開発許可のDX v3.0
実施事業者 | アジア航測株式会社 |
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実施協力 | 千葉県木更津市 / 長野県茅野市 |
実施場所 | 千葉県木更津市 / 長野県茅野市 |
実施予定 | 2024年10月〜12月 |
都市空間の複雑な情報を、3D都市モデルをベースに統合管理。開発許可手続きの事前相談から開発許可申請までワンストップで実現し、行政事務を効率化する。
本プロジェクトの概要
市街地等において一定規模以上の開発を行う場合、都市計画法に基づく開発許可が必要となる。2022年には全国で19,746件の開発許可が行われ(※)、開発許可の手続きまでに必要となる事前相談・事前協議は、さらに数倍の件数を発生している。開発許可における審査項目は多岐にわたるため、事業者は多くの窓口を訪問する必要があり、行政職員は多数の相談対応、事業者は時間と手間を要し、双方大きな負担となっている。
※ 開発許可件数・許可面積(mlit.go.jp)
本プロジェクトは、2023年度に開発した「開発行為の適地診断・申請システム」を基礎として、事前相談の情報を引継ぎ、開発行為の事前協議手続きや、公共施設管理者との都市計画法32条協議、そして29条に基づく開発許可までの手続きをワンストップで実現するための機能拡張を行う。開発許可事務を行う地方公共団体において、開発許可主管部署の管理負担軽減、事業者と行政各課の協議効率化による審査期間短縮を実現し、行政サービスを向上するソリューションとして社会実装させることを目指す。
実現したい価値・目指す世界
開発許可制度は、1968年に市街地が無秩序に拡散することを防ぐために制定された。市街地等において一定規模以上の開発を行う場合、都市計画法に基づく開発許可が必要となる。制度開始以来、全国では概ね年間2万件前後の許可が行われてきた。開発許可に必要な事前相談は、さらに数倍の件数が発生していると考えられる。
審査項目は多岐にわたることから、事業者は多くの窓口を訪問する必要があり、相談・申請を受ける行政側は、膨大な情報を整理した上で検討・対応を行っている。そのため事業者・行政職員双方の事務負担となっているほか、相談から開発許可が下りるまでの時間がかかることも課題となっている。
2022、2023年度の実証では、様々な都市空間情報を標準化された3D都市モデル(CityGML)に統合し、「開発行為の適地診断・申請システム」として開発許可手続きにおける「事前相談」にフォーカスした機能を開発し、試験運用を行った。これにより事業者は、開発行為に必要・不要な手続きの概要を、根拠となる地図情報と合わせてシステムから取得できるようになったほか、窓口で行っていた開発行為の事前相談のオンライン完結が可能となり、市役所窓口への訪問調整の手間や各課との協議時間の削減を実現した。行政職員としても、突発的な窓口相談対応を削減し、オンラインで受け付けた相談内容をまとめて回答する時間を設定できる等、業務効率化の可能性を見出すことができた。
一方で、開発許可手続き全体としては、事前相談後に必要な協議への対応、「公共施設管理者との32条協議」(都市計画法32条)、「開発許可申請」(同29条)と続くことから、事前相談における確認内容を引継ぎ、開発許可まで一貫したワンストップな申請手続きを実現するソリューションへの拡張が求められた。また、地図画面での3D表示はデータ通信量が大きく、地方公共団体の庁内環境では表示に時間を要し、運用に支障が生じるため、2D表示機能等の軽量データで通信する仕組みも求められた。
本プロジェクトでは、2023年度に開発したシステムを発展させ、事前相談結果を元に、開発行為の事前協議手続きや都市計画法32条協議、同29条の開発許可申請の管理ができる機能を拡張する。合わせて、地図画面表示のデータ通信量を軽量化するため2Dでの表示機能を追加するなど、地方公共団体の庁内環境の円滑な利用を前提としたUI/UXの改善を図る。
同意書、開発許可証については、複数のテンプレートを用意し地方公共団体ごとの様式に対応できるように実装する。また開発許可手続きの審査には10以上の部課が関与することもあり、開発許可主管部署においても、各課の対応状況の把握、リマインドは大きな負担となっているため、審査状態の管理支援機能を追加し、実用性を向上させる。
以上の取組みにより、複雑な手続きをオンライン・ワンストップで対応可能とし、事業者、行政関係者双方の負担を軽減することにより、審査の高速化を実現し、円滑な都市開発の推進に貢献する。