CEATEC2024、Smart City Expo World Congress 2024に出展しました
Project PLATEAUのスタートから5年が経過し、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化に関する高い技術やナレッジが培われてきた。2024年度のPLATEAUは、データカバレッジのさらなる拡大や、より多様なユースケースやソリューションの創出、関連技術の普及を目的とし、CEATEC2024、Smart City Expo World Congress 2024に出展した。本稿では、各イベントでの発信内容をレポートする。

CEATEC 2024
2024年10月15日(火)から10月18日(金)の4日間、千葉県千葉市の幕張メッセで開催されたデジタルイノベーションの総合展であるCEATEC(Combined Exhibition of Advanced Technologies、通称シーテック)2024に国土交通省都市局として出展した。
出展概要
今回、国土交通省都市局として、「あらゆる産業・業種のパートナーとともに Society 5.0 の未来社会を体現する『共創』エリア」であるパートナーズパークに出展し、Project PLATEAUに参画する11企業(※共同提案体を含む)と共同展示を行った。Project PLATEAUのブランドカラーをベースに配色したブースでPLATEAUとしての一体感を演出しつつ、PLATEAUで開発してきた3D都市モデルのユースケースを紹介した。

PLATEAUブースの展示内容
出展企業は、エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社・株式会社日建設計・株式会社日建設計総合研究所共同提案体、株式会社キャドセンター、株式会社シナスタジア、株式会社竹中工務店・株式会社センシンロボティクス・アダワープジャパン株式会社共同提案体、株式会社福山コンサルタント、株式会社フォーラムエイト、株式会社リアルグローブ(五十音順)。
国土交通省都市局のコーナーでは、Project PLATEAUのデータ整備状況や効率的なデータ整備を実現するための仕組み、多様なユースケース開発事例、オープンデータ化の取り組みなどについて紹介。来場者の体験コーナーでは、PLATEAU VIEWでの3D都市モデルの表示、LOD(Levels of Detail:3D都市モデルの詳細度)ごとの表示に切り替える操作などを実施した。

出展した企業と展示題目の一覧は表1の通り。

エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社・株式会社日建設計・株式会社日建設計総合研究所共同提案体は、都市開発や地下インフラの維持管理業務の効率化を目的として地下埋設物データの活用と推進を目指すPLATEAUユースケース「地下埋設物データを活用した都市開発DX」を展示した。

株式会社キャドセンターは、都市全体の開発余地を可視化可能なPLATEAUユースケース「容積率可視化シミュレータ」をはじめ、水害時の避難体験VR「玉名市3D避難シミュレーションVR」、ゲーム型シティプロモーションアプリ「鉾田市ほこまるGo!」、エリア単位の安全・安心や利便性向上を可能とするデジタルツインプラットフォーム「バーチャル竹芝 エリアマネジメントのデジタルツイン実証実験」、「REAL 3DMAP Viewer」を展示した。

株式会社シナスタジアは、3D都市モデルを活用して地方公共団体における景観計画の策定・協議を促進することを目指すユースケース「景観まちづくりDX」、またデベロッパーを対象とし不動産販売成約率・生産性の最大化を促す自社開発システム「不動産販売DX ZEKUU」を中心に展示した。

株式会社竹中工務店・株式会社センシンロボティクス・アダワープジャパン株式会社共同提案体は、「3D都市モデルとBIMを活用したモビリティ自律運航システム(車両&ドローン)」のPLATEAUユースケースについて、無人搬送車両の模型、ドローンおよび追加アタッチメント(ELAS)実機とともに展示した。

株式会社福山コンサルタントは、災害時の有効な避難計画策定と防災意識向上施策による安心安全なまちづくりの実現を目指すユースケース「住民個人の避難行動立案支援ツール」、被災状況の早期把握と羅災証明書発行の効率化による早期復興が実現するまちづくりを目指す「人工衛星観測データを用いた浸水被害把握」を中心に展示した。

株式会社フォーラムエイトは、自社開発ソフトウェアであるUC-win/RoadとWebVRプラットフォームであるメタバニアF8VPSを基盤技術として活用した事例として、都市計画や環境・エネルギー、交通・モビリティ、観光・防災など幅広い分野のユースケースを紹介した。

株式会社リアルグローブは、「中小企業イノベーション創出推進事業」(SBIRフェーズ3基金事業)で実施している「3D都市モデル自動生成・自動更新システムの開発及び実証」について、特にPLATEAUのデータカバレッジ拡大に寄与しうるAIツールを紹介・展示した。

