精神に基づいた近江商人から学び、近江商人を体現できるビジネス重視のワーケーションです。そしてサーキュラーエコノミーと「三方よし」の近江商人の精神は親和性が高く、その近江商人の精神が色濃く残る景観や町文化、現在版近江商人といえる地域プレーヤーから学び、体感できる環境がここには用意されています。古民家ワーケーションは各地にありますが、近江商人の叡智や文化を学び、体現できるところは他にありません。それを最大限PRして、“近江商人発祥の地”というブランド強化を図りながら、ワーケーションを受け入れる地域として推進していきたいと思います。