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新宿のビル群が消えるARやメタバース花火大会をプレゼン!PLATEAU初のライトニングトーク開催。

「3D都市モデル PLATEAU LT 01」レポート

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貝塚 怜
編集:
北島 幹雄 (ASCII STARTUP)
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3D都市モデル PLATEAU LT 01、開催

国土交通省は6月24日、ライトニングトークイベント「3D都市モデル PLATEAU LT 01」を開催した。

スマートシティをはじめとしたまちづくりのDXを進めるため、基盤となる3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を進めるプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」。本イベントは、そんなPLATEAUをさまざまな領域、分野の人たちに、実体験や活用術を交えて、5分間でプレゼンしてもらうという内容だ。

テーマは「私とPLATEAU」と題して、13名の登壇者が思い思いのプレゼンをしてくれた。

中止になった花火大会をメタバースで再現

アバターに浴衣を着せて、よりそれらしく

銀行マンのtatsuya1970氏は、2021年の9月に第72回呉の夏祭り「会場花火大会」が中止になったことをきっかけに、バーチャル花火大会の開催を発案。

販売サイトで「Noriben Fireworks」という花火のパーティクルを購入し、Cluster上に埋め込んだPLATEAUのデータ上でバーチャルの花火大会を実施した。
当初、夜をイメージして真っ暗にすると、ゴーストタウンのような見た目になってしまったので、灯りのパーティクルを適用し、“人の営み”が連想される空間を作り上げた。

花火の打ち上げは、Cluster上で自動化。時折、tatsuya1970氏自身がVJのように花火を乱発することで、よりリアルな花火大会を実現した。好評だったため、2022年7月30日にも第二弾の開催を予定しているという。

当初の予定と同じ時間帯に、メタバース空間で開催

PLATEAU内の建築物を使用してOBJ形式で埋め込む

AIエンジニアのかたわら、メタバース空間を趣味で作っている

れごん氏は、本業のAIエンジニアのかたわら、趣味で衛星データや地図データなどを活用してメタバース空間を作っている。

シンボリックな建築物については、自力で作成するのではなく、すでにPLATEAUのデータに含まれている情報をOBJ形式で取得して埋め込むことを思いついたという。データの作成に当たっては、ネット上で公開されているライブラリーを利用し、CityGMLタグを手作業で探し出し、変換するという手法を用いた。

ただし、左手系で作られた座標を右手系に変換する(3D空間内での座標系の向きを変える)作業が必要になることに気づき、その点に関しては手間がかかったとも話す。座標体系が異なっても、システム上で変換できるような仕組みが構築されていれば、より多くの環境でスムーズに活用できるのではないかと話した。

3次元データを扱う際には、座標体系の違いという問題がある

建物を消すという逆転の発想

藤原龍氏はホロラボで多数のプロジェクトに関わっている

藤原龍氏は、株式会社ホロラボで、mixpace/SIAR(空間情報技術)チームに所属している。

同氏は趣味でもARやVRコンテンツを制作しており、首里城の復元プロジェクトや、川越市の街並みのVR化に携わっている。最近では、PLATEAUを用いてDiminished Realityのプラットフォームを構築。これは、新宿のビル群をAR空間上に再現し、タブレット上の操作でビルを消すことができるというもの。

具体的には、実際の街並みにタブレットのカメラを合わせると、VPS(ビジュアル要素を起点とした位置合わせ)で位置を推定し、デジタルツインのデータと現実の風景が重なり合う。任意のビルをタップすることで、現実の空間を参照しながら、「そのビルがない状態」をARで再現する。