トークステージでの講演概要
会期初日の10月15日(火)には、パートナーズパーク内に設けられたトークステージにて、国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課企画専門官の十川優香氏が「Project PLATEAUが実現する都市のデジタルツイン」と題した講演を行った。PLATEAUのデータ整備とその活用事例であるユースケース、関連ツール開発などの取り組み、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化が自律的に発展していく「エコシステム」構築に向けたビジョンについて幅広く紹介しつつ、2027年度に500都市でのデータ整備を実現するという目標に向けて、地方自治体における3D都市モデル整備等や民間サービス実装等への支援を拡充するという方針を示した。会場は150名を超える聴衆で満席となり、立ち見が出る盛況ぶりだった。


まとめ
◾️ 来場者数、来場者傾向

会期4日間のCEATEC2024登録来場者総数は、延べ11万人に達した(CEATEC事務局発表)。PLATEAUブースには1000人を超える様々な業種・年代の来場者が訪れた。図4に示すとおり、業種別では住宅・建設・不動産系の来場者が最も多く、次いで情報処理・情報サービス、学生の来場が多かった。PLATEAUではまちづくりや防災など、住宅・建設・不動産分野に直接的に関連するユースケースが数多く開発されているほか、不動産分野におけるビジネスアイディア・ソリューション募集なども展開されており、高い関心を寄せられていることがうかがえる。デジタル・トランスフォーメーションの実現やユニークなエンターテイメントの提供に向け、個々のユースケースで様々なソフトウェアやツールの開発が進められていることも、情報処理・情報サービス分野の来場者が多かったことの要因の一つと言える。そのほか、学生を中心とした若年層もPLATEAUに対して興味を持っている。
PLATEAUブース来場者の反応を整理した結果を図5に示す。会期後、共同出展した企業を対象に行ったアンケートからは、ブースを訪れた来場者のうち約6割が既にPLATEAUを知っていたという結果が得られ、実際にデータやビューワを利用したことがあるという声もきかれた。利用経験がある既存ユーザの反応として、「国が主導しているプロジェクトであるため品質の良いデータを無料で使える」、「今後の展開にも期待できる」、といったポジティブな声が多かった。しかし、「データが重い」といった技術的な課題や、「欲しい地域のデータが整備されていない」といったコメントもあった。一方、CEATECで初めてPLATEAUを知ったという非ユーザの反応は、「災害時に活用できそう」、「使ってみたい」という好意的な声も多くある中で、「初めて聞いた」、「活用方法がわからない」、といった率直な意見もうかがえた。今回共同出展した企業の展示ユースケースから、PLATEAUの活用方法の糸口を探っている来場者も見られた。

◾️ 分野によらない多様な来場者へのアプローチ
今回のCEATEC出展では、PLATEAUを知らない・普段関わりがない方々との幅広い交流が実現した。トークステージでの講演後も、ブースには多くの人が訪れていた。共同出展企業からも、個別に出展するよりも幅広い業種の来場者とコミュニケーションが可能となり、より多くのネットワーキングを実現できたという声があった。本出展での来場者との交流をきっかけに、今後コミュニティとしてのさらなる裾野の拡大に期待したい。
◾️PLATEAUブース出展企業
株式会社シナスタジア
株式会社福山コンサルタント
株式会社竹中工務店
アダワープジャパン株式会社
株式会社センシンロボティクス
株式会社フォーラムエイト
株式会社キャドセンター
エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社
株式会社日建設計
株式会社日建設計総合研究所
株式会社リアルグローブ

Smart City Expo World Congress 2024
2024年11月5日(火)から7日(木)までの3日間、スペイン・バルセロナのFira Barcelona Gran Viaにて開催されたスマート・シティに関する世界最大級のイベント であるSmart City Expo World Congress 2024 (スマート・シティ・エキスポ・ワールド・コングレス2024、以下SCEWC)に出展した。主な参加者は、政府機関、行政機関、スタートアップを含む民間企業、大学、研究機関関係者で、展示会場ではスマート・シティや都市DX、デジタルツインはもちろんのこと、新モビリティ関連の技術など、さまざまな事業や取り組みが出展・紹介された。
出展概要
PLATEAUブースは、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)が企画・運営を行う「日本パビリオン」内に国土交通省都市局として出展した。SCI-JapanはSCEWCを主催するFira de Barcelonaとの間で日本パビリオンの企画推進などを行うための戦略的パートナーシップを締結している。

PLATEAUブースの展示内容
Project PLATEAUに参画し、3D都市モデルを活用したソリューションの国際展開を企図する企業4社(共同提案体含む)として、インフォ・ラウンジ・サイバネットシステム・山手総合計画研究所共同提案体、株式会社ホロラボ、株式会社ユーカリヤ(五十音順)が出展した。

