uc20-023

ゲーミフィケーションを通じた地域の魅力発信

実施事業者株式会社NTTドコモ
実施場所東京都中央区 銀座 / 東銀座エリア
実施期間2021年3月
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「バーチャル銀座」を舞台として、現実の銀座と連動したエンターテインメント・コンテンツを提供。ゲーミフィケーションを通じた現地訪問への関心喚起、地域活性化を目指す。

実証実験の概要

新型コロナウィルスの世界的な蔓延により「まちあるき」などの活動が制限を受ける中、バーチャルな都市空間において地域の魅力を発信し、地域の活力を取り戻す手法が模索されている。

今回の実証実験では、3D都市モデルを活用して構築した「バーチャル銀座」を舞台に、ゲーミフィケーションを通じた回遊体験の提供価値を検証する。フィジカル空間と連携したコンテンツを「バーチャル銀座」で提供することで、多様な文化と歴史をもつ銀座の魅力を発信し、地域の活性化を目指す。

実現したい価値・目指す世界

新型コロナウイルス感染症などを契機として、消費者の思考・行動や価値観は変容しつつあり、あらゆるもののオンライン/デジタル化が加速している。こうした潮流の中でNTTドコモでは、社会的課題を解決するデジタルソリューションの先行的な研究・開発を推進しており、その一環として自分自身の3Dアバターをスマートフォンで生成し、バーチャル空間を周遊する技術の研究開発を進めている。

今回の実証実験では、3D都市モデルを活用して「バーチャル銀座」を構築し、ユーザ自身の3Dアバターで街全体をダイナミックに駆け回る”パルクール”によるゲーム体験を提供することを通じて、銀座の歴史・文化に触れながらその魅力を発見する体験を提供する。現実の銀座と連動したコンテンツやユーザ同士でのコミュニケーションを通じて、これまで銀座と接点がなかった人々の現地訪問への関心を喚起し、地域活性化につなげることを目指す。

対象エリアの地図(2D)
対象エリアの地図(3D)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

3D都市モデルを活用して構築した「バーチャル銀座」を舞台に、ゲーミフィケーションを通じた回遊体験を提供するPCアプリを開発した。
バーチャル銀座では著名な文化・歴史スポットを再現し、銀座の新たな魅力・価値を感じるとともに、実際に現地を訪問したくなる仕組みを用意した。また、ゲーミフィケーションとして建物の上などをパルクールのダイナミックな動きで駆け巡る非日常的な体験や、複数ユーザーでコミュニケーションを取りながらパルクールのレースを楽しむ体験、文化・歴史スポットを周遊してアイテムを獲得する体験など、バーチャル空間特有の回遊体験を実現した。

実証実験では、このPCアプリを4日間、延べ40人の被験者に体験してもらい、3D都市モデルを用いたバーチャル空間の回遊体験、ゲーミフィケーションの効果などの評価を行った。

現実の銀座と連動した場所やコンテンツなども取り入れ、銀座に実際に⾜を運ぶ動機づけを⾏った。

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験により、アイテム獲得やパルクールなどのゲーミフィケーションを用いることでバーチャル空間における回遊体験の価値を向上させ、様々な場所を回遊するきっかけを生むことが明らかとなった。またバーチャル空間での回遊体験を通じて銀座の現地訪問への関心を喚起する可能性があることも示唆された。

システムの開発面については、3D都市モデルを活用することで街の構造や建物の位置関係などをバーチャル空間上で精緻に再現することが容易になり、全国の都市も銀座と同様にバーチャル空間においてスムーズに再現できる可能性が明らかとなった。ただし、LOD2に用いられる建物のテクスチャについては、解像度が低い部分が多く見受けられ、LOD2の建物テクスチャをゲームに流用することは難しいという課題があった。

またバーチャル空間における著作権や意匠権について、建物等をバーチャル空間に再現するにあたって、建物の所有者や地権者に対して許諾を得る範疇が明確となっておらず、今後は法制度の整理が必要であると考えられる。

3D都市モデルを活⽤したバーチャル銀座を構築。建物の上を駆け巡る非⽇常的なアクションなどを交え、銀座の街を回遊できる空間となっている。
ユーザ同⼠の連携でポイント追加するなど、コミュニケーションを促進する要素も⽤意した。
ユーザ同⼠の連携でポイント追加するなど、コミュニケーションを促進する要素も⽤意した。
3D都市モデルを活⽤したバーチャル銀座を構築。建物の上を駆け巡る非⽇常的なアクションなどを交え、銀座の街を回遊できる空間となっている。

参加ユーザーからのコメント

・バーチャル都市を走り回るという非日常の体験が楽しかった
・銀座の名所の歴史を知ることで、機会があれば実際に銀座に行きたいと思った
・買い物や食事、観劇など、お店や施設に入るとサービスをバーチャル上で疑似体験できるようになるとより楽しめると思う

今後の展望

実証実験の結果を踏まえ、バーチャル空間上での非日常的な体験やゲーミフィケーションを起点とし、イベント、観光、ショッピング、広告などの幅広いコンテンツを取り揃えたバーチャル都市の構築を検討する。また、建物のテクスチャや許諾に関する整理といった課題についても今後対応を進め、銀座にとどまらず様々な都市で同様の取り組みを行い、現地訪問への関心を喚起して地域活性化につなげることも検討する。

今後の検証ポイントとして、幅広いコンテンツをバーチャル空間上に取り揃えることでユーザーが日常的に利用するサービスとして確立するとともに、バーチャル空間での都市空間表現や情報コンテンツの充実などにより、ユーザーの現実世界での行動へのフックを設計・検証していくことが肝心である。

リアルアバターと3D都市モデルによるリアル/バーチャルが融合した体験にも今後着目し、バーチャル空間での体験から現実の都市を訪れるきっかけを作るなど、バーチャル空間を活用した様々な取り組みが実現できると思われる。バーチャル空間に再現した建物オーナーやテナント企業に出店していただくほか、多くの外部企業に対して店舗出店や広告掲出をオープン化してマネタイズを行うなど、様々な取り組みを今後検討していく。