デモの状態でもかなり高い精度で動作していたので、実用化されれば、都市設計や開発の分野に応用できそうなアイディアだ。

ARで何かを付加するのではなく、消すという逆転の発想が面白い

PLATEAUでバーチャル地域コミュニティーをリアルに

横浜のランドマークのひとつである「大さん橋」

長谷川孝二氏は、地域コミュニティーの集合場所を、PLATEAUとClusterの組み合わせで再現した事例を紹介。

横浜で活動している地域コミュニティー「yokohama.unity」を2019年の11月に立ち上げたが、そこから間もなくコロナ禍で集まることが難しくなった。そこで、横浜のランドマーク「大さん橋」をメタバース上に再現し、そこを集会場にすることを思いついたという。

大さん橋をメタバース化するにあたって、当初は天球画像データを活用して遠景を作成していたが、天候が撮影時の曇天に固定されてしまったり、下半球のデータがなかったため、移動範囲を限定し、自由度が下がってしまったりといった課題があった。

2021年の5月にPLATEAUで横浜市のデータが公開されたことで、さっそくダウンロードし、水面や余分な頂点の座標を削除するといった加工を行なったうえで、メタバース空間に適用。結果的に、PLATEAUを元にしたリアルな遠景や、メタバース上で動き回れる範囲の拡大に成功した。

また、「BlenderとPythonでコードを組むと、一括処理が楽」だと、おすすめのデータの作成方法にも触れた。

遠景のランドマークも見え、すっきりとした晴天の魅力的な空間が出来上がった

発表された多種多様なPLATEAU活用術

白井直哉氏は、PLATEAUをUnityで扱う際のデータの取り扱いや、変換の手法について、まとめておくと便利な情報をデータベース化した
株式会社リッチロードの不動産鑑定士 松田幸一氏は、ブラウザベースのWebアプリ「PLATEAU VIEW」による、複雑な知識なしで建物の情報、周辺情報、災害情報などを簡単に表示できることを示した
ひさだともゆき氏は、携わった「みんキャプ」について紹介。PLATEAU上に、フォトグラメトリーやLiDARデータを埋め込み、その3Dデータとしての面白さを競うコンテストだ
Shunya Suzuki氏は、屋外広告のシミュレーションといった分野でPLATEAUを活用することを目指し、株式会社ヘキメンを立ち上げた
株式会社シン技術コンサルの志村将直氏は、横浜市の「舞岡熊之堂遺跡」をテーマとした動画コンテンツの作成にPLATEAUを活用
東京理科大学の西田研究室ら合同研究チームでは、一般ユーザーや建築学生が日常的にPLATEAUを使うことをテーマとした研究を進めている。今回は、都市で流れている音楽の情報をPLATEAUに埋め込み、その情報から行き先を決めるといった使い方などを提案した(YouTubeで公開されている映像はコチラ
株式会社Phychic VR LabのエンジニアKENTO氏は、ランドマーク単位でユーザーが任意に作成したARを、PLATEAUと組み合わせて、情報量の高いAR表現を実現するというアイディアを紹介。サービスとしてリリースする計画もある
学生で、防災を対象とした研究をする松本氏。PLATEAUを災害時の救助に応用すれば、ビルの高さや容量も把握でき、被害の想定をより適切に行えると説明した
オフィスビル情報のプラットフォームを開発する株式会社esiteの齊藤佑太郎(john)氏は、自社で保有しているビル情報の緯度・軽度のデータと、PLATEAUのポリゴンを紐付け、屋根の面積と基準階面積(その建物における標準的な平面=フロア面積)との関係を比較する用途に用いた

個人、法人、行政機関を問わずに、その活用が拡大しているPLATEAU。国土交通省では、さらなる認知拡大や活用の幅を広げるべく、ライトニングトークのほか、ピッチやハッカソンなどを含む、多数のイベントを企画している。集大成となる「PLATEAU AWARD 2022」では、3D都市モデルを活用したサービス・アプリ・コンテンツ作品コンテストを募集し、優勝者には賞金50万円も進呈される予定だ(詳細については、PLATEAU NEXTのウェブサイトを参照)。

なお今回のライトニングトークイベントは、8月6日に第2回の開催が決定している(参加申し込みはコチラ)。