インフォ・ラウンジ・サイバネットシステム・山手総合計画研究所共同提案体は、直感&体感型都市デザインツール「Xdiorm」を開発・提供している。展示ブースでは、専用のデバイスの上で駒を動かすことでVR映像をリアルタイムで操作し都市の景観シミュレーションを体験デモを展示。来場者の目を引き付けていた。

株式会社ホロラボは、Webベースのデジタルツイン基盤システム「torinome」を開発。PLATEAUで整備・提供される3D都市モデルをベースに、多様な形式のGIS、画像、動画、3Dモデルを3Dの地球儀上に重畳できる。展示ブースでは、海外の来場者と具体的な導入に向け協議する姿も見られた。

株式会社ユーカリヤが開発するWebGISプラットフォーム「Re:Earth」は、PLATEAUの3D都市モデルデータをWebで可視化するブラウザベースのWebアプリケーション「PLATEAU VIEW」の基盤として活用されている。展示ブースでは、浸水シミュレーションの可視化など、PLATEAUの3D都市モデルデータを活用した事例を分かりやすく紹介していた。

トークステージでの講演・パネルディスカッションへの参加
展示ブースでの展示の他に、日本パビリオン内に設置された共催シアターと呼ばれるプレゼンテーションスペースでの発表およびコングレスのセッションへの登壇を通じて情報発信した。
共催シアターでは、冒頭で国土交通省 都市局 国際・デジタル政策課企画専門官の十川氏がPLATEAUの取り組みの全体像を紹介した後、回ごとに、株式会社ユーカリヤ山本氏、インフォ・ラウンジ株式会社小林氏、株式会社ホロラボ伊藤氏がそれぞれ登壇・発表を行った。いずれの発表においても、聴講を目的とした来場者だけでなく、日本パビリオン近くを偶然通りがかった来場者も数多く立ち止まって耳を傾けていた。

コングレス(Congress)は、SCEWCにおいて展示と同様に中核をなすイベントであり、世界各都市からの参加者によるディスカッションが数多く実施される。複数のテーマに沿ったトラックが並行して実施された中、デジタルツインをキーワードとし、「デジタルツインを用いた都市のレジリエンス強化」(”Empowering Urban Resilience through Digital Twins”)と題された合同パネルセッションに、PLATEAUを代表して国土交通省十川氏が登壇した。計4名の登壇者がそれぞれの取り組みを紹介する時間が設けられ、十川氏は日本におけるデジタルツインの取り組みとしてProject PLATEAUを紹介した。

まとめ
◾️ 来場者数、来場者傾向
今年で14回目の開催となるSCEWCは、世界130ヶ国以上から25,771人の来場者があり、過去13年間で最も規模の大きい会となった(SCEWC事務局発表)。
出展期間を通して、PLATEAUブースは世界各国からの来場者でにぎわった。開催地スペインをはじめ、ドイツやオランダなどの欧州各国のほか、サウジアラビア、また韓国や中国などアジアからの来訪者も一定数あった。来訪者を分野別に見ると、スマート・シティ(Smart City)の関係者が一番多く、次にIT / エンジニア(IT / Engineering)、研究・開発・イノベーション(R&D&I)、ビジネス開発(Business Development)が多かった。3D都市モデルを活用するエンドユーザだけでなく、開発者や新規事業の創出に関わる経営者からも高い関心が寄せられていることが分かる。来場者からは、3D都市モデルの作り方やビジネス展開可能なユースケースについてなどの質問もあり、関心を持つ分野の幅広さがうかがえた。

■ Project PLATEAUは世界にどう評価されたか
今回のSCEWC出展でのブース来場者の関心としては、ソフトウェアやシステムのみならず、データがどのように作成・整備されているのか、その活用事例であるユースケースについてより詳しく知りたいとの声もあり、日本で構築されたPLATEAUのエコシステムに高い関心が集まっていた。またCEATEC同様、複数の企業で共同出展したことにより、プロジェクト規模の大きさや裾野の広がりが国際的にアピールできていた。日本発のオープンデータプロジェクトとして、世界での存在感を高めていく可能性が大いに感じられた。

◾️関連サイト
PLATEAU(英語サイト)
◾️PLATEAUブース出展企業
インフォ・ラウンジ株式会社
株式会社ホロラボ
株式会社Eukarya
◾️日本パビリオン主催
一般社団法人スマートシティ・インスティテュート