企業と地域の期待値調整を図るインターラクティブワーケーション
-
- 設立:2018年4月
- 従業員数:17名
- 本社所在地:岩手県釜石市
- 事業内容:
地域創生事業(釜石市内の5か所の観光施設の管理、イベント運営)
旅行マーケティング事業(観光プログラムの開発・運営)
地域商社事業(地域産品のブランディングと販路拡大)

ワーケーションに取り組んだ背景/現状
今回の取り組みにおける目的や方針について

- 釜石市は、地域産業の衰退や、交通サービスの低下など地域課題が表面化してきている中、交流人口の増加を図るために企業単位でのワーケーションを推進していますが、来訪者(企業)の取り組みと地域のニーズにギャップを感じていました。例えば「観光」は参入しやすい分野かもしれませんが、私たちは「どこでもできるもの」は求めていません。企業側が事前にきちんと地域の現状や課題を理解し、地域から質の高い提案を求められている状況をご理解いただくことができれば、より研修効果が高まると思います。そこで私たちは一方的ではなく双方向の視点を大切にして企業と地域のギャップを解消し、良好な関係構築へつなげることを目的とした「地域課題解決に資するフレームワーク開発」の取り組みを進めました。
取り組み内容やコンテンツについて

- 今回は関西大学松下教授、オカムラ様ご協力のもと、来訪者向けに「釜石ワーケーションカルテ」を作成しました。企業の細かなニーズやニュアンスを掴むためのアンケートを作成し、「どういったワーケーションをしたいのか」「今回のワーケーションで取り扱ってほしいテーマは?」などを確認しています。受け入れ地域としては「釜石が提供できるもの」をできるかぎり詳細に項目として挙げ、ワーケーションプランを作る上での基礎資料としております。
また釜石のワーケーションは「人」を大事にしていますので、「人に会う」をテーマにしたWebページを制作しています。地域からの情報発信を強化する目的で、地図と事業者情報を紐づけ「ここにはこんな課題がある」と紹介したプログラムマップのほか、ワーケーションの問い合わせフローやアンケートフォームを用意し、情報収集もできるようにしています。
取り組みにおける課題や改善点は?

- フレームワーク作成では何から手をつければ分からなかったため、まずは松下教授、オカムラ様と企業へのアンケート項目を協議した上で、地域の事業者と話しをしました。その結果、私たちも受け入れる地域事業者の体制やニーズを把握できていなかったことが分かり、「釜石ワーケーションカルテ」の作成や、Webサイトに掲載する情報収集のためのインタビューを通して、地域事業者の取り組みを改めて吸い上げることができました。ワーケーションに関する地域事業者の“生の声”を聞けたのは大きな成果です。なかには「『ワーケーション』という位置付けでなくても来てくれるだけでありがたい」という意見もありましたし、来訪者の地域課題における認識のズレがなく合致している点もあり、ニーズの“整理”ができたと感じます。
ほかにも、林業ひとつにしても「どのような思いで林業をやっているのか」など、事業の向こうにある人々の思いを知ることができ、理解を深められました。掲載する情報に厚みをもたせて来訪者により良い情報を提供できるようになったことで、取り組みの目的である「より良い関係構築」できていくと考えています。
今回の取り組みで得られた成果と今後について

- 大きな成果はワーケーションを通した「来訪企業のニーズ」と「釜石市のコンテンツ」の整理・可視化ができたことです。これまでは企業による地域への提案が意欲的に取り組みたいものでないこともありましたが、今回実施したことで「首都圏の企業が地域の現状や取り組みを理解していただくことで、今後共に取り組んでいきたい提案をしていただけた」という発見がありました。このように、地域と企業が共に地域を創っていけるワーケーションの「一歩目」となるカルテを作ることができたことは成果のひとつと言えると思います。引き続きカルテを通して「実施前」「実施中」「実施後」を見える化することで双方のニーズや課題をクリアにし、何回でも来ていただけるようなワーケーションを創っていきたいと思います。
今回の取り組みを通して宿泊数や市内における消費額も伸びています。現状は、企業が釜石に来て私たちの話を聞いていただいた上で、「これから関わりを持っていきたい」という意思を示してもらう「フェーズ1」ととらえております。企業のなかには漁業とIoTの結びつきに興味を持ち、漁協へ提案したところも出てきており、これから次のステップへ進んでいくというところです。本当の意味での「地域産業の融合」を目指し、産業発展に資する満足度の高いワーケーション実現し、ひいては共創社会の実現につながることを期待しています。